(1)経営成績等の状況の概要
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、日本国内において引き続き新型コロナウイルス感染症の影響が続く一方、各種政策の効果もあって経済活動の正常化が進み、景気は緩やかに持ち直して行くことが期待されますが、世界的な金融引締め等を背景とした海外景気の下振れが、国の景気を下押しするリスクとなっており、日本経済の先行きは不透明な見通しとなっています。
こうした経済環境の下、当社グループが位置する情報サービス産業の状況に関しましては、「特定サービス産業動態統計速報2022年8月分(経済産業省)」によりますと、情報サービス業の内、「受注ソフトウェア」の2022年8月の売上高は、前年同月比5.8%増と5か月連続の増加を記録し、また、情報サービス業の常用従業者数も前年同月比4.0%増と2021年6月より継続して増加となっており、売上高及び従業者数共に好調に推移しております。情報サービス業界全体がこのような推移を示す中、当社グループは、国全体でデジタルトランスフォーメーション(以下、DX )を伸張させているベトナムのダナン大学・工科大学と「教育と科学技術協力に関する覚書」を締結し、ベトナムで優秀な人材を育成・確保した上で、より高度な技術を必要とする業務を可能にし、クライアントの要望に沿ったサービス提供が可能となっております。更に、ベトナムの国家サイバーセキュリティセンターとの協力覚書の締結により、セキュリティ分野でのサービス支援、人材協力、プロジェクト協力を推進し、日本のDX課題の解決に寄与しながら当社独自の持続的な成長を図っていく体制を構築してまいりました。
この結果、当社グループの当連結会計年度の売上収益は2,407,912千円(前年同期比41.5%増)、営業利益287,840千円(前年同期比158.4%増)、税引前利益310,064千円(前年同期比193.0%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は249,615千円(前年同期比232.2%増)となりました。
当連結会計年度においては、顧客サービスの企画、提案に強みを持つビジネスコンサルティング部を新たに立ち上げ、組織力の強化及び提案の迅速化を図り、新規案件の獲得や、付加価値の向上に努めてまいりました。その効果は、新規顧客の開拓などによる受注の増加や収益力の向上につながり、人員強化による開発力の高まりと相まって相乗効果が発揮されております。
なお、当社はハイブリッド型サービスの単一セグメントのため、セグメントごとの記載はしておりません。
②財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産合計につきましては、前連結会計年度末に比べ1,622,174千円増加し、2,965,065千円となりました。
流動資産は前連結会計年度末に比べ1,467,623千円増加し、2,294,099千円となりました。これは主に、営業活動による資金獲得に伴い現金及び現金同等物が1,308,901千円増加したこと、並びに営業債権及びその他の債権が80,706千円増加したことによるものです。
非流動資産は前連結会計年度末と比較して154,551千円増加し、670,966千円になりました。これは主に、事業シナジーを目的とした7件の投資に伴う投資有価証券177,840千円の増加によるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債につきましては、前連結会計年度末に比べ67,551千円増加し、839,592千円となりました。
流動負債は前連結会計年度末に比べ102,659千円増加し、527,581千円となりました。これは主に、事業規模の拡大に伴い営業債務及びその他の債務が70,427千円増加したことによるものです。
非流動負債は前連結会計年度末と比較して35,108千円減少し、312,011千円になりました。これは主に、ダナンオフィス賃貸借契約解約等に伴うリース負債33,792千円の減少によるものです。
(資本)
当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末に比べ1,554,623千円増加し、2,125,473千円となりました。これは主に、新規上場に伴う公募増資等により資本金及び資本剰余金がそれぞれ668,046千円、655,960千円増加したことによるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の残高は、前連結会計年度末より1,308,901千円増加し、1,808,962千円となりました。各キャッシュ・フローの状況とその要因は以下の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により獲得した資金は、344,804千円となりました(前年同期は209,336千円の獲得)。これは主に、税引前利益を310,064千円、減価償却費及び償却費を128,581千円計上したこと、及び営業債権及びその他の債権の増加△69,421千円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、247,791千円となりました(前年同期は486,016千円の使用)。これは主に、定期預金の預入による支出33,376千円、投資有価証券の取得による支出182,639千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は、1,183,913千円となりました(前年同期は279,342千円の獲得)。これは主に、新株の発行による収入1,267,132千円によるものです。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループのサービス提供は、生産実績の記載になじまないため、生産実績に関する記載は省略しております。
b.受注実績
当社グループの行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次の通りであります。
(単位:千円)
売上収益の区分 |
当連結会計年度 (自 2021年10月1日 至 2022年9月30日) |
前年同期比(%) |
ストックサービス |
2,262,680 |
149.7 |
フローサービス |
145,232 |
76.2 |
合計 |
2,407,912 |
141.5 |
(注)1.当社グループの事業セグメントは、「ハイブリッド型サービス」を単一の報告セグメントとしているため、サービス別の販売実績を記載しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次の通りであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年10月1日 至 2021年9月30日) |
当連結会計年度 (自 2021年10月1日 至 2022年9月30日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
クロスクラウド株式会社 |
18,870 |
1.11 |
249,291 |
10.35 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たっては、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りの不確実性により実際の結果が、これらの見積りと異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針、4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しておりますが、重要なものは以下の通りであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 連結財務諸表注記 37.追加情報」に記載の通りであります。
(収益認識)
当社グループでは、フローサービスの新規受注案件のうち、進捗部分について成果の確実性が認められる案件については工事進行基準(進捗率の見積りは原価比例法)を適用しております。適用にあたっては、受注総額、総製造原価及び当連結会計年度における進捗率を合理的に見積る必要がありますが、予想し得ない工数の大幅な増加等により当該見積りが変更された場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(受注損失引当金)
受注契約に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における受注契約に係る損失見込額を計上しております。受注契約時に予想し得ない事象の発生やプロジェクトの進捗状況等によって損失額が大きく変動する可能性があります。
(投資有価証券)
当社グループの投資有価証券は非上場株式で構成されております。活発な市場における公表価格が入手できない非上場株式の公正価値は、合理的に入手可能なインプットにより、主に割引キャッシュ・フロー法を使用して測定しております。公正価値の評価は、評価する時点において入手可能な情報に基づく最善の見積りと判断に基づき実施しておりますが、将来の事業環境の変化等の影響により見積りの見直しが必要となった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載の通りであります。
b.経営成績の分析
(売上収益)
当連結会計年度の売上収益は、2,407,912千円(前期比41.4%増)となりました。これは主に、前連結会計年度に立ち上げられた、ビジネスコンサルティング部を中心とした上流工程を担う高単価な人材を、特に既存顧客の開発案件に対して積極的に投入できたことで、顧客の開発体制が安定し、開発規模が大型化したことによる、顧客単価の向上等によるものであります。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は、1,464,260千円(前期比39.4%増)となりました。これは主に、売上規模に応じてエンジニアの稼働が増加したことによるものであります。
以上の結果、当連結会計年度の売上総利益は、943,652千円(前期比44.8%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、659,397千円(前期比17.3%増)となりました。これは主に、売上規模に応じた人件費及び管理費等の増加、マーケティング活動費用の増加によるものであります。
以上の結果、当連結会計年度の営業利益は、287,840千円(前期比158.4%増)となりました。
(金融収益、金融費用、税引前利益)
当連結会計年度の金融収益は、34,905千円(前期比158.1%増)となりました。これは主に、為替差益によるものであります。一方で金融費用は、12,681千円(前期比33.5%減)となりました。これは主に、支払利息によるものであります。
以上の結果、当連結会計年度の税引前利益は、310,064千円(前期比193.0%増)となり、法人所得税費用を60,449千円(前期比97.0%増)計上したことにより親会社の所有者に帰属する当期利益は、249,615千円(前期比232.2%増)となりました。
c.キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
③資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、事業活動のための適切な水準の流動性の維持及び市場から理解を得られる株主価値向上を目指した明確な資金調達戦略の提示と実行を基本方針としております。ハイブリッド型サービスにおいて技術者の採用は重要であり、これらの資金需要は内部資金または資金調達の実施により賄うことを基本としております。
④目標とする客観的な指標等の推移
当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」に記載の通り、売上高の継続的かつ累積的な増加の実現のため、ストックサービス件数とストックサービス単価を重要指標としております。
2022年9月期は、特に第4四半期にかけて急激に円安が進行したことにより、当社のUSドル建て契約に対して、新規顧客の意思決定が長期化した結果、2022年9月期のストックサービス件数は2021年9月期の月次平均数から1件増加して58件(前期比101.7%)に留まりました。一方で、ストックサービス単価は、特に既存顧客の開発案件に対して、開発の上流工程を担う高単価人材を投入できたことで、開発体制の安定化、大型化が進展し、2021年9月期の2.2百万円から2022年9月期は3.3百万円(前期比147.7%)と改善しました。
なお、当社グループは「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標 ②管理指標の改定について」に記載の通り、重要な管理指標としてしておりますストックサービス件数とストックサービス単価の定義につきまして、2023年9月期より、事業の目標や進捗状況を示す指標としての明瞭さを向上させる目的で改定を行なう方針であります。
⑤経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は「第2 事業の状況 2事業等のリスク」をご参照ください。
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