課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。また、文中の将

来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、顧客の課題を解決する適切なDXの推進によって、様々な業界から社会を変革しようとする顧客の挑戦を支え、顧客の競争優位性を高めるパートナーとなることで、顧客と共に「新しい景色の創造」を達成します。

 日本ならびに世界が大きな転換期にある中、当社グループの起源であるベトナムと日本の両国がWin-Winとなる形で、顧客と共に成長し、顧客と共に新しい景色を創造し続けることで、今後とも企業グループとしての持続的な成長を目指してまいります。

 

(2)経営環境

 新型コロナウイルス感染症の影響が長引き、国内外の企業経営に引き続き大きな影響を与える中においても、当社グループが属する情報サービス産業においては、経営の効率化や生産性の向上、新事業の立ち上げなどに向けて、DX推進への関心は高まっております。

 現在の日本社会は、少子高齢化から産業界の人材不足が大きな社会問題となっていますが、その中でもIT人材の不足は深刻です。2030年時点でのIT人材の需要と供給の差(需給ギャップ)は、需要が供給を16~79万人上回ると試算した調査もあり(※1)、需給ギャップの緩和に向けて生産性の向上やIT人材の確保が強く求められています。さらに同感染症対策として、企業のリモートワークへの対応や非対面式ビジネスへの移行が進行しており、働き方改革をはじめとした企業活動の在り方が問われる中、日本社会のデジタル化の遅れが露呈して大きな社会問題となっています。特に、DX分野の成熟度に関して、米国においては、DXによる新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通してこれまでにない価値を創出した企業により、従来のビジネスモデルが脅かされ、既存の産業構造の変革に至るデジタル・ディスラプションが進んでおります。同様の動きは今後日本でも本格化することが予測され、チャンスにもリスクにもなり得ることから、各企業にとっては一刻も早い取組が求められています。

 一方で、2025年の壁といわれる、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存のレガシーシステムが改革されずに企業内に残存し、その維持管理費が高騰する中で、自社データの活用ができず、日々進化する市場の変化に対応したビジネスモデルの変革も進まないという構造的な課題も表面化しています。特に従業員300名以下の企業の約70%はDXに取り組んでいない、もしくは分からないと回答した調査結果があり(※2)、当社グループがサービスを提供するDX推進市場の可能性を示しているものと考えております。

 当社グループが、日本のDX推進市場で開発拠点としているベトナムには、「第1 企業の概況 3.事業の内容 (4)当社グループの特徴・強み」として「1)日本とベトナムのシナジー c.DX推進パートナーとしてのベトナムの優位性」に記載している特徴や優位性があると考えております。

 

 当社グループは、そのベトナムの多くの若く優秀なエンジニア達を中心に、DXの推進による『業務の改革』や『新しい事業の立ち上げ』を通して、様々な業界から社会を変革しようとする顧客の挑戦を支えつつ、顧客の競争優位性を高めるパートナーであることによって、『顧客と共に成長』し、『新たな景色を創造』することを達成してまいります。

 

出典:※1…経済産業省委託による、みずほ情報総研株式会社の「IT人材需給に関する調査」(2019年3月)

※2…独立行政法人情報処理推進機構社会基盤センター、IT人材白書2020

 

(3)経営戦略

 当社グループは、上記の経営環境の中で、ハイブリッド型サービスを通じて、顧客課題を解決します。

 ハイブリッド型サービスは、当社が中心となり顧客のサービス設計、システム設計の上流を担い、ベトナム子会社が擁するエンジニアリソースと連携することで顧客サービスの上流工程から下流工程に至る一連のサービスを提供しています。デザインシンキング(注1)等を用いたサービス設計、リーンスタートアップ(注2)による開発、経験豊富なPMやSEによる要件定義やシステム設計、ベトナム子会社が擁する豊富な開発リソースを駆使したプロダクト開発によって顧客のビジネス成長を推進します。

 当社グループの売上収益比率は、ストックサービスが2021年9月期で89%、2022年9月期で94%となっており、今後もストックサービスの売上収益比率を高めていく方針です。

 そのために、ストックサービス数の拡大とストックサービス単価の向上を重要指標としております。ストックサービスは、開発リソースを専属のチームとして中長期的に提供するサービスで、チームの規模が大きくなるほどチーム単位のサービス金額(単価)が向上して、収益基盤の安定化につながるサービス形態です。ストックサービス件数については、為替の変動に応じた柔軟な価格施策、営業部門の増員による提案体制の強化、当社上場後の信用力を背景とした大手顧客へのアプローチ強化等によって、ストックサービス単価については、付加価値の高い上流工程の提案力強化、UI/UX組織の設立による対応領域の拡大、サービスライン拡大による収益構造の多様化等によって、それぞれ向上を図ってまいります。

 また、2022年9月期から始動したスタートアップ事業支援プロジェクト「Hybrid Technologies Capital」は、多くのスタートアップ企業にて挙げられる資金調達の難航や社内開発リソースの枯渇という課題を解決し、スタートアップ企業の事業成長を目的として立ち上がった投資プロジェクトです。当社の強みであるベトナムと日本のエンジニアリソースを融合させたハイブリッド開発のリソース提供と、資金の提供を行うことで、支援先企業のDX支援と事業拡大を目指します。

 

補足(用語説明)

1)課題を解決に導くために用いられるマインドセットのひとつ。デザインで使われる考え方を、さまざまなビジネスの場面に応用する手法。

2)コストをかけずに最低限の製品・サービス・機能を持った試作品を短期間でつくり、顧客の反応を的確に取得して、顧客がより満足できる製品・サービスを開発していくマネジメント手法。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

①2022年9月期までの管理指標

 当社グループは、ストックサービスを維持、拡大させることで経営の安定化を図る方針であり、新規プロジェクトの獲得によるストックサービス件数の増加、及び既存顧客からの増員、新たなプロジェクトによるチームラインの増加、上流工程からの介在強化を通したストックサービス単価の向上により、市場を拡大し、ノウハウを蓄積するとともに、人材・新規技術獲得等への投資を継続することで、企業グループとしての持続的な成長を図ってまいります。そのために、当社はストックサービス件数とストックサービス単価を重要指標としております。当社グループにおけるストックサービスの売上収益比率は、2021年9月期で89%、2022年9月期で94%となっております。

 

[事業年度ごとのストックサービス件数とストックサービス単価]

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(注1)ストックサービス件数は、「月次ストックサービス数の年次合計÷12ヶ月」で算出した年次平均数であります。なお、この指標はストックサービスにて受注したプロジェクト数(長期型と短期型の合算)であり、同一の顧客から複数のプロジェクトを受注することがあるため、顧客数とは異なります。

(注2)ストックサービス単価は、「年次のストックサービス売上÷月次ストックサービス数の年次合計」で算出した年次平均単価であります。

 

②管理指標の改定について

 2023年9月期より次の通り指標の定義を改定する方針であります。

・ストックサービス件数は、当社事業の進捗に大きな影響を与える長期ストックサービスの期末時点の件数に改定いたします。対象を長期のストックサービスとすることにより、件数の動きがより直接的に売上収益の変動に連動するとともに、期末時点の件数とすることにより、時系列に沿った件数の状況がより明瞭になるものと期待しております。

・ストックサービス単価は、期末時点の単月平均に改定いたします。この改定により、ストックサービス単価の動きや、成長の進捗状況がより明瞭になるものと期待しております。

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(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、今後の持続的な成長を実現する上で、以下の事項を課題として重視しています。

①開発体制の継続的な強化

 今後、より一層顧客の要件を満たす事業を実現するためには、開発品質レベルの向上は不可欠であります。当社グループは、日本とベトナム両国でのハイブリッドな開発体制に特徴がありますが、グループ間コミュニケーションのさらなる強化を図る一方で、それぞれの特性を活かした開発手法の標準化、開発ノウハウの蓄積・共有を今後も進めてまいります。特に、受注前の見積り精度の向上や受注後のプロジェクト進捗確認等のモニタリングを通じて、開発品質の確保と納期の遵守については最重要課題として取り組んでまいります。

 

②技術力のさらなる強化

 DX市場の変化、それを支える技術革新は目覚ましいものがあり、それらの最先端技術を迅速、的確に自社のサービスに反映し、市場のニーズに応えることが、企業成長において重要な課題であります。当社グループは、社内外で開発実績を持つAIモデルの構築をはじめ、今後もIoT、ブロックチェーン、サイバーセキュリティ等の幅広い最先端技術の習得に努め、様々な業界・業態の顧客への提案力の向上、更なる価値創造に努めてまいります。

 

③新規顧客の獲得

 当社グループが、持続的な成長を続けるためには、売上拡大に繋がる新規顧客の獲得が必要であると考えております。IPOによる認知度、知名度の向上も活かして、マスマーケティング、展示会への出展、プライベートセミナーの開催、リスティング、動画コンテンツの配信などを展開し、継続的に新規受注を獲得できる体制の確立を目指してまいります。

 

④人材採用・育成の強化

 当社グループが、持続的な成長を図っていくには、専門性を有する優秀な人材を安定的、かつ機動的に確保することが必要不可欠と考えています。ベトナム3拠点での産学連携、日本でのベトナム人脈のさらなる活用等も含めて、ターゲット別に最適な人材採用戦略を講じてまいります。また、自社機関である『Talent Academy』の教育プログラムにより、新卒人材であっても即戦力に近いパフォーマンスを発揮する人材を、社内で短期に育成する体制を継続して強化してまいります。当社グループ事業の源泉は人材にあることを心に留め、今後とも優秀な人材の確保に努めてまいります。

 

⑤情報管理体制の更なる強化

 当社グループは、顧客の開発要件によっては、個人情報を含む顧客の機密情報を取り扱う場合があります。これらに適切に対応するために、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO27001:2013を取得し、情報管理やセキュリティ管理の徹底を図っております。また、2022年9月にはベトナムの国家サイバーセキュリティセンターとの間で、サイバーセキュリティに関する相互支援を目的とした協力覚書を締結いたしました。今後も当社グループの情報管理体制の整備、強化に取り組んでまいります。

 

⑥経営管理・内部管理体制の強化

 当社グループは、当社グループを取りまく事業環境の変化に柔軟に対応し、継続的に企業価値の向上を図っていくためには、内部統制環境の整備・強化が重要な経営課題であると認識しております。全社的なリスク管理体制の整備、コンプライアンス体制の強化、さらには適切なリスクテイク体制の構築を目指して取り組んでまいります。

 

⑦持続的な企業の成長

 当社グループは、今後より一層顧客のDX推進と競合優位性の向上、および日本のIT人材不足の解決の一助となるべく、持続的な企業規模の成長、事業の拡大を図ってまいります。これらを達成するべく、業績の向上や市場活動によって得られた資金を柔軟に活用し、設備や人材への投資を継続してまいります。また、企業買収や事業提携等についても、当社グループの事業拡大に有効と判断できる場合は、積極的に検討してまいります。

 

⑧手元流動性の確保

 当社グループは、継続的な取引である「ストックサービス」が売上収益の多くを占めているため、キャッシュ・フローは、安定していると認識しております。今後も、事業環境の変化やM&Aなどの資本政策にも対応できるように、柔軟な財政政策を実施してまいります。

 

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