業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する記載は、当年度末現在において当社が判断したものであり、当社としてその実現を約束するものではありません。

 

(1) 連結経営成績等の状況の概要

① 連結経営成績の状況

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2020年4月 1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月 1日

至 2022年3月31日)

前年度比

増減額

増減率

売上収益

550,337

611,634

61,296

11.1%

海外売上収益

44,613

76,519

31,906

71.5%

海外売上収益比率

8.1%

12.5%

4.4P

事業利益

87,510

102,881

15,371

17.6%

営業利益

80,748

106,218

25,470

31.5%

営業利益率

14.7%

17.4%

2.7P

EBITDAマージン

23.6%

23.9%

0.3P

税引前利益

71,075

104,671

33,595

47.3%

親会社の所有者に帰属する

当期利益

52,867

71,445

18,577

35.1%

ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)

18.2%

21.3%

3.1P

(注)1. 事業利益は、営業利益から一時的要因(のれん減損及び固定資産減損等)を除いたものであり、恒常的な事業の業績を測る利益指標です。

2. EBITDAマージン=EBITDA(営業利益+減価償却費+固定資産除却損±一時的要因)÷売上収益

 

当年度の日本経済は、依然として新型コロナウイルス感染症の感染拡大による先行きが不透明な状況が続いているものの、世界経済の持ち直しやワクチン接種の進展を背景に、徐々に回復基調となりました。情報システム投資については、デジタル技術を活用したビジネスプロセス及びビジネスモデルの変革を行うDX(デジタルトランスフォーメーション)を中心に企業の投資需要が活況を呈しています。一方、足元ではロシア・ウクライナ情勢による原材料価格の上昇、サプライチェーンへの制約や金融市場の変動など先行き不透明な状況がみられています。

このような環境の下、当社グループ(当社及び連結子会社をいう。以下同じ。)は、コンサルティングからシステム開発・運用まで一貫して提供できる総合力をもって事業活動に取り組みました。

当年度は、長期経営ビジョン「Vision2022」(2015年度~2022年度)の実現に向け策定した「NRIグループ中期経営計画(2019年度~2022年度)」(以下「中期経営計画2022」という。)の3年目となり、より一層の生産性向上と既存事業の拡大に取組むとともに、「中期経営計画2022」の成長戦略である(1)DX戦略、(2)グローバル戦略、(3)人材・リソース戦略の実現を推進しました。

(1) DX戦略:当社グループは、顧客のビジネスプロセス及びビジネスモデルの変革に対して、戦略策定からソリューションまで、テクノロジーを活用し、総合的に支援しています。

ビジネスプラットフォーム戦略においては、金融分野を中心に共同利用型サービスの拡大をさらに進めるとともに、業界構造の変化に合わせて異業種から金融業へ参入する顧客に向けては、新たなビジネスプラットフォームを提供することで、顧客の新事業創出や新市場進出の支援をしています。

クラウド戦略においては、顧客のレガシーシステムのモダナイゼーション(※1)やクラウドネイティブ(※2)のアプリケーション開発などを通じて、顧客のビジネスのアジリティ(機敏性)を高め、ITコストの最適化を実現しています。

(2) グローバル戦略:当社グループは、豪州と北米を主たる注力地域とし、M&Aなどによる外部成長を軸としたIPの獲得も含めた事業基盤の拡大を進めています。M&Aにより取得した子会社については、さらなるシナジーの創出に向け、グローバル本社機構を中心に、経営管理制度や業務管理体制の構築など買収後の経営統合プロセスを進めています。

当第1四半期に、豪州地域における事業基盤の拡大を目的に、Australian Investment Exchange Limited及びPlanit Test Management Solutions Pty Ltdの持株会社であるSQA Holdco Pty Ltdを子会社とし、それぞれ金融ITソリューションセグメント及び産業ITソリューションセグメントの主要な関係会社としました。当第3四半期に、北米地域における事業基盤の拡大を目的に、Core BTS, Inc.の持株会社であるConvergence Technologies, Inc.を子会社とし、産業ITソリューションセグメントの主要な関係会社としました。

(3) 人材・リソース戦略:当社グループは、顧客のビジネスを成功に導くために、デジタル時代を支える人材の採用と育成を強化しています。また、社員が活躍・チャレンジできる風土の醸成とダイバーシティの推進を行うとともに多様な働き方を推進し、当社グループらしい働き方改革を実現しています。

 

なお、当社は、資本効率の向上、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の一環として、自己株式の取得(16,605千株、59,999百万円)を行いました。

 

当社グループの当年度の売上収益は、コンサルティングサービス、開発・製品販売や運用サービスが前年度を上回り、611,634百万円(前年度比11.1%増)となりました。子会社増加に伴う人件費等の増加があった一方で、一部の子会社における不採算案件が減少し、売上原価は395,562百万円(同8.5%増)、売上総利益は216,071百万円(同16.3%増)、販売費及び一般管理費は113,536百万円(同15.4%増)となりました。良好な受注環境、生産活動を背景に収益性が向上したことに加え、横浜野村ビルにおける信託受益権を一部売却したことに伴い固定資産売却益3,337百万円を計上し、営業利益は106,218百万円(同31.5%増)、営業利益率は17.4%(同2.7ポイント増)、EBITDAマージンは23.9%(同0.3ポイント増)となりました。

 

※1 レガシーシステムのモダナイゼーション:老朽化した基幹システムなどのソフトウエアやハードウエアのシステム基盤やアプリケーションを最適化、近代化を行う手法。

※2 クラウドネイティブ:クラウド上での利用を前提として設計された情報システムやサービス。

 

② 連結キャッシュ・フローの状況

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2020年4月 1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月 1日

至 2022年3月31日)

前年度比

増減額

増減率

営業活動によるキャッシュ・フロー

84,594

98,137

13,543

16.0%

投資活動によるキャッシュ・フロー

△20,522

△130,547

△110,025

536.1%

フリー・キャッシュ・フロー

64,071

△32,410

△96,481

財務活動によるキャッシュ・フロー

△13,183

△7,995

5,187

△39.3%

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

52,408

△37,576

△89,985

現金及び現金同等物の期末残高

153,187

115,610

△37,576

△24.5%

 

当年度末の現金及び現金同等物は、前年度末から37,576百万円減少し115,610百万円となりました。

当年度において、営業活動により得られた資金は、営業活動による利益の増加や法人所得税の支払額が減少したこと等により、前年度と比べ13,543百万円大きい98,137百万円となりました。

投資活動による支出は130,547百万円となり、前年度と比べ110,025百万円大きくなりました。共同利用型システムの開発に伴う無形資産の取得などの投資を行ったことに加え、米国のConvergence Technologies, Inc.、豪州のSQA Holdco Pty Ltd及びAustralian Investment Exchange Limitedの株式取得により、子会社取得による支出が75,105百万円増加しました。また、横浜野村ビルの信託受益権を売却したことにより、固定資産の売却による収入が10,369百万円増加しました。

財務活動による支出は7,995百万円となり、前年度と比べ5,187百万円小さくなりました。前年度は、新型コロナウイルス感染症の影響による事業環境の悪化懸念に備えるために発行したコマーシャル・ペーパーの純増減額(収入)4,978百万円、社債の発行による収入14,946百万円がありました。また、㈱だいこう証券ビジネスの株式等の取得による非支配持分からの子会社持分取得による支出11,324百万円がありました。当年度は、M&A及び自己株式取得の原資として、新たに借入れを実施したことで、短期借入金の純増減額(収入)53,425百万円がありました。また、コマーシャル・ペーパーの純増減額(収入)15,000百万円及びAMTN(Australian Medium Term Note)プログラムを活用した豪ドル建無担保社債の発行による収入16,574百万円がありました。取締役会決議に基づく自己株式の取得による支出59,999百万円及び長期借入金(シンジケートローン)の返済による支出10,000百万円がありました。その他の支出の主な内容は、いずれの期も配当金の支払いです。

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は次のとおりです。

セグメントの名称

金額

(百万円)

前年度比

(%)

コンサルティング

21,917

13.4

金融ITソリューション

237,320

10.8

産業ITソリューション

160,744

15.6

IT基盤サービス

104,661

12.3

小 計

524,644

12.6

調整額

△125,086

399,558

12.9

(注)1. 金額は製造原価によっています。各セグメントの金額は、セグメント間の内部振替前の数値であり、調整額で内部振替高を消去しています。

2. 外注実績は次のとおりです。なお、外注実績の割合は、生産実績に対する割合を、中国企業への外注実績の割合は、総外注実績に対する割合を記載しています。

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年度比

(%)

 

金額

(百万円)

割合

(%)

金額

(百万円)

割合

(%)

外注実績

171,560

48.5

194,766

48.7

13.5

うち、中国企業への外注実績

30,460

17.8

36,730

18.9

20.6

 

② 受注実績

当連結会計年度におけるセグメントごとの受注実績(外部顧客からの受注金額)は次のとおりです。

セグメントの名称

受注高

受注残高

金額

(百万円)

前年度比

(%)

金額

(百万円)

前年度比

(%)

コンサルティング

44,546

11.5

8,789

24.7

金融ITソリューション

317,059

3.0

198,391

7.3

産業ITソリューション

243,501

28.4

123,402

20.4

IT基盤サービス

45,126

21.7

17,800

16.5

650,233

13.2

348,384

12.5

(注)1. 金額は販売価格によっています。

2. 継続的な役務提供サービスや利用度数等に応じて料金をいただくサービスについては、各年度末時点で翌年度の売上見込額を受注額に計上しています。

 

③ 販売実績

a. セグメント別販売実績

当連結会計年度におけるセグメントごとの外部顧客への売上収益は次のとおりです。

セグメントの名称

金額

(百万円)

前年度比

(%)

コンサルティング

42,807

14.9

金融ITソリューション

303,635

5.4

産業ITソリューション

222,583

19.6

IT基盤サービス

42,607

9.7

611,634

11.1

 

b. 主な相手先別販売実績

前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の売上収益及び当該売上収益の連結売上収益に対する割合は次のとおりです。

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年度比

(%)

金額

(百万円)

割合

(%)

金額

(百万円)

割合

(%)

野村ホールディングス㈱

66,309

12.0

63,025

10.3

△5.0

(注) 相手先別の売上収益には、相手先の子会社に販売したもの及びリース会社等を経由して販売したものを含めています。

 

c. サービス別販売実績

当連結会計年度におけるサービスごとの外部顧客への売上収益は次のとおりです。

サービスの名称

金額

(百万円)

前年度比

(%)

コンサルティングサービス

125,460

39.3

開発・製品販売

196,000

6.6

運用サービス

272,903

5.5

商品販売

17,269

△2.9

611,634

11.1

 

(3) 経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する分析・検討内容

① 当年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、事業の継続的な拡大を通じて企業価値を向上させていくことを経営の目標としています。経営指標としては、事業の収益力を表す営業利益及び営業キャッシュ・フローを重視し、これらの拡大を目指しています。また、資本効率の観点からROEを重視し、EPSの成長を通じた持続的な株主価値の向上に努めています。

当年度におけるこれらの指標は、営業利益は106,218百万円(前年度比31.5%増)、EBITDAマージンは23.9%(同0.3ポイント増)、ROEは21.3%(同3.1ポイント増)、EPSは120円57銭(同32円23銭増)となりました。

 

当社グループは、2022年度を最終年度とする8ヵ年の長期経営ビジョン「Vision2022」(2015年度~2022年度)を策定しています。「Vision2022」は、当社の既存の強みである業界標準ビジネスプラットフォームなどの強化、グローバル化の飛躍的拡大、ビジネスIT領域での新たな価値創造など、成長戦略の5つの柱と数値目標で構成されています。

 

当社は、長期経営ビジョン「Vision2022」の実現に向け、2019年4月に「NRIグループ中期経営計画(2019年度~2022年度)」(以下「中期経営計画2022」(※1)という。)を策定しました。中期経営計画2022における財務数値目標(連結)は次のとおりです。

 

中期経営計画2022(2019年度~2022年度)

(単位:百万円)

指標

実績

中期経営計画2022

2021年度

2022年度(目標)

売上収益

 

611,634

670,000以上

営業利益

 

106,218

(※2)100,000

営業利益率

 

17.4%

14%以上

海外売上収益

 

76,519

100,000

EBITDAマージン

 

23.9%

20%以上

ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)

 

21.3%

(※2)14%

 

※1 中期経営計画2022の詳細については、当社が2019年4月25日付で公表した「『NRIグループ中期経営計画(2019-2022)』説明会資料」(https://ir.nri.com/jp/ir/management/plan/main/0/link/190425chukei.pdf)並びに「1. 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 経営戦略」をご参照下さい。

※2 足元の受注環境やDX案件が活況であったこと等により、一部の指標については当年度に目標を超える水準となりましたが、当社は引き続き企業価値向上と高い資本効率の維持を目指します。

 

b. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの経営成績等に特に影響を与える大きな要因としては、情報技術動向、市場動向、品質及び事業継続に対する取組みなどがあります。

情報技術動向については、クラウド、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)などの新しいデジタル技術が次々に登場し、従来の技術、手法では対応できないテーマが増えています。当社グループは、情報技術に関する先端技術や基盤技術、生産・開発技術の調査・研究に、社内横断的な体制で取り組むことで、技術革新への迅速な対応に努めています。

市場動向については、他業種からの新規参入や海外企業の台頭、パッケージ製品やクラウドサービスの普及などが進んでおり、情報サービス産業は厳しい競争の環境下にあります。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を経て、デジタルを活用してビジネスモデルを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速しています。顧客のDXに対する取組みを実現するためには、顧客のビジネスを深く理解していなければ実現することが出来ません。当社グループは、様々な業界や業務プロセスに精通したコンサルタントと、実用性までを考慮して最新のITを駆使できるシステムエンジニアという2つの人的資本があり、顧客のDXの取組みの拡大において、大きな競争優位性があると考えています。

品質及び事業継続に対する取組みについては、複数のデータセンターを保有し、社会インフラとしての情報システムを担う責任に加え、不測の不採算案件が発生した場合の業績への影響もあることから、当社グループの事業活動の根幹として特に重視しています。品質監理を専門とする組織を中心に、受注前の見積り審査や受注後のプロジェクト管理を適切に行う体制を整えていることに加え、一定規模以上のプロジェクトは、システム開発会議など専用の審査体制を整え、プロジェクト計画から安定稼動まで進捗状況に応じたレビューの徹底を図り、不測の不採算案件の発生防止に取り組んでいます。災害やシステム障害などの事業継続に対しては、大規模災害、大規模障害などの発生に備えて、初動体制と行動指針をまとめたコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を策定し、事前対策や訓練を重ね、より円滑な事業継続に向けた体制の構築や事業計画に必要なインフラの整備など、危機管理体制の整備・強化に取り組んでいます。

 

c. 経営成績

当年度の連結経営成績は、「(1)連結経営成績等の状況の概要 ①連結経営成績の状況」をご覧ください。

当年度のセグメントごとの経営成績(売上収益には内部売上収益を含む。)は、次のとおりです。

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2020年4月 1日

 至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月 1日

 至 2022年3月31日)

 前年度比

 増減額

 増減率

コンサルティング

売上収益

38,155

44,414

6,258

16.4%

営業利益

10,059

12,820

2,760

27.4%

営業利益率

26.4%

28.9%

2.5P

金融ITソリューション

売上収益

292,038

308,376

16,338

5.6%

営業利益

36,275

43,877

7,601

21.0%

営業利益率

12.4%

14.2%

1.8P

産業ITソリューション

売上収益

189,551

229,921

40,370

21.3%

営業利益

19,482

25,449

5,966

30.6%

営業利益率

10.3%

11.1%

0.8P

IT基盤サービス

売上収益

142,686

157,598

14,911

10.5%

営業利益

19,785

20,955

1,169

5.9%

営業利益率

13.9%

13.3%

△0.6P

調整額

売上収益

△112,094

△128,676

△16,582

営業利益

△4,855

3,116

7,971

売上収益

550,337

611,634

61,296

11.1%

営業利益

80,748

106,218

25,470

31.5%

営業利益率

14.7%

17.4%

2.7P

 

(コンサルティング)

当セグメントは、政策提言や戦略コンサルティング、業務改革をサポートする業務コンサルティング、ITマネジメント全般にわたるシステムコンサルティングを提供しています。

コロナ禍において顧客の経営環境が急速に変化している中、デジタル技術を活用した企業変革が加速しています。また、脱炭素等の社会課題の解決を経営戦略に取り入れる企業が増加しており、具体的な成果につながる実行支援型のコンサルティングサービスによる社会課題解決が期待されています。

当セグメントは、顧客のDXを支援するコンサルティングを強化し、顧客ニーズへの的確な対応に努めるとともに、グローバル領域においては、欧米等の先進国における知的資産を探索し、国内外拠点の連携を通じた提案力の強化に努めました。また、カーボン・ニュートラルなどの社会課題の解決を起点にした新たなコンサルティングサービスの創出に向けた取組みを行いました。

当年度の売上収益は、民間企業を中心としたDX関連のコンサルティングが継続して牽引し、44,414百万円(前年度比16.4%増)となりました。営業利益は、DX関連のコンサルティングにおけるニーズの高まりや社会課題解決等の政策案件等が活況であったことにより、12,820百万円(同27.4%増)となりました。

 

(金融ITソリューション)

当セグメントは、主に証券業や保険業、銀行業等の金融業顧客向けに、システムコンサルティング、システム開発及び運用サービス、共同利用型システム等のITソリューションやBPОサービスを提供しています。

社会における高齢化の一層の進展、異業種からの金融業への新規参入やデジタルアセットの拡大、低金利の継続及び人口減少による国内市場の縮小など、金融業を取り巻く環境は大きな構造変化を迎えています。また、顧客におけるデジタル化やビジネスモデル変革のニーズも急速に高まっています。

当セグメントは、これらの環境変化に対応し、顧客の新規事業や新サービスの創出を支援するため、新たな金融ビジネスプラットフォームの創出と拡大、マイナンバー等のデジタルガバメント政策に資する新たなDXビジネスの推進、金融グローバル事業の安定稼働と事業拡大に努めました。

当第1四半期に、豪州ウエルスマネジメント市場の成長を取り込みながらグローバルな金融市場での事業を加速させることを目的に、Australian Investment Exchange Limitedを子会社としました。

当年度の売上収益は、証券業向け運用サービスの増加、保険業向け開発・製品販売の増加、Australian Investment Exchange Limitedの連結子会社化等が寄与し、308,376百万円(前年度比5.6%増)となりました。市場活況による共同利用型サービスの利用料の増加、金融業向けの開発・製品販売が好調で、営業利益は43,877百万円(同21.0%増)となりました。

 

(産業ITソリューション)

当セグメントは、流通業、製造業、サービス業や公共向けに、システムコンサルティング、システム開発及び運用サービス等のITソリューションを提供しています。

産業分野の顧客におけるDXの取組みは、既存のビジネスモデルの効率化や高度化のみならず、コロナ禍を経てデジタル技術を活用した新たなビジネスモデルを創造する領域にも広がっています。

当セグメントは、DXビジネスの領域で顧客や業界を問わず活用可能なデジタルIPの開発に注力し、顧客のビジネスモデルの創出からシステム構築や運用の高度化まで総合的に支援しました。

当第1四半期に、Planit Test Management Solutions Pty Ltdの持株会社であるSQA Holdco Pty Ltdを子会社としました。同社が有する独自のノウハウ・サービス及び顧客基盤をレバレッジし、豪州地域での更なる事業基盤の拡大を目指しています。当第2四半期に、建設業界にDXをもたらし、安全性、生産性、環境性の飛躍的な向上を実現することを目的に、㈱小松製作所、㈱NTTドコモ、ソニーセミコンダクタソリューションズ㈱と共同で㈱EARTHBRAINを発足しました。また、当第3四半期に、Core BTS, Inc.の持株会社であるConvergence Technologies, Inc.を子会社としました。北米における事業基盤の礎を築き、クロスセルを軸としたシナジーの実現を追求して、グローバル事業のさらなる拡大に向けた取り組みを進めていきます。

当年度の売上収益は、製造・サービス業向けコンサルティングサービスや流通業向けの開発・製品販売が増加し、229,921百万円(前年度比21.3%増)となりました。海外子会社の採算性が回復したことに加え、SQA Holdco Pty Ltdの連結子会社化が寄与し、営業利益は25,449百万円(同30.6%増)となりました。

 

(IT基盤サービス)

当セグメントは、主に金融ITソリューション部門及び産業ITソリューション部門を通じて、データセンターの運営管理やIT基盤・ネットワーク構築等のサービスを提供しています。また、様々な業種の顧客に対してIT基盤ソリューションや情報セキュリティサービスを提供しています。このほか、ITソリューションに係る新事業・新商品の開発に向けた実験的な取組みや先端的な情報技術等に関する調査、研究を行っています。

DX時代のシステム開発は、新たな開発手法や、よりスピーディーな開発が求められるとともに、AI(人工知能)やブロックチェーンなどの新しいデジタル技術の活用も必要となります。クラウド領域においては、企業におけるクラウド化の進展に伴い、多様化・複雑化するシステム基盤を高い品質で総合的に運用していくことが必要となります。また、コロナ禍により働く場所が多様化したことに伴い、場所を問わず安全かつ快適に業務を行うためのセキュリティ環境のニーズが加速しています。

当セグメントは、これらの環境変化に対応し、DX時代のシステム開発手法や生産革新ツールの開発を行うとともに、マルチクラウドサービス(※1)及びマネージドサービス(※2)の拡大や、ゼロトラスト(※3)事業の推進に取り組みました。

当第4四半期に、㈱ラックと当社は、クラウドプラットフォーム向けマネージドセキュリティサービス(※4)を提供するニューリジェンセキュリティ㈱を設立しました。AI(人工知能)の活用など先端技術分野にも積極的に取り組み、企業が求める高度なクラウドセキュリティの実現を支援するマネージドセキュリティサービスを提供していきます。

当年度の外部顧客に対する売上収益はセキュリティ事業で増加し、内部売上収益は金融ITソリューション部門でのさらなる効率化・最適化のニーズの高まりや産業ITソリューション部門の事業活況に伴う支援案件の増加等により、クラウドサービスやネットワークサービス等が増加しました。この結果、売上収益157,598百万円(前年度比10.5%増)、営業利益20,955百万円(同5.9%増)となりました。

 

※1 マルチクラウドサービス:複数のクラウド基盤を組み合わせて、一元的に管理するサービス。

※2 マネージドサービス:顧客のIT部門に代わり、システム全体を最適化して総合的に支援するサービス。

※3 ゼロトラスト:ネットワークの内部と外部を区別することなく、守るべき情報資産やシステムにアクセスするものは全て検証するというセキュリティの新たな考え方。

※4 マネージドセキュリティサービス(MSS):企業や組織の情報セキュリティシステムの運用管理を、社外のセキュリティ専門企業などがトータルに請け負うサービス。

 

d. 財政状態

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2021年3月31日)

当連結会計年度

(2022年3月31日)

前年度末比

増減額

増減率

流動資産

323,366

333,645

10,279

3.2%

非流動資産

333,170

456,010

122,840

36.9%

資産合計

656,536

789,655

133,119

20.3%

流動負債

174,348

298,342

123,994

71.1%

非流動負債

148,981

148,826

△154

△0.1%

資本合計

333,206

342,486

9,280

2.8%

親会社の所有者に帰属する持分

330,495

339,360

8,865

2.7%

親会社所有者帰属持分比率

50.3%

43.0%

△7.4P

有利子負債

118,605

209,627

91,022

76.7%

グロスD/Eレシオ(倍)

0.36

0.62

0.26

ネットD/Eレシオ(倍)

△0.11

0.27

0.38

(注)1. グロスD/Eレシオ(グロス・デット・エクイティ・レシオ(負債資本倍率)):有利子負債÷親会社の所有者に帰属する持分

2. ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ(正味負債資本倍率)):(有利子負債-現預金)÷親会社の所有者に帰属する持分

3. 有利子負債:社債及び借入金+その他有利子負債(信用取引借入金及び有価証券担保借入金)

   信用取引借入金(前連結会計年度末503百万円、当連結会計年度末608百万円)は、連結財政状態計算書上の営業債務及びその他の債務に、有価証券担保借入金(前連結会計年度末606百万円、当連結会計年度末802百万円)は、連結財政状態計算書上のその他の流動負債に含めています。

 

当年度末において、流動資産333,645百万円(前年度末比3.2%増)、非流動資産456,010百万円(同36.9%増)、流動負債298,342百万円(同71.1%増)、非流動負債148,826百万円(同0.1%減)、資本合計342,486百万円(同2.8%増)となり、資産合計は789,655百万円(同20.3%増)となりました。また、当年度末におけるグロスD/Eレシオ(グロス・デット・エクイティ・レシオ)は、0.62倍、ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ)は、0.27倍となっています。

前年度末と比べ増減した主な内容は、次のとおりです。

当年度は3月に完了した案件が多かったことから、営業債権及びその他の債権は29,354百万円増加し135,678百万円、契約資産は7,744百万円増加し50,666百万円となりました。

のれん及び無形資産は、米国のConvergence Technologies, Inc.、豪州のSQA Holdco Pty Ltd及びAustralian Investment Exchange Limitedを子会社化したこと等により、121,676百万円増加し、210,744百万円となりました。

社債及び借入金は、M&A及び自己株式取得の原資として、新たに借入れを実行したことや機動的な資金調達及び資金調達手段の多様化を目的として、コマーシャル・ペーパー15,000百万円及びAMTN(Australian Medium Term Note)プログラムを活用した豪ドル建無担保普通社債16,574百万円を発行したこと等により、90,720百万円増加し208,216百万円となりました。第5回無担保社債が償還まで1年内となったため、25,000百万円を非流動負債から流動負債へ振り替えています。

自己株式は、取締役会決議に基づく自己株式の取得等により53,782百万円増加し、68,809百万円となりました。

このほか、現金及び現金同等物が37,576百万円減少の115,610百万円、営業債務及びその他の債務が16,442百万円増加の53,800百万円、未払法人所得税が11,709百万円増加の20,648百万円となりました。

 

e. キャッシュ・フローの状況

「(1) 連結経営成績等の状況の概要 ② 連結キャッシュ・フローの状況」をご覧ください。

 

f. 当社グループの資本の財源及び資金の流動性

当社グループは社会インフラとしての情報システムを担う社会的責任から、不測の事態が発生した場合でもサービス提供を継続するため、比較的厚めの自己資金を保持する方針としています。

当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、コンサルティングやシステム開発を担う従業員の労務費及びパートナー会社に対する外注費のほか、事業活動を支える不動産費や販売費及び一般管理費などがあります。投資資金需要としては、共同利用型サービスやアウトソーシングサービスを提供するためのデータセンターの建設やサービス提供用機器、自社利用ソフトウエアの開発費用に加え、事業拡大のためのM&A資金などがあります。

当社グループはこれらの資金需要に対して、事業の継続的な拡大を背景に、安定的にキャッシュ・フローを創出しており、事業運営上必要な資金は、自己資金でまかなうことを基本としています。毎期のソフトウエア投資など事業運営で必要な設備投資資金については、減価償却費の範囲内で行うことを基本としていますが、M&Aをはじめとした中長期的な投資資金については、資本と負債のバランスなどの財務健全性や資金調達手段の多様化を考慮し、社債や借入れによる負債を一定以上活用した資金調達を行う方針としています。マーケットとの対話を意識し、ネットD/Eレシオ(ネットデット・エクイティ・レシオ)は0.1倍前後を基本とし、0.3倍を上限としています。当年度末における有利子負債の残高は209,627百万円(前年度末比76.7%増)、現金及び現金同等物の残高は115,610百万円(同24.5%減)、グロスD/Eレシオは0.62倍、ネットD/Eレシオは0.27倍となっています。

また、当社グループは、事業内容及び財務状況について第三者から客観的な評価を得ることで、経営の透明性と対外的な信用力を高めるとともに、事業機会に即した資金調達手段の多様化、資金調達の安定性向上に努めており、高い信用格付の維持を目指しています。本有価証券報告書提出日現在において、㈱格付投資情報センターより「AA-」の格付を、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱より「A」の格付を取得しています。

 

② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しています。その作成にあたり、経営者は会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の計上額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っています。これらの見積りや仮定は、過去の実績や現在の状況などを勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積り及び仮定と異なる可能性があります。

なお、当社の連結財務諸表で採用する会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4. 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しています。

 

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