業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 

当連結会計年度におけるわが国の経済は、長く続く新型コロナウイルス感染症流行に対応した緊急事態宣言等の措置とそれに伴う経済活動の停滞がみられました。ワクチン接種が順調に進行したこともあって、10月初旬に緊急事態宣言が解除される状況となるまで感染状況に改善が見られましたが、依然新型変異株の流行を懸念する不確実性を伴いつつのウィズコロナ環境にあります。年度終盤には、ロシア・ウクライナの紛争要因に伴う原油をはじめとした各種資源の需給バランスの崩れが問題視される状況にあり、特に半導体の供給不足や原油高はITを始めとした各産業に影響を及ぼしています。

 

 インターネット業界においては、コロナ禍に伴う対面での経済活動を制限する必要性に基づき、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の動きが企業において加速しました。危機対応や効率化、生産性の向上等の様々な狙いから、販売促進目的のイベントや各種の情報共有、研修、会議、面談のオンライン化、テレワーク等の関連サービスが注目されました。

 

 こうした環境下、当社グループは、動画ソリューション事業において、販売促進や顧客への情報提供等を目的とした各種イベントのインターネットライブ配信や、社内情報共有・教育等のオンデマンド動画配信ニーズに対応し、主力サービスである「ライブ中継サービス」や「J-Stream Equipmedia」を中心に提供を進めました。引き続きオンラインやリアルイベントの開催に関連する各種サービスを提供する企業との協業・連携を進め、共同して市場開拓を図るとともに、顧客企業の多様な利用シーンとニーズに応える、より高品質なサービス提供を行える体制整備を進めました。「J-Stream Equipmedia」については、大規模な動画活用ニーズに合わせた新プランを導入し、メディア系・DX両面における動画利用の増大に対応しました。

 また、政府・民間による情報通信業界の将来に向けた研究開発、課題・対応策検討にかかる取組にも積極的に参画を進めました。

 

 この結果、当連結会計年度の財政状態および経営成績は以下のとおりとなりました。
 

a.財政状態

(資産)

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末より609百万円増加の12,440百万円となりました。

このうち流動資産は10,203百万円となり、前連結会計年度末より449百万円増加しました。これは主に現金及び預金の増加によるものであります。

 また、固定資産は2,236百万円となり、前連結会計年度末より160百万円増加しました。これは主にソフトウェア及び投資有価証券の増加によるものであります。

 

(負債)
 当連結会計年度末における負債合計は2,068百万円となり、前連結会計年度末より602百万円減少しました。これは主に未払金及び未払法人税等、未払消費税等の減少によるものであります。

 

(純資産)
 当連結会計年度末における純資産合計は10,371百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益1,309百万円を計上、剰余金の配当161百万円を計上した結果、前連結会計年度末より1,212百万円増加しました。
 

b.経営成績

 当連結会計年度の業績は、連結売上高12,409百万円(前年同期比4.3%減)、連結営業利益2,054百万円(前年同期比12.3%減)、連結経常利益2,052百万円(前年同期比12.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,309百万円(前年同期比15.5%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末より764百万円増加し、当連結会計年度末には7,290百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と資金の増減要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)
 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益2,051百万円の計上、減価償却費536百万円の計上、売上債権385百万円の減少などの資金の増加要因が、法人税等の支払額945百万円などの資金の減少要因を上回り、1,850百万円の収入(前年同期比10.5%減)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得669百万円、並びに、投資有価証券の取得101百万円などにより、784百万円の支出(前年同期比1.3%増)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払160百万円及びリース債務の支払116百万円などにより、301百万円の支出(前年同期は3,209百万円の収入)となりました。
 

③生産、受注及び販売の実績

a.受注実績

 当連結会計年度の受注状況を示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

動画ソリューション事業

12,800,932

92.8

2,766,203

90.9

 (注)1.金額は販売価格によっております。

 

b.販売実績

 当連結会計年度の販売実績を示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

動画ソリューション事業

12,409,438

95.7

 (注)1.金額は販売価格によっております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1) 財政状態
 当連結会計年度における財政状況の分析につきましては「3 経営者による財政状況、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.財政状態」を参照ください。当期利益の計上により資金は前年に比べ充実しており、積極的な事業展開と投資実施により事業の成長を図ります。

2) 経営成績
 

(売上高)
 販売面においては、戦略市場を医薬業界のEVC(Enterprise Video Communication)領域、金融およびその他の業種のEVC領域、放送業界を中心としたOTT領域、と3区分して営業活動を展開しました。

 

 EVC領域(医薬)においては、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の動きが、コロナ禍以前の着実な成長傾向から2021年3月期になり急伸した状況は継続しており、Web講演会用途のライブ配信売上や、講演会への集客等の売上は、2020年3月期以前に比べかなり高い水準で推移しました。しかしながら、業界全体がほぼ一律にWeb講演会開催を急増させた前期に比べ、顧客製薬企業によっては、取組姿勢に差異が見られるようになっています。取引額の大きな顧客での一時的なイベント縮小の影響もあり、この領域での売上は、ライブ配信売上を中心に、期初想定には及ばない結果となりました。また、映像制作についても、前年度においてコロナ禍への急な対応に伴い発生した制作需要の反動が顕在化して低調となり、想定を下回る推移となりました。

 

 金融その他業種のEVC領域においては、医薬業界と同様に、販売促進のためのウェブセミナーの実施が普及した他、業界を問わず動画による情報共有、教育等に関するニーズが高まったことが「J-Stream Equipmedia」の売上増

につながりました。コロナ禍をうけ「バーチャル株主総会」を実施する上場企業の増加傾向を予期し、信託銀行と協働して販売にあたった結果、ライブ配信売上、関連するWeb制作を中心に売上増加要因となりました。関連需要は6月に集中しますが、サービスの連携先を増やすことを通じ、ライブ現場対応の他、バーチャルオンリー型や出席型といった今後需要増が見込まれる形態に伴うシステム的な需要についても、顧客の多様なニーズに対応できる体制を整備し、繁忙期に向けた備えを継続しています。映像制作については医薬業界と同様の動きがみられ、前年度において各社のコロナ禍への緊急的対応に伴い発生した映像制作需要の反動減が現れる結果となりました。

 

OTT領域においては、キー局を中心とした放送業界におけるコンテンツ配信サイトシステムやサイト運用、配信ネットワーク売上、といった大口の継続的な売上に加え、新規のシステム開発案件も獲得できた結果堅調な推移となりました。五輪・周辺案件関連のライブ・ネットワークやWeb制作需要を獲得できたこともこの領域における売上増に貢献しました。

 

 これらの結果、前連結会計年度に比べ4.3%減の12,409百万円となりました。
 

 なお、会計方針の変更として、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。このため、前年同期比較は基準の異なる算定方法に基づいた数値を用いております。詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)」をご参照下さい。

 

(売上原価、販売費及び一般管理費)
 売上原価については、前年度第3四半期連結会計期間に実施したM&Aの影響を含め、開発・制作体制の充実を図るための従業員増に伴い労務費が増加しましたが、これに伴う外注費の削減と、映像制作系の案件減に伴い内製比率が改善できたこと等により、7,094百万円(前年比6.7%減)となり、売上総利益率は前年比1.4ポイント改善いたしました。

 販売費及び一般管理費については、規模拡大に伴う従業員増による人件費と求人費の増加、社内業務効率化のための各種システム開発に伴うソフトウェア償却費等が増加しました。これらの結果、販売費及び一般管理費は3,260百万円(前年比7.9%増)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)
 当連結会計年度の経常利益は2,052百万円と前連結会計年度に比べ12.7%の減少となりました。税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べ12.1%減の2,051百万円となりました。
 親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ15.5%減の1,309百万円となりました。

 

3) キャッシュ・フローの状況の分析
 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。


4) 資本の財源及び資金の流動性

(資金需要)
 当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、受注から開発納品、顧客からの支払受領までの期間と、外注支払等とのギャップ部分の運転資金に加え、各事業についての一般管理費などがあります。設備資金の需要としては、サーバ等の設備、比較的少額のオフィス等の機器に関する設備資金需要があります。無形固定資産に関連するものでは、サービスソフトウェア関連の開発投資、サービス開発投資に加え、社内のシステムに関する開発投資に関する資金需要があります。この他、企業や事業の買収に関する資金需要があります。

 

(財務政策)
 近年の売上増大に伴う運転資金需要の増加や、ソフトウェア開発等の資金需要は自己資金で賄っております。運転資金につきましてはグループ企業を含め事業拡大に伴い需要が増加しておりますため、借入等短期資金を効率的に確保する手法を検討いたします。M&Aによる人材・開発能力の確保や新規事業開拓等に伴う資金については、2021年3月期におきまして自己株式の処分による調達を実施したため当面不足は発生しないものと判断しております。


5) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 新型コロナウイルス感染症の流行以降、インターネットを通じた動画によるコミュニケーションの利用はビジネス用途、エンターテインメント用途双方において増加傾向にあります。この変化は、数年かかって進展するはずであったものが急速に進み、新しいステージに入ったものと認識しております。今後期待される5G環境の普及は、こうした状況を更に加速すると同時に、新たな利用法、ビジネスの糸口になると考えられます。
 

 当社グループでは、安定した需要と成長が見込める医薬関連企業へのマーケティングを中心としたサービス提供、その他ビジネス全般における動画コミュニケーション(EVC:Enterprise Video Communication)に向けた動画ソリューションの開発・提供、今後拡大が見込まれる放送同時配信関連市場や各種の番組を配信する放送局・メディア企業に向けた配信基盤やソリューションの提供の3つを軸として市場認識をしており、各領域において業容の拡大に努めてまいります。
 

 医薬関連企業に向けては、リアルからデジタルへ置き換えをするのではなく、リアルとデジタルの差をなくす顧客体験の価値を創造し、支援できる企業を目指します。大きな需要のある製薬企業によるWeb講演会ライブ配信領域では、サービス品質の向上、医師と企業のコミュニケーションを改善する機能の開発提供を進めます。更にWeb講演会への集客や製薬企業のオウンドメディアへの送客、実績データ分析やカスタマーエクスペリエンスの改善を通じて、   デジタルマーケティングのより上流工程への関与を深め、製薬企業・医師双方にとっての次世代のMedical DXパートナーとなるべく事業を展開します。

 

 その他ビジネス全般における動画コミュニケーションについては、動画を活用する企業と担当者にとってのベストソリューションパートナーを目指します。企業の販売・営業、マーケティング、業務プロセス、組織、会計、社員教育等すべてのシーンにおいてICT化が進行し、動画の利用される場面が拡大していることに対応し、顧客企業の担当者の活動や、社内の事業プロセスに必要なリソースとソリューションを提供します。特に市場規模の大きいセミナー/イベント用途の動画利用に適したサービスを展開するほか、株主総会、IRや学会等、個別の利用シーンに合わせたメニューの整備を進めます。同時に、リテラシーの高い顧客企業が、動画の内製を進めることを支援するサービスを構築し、より広い顧客層の獲得を図ります。

 

 放送局・メディア企業に向けては、ネット配信を拡大する大きな流れや、コンテンツ・インフラ両面でのグローバルプレイヤーの存在感の増大、コロナ禍によるイベント開催によるマネタイズへの大きな障壁といった大規模かつ急速な環境の変化への対応を実現する、動画ビジネスにおけるトータルテックパートナーを目指します。大規模配信、サイト運用等を総合的に担当するキー局等に向けては、マルチCDN等を利用した配信品質の向上や、サイト運用体制の改善を行い、既存顧客の維持に加えて、新規顧客へのサービス導入を図ります。BS/CS局や、スポーツ等コンテンツを保有するコンテンツ事業者向けには、コンテンツ配信用のCMSや課金機能など、動画配信だけでなく、海外SaaSを利用した動画配信とも組み合わせて利用できる各種の機能・ソリューションを提供することを通じて顧客獲得を図ります。


 2023年3月期については、これら基本戦略の下で経営を進めてまいります。

 

投資、支出面においては、更にスピードを増してニーズに対応するとともに、需要の拡大に応える案件対応能力、開発能力、バックオフィス能力等、企業体制をより充実させていくことが重要な課題であると認識しております。こうした方面への投資を効率的に行うと同時に、M&Aを通じた事業領域の強化、拡大の機会を積極的に追求します。

 

 当社グループにおいては、インターネットを通じた各種コンテンツ配信の市場や、動画を利用したマーケティング活動や情報発信、情報共有は成長基調にあると認識しております。こうした環境下においては、導入顧客の動画利用を促進する知識や情報を提供し、利用実績を積み重ねることで目的達成への効果を実感頂き、取引規模を順次拡大していくことが重要であると判断しております。この方針の達成状況を判断するために重視している指標は、特に継続的売上と利益が期待できる配信系のプラットフォーム売上高や取引先数(サービスによっては同一企業に複数アカウントを発行する場合もあるため、アカウント数)、既存取引先の維持率、また新規の取引先獲得数であります。また、構築した配信基盤を利用して、こうした顧客に適切なサービスを提供して利益をあげられているかの目安として、営業利益率を重要な指標としております。

 

 当社の主力サービスである「J-Stream Equipmedia」については、競合企業対策、顧客への配慮から現時点での契約アカウント数は公開しておりませんが、サービス利用の累計アカウント数を随時公表しております。2022年1月末時点で3,000件を超えており、2021年6月から2022年1月までの間の件数増加は、コロナ禍以前の2年間(2018年3月~2020年5月)のほぼ2倍のペースとなりました。営業利益率については、人員増の影響や管理系システム開発費用の影響が大きく、当連結会計年度において16.6%となり、前期比1.5ポイント低下しております。

 

②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

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