業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度(2021年4月1日から2022年3月31日まで)におけるわが国経済は、持ち直しの動きが続いているものの、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が残りました。また、急激な円安、半導体や食料・資源の供給不安、ウクライナ情勢など先行きの不透明な状況が一層強まりました。

当社グループの主な事業領域でありますIT関連業界におきましては、前期からの継続案件を中心に需要は維持されましたが、今後不景気の影響を受けることが予想されるとともに、人手不足の深刻化や受注獲得競争の激化、半導体の供給減に伴う情報通信機器の製造・流通停滞の懸念が生じております。インバウンド需要につきましては、東京オリンピックの無観客開催・変異株流行に伴う入国制限など訪日外国人がほぼ途絶した状況にあり猛烈な逆風下にあります。

このような市場環境の中、当社グループは前連結会計年度(2021年3月期、以下「前期」)並みの事業規模と収益の確保に向け取り組みました。モビリティ・イノベーション事業において、株式会社ジェイアール東日本企画向けの時刻表・経路探索技術の提供が第1四半期中に終了する予定であったことから、この減少分については他事業分野を含めて回復させる目標を立てて取り組みを続けてまいりました。

しかしながら、長期化するコロナ禍で鉄道の利用者が減少したことに伴い鉄道各社からの開発案件が伸びず、インバウンドの減少によりWi-Fiのニーズも縮小し構築案件が激減いたしました。こうした状況を克服するため、MaaS(Mobility as a Service)関連の開拓、ミリ波を活用した無線システムや賃貸・集合住宅向けWi-Fi提供などに取り組みましたが、立ち上がりが遅れており、当連結会計年度においては大規模な実績を上げるには至りませんでした。

この結果、3事業分野全て売上高が前期を下回り、特にモビリティ・イノベーション事業分野、ワイヤレス・イノベーション事業分野は大きく下回りました。売上高減少に伴い売上総利益も減少し、また、要員の稼働率が低下したこと等により労務費等の販売費および一般管理費が増加し、営業損失を計上するに至りました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ373,283千円減少し、941,447千円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ195,209千円減少し、188,893千円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ178,074千円減少し、752,554千円となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度の経営成績は、売上高1,021,205千円(前年比24.0%減)、営業損失144,632千円(前期は営業利益46,991千円)、経常損失148,478千円(前期は経常利益59,261千円)、親会社株主に帰属する当期純損失155,872千円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益41,458千円)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

また、各事業分野のセグメント利益又は損失(営業利益又は損失、以下同)は、全社費用103,121千円(前期100,341千円)を含まない額であります。

 

・モビリティ・イノベーション事業分野

モビリティ・イノベーション事業分野においては、鉄道等社会インフラ提供事業者向けのシステム開発・サービス提供を行っております。

当事業分野においては、交通系ICカードに関わるサービス(transit manager)や私鉄系のアプリ開発の拡充、更には鉄道事業者等のMaaS(Mobility as a Service)関連投資を積極的に獲得し、前期並みの事業規模を維持する計画を立てておりました。しかしながら、新型コロナウイルスの影響による鉄道利用者の減少を受けるなどにより事業展開は来期以降となる見込みであり、減収減益となりました。

この結果、当事業分野の売上高は106,131千円(前年比52.9%減)、セグメント損失は40,612千円(前期は60,013千円のセグメント利益)となりました。

 

・ワイヤレス・イノベーション事業分野

ワイヤレス・イノベーション事業分野においては、無線LAN等の社会インフラ間のハブとなるシステム開発・サービス提供を行っております。

無線LANの各種システム・サービスについては、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム株式会社(NTTBP)との協力により、通信・鉄道・流通や自治体をはじめとする無線LANスポット提供事業者に対して事業展開を進めております。インバウンド関連の投資需要の激減を受け、従来下半期とりわけ第4四半期に集中していた大型構築案件も減少いたしました。保守運用については予定通り進捗しましたが、ミリ波を活用した無線システムや賃貸住宅向けWi-Fi提供などの新規取り組みは小規模な成果に留まりました。その他、通信キャリアと共同で各種IoTにも取り組みましたが収益への貢献は限定的となり、減収減益となりました。

この結果、当事業分野の売上高は630,589千円(前年比22.4%減)、セグメント利益は19,975千円(前年比77.2%減)となりました。

 

・ソリューション事業分野

ソリューション事業分野においては、上記以外の映像配信システム事業、TVメタデータのASP事業、コンテンツプリント事業、O2O2O事業・MMS事業等を行っております。

その中でもO2O2O事業・MMS事業等の新規事業を当事業分野の主要な柱とすべく重点的に取り組みました。コロナ禍の影響で苦戦いたしましたが、自治体・事業会社向けのIgniteNET・Edge-Coreなどハードウェア販売が伸長したほか、O2O2O事業・MMS事業が徐々に回復し、企業向けシステム開発などの案件も上乗せされ、ほぼ前期並みの売上高を確保いたしました。

この結果、当事業分野の売上高は284,485千円(前年比7.0%減)、セグメント損失は20,874千円(前期は469千円のセグメント損失)となりました。

 

<新型コロナウイルス感染症の影響について>

各事業共通して新型コロナウイルス感染症の影響を受けておりますが、特に、モビリティ・イノベーション事業分野においては、鉄道利用者の減少を受けて、顧客の事業投資動向が不透明な状況となり、ソリューション事業分野においても、主要顧客である流通業界において商業施設の閉鎖・営業の縮小など直撃を受けました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、265,368千円となり、前連結会計年度末と比べ、179,648千円減少いたしました。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、増加した資金は、66,216千円となりました。これは主に税金等調整前当期純損失173,395千円、売上債権の減少296,446千円、投資有価証券評価損27,167千円等による資金増加と、仕入債務の減少46,311千円等の資金の減少によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果減少した資金は、45,865千円となりました。これは主に投資有価証券の取得による支出32,400千円、有形固定資産の取得による支出9,160千円、敷金及び保証金の差入による支出7,500千円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によって減少した資金は、199,999千円となりました。これは主に短期借入金の返済による支出200,000千円によるものであります。

 

(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

 

2021年3月

2022年3月

自己資本比率(%)

61.0

65.0

時価ベースの自己資本比率(%)

156.8

171.7

キャッシュ・フロー対有利子
負債比率(年)

△706.6

インタレスト・カバレッジ・
レシオ(倍)

△13.5

△821.3

 

(注)1 各指標の計算方法は、次のとおりであります。

・自己資本比率

自己資本/総資産

・時価ベースの自己資本比率

株式時価総額/総資産

・キャッシュ・フロー対有利子負債比率

有利子負債/キャッシュ・フロー

・インタレスト・カバレッジ・レシオ

キャッシュ・フロー/利払い

 

2 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

3 キャッシュ・フローは、キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを利用しております。

4 有利子負債は、貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。また、利払いについては、キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

5 キャッシュ・フロー対有利子負債比率については、有利子負債が存在しないため記載しておりません。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年3月31日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

モビリティ・イノベーション事業

47,934

59.2

ワイヤレス・イノベーション事業

334,070

73.9

ソリューション事業

180,723

93.8

合計

562,728

77.6

 

(注) 1 金額は製造原価によっております。

 

b 受注状況

・受注状況

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

モビリティ・イノベーション事業

48,388

35.3

ワイヤレス・イノベーション事業

506,213

75.9

ソリューション事業

280,286

128.3

合計

834,887

81.6

 

 

・受注残高

当連結会計年度の受注残高をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

モビリティ・イノベーション事業

23,673

28.1

ワイヤレス・イノベーション事業

260,380

67.7

ソリューション事業

119,317

41.5

合計

403,370

68.4

 

 

c 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

モビリティ・イノベーション事業

106,131

47.1

ワイヤレス・イノベーション事業

630,589

77.6

ソリューション事業

284,485

93.0

合計

1,021,205

76.0

 

(注)1主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先名

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

構成比
(%)

金額(千円)

構成比
(%)

エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム株式会社

725,455

54.0

538,742

52.8

株式会社ジェイアール東日本企画

154,145

11.5

59,749

5.9

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、当社が採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1  連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a 経営成績等

財政状況

(資産合計)

当連結会計年度末の資産総額は941,447千円となり、前連結会計年度末に比べて373,283千円減少いたしました。流動資産は758,592千円となり、375,476千円減少いたしました。主な原因は、前渡金が58,290千円増加したことと、現金及び預金が179,648千円、売掛金が296,446千円減少したこととなどです。固定資産は182,855千円となり、2,192千円増加いたしました。主な原因は、有形固定資産3,190千円の増加などです。

(負債合計)

当連結会計年度末の負債合計は188,893千円となり、前連結会計年度末に比べて195,209千円減少いたしました。流動負債は161,361千円となり、194,795千円減少いたしました。主な原因は、契約負債81,443千円の増加と買掛金46,311千円、短期借入金200,000千円、その他13,430千円の減少などです。固定負債は27,532千円となり413千円減少いたしました。主な原因は、繰延税金負債567千円の減少などです。

(純資産)

当連結会計年度末の純資産は752,554千円となり、前連結会計年度末に比べて178,074千円減少いたしました。主な原因は、新株予約権の増加12,615千円の増加と利益剰余金190,199千円の減少などです。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末61.0%から65.0%となりました。

 

経営成績

(売上高)

売上高は、1,021,205千円(前年比24.0%減)となりました。

(営業利益)

売上原価は前連結会計年度に比べ171,902千円減少の556,118千円となりました。販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ40,670千円増加の609,719千円となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純損失は、155,872千円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益41,458千円)となりました。

 

キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの主な事業領域でありますIT関連業界におきましては、IT需要は堅調に推移しましたが、人手不足の深刻化や受注獲得競争の激化の懸念が生じております。また、売上高の大きい有力顧客上位2社に占める割合は58.7%と、依存度が非常に高い状況となっております。

有力顧客とは、すでに複数年にわたる安定的な取引をいただいておりますが、ビジネスの継続性が確保されているわけではありません。また、有力顧客において、そのニーズ飽和や景気変動などの原因で、当社への発注が急減する可能性があります。このため、顧客ニーズの深耕を通して、より強固な関係を構築するため、多様なサービスの提案営業や人的交流に取り組んでいます。更に、当社は、独自事業の開発・提供に注力し、2020年東京オリンピック/パラリンピックに向けて本格化する設備投資・インバウンド需要等の取り込みやテレビ放送から実店舗への送客を図るO2O2Oサービス、鉄道広告をはじめとするメディアから実店舗への送客を図るMMSサービスなど、これまでに築き上げた経験・技術・人脈を最大限に活用し、事業転換に取り組むこととしております。

また、人材不足に対しては、新卒採用と育成に重点を置いて確保に努めるとともに、協力会社との緊密な関係を構築することで、機会損失の無いように取り組んでまいります。

 

c 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資金状況は、営業活動によるキャッシュ・フローが前年同期に比べ94,521千円の収入増加、投資活動によるキャッシュ・フローは前年同期に比べ717千円の支出増加、財務活動によるキャッシュ・フローは前年同期に比べ399,999千円の支出増加となりました。その結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末より179,648千円減少し、265,368千円となりました。

 

③ 事業等のリスクに記載した重要事象等についての分析・検討内容及び当該重要事象等を解消し、又は改善するための対応策

該当事項はありません。

 

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