当連結会計年度は、1年を通じて新型コロナウイルスの感染が収束しない中での事業活動となりましたが、現金ベース売上高は201億4千6百万円(前年同期比3億3千万円増、同1.7%増)、前受金調整後の発生ベース売上高は、前受金調整額が3億2千5百万円の戻入(前年同期は6千6百万円の繰入)となったことで、204億7千1百万円(同7億2千2百万円増、同3.7%増)となりました。
売上原価は126億5千7百万円(同5億9千1百万円増、同4.9%増)、販売費及び一般管理費は74億1百万円(同8千万円増、同1.1%増)と、緊急事態宣言下において事業活動や販促活動を一部制限していた前年同期をともに上回りました。これらの結果、営業利益は4億1千3百万円(同8百万円増、同2.2%増)となりました。
営業外収益に、投資有価証券運用益5千1百万円、受取利息1千5百万円等、合計9千2百万円、営業外費用に、支払利息3千5百万円、投資有価証券売却損2千万円等、合計6千3百万円を計上した結果、経常利益は4億4千2百万円(同2億3百万円減、同31.5%減)となりました。
特別損益は、特別利益として移転補償金2億5千4百万円及び資産除去債務戻入益5千6百万円の合計3億1千万円、特別損失として固定資産除売却損2千7百万円及び減損損失1千5百万円の合計4千3百万円を計上しました。これらの結果、当期純利益は4億4千6百万円(同3千9百万円増、同9.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は4億4千4百万円(同3千9百万円増、同9.7%増)となりました。
なお、当社は当連結会計年度の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を適用しており、出版事業における返品の可能性のある取引については予想される返品相当額の純額(前期末において計算された返品相当額の売上高への繰入と当連結会計年度末における返品相当額の売上高からの控除)を売上高に加減し、売上原価相当額について売上原価に加減しております。これにより、従来の方法に比べ売上高は7千2百万円増加、売上原価は3千2百万円増加しております。一方、従来より売上総利益相当額については返品調整引当金を計上しておりましたため、差引売上総利益以下の各段階利益に与える影響はありません。
当連結会計年度における当社グループの各セグメントの業績(現金ベース売上高)及び概況は、次のとおりであります。なお、当社ではセグメント情報に関して「セグメント情報等の開示に関する会計基準」等の適用によりマネジメント・アプローチを採用し、下記の数表における売上高を、当社グループの経営意思決定に即した“現金ベース”(前受金調整前)売上高で表示しております。
現金ベース売上高は、連結損益計算書の売上高とは異なりますので、ご注意ください。詳細につきましては、注記事項「セグメント情報等」をご覧ください。
(注) 各セグメントの売上高にはセグメント間の内部売上高を含めて記載しております。
個人教育事業は、昨年度の資格試験実施団体における試験実施の中止や延期といった措置はその多くが従来通りに戻ったものの、新型コロナウイルスへの感染状況が不安定な中での1年となり、当社講座の主な受講生層である大学生や社会人の社会活動にも影響が生じていたことで、年間を通じた現金ベース売上高は前年を下回りました。講座別では、主力講座の一つである税理士講座は前年の売上を上回りコロナ前の一昨年の水準までほぼ回復し下げ止まりの兆候が見え始めました。また、不動産鑑定士や建築士、賃貸不動産経営管理士も好調に推移し前年及び一昨年の売上を上回ったほか、社会人が主な受講者である中小企業診断士、DX需要の高まりを受けた情報処理講座等も前年の売上を上回りました。一方、同じく主力講座の一つである公務員講座が年間通して低調に推移した他、公認会計士講座において初学者向けコースを中心に第2四半期以降の受講申し込みが奮いませんでした。コスト面では、講師料、教材制作のための外注費、賃借料等の営業費用は、116億9千5百万円(前年同期比1.2%減)となりました。これらの結果、個人教育事業の現金ベース売上高は107億9千8百万円(同4.2%減)、現金ベースの営業損失は8億9千7百万円(前年同期は5億6千5百万円の営業損失)となりました。
企業向けの研修は、コロナ禍でも受講可能であり研修会場までの移動時間やコストを削減できる等のメリットもあるWEB会議システムを利用した研修が多くの企業で定着したことで好調に推移しました。分野別では、企業におけるDX推進の傾向もあり情報・国際分野の需要が大きかった他、金融・不動産分野も好調に推移しました。大学内セミナーは、休校等の措置が取られていた昨年に比べ今年は対面での授業も少しずつ再開されたことで、年間を通じて順調に推移し前年を上回りました。地方の個人が主な顧客となる提携校事業は前年同期比9.9%減、地方専門学校に対するコンテンツ提供は同21.3%増となりました。自治体からの委託訓練は前年並みとなりました。コスト面では、営業に係る人件費等を中心に営業費用全体で33億2千8百万円(同7.3%増)となりました。これらの結果、法人研修事業の現金ベース売上高は43億7千2百万円(同6.3%増)、現金ベースの営業利益は10億4千3百万円(同3.2%増)となりました。
当社グループの出版事業は、当社が展開する「TAC出版」及び子会社(株)早稲田経営出版が展開する「Wセミナー」(以下、「W出版」)の2つのブランドで進めております。
出版事業は、いわゆる巣ごもり需要及びコロナ収束が見通せないためまずは書籍で学習を開始するといったニーズもあり年間を通じて好調に推移いたしました。資格試験対策書籍では、TAC出版の簿記検定、情報処理、FP、マンション管理士、電験等及びW出版の行政書士、弁理士等が好調に推移いたしました。また、2021年より新規参入した高等学校向け教科書の採択に伴う売上が今年度より寄与しております。一方、一般書籍である海外旅行本「ハルカナ」は旅行需要の減少により書店等による売上は著しく減少したほか、今後も状況の大きな改善が見込めないことから当連結会計年度末に保有する在庫に関して適切な評価額への見直しを行っております。コスト面では、売上の増加に伴う外注費や業務委託費等の制作費用の増加や販促費用等が増加したことにより、営業費用全体としては33億9千7百万円(前年同期比18.8%増)となりました。これらの結果、出版事業の売上高は45億1千4百万円(同12.8%増)と10期連続の増収、営業利益は11億1千6百万円(同2.0%減)となりました。なお、「収益認識会計基準」等の適用により、売上高は従来の方法に比べ7千2百万円増加しておりますが、後述の会計方針の変更に記載の通り、営業利益には影響を与えていません。
子会社の(株)TACプロフェッションバンクが手掛ける会計系人材事業は、税理士法人や監査法人、一般企業などにおける会計人材の需要が大きい状況が続いていることや、コロナ禍で求職者登録・確保に苦戦した昨年に比べ今年は順調に求職者登録・確保が進んだことで人材紹介売上及び広告売上は前年を上回りました。一方、市場環境が厳しい派遣売上については前年を下回りました。(株)医療事務スタッフ関西が手掛ける医療系人材事業は、コロナ禍において業務量が増加したことに加え数年前より取り組んでいる取引先の拡大の効果も相俟って前年を上回りました。これらの結果、人材事業の売上高は5億1千2百万円(前年同期比6.8%増)、営業利益は6千5百万円(同85.4%増)となりました。
当社グループの事業分野別の経営成績及び概況は、次のとおりであります。なお、当社は当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」等を適用しており、出版事業における返品の可能性のある取引については予想される返品相当額の純額(前期末において計算された返品相当額の売上高への繰入と当連結会計年度末における返品相当額の売上高からの控除)を売上高に加減しております。当社は当該返品相当額を合理的に見積もる方法として、過去の売上に対する返品実績等に基づいた全体的な見積計算を行う方法を採用しており各分野への按分は行っておりません。そのため、当連結会計年度に係る各分野の売上高を合計した額(下表の「合計」欄に記載の数値)は連結損益計算書における売上高とは一致しませんのでご注意ください。
(注) 主要な相手先別の販売実績等については、当該割合が10%以下のため記載を省略しております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前年同期比5億9千7百万円増加し、57億1千6百万円となりました。なお、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは4億2千7百万円(同2億3百万円減少)となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(注) フリー・キャッシュ・フローは、以下の計算式を使っております。
フリー・キャッシュ・フロー=親会社株主に帰属する当期純利益+減価償却費(のれん償却費含む)-設備投資額-運転資本増加額-配当金の支払額
なお、運転資本は、売掛金+受取手形+棚卸資産-買掛金-支払手形で算出しております。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動におけるキャッシュ・フローは同9億5千8百万円減少し、4億8千4百万円の収入となりました。増加要因の主なものは、助成金収入の増加、売上債権の増減額の増加、その他債務の増減額の増加等であります。減少要因の主なものは、返品調整引当金の増減額の減少、その他債権の増減額の減少、前受金の増減額の減少等であります。
投資活動におけるキャッシュ・フローは同6億8千5百万円減少し、4億1千4百万円の支出となりました。増加要因の主なものは、有価証券の売却及び償還による収入の増加、投資有価証券の取得による支出の減少等であります。減少要因の主なものは、差入保証金の差入による支出の増加、有価証券の取得による支出の増加等であります。
財務活動におけるキャッシュ・フローは同13億7千3百万円増加し、5億9百万円の収入となりました。増加要因の主なものは、長期借入による収入の増加等であります。減少要因の主なものは、短期借入金の純増減額の減少等であります。
当連結会計年度末の財政状態は、純資産が61億7千4百万円(前連結会計年度末比3億5千9百万円増)、総資産が213億8千4百万円(同9億6千6百万円増)となりました。連結上、増加した主なものは、現金及び預金が同5億6千7百万円増、有形固定資産が同3億5千3百万円増、収益認識に関する会計基準の適用に伴い返品資産が同2億4千9百万円増及び返金負債が同6億6千8百万円増、長短借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)が同6億4千9百万円増等であります。また、減少した主なものは、投資有価証券が同3億8千3百万円減、前受金が同3億5千1百万円減、収益認識に関する会計基準の適用に伴い返品調整引当金が同4億5千8百万円減等であります。
なお、当連結会計年度の期首より「収益認識会計基準」等を適用しておりますが、後述の会計方針の変更に記載の通り、期首の利益剰余金に調整すべき累積的影響額はありません。
当社グループの個人教育事業及び法人研修事業に関する通学講座の開講地区は、下記のとおり2022年3月末現在、22拠点で展開しております。また、教室数及び座席数はそれぞれ下表に記載の通りとなっております。
また受講者数については次のとおりであります。
当連結会計年度における受講者数は205,211名(前連結会計年度比1.6%減)、そのうち個人受講者数は118,238名(同1.5%減、1,830名減)、法人受講者数は86,973名(同1.7%減、1,546名減)となりました。個人・法人を合わせた講座別では税理士講座が同4.5%増、中小企業診断士講座が同12.2%増、不動産鑑定士講座が同18.9%増、証券アナリスト講座が同15.4%増、情報処理講座が同15.6%増等と受講生が増加した一方、簿記検定講座が同7.8%減、公認会計士講座が同5.3%減、宅地建物取引士講座が同5.0%減、公務員(国家一般・地方上級)講座が同10.2%減等と受講者数が減少しました。法人受講者は、通信型研修が同1.9%減、大学内セミナーが同3.0%減、提携校が同8.7%減、委託訓練は同14.0%増となりました。
該当事項はありません。
販売実績については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概要)」に記載のとおりであります。
当社の提供する資格試験講座においては、原則として受講者の申込時点で講座受講料を全額前納していただいており、受取った受講料をいったん全額負債としての前受金に計上し、受講期間に応じて受講者にサービスを提供していく都度、月割りで前受金を取崩し売上計上しております。当社の主力である公認会計士・税理士等の難関国家資格講座は、受講期間が1年を超えるものも多く、したがって前受金は1年以上にわたり各月の売上に振り替えられていくことになります。
当社は、資格取得スクールを展開するため多くのビルを賃借しております。貸主からフリーレントを受ける場合、フリーレント期間が長期化し金額的な重要性が増しているため、賃借料の要支払額を賃借期間で按分して会計上の費用として計上しております。
当社は、棚卸資産の評価方法として原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)を採用しております。収益性の低下による簿価切下げ額は、決算日時点におけるテキストや問題集等の教材及び出版物のうち、その後において使用又は販売されることなく最終的に廃棄されることとなる金額の見込額及び出版物の過剰在庫の額であります。最終的に廃棄されることとなる金額の見込額については、恣意性を排除する観点から、対象期間の教材及び出版物の制作費用の額に、過去における教材及び出版物の制作費用並びにそれらの廃棄実績額から算定される平均廃棄率を乗じることで算出しております。また、出版物の過剰在庫の額については、当社が刊行する出版物の性質を考慮し、刊行後1年以上経過した出版物のうち今後の販売見込みを超えて保有している部分を過剰在庫とし簿価の切下げを行っております。
当社では、出版物の返品による廃棄損失に備えるため、返品廃棄損失引当金を計上しております。この返品廃棄損失引当金は、取次店等に対して納品し売上計上した出版物が、その後書店等における売れ残りや汚れ等の理由によって当社に返品され、最終的に当社において廃棄することとなる金額の見込額であります。当該見込額については、恣意性を排除する観点から、対象期間の制作費用の額に、過去における出版物の制作費用及び廃棄実績額から算定される平均廃棄率を乗じることで算出しております。
資産除去債務は本社及び各拠点の建物の不動産賃貸借契約に伴う原状回復義務等であり、当社では、利用実態に応じて賃借物件をグループ化しており、本社グループの賃借期間は23年、各拠点のうち基幹拠点は10年、その他の各拠点については6年等と見積もっております。割引率は、各平均賃借期間に合わせて、それぞれ0.000%~2.280%を使用して資産除去債務の金額を計算しております。
当連結会計年度は、ワクチン接種による一定の効果が見られたものの依然として新型コロナウイルスの感染状況に収束の兆しが見えず、我が国においても多くの制約がある中での経済活動を余儀なくされたことで大きな影響が生じました。当社が営む資格取得関連事業における外部環境は、昨年度の資格試験実施団体における試験実施の中止や延期といった措置はその多くが従来通りに戻ったものの、大学生や社会人の社会生活は通学・通勤といったリアルでの生活とリモート授業・リモートワークといった在宅での生活が社会状況等によって変化するなど、年間を通じて不安定な状況が続きました。特に、大学生活4年間のうちの2年がコロナ禍に直面している大学生は、アルバイトや資格取得など大学の外での社会活動に割く時間や機会が減少する状況も生じており、当社でもオンラインでのガイダンスや受講相談の他、在宅での受講が可能な通信講座(オンライン通信、DVD通信など)の販促活動にも注力しておりますが、現在の不安定な状況は新規に学習あるいは既に開始している学習の継続をされる方にとって大きな障壁となっております。
講座別では、主力講座の一つであるものの近年は減少傾向が続いていた税理士講座は、前年の売上を上回りほぼ一昨年の水準まで回復し下げ止まりの兆候が見え始めました。また、不動産鑑定士や建築士も好調に推移し前年及び一昨年の売上を上回ったほか、社会人が主な受講者である中小企業診断士、DX需要の高まりを受けた情報処理講座、証券アナリスト講座等も前年の売上を上回りました。一方で、大学生が主な受講生となる公認会計士講座や公務員講座においては前年を大きく下回る売上となったことで、個人教育事業における全体的な売上は減少いたしました。
TAC及び早稲田経営出版(W出版)のブランドで行う出版事業は、いわゆる巣ごもり需要が引き続き大きいことや、コロナ収束が見通せないためまず書籍で学習を始めるといったニーズもあり、年間を通じて好調に推移いたしました。資格試験対策書籍では、TAC出版の簿記検定、情報処理、FP、マンション管理士、電験等及びW出版の行政書士、弁理士等が好調に推移いたしました。また、2021年より新規参入した高等学校向け教科書の採択に伴う売上が今年度より寄与しております。一方、一般書籍である海外旅行本「ハルカナ」は旅行需要の減少により書店等による売上は著しく減少したほか、今後も状況の大きな改善が見込めないことから当連結会計年度末に保有する在庫に関して適切な評価額への見直しを行っております。
法人研修事業及び人材事業の業績については、③及び④に記載の通りです。これらの結果、当社グループの当連結会計年度における現金ベース売上高は201億4千6百万円(前連結会計年度比1.7%増)、前受金調整後の発生ベース売上高は204億7千1百万円(同3.7%増)となりました。
コストについては、売上原価で5億9千1百万円増(同4.9%増)、販売費及び一般管理費で8千万円増(同1.1%増)となりました。前連結会計年度は、緊急事態宣言下において事業活動や販促活動を一部制限していましたが、当連結会計年度は、十分な感染対策を講じた上で販促活動などの事業運営を行ったこと及び出版事業の売上増加に伴い売上原価が増加したこと等から、前年同期を営業費用全体として昨年を大きく上回りました。
法人研修事業に係る受講者数、売上高及び営業利益の推移は以下のとおりであります。なお、「セグメント情報等の開示に関する会計基準」等の適用によりマネジメント・アプローチを採用しており、下表では現金ベース(前受金調整前)の売上高及び営業利益で表示しております。
企業向けの研修は、コロナ禍でも受講可能であり研修会場までの移動時間やコストを削減できる等のメリットもあるWEB会議システムを利用した研修が多くの企業で定着したことで好調に推移しました。分野別では、企業におけるDX推進の傾向もあり情報・国際分野の需要が大きかった他、金融・不動産分野も好調に推移しました。大学内セミナーは、休校等の措置が取られていた昨年に比べ今年は対面での授業も少しずつ再開されたことで、年間を通じて順調に推移し前年を上回りました。地方の個人が主な顧客となる提携校事業は同9.9%減、地方専門学校に対するコンテンツ提供は同21.3%増となりました。自治体からの委託訓練は前年並みとなりました。コスト面では、営業に係る人件費等を中心に営業費用全体で33億2千8百万円(同7.3%増)となりました。これらの結果、法人研修事業の現金ベース売上高は43億7千2百万円(同6.3%増)、現金ベースの営業利益は10億4千3百万円(同3.2%増)となりました。
子会社の(株)TACプロフェッションバンクが手掛ける会計系人材事業は、税理士法人や監査法人、一般企業などにおける会計人材の需要が大きい状況が続いていることや、コロナ禍で求職者登録・確保に苦戦した昨年に比べ今年は順調に求職者登録・確保が進んだことで人材紹介売上及び広告売上は前年を上回りました。一方、市場環境が厳しい派遣売上については前年を下回りました。(株)医療事務スタッフ関西が手掛ける医療系人材事業は、コロナ禍において業務量が増加したことに加え数年前より取り組んでいる取引先の拡大の効果も相俟って前年を上回りました。これらの結果、人材事業の売上高は5億1千2百万円(前年同期比6.8%増)、営業利益は6千5百万円(同85.4%増)となりました。
当社の取扱う資格試験の受験者数は、2010年には310万人にまで増加しましたが、翌年以降急激に減少し、2014年には253万人と5年間で50万人以上受験者数が減少しました。これは簿記検定試験が73万人から53万人にまで減少したほか、情報処理関連の受験者数が約15万人減少したこと等が主な要因です。2015年以降の受験者数は比較的安定的に推移しております。一般的には、不景気時に資格試験受験者は増加する傾向がありますが、2011年3月に発生した東日本大震災や消費税増税、公認会計士試験合格者の未就職者問題など、当社の取扱う各資格試験の受験者数は社会情勢や個々の資格ごとの状況などを反映しながらそれぞれ固有の動きをしており、当社の各講座の売上高及び営業利益も各資格試験の受験者の動向に影響を受けてまいります。
2006年の公認会計士試験制度の改正の前後で、新試験制度に向けた申込み控えや新試験2年目から始まった大量合格傾向、さらには監査法人の採用数減少による未就職者問題などで受験者数が大きく減少し、当社主力の公認会計士講座の売上高は大きく影響を受けました。また、2016年度より段階的に行われた日商簿記検定試験の試験出題区分の改定により、当社の簿記検定講座も教材やカリキュラムの見直しを行い、売上及び費用に影響が生じました。その他の資格においても、合格者数がこれまでと大きく増減するなど試験制度面における大きな状況変化が起こると、当社講座への申し込み状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。このように当社の取り扱う資格試験制度の改正内容、新試験の合格率や難易度等の結果によって、当社の経営成績は大きな影響を受けることがあります。
(4) 財政状態に関する分析
① 全体的な財政状態
当連結会計年度末における全体的な財政状態の分析については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概要) (3) 財政状態」をご参照ください。なお、セグメントごとの財政状態については、資産を事業セグメントに配分していないため記載を省略いたします。
② 前受金について
当社の行う資格取得支援事業は、受講申込者に全額受講料をお支払いいただき(現金ベースの売上)、当社はこれをいったん前受金として貸借対照表・負債の部に計上しておきます。その後、教育サービス提供期間に対応して、前受金を月ごとに売上に振り替えます(発生ベースの売上)。一般的に、現金ベースの売上が拡大していく局面では前受金残高が増大していき、当該会計期間以降、前受金戻入が多額になることによって発生ベースの売上を押し上げる効果が強まりますが、現金ベースの売上が減少していく局面では前受金残高が減少していき、当該会計期間以降、前受金戻入が少なくなることによって発生ベースの売上を押し上げる効果が弱まる傾向があります。さらに、現金ベースの売上が減少局面から増加局面に変わる期においては、発生ベースの売上に対する減少効果が増幅される場合があり、発生ベースで計算される当社の業績に影響を与えることになります。前受金及びその他の財政状態の指標の推移は以下のとおりであります。
(注) 自己資本は、純資産の額から非支配株主持分の額を控除して算出しております。
当連結会計年度においては、新型コロナウイルスへの感染状況が不安定な中での1年となり、当社講座の主な受講生層である大学生や社会人の社会活動にも影響が生じていたことで、年間を通じた現金ベースの売上高は前年を下回り、前受金比率は前連結会計年度比3.0ポイント減少いたしました。自己資本比率は、前受金に見合う資金が徐々に取り崩されて使用され事業活動に必要な自己資本は相対的に低い水準で済むため、相対的に過小である傾向があります。当連結会計年度は4億4千4百万円の親会社株主に帰属する当期純利益を計上し、自己資本比率は0.4ポイント上昇いたしました。
当社グループの事業所は原則として賃借によっております。したがって、当社は、教育サービスを提供する教室確保のための直営校各拠点を賃借するために、資産の部・固定資産の「投資その他の資産」の区分に差入保証金を多額に計上しております。
賃借契約は原則として2年であり、受講者数の増加に伴い教室スペースの確保のため各拠点の増床や新規拠点の開設を行うと、差入保証金は増加することになります。当連結会計年度においては、一部拠点の床面積の削減等を行いましたが、前受金残高の減少もあり保証金比率は0.4ポイント上昇しました。
当社グループの事業所は賃借ビルが多いため、「資産除去債務に関する会計基準」に基づいて、各賃借ビルの原状回復義務等を資産除去債務として負債の部に多額に計上しております。また、同時に資産の部に計上された資産除去債務相当額からは、その関連する有形固定資産の減価償却方法に準じて減価償却費が発生し、毎期計上されます。これにより、将来、原状回復義務を履行した場合の費用又は損失が一時に計上されずに、使用する各期間に費用配分されることになりますが、結果として、各期の減価償却費が押し上げられ固定費負担が重くなっております。なお、当連結会計年度において資産除去債務の見積りの変更を行い、4千万円を変更前の資産除去債務残高から減算しております。
前受金が増加していくことは、受講者からの預り資金が増加することを意味します。そのうちの一部は、教室スペース確保のための差入保証金に充当されております。残額は、順次サービスを提供していくため、講師料、賃借料等のほか、教材の印刷費・DVDのダビング費・広告費等に消費されます。そうした消費のタイミングまでは、前受金の一部の資金は現金及び預金又は有価証券等の金融商品で保有されます。当社の有価証券投資の方針は運用規程に定められており、元本確保型の安全性を重視した金融商品であって、かつ、利回りを追求した金融商品を中心に運用しております。過去3期間の運用有価証券の推移は、以下のとおりであります。
「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」において説明しておりますとおり、売上高の増加が喫緊の課題であります。そのため、①生活様式の多様化への対応、②個人教育事業の早期回復、③新たな事業領域への挑戦を中心とした施策に取り組んでまいります。
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概要) (2) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
当社グループの資本の源泉及び資金の流動性については、事業運営上必要となる資金は、手許資金及び金融機関からの借入により調達することを基本としております。
2022年3月末時点における短期及び長期借入金の合計50億9千5百万円のうち19億1千2百万円は本社ビル取得に係る借入金であり、その他は事業運営上必要な設備等の導入や入れ替え、経費の支払いなどの経常的な支払等に必要となる資金に係る借入金であります。
有価証券報告書提出日現在において支出が予定されている重要な資本的支出はありません。
なお、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末において入手可能な情報に基づき当社グループが合理的であると判断したものであります。したがって、将来や想定に関する事項には不確実性を内在しており、将来における実際の業績は様々な要因により大きく異なる結果となる可能性があります。
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