(1) 会社の経営の基本方針
我が国は製造業を中心として飛躍的な経済発展を遂げ、現代においては、高度な知識・情報技術を組み合わせてイノベーションを起こし分野ごとに最適化した商品・サービスを創出し複雑化・多様化したニーズに応えていくことで更なる経済発展を遂げようとしています。そのような経済発展の過程において、どの時代においても必ず社会から必要とされるのが“プロフェッション”と呼ばれる各分野において専門的な知識を有する方々です。必要とされる専門的な知識の内容はもちろん時代の変化に応じて変わってきますが、専門的な知識を有する“プロフェッション”の存在は過去も現在もそして将来においても必要不可欠なものです。TACは1980年の設立以来、その時々において世の中に必要とされる多くの“プロフェッション”を養成し世に輩出してまいりました。会計・税務分野からスタートし、今では法律分野、不動産分野、金融分野、公務員・労務分野、情報分野、医療分野、理系分野にまでその幅を拡げております。これからも時代の変化を見極めながら今の時代に必要とされる多様な“プロフェッション”を養成していくことで、社会の発展に貢献してまいりたいと考えています。
(2) 目標とする経営指標
当社グループの経営指標は、安定的な売上成長と現金ベース売上高営業利益率の極大化を目標としております。当連結会計年度は新型コロナ禍での1年となり、当社が展開する各事業にも大きな影響が生じました。具体的には、大学生や社会人などの個人向けの事業である個人教育事業は、日常生活に相当程度の制約がある中及び収束時期が見通せない中で学習への意欲やモチベーションを保つことは容易ではなく、新規に学習を開始することを様子見されたり学習継続の断念といった状況も生じるなどの負の影響が生じた一方、大学におけるリモート授業や企業におけるリモートワークが一定程度定着したことで、自宅にいる時間を有効活用し独学で資格取得を目指し勉強する方が増え、当社の出版事業は売上が大きく増加いたしました。コスト面では、数年前より取り組んでいる拠点の床面積の減床効果により賃借料は減少しましたが、当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止の措置を講じた上で教室でのライブ講義を実施したことや、教材・出版物に必要となる紙代、制作費、運送費など多くの費目において値上がり傾向にあり全体としての営業費用は大きく増加しました。その結果、現金ベース営業利益率は悪化し、前年同期比1.9ポイント減少いたしました。今後も引き続き、現金ベース売上高営業利益率の向上に努めてまいります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、「プロフェッションの養成」を経営理念として社会人、大学生を対象に資格教育、実務教育を核とした人材育成事業を展開しております。また、当社グループで学ぶ方々は、自己投資の結果として希望の業種・職種への就職・転職を望む方も少なくなく、当社グループの提供する人材派遣・紹介サービスも個人及び企業へ浸透しつつあります。したがって、当社グループの中長期的な経営戦略は、教育ビジネスと人材ビジネスを強固に結びつけながら、双方のビジネスを拡大させていくことであります。これにより、毎期安定的な売上成長と売上高営業利益率の向上を実現し、株主価値を高める努力を継続してまいります。
(4) 経営環境及び対処すべき課題
(経営環境)
当社が行っている資格関連教育サービスは、日本経済の健全な発展を支えていくために必要不可欠なプロフェッショナル人材の育成であり毎年一定の需要が見込める比較的安定したものであります。また、教材の開発や合格実績の蓄積などには相当の年数が必要となるほか講師の手配や受講生を収容するための教室の確保などには財務的な基盤も必要となることから、競合他社が比較的生まれにくい業界であると考えております。一方、近年はIT環境が飛躍的に進歩したことで様々な手段によって教育を提供する環境が整備され、それに伴い受講生・消費者側のニーズも多様化してきております。そのような経営環境の中において当社グループは、これまでに蓄積してきた合格するための教育ノウハウや合格実績に裏打ちされたTACブランドを生かし、個人教育事業、法人研修事業、出版事業及び人材事業の各事業においてビジネスを拡大させていくとともに、各事業ごとのシナジーを最大限発揮できるよう事業間の連携を図ってまいります。また、当社の主要な顧客層は大学生から社会人までと幅広いことにくわえ、資格や教育・研修の内容等によって合格や学習目的を達成するために必要となる提供すべきサービスも異なるため、常に最も適切なサービス提供が行えるよう努めてまいります。
(対処すべき課題)
① 生活様式の多様化への対応
新型コロナウイルスの感染急拡大とその後のウイルスとの共存を前提とした現在の社会生活において、個々人の置かれた状況はより一層多様化していると認識しております。当社が今後も持続的な事業活動と成長のための活動を行っていくためには、そのような多様化した状況を機敏に察知し事業運営に反映していくことが必要不可欠であると考えております。
② 個人教育事業の早期回復
2020年4月頃からの新型コロナウイルスの感染拡大及びその後の新型コロナウイルス感染症の影響下での生活が続いている状況において、当社は受講生の学習環境を維持し合格に向けて多方面からのサポートを行うとともに、校舎の床面積の適正化に取り組むなど事業への影響を出来る限り抑えるよう努めておりますが、未だ収束の兆しは見えず当社の個人教育事業にも影響が生じております。そのような中で、プロフェッションの養成を通じた社会貢献という責務を果たし、かつ、様々なステークホルダーの皆さまへの適切な水準の再分配と将来の成長に向けた投資を可能とする利益を獲得するため、個人教育事業を早期に回復させることが喫緊の課題であると考えております。
③ 新たな事業領域への挑戦
当社の事業領域や商品の顧客層は各特定の専門分野に絞られているため、既存事業を展開していくだけでは売上を右肩上がりで成長させていくことが難しい状況にあります。そのため、既存事業の枠組みの外で新たな売上の芽を育てることや業務提携やM&Aを推進していくこと等により、中長期的な今後の当社の成長機会の創出に取り組んでいく必要があると考えております。
以上のような施策を継続して実施することにより、早期に結果を出していくことが当社に求められている課題であると認識しております。
(財務上の課題)
当社の借入契約の一部には財務制限条項が付されています。そのため、当該条項に抵触することのないよう管理してまいります。
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