業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

(1) 財政状態及び経営成績の状況

<事業全体の概況>

2021年度の連結業績は、コロナ禍からの経済回復により、国内および海外3地域の全てで業績回復が見られ、連結のオーガニック成長率(為替やM&Aの影響を除いた内部成長率)は13.1%、売上総利益は前期比16.9%増となりました。また、増収に加え、国内外での構造改革及びコストコントロールの効果により、調整後営業利益は前期比44.4%増の1,790億28百万円、オペレーティング・マージン(調整後営業利益÷売上総利益)は同350bps増の18.3%、親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は同56.2%増の1,092億3百万円となりました。

一方、制度上の利益項目では、業績回復に加え、「電通本社ビル」を含む固定資産売却益の計上もあり、営業利益は2,418億41百万円(前期は営業損失1,406億25百万円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,083億89百万円(前期は当期損失1,595億96百万円)となりました。

なお、調整後営業利益は、営業利益から、買収行為に関連する損益および一時的要因を排除した、恒常的な事業の業績を測る利益指標であります。

買収行為に関連する損益:買収に伴う無形資産の償却費、M&Aに伴う費用、被買収会社に帰属する株式報酬費用、完全子会社化に伴い発行した株式報酬費用

一時的要因の例示:構造改革費用、減損、固定資産の売却損益など
 親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、当期利益から、営業利益に係る調整項目、条件付対価に係る公正価値変動額(アーンアウト債務再評価損益)・株式買取債務に係る再測定額(買収関連プットオプション再評価損益)、これらに係る税金相当・非支配持分損益相当などを排除した、親会社の所有者に帰属する恒常的な損益を測る指標であります。

2024年度を最終年度とする中期経営計画をアップデートし、新たな経営方針として「B2B2S (Business to Business to Society) 」を提唱したほか、成長性、収益性、資本配分、ESGの各分野でKPIの目標を具体化・上方修正しました。

株主還元については、中期経営計画で掲げた方針に基づき、2021年度は配当性向が基本的1株当たり調整後当期利益の30.0%となる1株当たり配当金額117.50円としました。また、自己株式取得については、2021年度に約300億円を実施しましたが、2022年2月14日の取締役会において、新たに2022年度に400億円を上限とする自己株式取得を実施することを決定しました。

 

     当期の連結業績 (単位:百万円)

科目

2021年度

2020年度

前期比・差

収益

1,085,592

939,243

15.6%

売上総利益

976,577

835,042

16.9%

調整後営業利益

179,028

123,979

44.4%

オペレーティング・マージン

18.3%

14.8%

350bps

親会社の所有者に帰属する調整後当期利益

109,203

69,890

56.2%

営業利益(△は損失)

241,841

△140,625

親会社の所有者に帰属する当期利益(△は損失)

108,389

△159,596

 

 

 

<当期の連結業績のポイント>

売上総利益は前期比16.9%増(為替影響排除ベース同13.5%増)の9,765億77百万円となりました。売上総利益増加の主要因は、オーガニック成長(1,127億56百万円増、成長率<連結13.1%、国内事業17.9%、海外事業9.7%>)、為替影響(257億21百万円増)、買収効果(30億59百万円増)です。

国内事業においては、コロナ禍からの回復基調の中、マス広告と引き続き堅調なデジタルソリューション領域を中心に成長し、前期比19.2%増の4,159億15百万円となりました。

海外事業においても、2021年度では3地域全てでプラスのオーガニック成長となり、通期の売上総利益は同15.4%増(為替影響排除ベース同9.6%増)の5,609億78百万円となりました。

売上総利益に占めるCT&T(カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー)領域構成比は、連結で29.1%(前期比160bp増、為替影響排除ベース同10bp増)、国内事業24.4%(同0bp減)、海外事業32.6%(同290bp増、為替影響排除ベース同30bp増)となっています。

 

調整後営業利益は、前期比44.4%増(為替影響排除ベース同41.3%増)の1,790億28百万円となりました。国内事業の調整後営業利益は、増収に加えてコストコントロールの効果により、同52.0%増の953億61百万円となり、オペレーティング・マージンは22.9%(前期は18.0%)となりました。海外事業の調整後営業利益は、増収に加えて、2020年12月から実施している構造改革及びコストコントロールの成果により、同33.8%増、為替影響排除ベースでは同28.4%増の889億75百万円、オペレーティング・マージンは15.9%(前期は13.7%)となりました。また、これを受けて親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、同56.2%増の1,092億3百万円となりました。

減損損失の縮小、固定資産売却益の計上などにより、営業利益は2,418億41百万円(前期は営業損失1,406億25百万円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,083億89百万円(前期は当期損失1,595億96百万円)と大きく改善しました。

 

<当期の構造改革費用について>

2021年度の連結業績に関して、2021年2月時点では、構造改革費用として約560億円の計上を見込んでおりましたが、実績は195億円となりました。

海外事業については、2020年12月の事業構造改革の実施決定時には、2021年度の構造改革費用の計上額を約230百万英ポンド(約315億円<当時の換算レート:1英ポンド=136.8円>)と見込んでいましたが、実績は44百万英ポンド(67億円<2021年1-12月平均レート換算:1英ポンド=151.1円>)となりました。この主な要因は、事業や会社の統合、またそれに伴う人員減に係る費用は計上されたものの、2020年度に計上した不利な不動産リース契約に関する引当金の戻入れ(134億円)により、一部相殺されたことによるものです。

国内事業については、2021年2月の構造改革の実施決定時には、2021年度の構造改革費用の計上額を約230億円と見込んでいましたが、実績は127億円となりました。この主な要因は、コーポレート機能特化の新会社(株式会社電通コーポレートワン)の発足初日からの安定稼動を優先した結果、2021年度に予定していた一部人員の新会社への転籍を一時的に出向へ切り替えたことで、転籍時期およびそれに伴う関連費用の計上を2022年度以降へ持ち越したことによるものです。

 

 

 

<当期の連結業績:地域別>

1.国内事業

売上総利益は、広告市場の回復、好調を維持したデジタルソリューション、また、事業変革によって強化された統合ソリューションの提供が拡大したことで、前期比19.2%増となりました。会社別の売上総利益では、デジタル領域を牽引する㈱電通デジタル(前期比41.0%増)や㈱CARTA HOLDINGS(同17.5%増)などの大幅な成長に加え、構成比の大きい㈱電通の売上総利益も前期比18.3%増となり、国内事業の増収に貢献しました。調整後営業利益およびオペレーティング・マージンは、増収とコストコントロールにより、それぞれ52.0%増、490bps増と大幅に増加しました。

2021年度は、中期経営計画に基づく事業変革を推進しました。その中で、顧客企業と社会の持続的成長にコミットする「Integrated Growth Partner(インテグレーテッド・グロース・パートナー(IGP))」への進化を加速させるべく、複数の国内事業子会社の再編や戦略的な資本関係の変更を発表・実施しました。同期間に発表した内容のうち、2022年1月には、デジタルマーケティング分野の強化を目的として㈱セプテーニ・ホールディングスを当社の連結子会社化したほか、コーポレート機能特化の新会社「㈱電通コーポレートワン」が稼動し、電通ジャパンネットワーク社長執行役員CEO榑谷 典洋をトップとする新執行体制も始動しました。なお、「電通本社ビル」を電通ジャパンネットワーク全体の事業の中核拠点とすべく、各社の同ビルへの本社移転を進めており、既に本社を置く、または移転を決定した会社は20社を超え、事業の創発・高度化に向けて着々と準備が進んでいます。

加えて、自社と社会のサステナビリティを推進する複数の取り組みを一層強化しました。直近では、「サステナビリティ・コミュニケーションガイド」の発行、第5回となる「カーボンニュートラルに関する生活者調査」の発表を行い、さらに、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の推進を強化するため、電通ジャパンネットワーク CDO(Chief Diversity Officer)を新設しました。

 

国内事業 会社別売上総利益の状況(IFRSベース)(単位:百万円)

IFRSベース

2021年度
(1-12月)

前期比

オーガニック成長率

㈱電通

221,422

18.3%

18.3%

㈱電通国際情報サービス(ISID)

40,016

6.8%

6.8%

㈱電通デジタル

35,390

41.0%

31.2%

㈱CARTA HOLDINGS

23,827

17.5%

17.5%

㈱電通テック

19,081

31.7%

31.7%

㈱電通ライブ

11,388

15.0%

15.0%

その他・内部取引等

64,788

23.7%

国内事業 合計

415,915

19.2%

17.9%

 

 

2.海外事業

全3地域が好調で、売上総利益は前期比15.4%増(為替影響排除ベース同9.6%増)、調整後営業利益は、売上総利益の増加に加え、2020年12月から実施している構造改革やコストコントロールの成果により前期比33.8%増(為替影響排除ベース同28.4%増)となりました。

 

EMEA:通期の売上総利益は前期比18.3%増(為替影響排除ベース同10.8%増)、オーガニック成長率は11.1%となりました。

地域別のオーガニック成長率では、デンマーク、フランス、ポーランド、スペイン、スイスで2桁成長、英国でも8.2%の成長となりました。サービスライン別では、CXMが12.1%、メディアが10.5%、クリエイティブが6.2%のオーガニック成長となりました。

 

Americas:通期の売上総利益は前期比14.5%増(為替影響排除ベース12.4%増)、オーガニック成長率は10.6%となりました。

オーガニック成長率について、地域別では、ブラジルでは△8.9%だったものの、米国で9.9%、カナダで22.9%のプラスであったことから、Americas全体では10.6%となりました。サービスライン別では、クリエイティブは下期を通して好調であり、メディアは広告市場の回復により18%の成長となりました。またCXMは、データ、分析、テクノロジーを活用したマーケティングへの需要が高く、コマースと経験価値マーケティング分野での好調が続きました。

 

APAC:通期の売上総利益は前期比11.3%増(為替影響排除ベース同4.7%増)、オーガニック成長率は4.7%となりました。

オーガニック成長率について、地域別に見ると、24.0%成長のシンガポール、20.8%成長のインドネシア、12.1%成長のオーストラリアなどが牽引したものの、インド、中国、タイでのマイナスにより一部相殺されました。中国は第3四半期以降にクリエイティブサービスラインがマイナスとなり、全体でもマイナス2.0%となりました。

 

  海外事業 地域別のオーガニック成長率(△はマイナス成長)

 

2021年度

(1-12月)

2021年度

第4四半期(10-12月)

2021年度

第3四半期(7-9月)

2021年度

第2四半期(4-6月)

2021年度

第1四半期(1-3月)

EMEA

11.1%

12.6%

12.9%

22.0%

△2.9%

Americas

10.6%

15.4%

16.3%

15.5%

△4.1%

APAC

4.7%

3.8%

7.6%

10.2%

△3.1%

海外事業 合計

9.7%

12.1%

13.4%

17.0%

△3.5%

 

 

          海外事業 サービスライン別の売上総利益・オーガニック成長率

2021年度(1-12月)

 

売上総利益(構成比)

(単位:百万円)

オーガニック成長率

メディア

280,077(49.9%)

12.6%

クリエイティブ

98,229(17.5%)

3.7%

CXM※

182,664(32.6%)

8.9%

 

    ※顧客体験マネジメント(Customer Experience Management)

 

<2024年度中期経営計画のアップデートについて>

2021年2月に発表した中期経営計画につきましては、初年度であった2021年度の業績等の状況に鑑み、2022年2月に目標数値の上方修正等を行いました。詳細は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題」に記載の通りです。

 

 

<当期における中期経営計画の進捗について>

2021年度における中期経営計画の進捗は以下のとおりとなりました。

 

前事業年度の有価証券報告書記載の当社グループが設定した、2022年2月の中期経営計画の上方修正等を反映する前の経営目標等は下記のとおりです。

 

経営目標

・オーガニック成長率       

  2021~24年度の平均成長率で3~4%

・オペレーティング・マージン

  2021年度から2024年度にかけて漸進的に改善

・売上総利益に占めるカスタマートランスフォーメーション&テクノロジー構成比

  当中期経営計画期間を通じて向上させ、将来的には50%へ

・ESG経営の推進

  2030年までにCO2排出量を46%削減、2030年までに再生可能エネルギー使用率100%を達成など、

  複数の目標とアクションプランを設定

  従業員エンゲージメントスコアの向上

  従業員のダイバーシティ&インクルージョンを推進

 

経営方針

・新たな配当方針:配当性向(基本的1株当たり調整後当期利益ベース)を今後数年で35%へと漸進的に引き上げ

・中期的なNet Debt/調整後EBITDA倍率を1.5倍水準(IFRS第16号の適用影響を控除したベース)(但し、短期的にはより低い水準)で管理

 

以上の経営目標等に対し、2021年度の進捗は以下のとおりでした。

売上総利益のオーガニック成長率は、連結13.1%(国内事業17.9%、海外事業9.7%)となり、目標値の平均成長率3~4%を大幅に上回りました。

オペレーティング・マージンは、前期の14.8%から18.3%に改善しました。

売上総利益に占めるカスタマートランスフォーメーション&テクノロジー構成比は、前期の27.5%から29.1%に改善しました。

ESG経営の推進に関しては、2022年2月の中期経営計画のアップデートにおいて、2030年度までの女性管理職比率の目標を新たに設定しております。

配当性向(基本的1株当たり調整後当期利益ベース)は、前期の28.5%から30.0%に引き上げました。また、2021年度末のNet Debt/調整後EBITDA倍率はマイナスとなっており、1.5倍水準を下回っております。

 

 

<財政状態の状況について>

当期末は、前期末と比べ、電通本社ビルを含む汐留A街区不動産の譲渡により有形固定資産が減少したものの、主に現金及び現金同等物および営業債権及びその他の債権が増加したことから、資産合計は3,561億72百万円増加し、3兆7,205億36百万円となりました。また、主に営業債務及びその他の債務が増加したことから、負債合計は2,510億3百万円増加し、2兆8,110億62百万円となりました。また、主に親会社の所有者に帰属する当期利益の計上などにより、資本合計は1,051億69百万円増加し、9,094億74百万円となりました。

 

当社は、当連結会計年度において、電通本社ビルを含む汐留A街区不動産を譲渡し、電通本社ビルの賃借を開始しました。詳細は、「第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等」および「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 16.リース取引 (5)セール・アンド・リースバック取引」をご参照ください。

 

また、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、健全かつ柔軟なバランスシートを維持することは重要な課題であり、当社グループは、今後の経営方針として、Net debt/調整後EBITDA(期末)の上限を1.5倍とし、中期的な目線を1.0~1.5倍 (IFRS16控除ベース)としていく方針であります。

 

(2) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末 の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、7,235億41百万円(前連結会計年度末5,306億92百万円)となりました。主に投資活動による収入などにより、前連結会計年度末に比べ1,928億49百万円の増加となりました。

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動の結果により得た資金は、前連結会計年度に比べ514億1百万円増加し、1,397億15百万円となりました。主に、税引前利益が増加したことによるものです。また、それに加え、当連結会計年度の運転資本の増減額は691億55百万円となり、前連結会計年度の増減額△225億40百万円と比べ、運転資本が減少したことにより、営業活動の結果により得た資金が増加しました。

 

投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動の結果により得た資金は、前連結会計年度に比べ1,252億13百万円増加し、2,622億26百万円となりました。主に、セール・アンド・リースバックによる収入によるものです。セール・アンド・リースバックによる収入は、当連結会計年度に、電通本社ビルを含む汐留A街区不動産を譲渡し、電通本社ビルの賃借を開始したことによるものです。当社グループは、2020年8月より「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」に着手しており、資本効率の向上、財務体質の強化、および成長投資資金の確保を目的に、当該取引を実施いたしました。詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記16.リース取引 (5)セール・アンド・リースバック取引」をご参照ください。

 

財務活動によるキャッシュ・フロー

 財務活動の結果支出した資金は、前連結会計年度に比べ1,355億67百万円増加し、2,321億89百万円となりました。主に社債の発行による収入が減少したことおよび非支配株主持分からの子会社持分取得による支出が増加したことなどによるものです。なお、2021年2月15日開催の取締役会において、300億円を上限とする自己株式取得の実施を決議したこと等に伴い、当連結会計年度に300億10百万円の自己株式の取得による支出がありました。

 また、2022年2月14日開催の取締役会において、400億円を上限とした自己株式取得の実施を決議しております。(取得する期間:2022年2月15日~2022年12月23日)

 

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

販売実績

当連結会計年度におけるセグメントの販売実績(売上高)は次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

国内事業

1,880,752

109.1

海外事業

3,375,739

121.7

5,256,492

116.9

 

 

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。

2 売上高は当社グループが顧客に対して行った請求額および顧客に対する請求可能額の総額(割引および消費税等の関連する税金を除く)であり、IFRSに準拠した開示ではありません。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては「(経営成績等の状況の概要) (1) 財政状態及び経営成績の状況」に記載したとおりであります。

 

 (2) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

① 資本政策・財務戦略の基本的な考え方

当社グループは、2021年2月に発表した中期経営計画期間において、経営の安定性、財務の健全性に留意しつつ、企業活動のデジタル化の進展などがもたらす社会の変化と事業機会を積極的にとらえ、広く社会課題の解決に資するとともに、さらなる企業価値、株主価値の向上を目指してまいります。

財務の健全性については、純有利子負債の調整後EBITDAに対する倍率の上限(期末)を1.5倍とし、中期的な目線を1.0~1.5倍(いずれもIFRS第16号の適用影響を控除したベース)とすることで、高い信用格付を維持することを目指します。また、内部資金、金融機関からの借入、社債、コマーシャル・ペーパー、債権流動化、またはコミットメントライン等により、十分な手元流動性を確保することとしております。さらに、2021年度においては、新型コロナウイルス感染症による影響に備えた流動性確保等の目的で、引き続き金融機関との間で一時的に追加の銀行融資枠を設定しております。これらにより、急激な事業環境の変化等に対するリスク耐性が高い状態を維持できるよう努めてまいります。

M&A・設備投資等の成長投資に関しては、経営の安定性・財務の健全性に留意しながら、グループ全社にわたる成長に向けた投資を推進してまいります。

株主還元に関しては、これらの活動を通して得られる利益の適切な配分と本源的な企業価値の向上を通じて株主の皆様への利益還元に努めることとし、配当方針としては、基本的1株当たり調整後当期利益に対する配当性向が2024年度までに35%となるよう漸進的に高めてまいります。

 

② 資金需要の主な内容

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、広告作業実施のための媒体料金および制作費の支払等ならびに人件費をはじめとする販売費及び一般管理費であります。

また、2021年2月に発表した中期経営計画期間においては、新しいテクノロジーやソリューション開発、イノベーションへの投資や高成長領域であるカスタマートランスフォーメーション&テクノロジーへのM&A・投資に係る資金需要が見込まれます。

 

③ キャッシュフローの状況

当連結会計年度のキャッシュフローの状況につきましては「(経営成績等の状況の概要) (2) キャッシュ・フロー」に記載したとおりであります。

 

④ 資金調達及び流動性の状況 

当社グループは、内部資金、金融機関からの借入、社債、コマーシャル・ペーパー、または債権流動化等の多様な手段の中から、その時々の市場環境や長期資金の年度別償還額も考慮した上で、機動的に有利な手段を選択し、資金調達を行っております。なお、長期資金については、原則として当社で一元的に資金調達しております。

また、緊急時の流動性を確保するため、当社はシンジケーション方式による極度額500億円のコミットメントラインを、DI社は、5億ポンド(約776億円)のコミットメントラインを設定しております。また、新型コロナウイルス感染症による影響に備えた流動性確保等の目的で、引き続き金融機関との間で一時的に追加の銀行融資枠を設定しております。

さらに、グループ内の資金調達の一元化・資金効率の向上・流動性の確保の観点から、資金余剰状態にある子会社から当社が資金を借り入れ、資金需要が発生している子会社に貸出を行うキャッシュ・マネジメント・システムを導入しております。

当社グループは、安定的な外部資金調達能力の維持向上を重要な経営課題と認識しており、格付機関である株式会社格付投資情報センター(R&I)から長期格付AA-、短期格付a-1+を取得しております。また、主要な内外金融機関との間で長期間に亘って築き上げてきた幅広く良好な関係に基づき、当社グループの事業の維持拡大、必要な運転資金の確保、成長投資資金の調達に関しては問題なく実施可能であると認識しています。

 

(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の連結財務諸表は、国際会計基準審議会により公表されたIFRSに基づき作成されております。

また、当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値および偶発債務等オフバランス取引の開示、報告期間における財政状態および経営成績について影響を与える見積りを行わなければなりません。経営陣は、例えば、投資、企業結合、退職金、法人税等、偶発事象や訴訟等に関する見通しや判断に対して、継続して評価を行っております。経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行い、その結果は、資産・負債の簿価、収益・費用の報告数字についての根拠となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。

当社の連結財務諸表で認識する金額に重要な影響を与える見積りおよび仮定は、以下のとおりであります。

 

① 有形固定資産、のれん、無形資産および投資不動産の減損

当社グループは決算日において、棚卸資産および繰延税金資産を除く非金融資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを判定し、減損の兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額に基づき減損テストを実施しております。のれんは償却を行わず、減損の兆候の有無にかかわらず年に一度、または減損の兆候がある場合はその都度、減損テストを実施しております。資産の回収可能価額は資産または資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方の金額としており、資産または資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、当該資産は回収可能価額まで減額し、減損損失を認識しております。使用価値の算定に際しては、資産の耐用年数や将来キャッシュ・フロー、成長率、割引率等について一定の仮定を用いております。

 

これらの仮定は過去の実績や当社経営陣により承認された事業計画等に基づく最善の見積りと判断により決定しておりますが、事業戦略の変更や市場環境の変化等により影響を受ける可能性があり、仮定の変更が必要となった場合、認識される減損損失の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。

海外事業におけるのれんの減損テストにおける主要な仮定や感応度分析等の詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 15.のれんおよび無形資産 (3)のれんの減損テスト」をご参照ください。

 

② 金融商品(条件付対価および株式買取債務を含む)の評価

当社グループは有価証券やデリバティブ等の金融資産を保有しており、当該金融資産の評価に当たり一定の仮定を用いております。公正価値は、市場価格の他、マーケット・アプローチやインカムアプローチ等の算出手順に基づき決定しております。具体的には、株式およびその他の金融資産のうち活発な市場が存在する銘柄の公正価値は市場価格に基づいて算定し、活発な市場が存在しない銘柄の公正価値は観察可能な市場データを用いて算定した金額、観察不能なインプットを用いて主としてインカムアプローチやマーケット・アプローチで算定した金額で評価しております。

企業結合の結果生じる条件付対価および株式買取債務の公正価値等は、観察不能なインプットを用いて割引キャッシュ・フロー法で算定した価額で評価しております。

当社経営陣は金融商品の公正価値等の評価は合理的であると判断しておりますが、予測不能な前提条件の変化等により見積りの変更が必要となった場合、認識される公正価値等の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 確定給付制度債務の評価

確定給付制度債務および退職給付費用は、年金数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、死亡率等が含まれます。

当社経営陣はこれらの前提条件は合理的であると判断しておりますが、実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、認識される費用および計上される債務に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 引当金

当社グループは、過去の事象の結果として現在の法的または推定的債務を有しており、債務の決済を要求される可能性が高く、かつ当該債務の金額について信頼性のある見積りが可能である場合に引当金を認識しております。貨幣の時間価値の影響が重要である場合、引当金は当該負債に特有のリスクを反映させた割引率を用いた現在価値により測定しております。

これらの引当金は、決算日における不確実性を考慮した最善の見積りにより算定しておりますが、予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、計上される債務の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。

不利な不動産リース契約に関する引当金の見積りの主要な仮定や感応度分析等の詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 22.引当金 (3)構造改革引当金」をご参照ください。

 

⑤ 繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産は、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除および将来減算一時差異のうち、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産は毎決算日に見直し、税務便益の実現が見込めないと判断される部分について減額しております。

当社グループは、将来の課税所得および慎重かつ実現性の高い継続的なタックス・プランニングの検討に基づき繰延税金資産を計上しており、回収可能性の評価に当たり行っている見積りは合理的であると判断しておりますが、見積りは予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、認識される費用および計上される資産に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

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