(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度は、当社グループのミッションである「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」の実現に向け、メルカリJP、メルペイ、メルカリUSの三本柱の継続的な成長とともに、ソウゾウ、メルコイン、メルロジ、グローバルなど国内外の新たな領域の開拓を推進し、グループの更なる成長機会の創出に取り組んで参りました。日本、米国におけるCOVID-19の流行からの経済再開の動きや、米国で急速に進行するインフレなど、外部環境が大きく変化する中、当社グループでは投資方針をアップデートし、優先順位を明確にし厳選した投資を行うことで第4四半期では連結営業黒字となり、持続的な成長に向けた準備を推進した一年となりました。
また、限られた資源が大切に使われ、誰もが新たな価値を生みだせる社会を目指し、脱炭素中期目標であるScope1及び2を達成(注1)、多様な働き方を尊重した「メルカリ・ニューノーマル・ワークスタイル “YOUR CHOICE”」導入など、気候変動への対応やD&I等の領域で様々なアクションプランを実施いたしました。
主力事業であるメルカリJPでは、新規ユーザ獲得や出品強化及びそのリテンションに取り組んだ結果、MAU(注2)は2,040万人となりました。一方、人々の在宅時間の減少や不正対策の影響に加え、中長期の成長に向けて成果が着実に積みあがる投資を優先したことで短期的なGMV(注3)成長率は鈍化いたしました。この結果、メルカリJPのGMVは当連結会計年度において8,816億円となり、前年同期比で970億円増加となりました。
ソウゾウでは、2021年10月よりBtoCマーケットプレイス「メルカリShops」の本格提供を開始し、好調なスタートを切りました。下期はプロダクト改善に注力しつつ、出店者獲得に向けてマーケティングを実施した結果、出店数は20万(注4)を突破するなど好調に進捗しております。
スマホ決済サービスを提供するメルペイでは、Payment事業及びCredit事業(注5)が順調に成長しました。特にスマート払い(定額払い)が伸長したことで収益力が向上し、初の通期調整前(注6)営業黒字を達成いたしました。また、継続的に推進してきた本人確認において、全利用者数における本人確認済み比率が86%を突破するなど、利便性と安心・安全な利用環境の構築の両立も推進しております。
メルカリUSでは、効果的なマーケティング施策が功を奏し、MAUが伸長いたしました。また、中長期でのブランド構築に向けたキャンペーンを展開し、認知度(注7)は過去最高を更新しております。一方、前連結会計年度のハードルの高さに加えて、インフレ等の外的要因もあり短期的なGMV成長率は鈍化しました。この結果、「Mercari」のGMVは当連結会計年度において1,145百万米ドル(1,344億円。為替レートについては、期中平均為替レート117.40円にて換算)となり前年同期比で28百万米ドル減少し、MAUは490万人となりました。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高147,049百万円(前年同期比38.6%増)、営業損失3,715百万円(前年同期は5,184百万円の利益)、経常損失3,896百万円(前年同期は4,975百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失7,569百万円(前年同期は5,720百万円の利益)となりました。
なお、当社グループはマーケットプレイス関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
(注)1.オフィス電力を100%再生可能エネルギーとすることで75%削減。
2.「Monthly Active Users」の略。1ヶ月に1回以上アプリ又はWEBサイトをブラウジングしたユーザの四半期平均の人数。
3.「Gross Merchandise Value」の略。流通取引総額のことを指す。
4.2022年4月19日時点。
5.メルペイにおける事業内容「決済」「与信」を指す。
6.メルカリJP・メルペイ間の内部取引(決済業務委託に関わる手数料)を控除前の営業損益を指す。
7.外部機関による調査で、当社サービス名を「知っている」と答えた回答者の割合。
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産につきましては、前連結会計年度末に比べ77,332百万円増加し、339,862百万円となりました。
主な増減理由は以下のとおりです。
・現金及び預金は、前連結会計年度末に比べ39,942百万円増加しております。主な増減理由は「③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
・未収入金は、主に「メルペイスマート払い(翌月払い・定額払い)」の利用増加に伴い、前連結会計年度末に比べ33,285百万円増加しております。
(負債)
当連結会計年度末における負債につきましては、前連結会計年度末に比べ79,347百万円増加し、301,864百万円となりました。
主な増減理由は以下のとおりです。
・短期借入金は、主に翌月払い及び定額払い債権の流動化を実施したことにより、前連結会計年度末に比べ34,652百万円増加しております。
・長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)は、主に返済により前連結会計年度末に比べ24,449百万円減少しております。
・預り金は、主に「メルカリ」及び「メルペイ」の利用金額の増加に伴い、前連結会計年度末に比べ21,995百万円増加しております。
・転換社債型新株予約権付社債は、既存事業の成長加速及び新たな事業機会創出に向けた投資資金並びに財務基盤の強化のために発行し、前連結会計年度末に比べ50,000百万円増加しております。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ2,014百万円減少し、37,998百万円となりました。
主な増減理由は以下のとおりです。
・資本金は、新株発行に伴い、前連結会計年度末に比べ1,998百万円増加しております。
・資本剰余金は、新株発行に伴い、前連結会計年度末に比べ1,997百万円増加しております。
・利益剰余金は、主に親会社株主に帰属する当期純損失の計上に伴い、前連結会計年度末に比べ7,607百万円減少しております。
・為替換算調整勘定は、為替相場の変動に伴い、前連結会計年度末に比べ1,308百万円増加しております。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ39,942百万円増加し、当連結会計年度末には211,406百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は、26,217百万円(前連結会計年度は3,367百万円の獲得)となりました。これは主に、預り金の増加額19,934百万円、未収入金の増加額33,133百万円、また、法人税等の支払額9,339百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、671百万円(前連結会計年度は6,907百万円の獲得)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出669百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は、62,065百万円(前連結会計年度は19,773百万円の獲得)となりました。これは主に短期借入金の純増減額34,652百万円、社債発行による収入49,876百万円、また、長期借入金の返済による支出25,449百万円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
b. 受注実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性質上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社グループはマーケットプレイス関連事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年7月1日 至 2022年6月30日) |
|
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
マーケットプレイス関連事業 |
147,049 |
138.6 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 売上高
当連結会計年度における売上高は、147,049百万円となりました。これは主に流通総額が増加したことによるものであります。
b. 売上原価
当連結会計年度における売上原価は、51,905百万円となりました。これは主に売上高が増加したことによるものであります。
c. 販売費及び一般管理費、営業利益
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、98,859百万円となりました。これは主に広告宣伝費37,712百万円、支払手数料22,259百万円、給料及び手当10,257百万円によるものであり、この結果、営業損失は3,715百万円となりました。
d. 営業外収益、営業外費用、経常利益
当連結会計年度における営業外収益は110百万円となりました。これは主に、受取利息50百万円、還付消費税等28百万円によるものであります。営業外費用は主に為替差損及び支払利息の計上により290百万円となり、この結果、経常損失は3,896百万円となりました。
e. 特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益
投資有価証券売却益等により特別利益32百万円の計上、投資有価証券評価損及び固定資産除却損により特別損失133百万円の計上があったため、税金等調整前当期純損失は3,997百万円となり、法人税等合計3,642百万円の計上により、親会社株主に帰属する当期純損失は7,569百万円となりました。
③ キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析につきましては、前記「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」をご参照ください。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループは、継続的な成長のため、認知度、信頼度を向上させることにより、より多くのユーザを獲得し、また既存のユーザを維持していくことが必要であると考え、会社設立以降積極的に広告宣伝等にコストを投下してきており、今後も継続して国内外における広告宣伝等を進めていく方針であります。当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループのサービスを効果的に拡大していくための広告宣伝費及び開発に係る人件費であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。当社グループは、必要な資金を主に自己資金及び金融機関からの借入、社債の発行、債権流動化で賄っております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループは、前記「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、サービスの性質、国際事業展開、コンプライアンス等、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行って参ります。
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