文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションに掲げ、スマートフォンやWEBにおいて個人間で簡単に不要品を売買できるCtoCマーケットプレイス「メルカリ」を中心に、「メルペイ」「MERCARI(US)」などのサービスを提供しております。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、日本及び米国で事業展開をしており、各地域によって成長ステージが異なりますが、流通総額及び売上高の成長、MAU(注)やブランド認知度などの指標を通じて、企業価値の向上を図って参ります。
(注)MAUは「Monthly Active User」の略。1ヶ月に1回以上アプリ又はWEBサイトをブラウジングしたユーザの四半期平均の人数。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、以下の強みを背景に中長期的な経営戦略を立案しております。
当社グループの強み
① 中古品市場の拡大をけん引するCtoCマーケットプレイスのパイオニア
当社グループは、使いやすく楽しく、かつ安心・安全なCtoCマーケットプレイスの提供を通じて、フリマアプリ市場を作り上げ、オフライン店舗やインターネットオークションに限定されない日本の中古品市場全体の拡大をけん引して参りました。2020年に行った当社調査によると、フリマアプリ及びオークションサイトの利用経験者のうち当社サービスの利用者数が最も多く、他社のサービスを上回る支持を獲得しております。当社グループは、CtoCマーケットプレイスのパイオニアとしての圧倒的なポジショニングを活用することで、上記の中古品市場の高い市場成長を享受できる立場にあると自負しております。
更に、米国をはじめとする海外においても、個人による中古品売買のニーズは高く、「メルカリ」を通じて中古品市場の成長に貢献して参ります。
② エンゲージメントの高いユーザ基盤及びこれを通じて得られる高付加価値のデータ
出品者・購入者双方にとって簡単で使いやすく、楽しく夢中になれるユーザ体験を提供することで、「メルカリ」は高いユーザエンゲージメントを実現しております。「メルカリ」のMAUは2022年6月期第4四半期において20.4百万人であり、2020年に実施した当社調査によると、フリマアプリ及びオークションサイト4社のうち、売れやすさ、使いやすさの利用満足度において、当社サービスの満足度が最も高くなっております。当社は、上記のような高いエンゲージメントを誇るユーザ基盤を通じて、ユーザの取引情報やユーザ間における取引評価情報等、利用価値の高いデータを大量に収集することができます。これらのデータと当社が注力して取り組むAI技術の活用により、購入者の嗜好にあわせた商品提案等による購入転換率の向上や、売れやすい出品価格提案等による出品転換率の向上、カスタマーサポートの効率化等に取り組んで参ります。そのような取り組みによって、既存のサービスにおけるユーザ体験の向上に加え、今後の成長に資する新規サービスの開発につなげることができると考えております。
③ CtoC特有のネットワーク効果による高いロイヤルティの獲得
CtoCマーケットプレイスである「メルカリ」は、ネットワーク効果が強く働くサービスです。すなわち、出品者・出品数が増えれば、購入したい商品が増えるため購入者・購入数が増加し、これにより商品の流動性が高まり、更に出品者・出品数が増加していきます。更に「メルカリ」では、多くの出品者・購入者が高い頻度でサービスを利用しており、ネットワーク効果による自走的成長が促進されています。また、商品を販売して得た売上金をもとに別の商品の購入が可能なため、「メルカリ」で商品を販売した出品者が次の購入者となることが促進されています。その結果、ユーザの大部分は、出品者と購入者の双方として「メルカリ」を利用しています。
このようなネットワーク効果による出品者や購入者からの高いロイヤルティ獲得につながり、リピートユーザによる継続的な取引への参加が流通総額の成長に大きく貢献しています。更に、ユーザの過去の取引評価の蓄積により、他のユーザが安心して取引を行うことができるとともに、ユーザ獲得競争において他の競合サービスへの流出を抑制する効果を有しています。
④ 高い収益性を実現するビジネスモデル
当社グループは、「メルカリ(メルカリJP)」において既に高い収益性を実現しています。この背景は、一定の事業規模に達するとその後の更なる事業規模拡大に際してコストを適切に管理できるというビジネスモデルにあります。具体的には、当社のコスト構造の相当の割合は広告宣伝費により構成されていますが、一般的にモバイルアプリの初期成長段階では売上高に占める広告宣伝費の割合は高くなるものの、ユーザ基盤が拡大し安定するにつれて広告宣伝費の比率を抑えることが可能になります。その結果高い収益性を実現することが可能となります。
⑤ イノベーションを推進する経営陣及び企業文化
創業者で代表取締役 CEO(社長)である山田進太郎が率いる当社グループの経営陣は、革新的なスタートアップ企業の創設者や経営幹部としての経験、豊富なエンジニアリング経験等を有する多くの起業家により構成されています。ソーシャルメディアやモバイルサービスにおいて、ユーザのエンゲージメントを高め、収益化し、規模を拡大させる豊富な経験を当社グループの経営に活かしています。
当社グループの成功は、当社グループのエンジニアやその他のプロフェッショナル人材の質の高さにも起因しています。これは、採用と継続雇用に対する投資や、「Go Bold」、「All for One」、「Be a Pro」の3つの行動指針(バリュー)を尊重する企業文化を反映しています。日本及び米国それぞれの現地チームにおいて、経営陣及びその他の主要なプロフェッショナル人材の採用・育成強化に積極的に取り組んで参ります。
当社の具体的な経営戦略
2022年6月期は、メルカリJP/メルペイ/メルカリUSの3事業においてユーザ基盤が着実に拡大し、過去最高売上高を更新したことに加え、2021年10月にはBtoCのマーケットプレイスである「メルカリShops」の本格提供を開始するなど、当社グループの更なる成長・ミッションの達成に向けた種まきも行いました。また、当社グループの事業基盤をより強固にすべく、2022年1月1日よりグローバル開発促進、日本事業(Japan Region)の連携強化を目的とした新たな経営体制の強化を行いました。Japan Region内の個社をMarketplace /Fintechに括り、横軸の事業連携を強化することで、シナジー創出、事業効率化、生産性の向上を推進していきます。外部環境が目まぐるしく変化する中で、中長期の目線で投資の優先順位を明確にしつつ、既存事業においては事業環境を踏まえ機動的に内容の見直しを行いながらもグロースを優先した投資を行い、新規事業においてはグループシナジーを最大化する事業を創出することで、グループとして持続的な成長及び将来利益の最大化を進めて参ります。
① Marketplace:CtoCとBtoCの連携による持続的な成長の促進
Marketplaceでは、主力事業であるメルカリJPのCtoCマーケットプレイスと、ソウゾウによるBtoCマーケットプレイス「メルカリShops」の連携強化による出品の増加を推進し、持続的な成長を目指して参ります。
・CtoCの更なる利用拡大
2021年4月に株式会社電通マクロミルインサイトが実施した調査に基づく分析によれば、2022年6月期第4四半期MAU20.4百万人に対し、「メルカリ」の認知と出品意向はあるが未出品のユーザはおよそ36百万人いると試算されています。「メルカリ」の利用経験の無いあるいは少ないユーザに対する使い方等に関する講習会の開催や、梱包・発送場所の増強を始めとするオフラインUXの進化等、様々なオフライン施策と効果的なマーケティング施策の組み合わせにより、潜在出品顧客の取り込みを推進して参ります。
また、AIの活用を通じた、過去の閲覧履歴をもとに購入者ごとにカスタマイズされたおすすめ商品の提案や、一次流通との連携によるカテゴリーの強化などを通じて、既存ユーザにより利用頂けるサービスの改善も行って参ります。
・BtoCにおける「売れる体験」の創出
2021年10月に本格提供を開始した「メルカリShops」を中心とするBtoC事業においては、小規模の事業者・生産者を対象に、慣れ親しんだ「メルカリ」のUXで簡単にネットショップの開設・運営ができる体験を提供して参ります。また、各ショップが自分達でファンを獲得し、リピーターを増やすことができる機能の追加などを行うことで、月商の拡大をサポートするプロダクト基盤の構築を進めて参ります。
② Fintech:グループシナジーを活かした金融サービスによる循環型金融の促進
Fintechでは、主にPayment(決済)とCredit(与信)の分野において事業を展開しており、それぞれにおいて、利便性やユーザ体験の向上を目指したサービスの提供・改善に努めております。2021年6月期以降、独自のロジックにて与信付与を行うCredit分野を中心に、収益力の強化に取り組んでおり、その結果、2022年6月期には初の通期調整前営業黒字を達成しました。また、eKYC等による本人確認を積極的に推進しており、本人確認済みユーザ比率は86.2%となり、ユーザにとってより安心・安全な利用環境の実現とともに、今後の事業拡大を円滑に推進すべく準備を進めております。今後も、Pay(支払い)、Buy(購入)、Sell(出品)の連携強化とCredit事業の更なる拡大を通じてメルカリ内のメルペイ利用を促進し、グループシナジーを活かした総合的な金融サービスの提供を行って参ります。
・Payment事業における利便性強化、利用促進
Payment分野においては、既存の決済手法である「iD」「コード」「バーチャルカード」の利用促進に向け、認知度の拡大やユーザの日常生活導線に沿った加盟店開拓を推進し、更なる利用機会の創出を目指します。また、新サービスや機能の開発により、利便性の強化にも取り組んで参ります。
・Credit事業を中心とした収益基盤の確立
2020年7月より提供を開始した「メルペイスマート払い(定額払い)」等、「メルカリ」の利用履歴に基づく独自の与信を活用したサービスを中心に収益基盤を確立いたしました。またこれらのサービス利用や安心・安全な利用環境の構築に不可欠な本人確認を引き続き促進するとともに、AI与信を活用したユーザ体験の向上を推進して参ります。
・暗号資産・NFT領域における組織基盤の構築
株式会社メルコインでは、2023年6月期のサービス本格提供に向けて、NFTや暗号資産という専門性の高い領域における経験や知見のある人材の採用を進め、組織基盤の構築を進めております。また、NFT領域においては、将来的なNFT業界全体の活性化に不可欠な大衆化を見据えてデジタルコンテンツを販売する「パ・リーグ Exciting Moments β」を開始し、暗号資産の領域においては、暗号資産交換業のライセンスを取得するなど、サービスの本格開始に向けて準備を粛々と進めております。
③ US:出品と購入両方の促進に向けたプロダクト施策に注力
USは、簡単で安全に商品を取引できるマーケットプレイスを目指し、規律を持ちつつも効果的なマーケティング投資によるブランド認知度向上とユーザ獲得、プロダクト機能や配送方法の改善に取り組んで参りました。出品の簡便化やパーソナライゼーションをはじめ、出品と購入の両方をバランスよく促進するプロダクト施策を中心に取り組み、米国においてCtoCといえばメルカリと言われるサービスとしての技術的な優位性の確率を通じて成長の再加速を目指して参ります。
・使いやすさの向上
商品の写真を撮るだけで基本情報が自動で入力される機能のカテゴリー拡大や、アプリ/WEBのデザインシステム統一等引き続き機能改善に注力する他、分割払い等ユーザの支払の利便性を向上させるような施策を行って参ります。
・オートメーションパーソナライゼーション
AIやデータを活用した検索エンジン改善によるオートメーションの強化と、個人の好みや行動履歴に基づいてユーザの購入と出品を促すパーソナライゼーションの進化を目指します。
・配送イノベーション
地域の人々とつながることで、あらゆるモノの購入や出品を安全で簡単に行えるローカル配送には大きな可能性があると考えております。即日配送サービスMercari Local(旧:Mercari Now)の対象地域やカテゴリーの拡大などを通じてローカル配送を強化し、新規出品者の開拓を行って参ります。
(4)会社の課題
① サービスの安全性及び健全性の確保
Eコマースサービスやソーシャルメディア等の普及と、それに伴う不正利用の巧妙化の流れを受け、インターネット上のサービスの安全性維持に対する社会的要請は一層高まりを見せております。当社グループは、安全・安心な取引の場を提供するため、サービスの安全性・健全性確保を最重要課題として、個人情報保護や知的財産権侵害品対策等に継続的に取り組んで参ります。
② 人材の育成
サービスのグローバル展開を含めた今後の成長を推進するにあたり、人材の育成は重要な課題と認識しております。従業員が高いモチベーションをもって働けるよう、育成の仕組みや人事制度の整備、ダイバーシティ&インクルージョンの推進等を積極的に進めて参ります。
③ 技術力の強化
当社グループはインターネット上でサービスを提供しており、サービス提供に係るシステムを安定的に稼働させることが事業運営上重要であると認識しております。出品数の増加に伴うアクセス数の増加を考慮したサーバー設備の強化、並列処理システムの導入等による負荷分散等、継続的にシステムの安定性確保に取り組んで参ります。
また、先端技術への投資に注力し、更なるユーザ体験の向上に取り組んで参ります。例えば、過去の取引履歴や評価情報等の膨大なデータを元にしたAIや機械学習技術の活用により、サービスの利便性向上や、安全性及び健全性の維持・強化を推進して参ります。更に、自動翻訳による異なる言語間での取引の推進や、ブロックチェーン、VR/AR、量子コンピュータ、IoT(モノのインターネット)等の先端技術への投資を行う等、技術力の強化に向けて取り組んで参ります。
④ 海外展開への対応
当社グループは、ミッションに掲げる「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」の実現に向け、2014年に米国へ進出し、2019年には日本における「メルカリ」に出品された商品を海外から購入できる越境販売を開始するなど、海外展開にも着手して参りました。米国で提供する「Mercari」の着実な成長や越境販売における海外ユーザの購買ニーズを通じ、まだ進出していないエリアにも潜在的な事業機会が広がっていると考えております。メルカリUSの更なる拡大に加え、規律のある投資を意識しつつも積極的に新たな海外展開を図っていく方針であります。
⑤ コーポレート・ガバナンスの強化
当社グループは、経営の監督機能及び内部統制機能の充実、コンプライアンス経営の徹底を通じて、企業価値の向上に努めることをコーポレート・ガバナンスの基本方針として定め、ステークホルダーのみなさまの信頼に応えるべく、今後もこの基本方針のもと、経営の効率性、透明性を高め、企業価値の最大化と持続的な成長、発展に努めていく方針であります。
⑥ 内部管理体制の拡充並びにコンプライアンスの徹底
当社グループは今後もより一層の事業拡大を目指しており、社会的責任を果たし、持続的な成長と企業価値向上を図るために、当社グループの成長に見合った人材の確保、育成及びコンプライアンスの徹底を重要な課題と考えております。内部監査、法務、財務、経理、情報セキュリティ等、それぞれの分野で高い専門性や豊富な経験を有している人材を採用することに加え、社員に対する継続的な啓蒙活動及び研修活動を行うことで、更なる内部管理体制の強化を図ると共に、コンプライアンスの徹底に努めて参ります。
⑦ 財務規律の強化
当社グループが継続的に成長・拡大していくにあたっては、更なる収益基盤の強化・拡大と、それをレバレッジさせた資金調達力が必要になります。メルカリJP、メルペイ、メルカリUSの主力3事業を、適切な財務規律でコントロールし、収益性を向上させることで、その基盤をしっかり整えて参ります。
(5)サステナビリティに関する取り組み
当社グループは、2013年の設立以来、誰もが簡単に売り買いできるCtoCマーケットプレイスを提供しています。このマーケットプレイスを通じてリユースが促進されることにより、循環型社会の実現に寄与するだけでなく、人々の行動がよりサステナブルに変化し、モノの生産や販売のあり方がアップデートされていくことで、環境負荷は軽減し、気候変動への対応にも繋がると考えています。
地球資源の限界を意味する「プラネタリー・バウンダリー」という概念が広がるなか、当社グループは、事業を通じて環境課題の解決に貢献し、限りある地球資源が世代を越えて共有され、人々が新たな価値を生み出し続けることができる「プラネット・ポジティブ」(注)な世界を目指していきたいと考えています。
(注)「事業の成長を通じて地球環境に対してポジティブなインパクトを生み出し続けていく存在でありたい」というメルカリの企業姿勢を表現した、プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)という概念をベースにした当社グループの造語
① 当社グループのマテリアリティ
より豊かな社会を目指すため、ESGに関わる各種ガイドラインを参考にしながら、自社及びステークホルダーにとっての重要度を総合的に評価した上で、「循環型社会の実現/気候変動への対応」「ダイバーシティ&インクルージョンの体現」「地域活性化」「安心・安全・公正な取引環境の実現」「コーポレートガバナンス/コンプライアンス」の5つのテーマをマテリアリティ(本業を通じて解決するべき最も重要な課題)として特定し、取り組みを推進しています。
・循環型社会の実現 / 気候変動への対応
当社グループが与える環境への負荷を最小化するだけでなく、限りある資源が大切に使われる循環型社会を実現し、事業を通じて環境課題解決に貢献する「プラネット・ポジティブ」を追求していきます。
・ダイバーシティ&インクルージョンの体現
多様なバックグラウンドを持つ人材がポテンシャルを最大限に発揮して働ける環境を整え、社会全体の課題である構造的差別や不平等の課題に取り組みます。また、より多くのお客さまにとって使いやすいサービスのアクセシビリティ実現を目指します。
・地域活性化
地域が抱える課題解決と経済への貢献を通じて、個人や企業が活躍できる社会を目指します。
・安心・安全・公正な取引環境の実現
お客さま、加盟店さま、パートナーさまに「安心感」を持ってサービスをご利用いただけるよう、安全で公正な取引を目指します。
・コーポレートガバナンス / コンプライアンス
健全で透明性の高い意思決定プロセスを構築し、お客さまやパートナーさま、ひいては社会から強い信頼を得られる企業を目指します。
② TCFDに基づく開示
当社グループでは、気候変動問題を事業に影響をもたらす重要課題の1つと捉え、経営戦略に取り入れ、グループ全体で気候変動対策に積極的に取り組んでいます。このような背景から、2021年6月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明しました。
TCFD提言は、すべての企業に対し、「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標と目標」 の4つの項目に基づく情報の開示を推奨しています。当社グループは、TCFD提言の4つの開示項目に沿って、気候関連情報を開示しております。
・ガバナンス
気候変動の影響等、ESGの視点を経営の意思決定および業務の執行プロセスに組み込む体制を構築するために、 上級執行委員会の諮問機関としてESG委員会を2021年12月より設置しています。
経営における重要アジェンダの一つとして、ESGや気候変動関連について十分な議論の時間を定期的に確保することで、より質の高い議論を可能にし、上級執行委員会での意思決定の質の向上を目的としています。
また、各カンパニーごとにESG担当役員を選任し、ESG視点から事業に関する各種経営判断に関与することで、メルカリの各事業とマテリアリティごとのESG施策を両立し、かつスピーディーな実行・推進を可能とする体制を構築しています。また、ESG担当役員は、ESG委員会のメンバーとして、当社グループ全体のサステナビリティ戦略に関する議論及び意思決定にも関与します。これまでのESG委員会の議事概要は当社ホームページで公開しています。
ESG委員会では、代表取締役 CEO 山田進太郎を委員長とし、各カンパニーのCEOやESG担当役員など、委員長が指名したメンバーとともに、年に4回、マテリアリティごとの実行計画策定や進捗状況のモニタリングなどに取り組んでいます。
・戦略
当社グループ全体を対象として、気候変動に関連する「移行リスク」「物理的リスク」「機会」を特定するためにシナリオ分析を実施しました。
シナリオ分析では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)等の科学的根拠等に基づき2つのシナリオ(1.5℃/2℃シナリオ、4℃シナリオ)を設定し、当社グループの2030年以降の社会を考察しています。
シナリオ分析に基づく、気候変動に関連する主なリスクと機会は以下の通りです。
区分 |
気候変動が当社グループに及ぼす影響 |
事業インパクト |
当社の対応策 |
||
リスク |
物理的リスク |
急性 |
自然災害の激甚化によるデータセンター等のダウン
自然災害の激甚化により、データセンターや電力会社が被災した場合、電気及びネットワークの中断、データーセンターのダウン等を引き起こし、顧客(売り手・買い手)がオンラインで販売および購入できなくなる |
中 |
・操業停止期間を減少させるBCPの構築 ・災害復旧計画の検討 |
移行リスク |
政策 ・ 法規制 |
カーボンプライシング導入等による燃料価格上昇による商品の配送コストの増加
カーボンプライシングの導入等、燃料価格上昇による商品の配送コストの増加は、顧客(売り手・買い手)に影響を与え、マーケットプレイスで販売される商品の需要に影響する |
小 |
・サプライヤーエンゲージメントの強化の推進 |
|
移行リスク |
評判 |
気候変動対応が不十分なことによる金融機関・投資家からの評判低下
投資家や金融機関から気候変動関連の対応や情報開示への要請が高まる中、対応が不十分であった場合、株価低下のリスクや資金調達への影響が想定される |
中 |
・情報開示の充実化 ・2030年までのScope1+2 100%削減 |
|
機会 |
|
評判 |
環境意識の高まりによる、消費者選好の変化における競争力の強化
プラネット・ポジティブな消費者行動の浸透に伴うメルカリ利用者の増加と、メルカリを利用する新たな動機(環境貢献)を創出 |
大 |
・プラネット・ポジティブな消費者行動の浸透に伴うメルカリ利用者の増加 |
事業/財務的影響評価
・大(30億円以上):事業戦略への影響または財務的影響が大きいことが想定される
・中(1億円以上、30億円未満):事業戦略への影響または財務的影響が中程度と想定される
・小(1億円未満):事業戦略への影響または財務的影響が小さいことが想定される
上記の通り、当社グループの事業活動にとっては、気候変動に伴う環境意識の高まりや消費者行動の変化によって創出される市場機会の方が気候変動リスクがもたらす影響よりも大きいと評価しています。また、「環境意識の高まりによる、消費者選好の変化における競争力の強化」に関しては、プラネット・ポジティブな消費者行動の浸透に伴うメルカリ利用者の増加と、メルカリを利用する新たな動機(環境貢献)を創出しうる機会と捉えています。
・リスク管理
当社グループでは、事業が気候変動によって受ける影響を把握し評価するため、シナリオの分析を行い、気候変動リスク・機会を特定しています。特定したリスクと機会は、ESG委員会含むサステナビリティ推進体制において管理しています。案件に応じて、取締役会に報告・提言を行うフローも構築しています。
・指標と目標
2030年までにScope1+2は2020年比で100%削減、Scope3は2020年比で付加価値あたり51.6%削減を目指します。この目標値にて、2023年6月までにSBT認定を取得する予定です。
2022年6月期(2021年7月〜2022年6月) GHG排出量実績
2022年6月期の当社グループ全体のGHG排出量は約3.8万トンで以下の結果となりました。
Scope1+2は75%削減達成、Scope3は原単位ベースで昨年度と比較し17%削減しました。2030年の目標達成に向け、引き続きアクションを実施して参ります。
Scope1 |
192トン |
Scope2 |
1,006トン |
Scope3 |
37,558トン |
合計 |
38,756トン |
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