文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「自然の恵みをくらしに活かす」を基本理念として、植物資源「松」から得られる有効物質を化学製品にする循環型ビジネスモデルを通じて、地球環境に配慮した事業の展開を基本的な考え方としています。
今後もこの基本理念のもと、企業価値の一層の向上をめざします。
①当社グループが目指すもの
当社グループは、松から得られるロジン(松やに)、脂肪酸、テレピン油などを使って化学素材をつくるパインケミカル事業を中心に発展してきました。パインケミカル事業は天然資源を有効活用するため環境負荷が小さく、資源循環的なビジネスモデルを有しています。近年、地球温暖化や気候変動激甚化への懸念が世界的に高まり、環境にやさしく、サステナブルな事業モデルへの転換を目指すことが企業の責務とされるようになっていますが、当社グループのビジネスモデルは持続可能性の高い社会を建設する目標と親和性の高いものです。
当社グループは、これからもパインケミカル事業をさらに深掘りして、新たな用途開発と事業基盤の強化に努め、世界的な業界トップティア企業の地位を目指してチャレンジします。
また、当社グループは1970年代から海外進出に取り組み、現在では収益性の高い海外事業に強みを持つグローバル企業に成長しています。今後も、成長性の高い海外市場で事業領域の拡大と市場開拓に努め、サステナブルな社会建設に役立つ当社グループ製品を世界に届けることを目標とします。
この目標を達成するためには、高い技術力を背景にした競争力のある新製品開発とお客様に信頼される安心安全なものづくりが欠かせません。引き続き、研究開発投資の強化とM&Aを通じた、サステナブルな新製品の開発と新規事業領域への参入にチャレンジします。
②長期ビジョン「Harima Vision 2030」
地球温暖化による気候変動を放置すれば、現在の社会生活を維持継続することが困難になる、という危機感は人類社会共通のものになっています。持続可能な社会を構築するために、企業が「カーボンニュートラル」の実現に努めることは、もはや当然の社会的責務と考えられます。しかし「カーボンニュートラル」の実現は容易ではなく、社会全体での長期継続的な取り組みが不可欠であることから、最近では、2030年までの長期目標と推進策を掲げる企業が増えています。当社グループも中期経営計画策定に合わせ、財務的な目標に加えて非財務的な企業価値向上策を含む長期ビジョンを設定しました。
長期ビジョン「Harima Vision 2030」
当社グループは、上記の長期ビジョンを標榜し、2030年を目処に下記業績目標の達成を目指します。
「Harima Vision 2030」業績目標
※1 海外子会社は進出国の規制に則った削減計画を立案し、当社グループ全体では2050年にカーボンニュートラルを目指します。
※2 2013年度比、ハリマ化成株式会社の日本国内事業ベース
③「自然の恵み製品」の拡販計画
当社グループは、資源循環的なビジネスモデルを有するパインケミカル事業の製品群に加え、その他の事業分野でも環境負荷を軽減しSDGsなどの社会的課題の解決に役立つ製品群を有しています。当社グループではこれらを「自然の恵み製品」と名付け、これらの拡販を通じ、より良い社会の創造に貢献する企業としての企業価値向上を目指します。「自然の恵み製品」の拡販目標として、2026年度の売上高を2021年度実績対比30%増加させることを目指します。
※「自然の恵み製品」には、粘接着剤用樹脂、インキ用樹脂、合成ゴム用乳化剤、トール油製品、サイズ剤など
のパインケミカル製品の他、塗料用樹脂、水系樹脂、紙力増強剤、バリアコート剤などの環境配慮製品を含み
ます。
④中期経営計画「NEW HARIMA 2026」
当社グループは、2022年度より5年間の中期経営計画「NEW HARIMA 2026」を設定しました。本計画では2026年度の売上高1,100億円、営業利益70億円を目標とし、「事業基盤の強化と事業領域の拡充」、「新規事業、成長分野に向けた研究開発」、「新時代に向けた経営の革新」を基本方針とします。
「NEW HARIMA 2026」業績目標
基本方針1: 事業基盤の強化と事業領域の拡充
1)パインケミカル総合メーカーとしての競争力強化
パインケミカル事業分野では、トール油事業分野での用途開発と新製品投入・新規事業創出を進める他、粗トール油精留技術の高度化、長期安定的な原料確保などの施策を推進します。また、パインケミカル事業分野も最近の急激な資源価格高騰の影響を受けているため、採算確保に取り組むと共に採算観点からの製品ポートフォリオの見直しも進めます。
当社グループはグループ内で多様なロジン生産拠点を有し、ブラジル、アルゼンチンでガムロジンを生産している他、日本、ニュージーランド、スウェーデン(サンパイン社)でトールロジンを生産しています。これらロジンのグループ内調達強化を通じた競争力アップにも取り組みます。
2)海外事業領域の拡充
ドイツ大手化学メーカーのヘンケル社から買収した資産に関するはんだ材料事業は、欧米の自動車部品業界や産業機器業界、中国を中心とする通信機器業界に顧客基盤を有し、当社グループ既存事業とのシナジー効果が期待できるため、早期に業績寄与するよう事業統合を急ぎます。中国、東南アジアや米国で強みを有する製紙用薬品事業は、地域事情に応じて販売品種の拡充による売上増とサプライチェーンの見直しにより事業採算の改善に努め、市場での競争激化に対応します。
また、海外で市場シェアの高いローターの粘接着剤用樹脂事業は、更なるシェア向上と新製品の開発投入を目指します。
3)事業ポートフォリオの見直し
既存事業の中で市場が成熟して構造的に需要が減少しているものは、収益確保を重視して品種構成や事業運営を見直し、事業/製品ポートフォリオの入れ替えを進めます。他方、弱溶剤塗料用樹脂や半導体用機能性樹脂など販売増が見込まれる製品群については、生産体制の拡充強化に取り組みます。
基本方針2: 新規事業、成長分野に向けた研究開発
前中期経営計画「NEW HARIMA 2021」から実施している、成長分野に向けた研究開発投資への重点的な資源配分を継続し、新製品開発による新市場参入の早期実績化を目指します。
1)粗トール油精留プラント改良のためのプロセス開発を進め、多様な粗トール油を活用できる高度な精留技術を実現します。
2)ゴムの機能発現のメカニズムを解明し、減衰性、耐オゾン性、耐候性などの機能を備えた新しいゴム添加剤の技術開発と市場創出に取り組みます。
3)半導体用機能性樹脂では、半導体需要の拡大と加速する技術革新に追従する研究開発を推進します。
4)紙素材に撥水性、耐水性を付与する薬剤を開発しプラスチック代替市場への参入を目指します。
5)環境に配慮した水系樹脂、無溶剤樹脂の開発を進めます。
6)バイオプロセスによる効率的な樹脂酸、医薬品原体等の合成技術の研究に取り組みます。
7)CO₂吸着と再利用技術の開発に取り組み、革新的な技術の導入を目指します。
基本方針3: 新時代に向けた経営の革新
1)デジタル技術を活用したものづくりとDX体制づくりの推進
生産活動におけるAIやIoT技術の活用を積極的に進め、現場の人員不足や技能継承課題の補完、生産性向上など業務改善効果の獲得を目指します。生産現場では、データ活用による最適生産体制の構築、予兆・予防保全体制の確立による安全操業、デジタル技術による在庫管理、構内物流の効率化などを推進します。
研究開発活動においては、MI(マテリアルズインフォマティクス)の活用と研究データのデジタル化を進め、製品開発をスピードアップします。
また、システム内製化によりデジタル人材教育と育成を図ると共に、業務プロセスのデジタル化を推進します。
2)企業理念に沿ったESG経営の推進
当社グループは、企業理念として「自然の恵みをくらしに活かす」を掲げ、自然と共生しながら、自然の恵みを有効活用して人々の生活を豊かにすることを目指す事業展開を進めてきました。近年高まりを見せるサステナブル経営への取り組み要請は、当社グループ企業理念と共鳴するものであり、今後更に事業活動を通じた社会課題解決とSDGsへの貢献を目指します。また、コーポレートガバナンス・コード対応やリスク管理体制の強化など企業統治のレベルアップに努める他、統合報告書の発行や気候変動リスク(TCFD対応)開示など情報開示とIR活動も推進し、持続可能な社会の実現に貢献する企業に相応しい業務運営や経営体制の整備に取り組みます。
また、温室効果ガス削減目標は、日本政府が掲げる「2030年度に2013年度比46%削減」という目標を3年前倒しして2027年度に達成した後、2030年度には同50%削減、2050年迄にはカーボンニュートラルを達成することを目指し、設備投資とさまざまな施策を計画的に実施します。海外拠点においても、それぞれの国情に応じた目標設定と削減計画を策定します。
ハリマ化成グループ(国内)のCO₂排出量削減ロードマップ
<当社グループの事業活動とSDGsへの貢献>
「169の達成基準」・・・17の世界的目標を達成するための具体的な考え方や対策をまとめたもの
<国際機関、産官学連携などへの関与、認証取得>
当社グループは、グローバル企業として国際機関や産官学連携などに積極的に関与し、国際的なサステナビリ
ティ規格の評価取得を進めています。引き続き、グローバルベースでのパートナーシップを深化させ、社会的
インパクトを高めていきます。
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