業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①重要な経営指標の状況

 当社は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載のとおり、売上高の前期比増加率及び売上高営業利益率を重要な経営指標としております。

 当事業年度における各指標の実績は、以下のとおりです。

 

(単位:千円)

決算年月

2021年3月

2022年3月

売上高

2,948,871

4,391,317

(前期比増加率)

82.4%

48.9%

営業利益

242,836

439,950

(売上高営業利益率)

8.2%

10.0%

 

 当事業年度における、当社の事業環境は、後述の「③経営成績の状況」に記載のとおりであり、主に中堅企業の旺盛なセキュリティニーズを捉えることで、すべての事業において売上高が前期比で増加しました。

 なお、2021年3月期における売上高の前期比増加率(82.4%)には、2020年4月に、同一の親会社を持つ株式会社EPコンサルティングサービスから譲受したITソリューション事業による売上高が含まれております。ITソリューション事業による売上高を含まない場合の2021年3月期の売上高の前期比増加率は約37%であったことを踏まえると、当事業年度における全社売上高の前期比増加率(48.9%)は、好調な成長率であると分析しております。

 また、当事業年度における売上高営業利益率(10.0%)につきましては、企業認知度の向上を目的とした広告宣伝等、積極的なマーケティング活動や、従業員への期末賞与等により、販売費及び一般管理費が増加したものの、それを上回る売上高の大幅な増加により、売上高営業利益率が上昇しました。

 

②財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における資産合計は3,482,070千円となり、前事業年度末に比べ1,097,796千円増加いたしました。

その主な内容は、現金及び預金の増加494,204千円、売掛金及び契約資産(前事業年度は「売掛金」)の増加295,793千円、投資有価証券の増加290,025千円等であります。

(負債)

 当事業年度末における負債合計は1,916,591千円となり、前事業年度末に比べ474,519千円増加いたしました。その主な内容は、契約負債(前事業年度は「前受収益」)の増加222,778千円、買掛金の増加109,863千円、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)の増加106,066千円等であります。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は1,565,478千円となり、前事業年度末に比べ623,277千円増加いたしました。その主な内容は、利益剰余金の増加230,388千円、資本金の増加193,200千円、資本剰余金の増加193,200千円であります。

 

 

③経営成績の状況

 当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が続くなか、世界的な原油価格の高騰、ロシア・ウクライナ情勢などによる世界経済の停滞も関係し、依然として先行きは不透明な状況にあります。

 当社が属するサイバーセキュリティ業界を取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症対策としてのテレワーク導入やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進など、社会・経済の情報技術への依存度が高まるとともに、サイバー攻撃は増加の一途をたどっており、あらゆる業種の企業において、サイバーセキュリティリスクは多様化・高度化しております。加えて、国を挙げてのサイバーセキュリティ強化の潮流や、サプライチェーンリスクの対策要請などが追い風となり、相対的にサイバーセキュリティ対策が遅れている中堅・中小企業においても、その対策は必須かつ急務となっております。

 このような環境のなか、当社は、主に中堅企業の旺盛なセキュリティニーズを捉え、企業規模に適したセキュリティサービスを提供することで、業績を拡大させております。

 当事業年度においては、すべてのサービス部門において需要が増大しました。また、広くITに関わる人材を対象とした、当社オリジナルの教育講座「SecuriST」シリーズが大きな反響を得ており、IT企業からの申し込みを中心に受講者数が好調に推移しました。さらに、積極的なマーケティング活動の実施や、パートナー企業との協業がいっそう進むことにより、当社業容が拡大しております。

 これらの結果、当事業年度の経営成績は、売上高4,391,317千円(前期比48.9%増)、営業利益439,950千円(同81.2%増)、経常利益414,331千円(同73.1%増)、当期純利益261,099千円(同55.7%増)と大きく伸長しました。

なお、当社はサイバーセキュリティ事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

事業別の状況は、以下のとおりであります。

(コンサルティング事業)

 (コンサルティングサービス)

 企業のサイバーセキュリティに関する課題について、現状を可視化し、リスクを分析したうえで、適切な改善策を提案するサービスです。セキュリティ改善計画の策定、セキュリティの管理体制やインシデント対応の体制構築の支援、システム監査やセキュリティ監査、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に代表される各種認証取得の支援、インシデント発生をシミュレーションした対応訓練サービス等、幅広く提供しております。

 当事業年度においては、サプライチェーンリスクの対策要請に起因し、特に中堅・中小企業からのリスクアセスメントの需要が旺盛であったことから、売上高は611,687千円(前期比51.9%増)となりました。

 

 (脆弱性診断サービス)

ハッカーと同様の技術を持つ専門エンジニアが、企業のネットワークシステムに疑似攻撃を実施し、脆弱性の有無を診断するサービスです。検出した脆弱性については、その詳細な内容と対策措置、結果報告書を提供しております。

 当事業年度においては、企業のDX推進に伴い、Webアプリケーションの脆弱性診断の需要が旺盛であったことから、売上高は590,934千円(前期比36.1%増)となりました。

 

(教育事業)

 (教育講座)

 セキュリティエンジニア及びITエンジニア向けに、セキュリティに関するトレーニング及び認定資格試験を提供しております。

 セキュリティの全体像を網羅した各種講座を取り揃えておりますが、主要なものでは、米国EC-Council International 社の提供する、国際的に認知度の高いセキュリティエンジニア向け講座や、ITに関わる人材を広く対象とした、当社オリジナルのセキュリティ人材資格「SecuriST(セキュリスト)認定脆弱性診断士」等があります。

 当事業年度においては、特に「SecuriST(セキュリスト)認定脆弱性診断士」シリーズの講座の受講者数が大幅に伸長し、売上高は423,285千円(前期比54.7%増)となりました。

 

 (訓練サービス)

 企業の役職員を対象に、組織全体のセキュリティリテラシー向上を図るコンテンツを提供しております。

 標的型メール訓練サービス(トラップメール)は、攻撃メールを模擬した無害の訓練メールを送信し、対象者が訓練メールに含まれるURLリンクあるいは添付ファイルを開封した場合に、教育コンテンツが表示されるとともに、当社が訓練結果を集計し、顧客企業に報告するサービスです。また、企業の日常業務のなかでのセキュリティ対策を分かりやすく説明する、情報セキュリティ対策のe-ラーニングサービス(Mina Secure®)を提供しております。

 当事業年度においては、トラップメールの認知度向上等から、売上高は384,730千円(前期比32.0%増)となりました。

 

(セキュリティソリューション事業)

 最新の脅威や攻撃手法に対する有効なセキュリティ製品及び導入・運用サービスを提供しております。また、発生したインシデントに対しては、緊急対応サービスも提供しており、原因及び被害範囲の調査を実施し、事態収束後は、セキュリティ製品の導入支援、運用管理面のサポート、関係者へのセキュリティ教育等、当社の様々なサービス連携で、再発防止に向けたサポートをワンストップで提供しております。

 当事業年度においては、機器端末の不審な挙動を検知し、迅速な対応をするためのEDR(Endpoint Detection and Response)製品や、ユーザー・機器等の正常な振る舞いを機械学習し、異常な振る舞いを検知するUEBA (User Entity Behavior Analytics)製品の導入・運用サービスの販売が好調であったことから、売上高は1,188,067千円(前期比41.5%増)となりました。

 

(ITソリューション事業)

 ITインフラ構築やシステム開発、SES(システムエンジニアリングサービス)等、セキュリティ周辺領域のサービスを提供しております。主な顧客は、海外に本社機能を持つ外資系企業や日系グローバル企業です。

 当事業年度においては、既存顧客によるリピート受注が堅調であったこと、2020年4月1日付の事業譲受以降、既存サービスとの連携が進んだこと等から、売上高は1,192,611千円(前期比63.3%増)となりました。

 

④キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度に比べ494,204千円増加し1,146,528千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とその主な要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果増加した資金は328,219千円となりました。この主な要因としては、税引前当期純利益が414,331千円、契約負債の増加額が222,778千円となった一方、売上債権の増加額が295,793千円となったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は294,649千円となりました。この主な要因としては、投資有価証券の取得による支出281,846千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果増加した資金は460,634千円となりました。この主な要因としては、新株発行による収入386,400千円、長期借入れによる収入280,000千円、既存の長期借入金の返済173,934千円によるものであります。

 

 

⑤生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社は生産活動を行っていないため、該当事項はありません。

 

b.受注実績

 当事業年度の受注実績は次のとおりであります。なお、当社はサイバーセキュリティ事業の単一セグメントであるため、事業部門別に記載しております。

 

事業部門

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

コンサルティング

1,293,917

147.1

232,777

164.5

教育

846,046

145.4

88,123

170.2

セキュリティソリューション

1,500,149

171.6

1,157,528

136.9

ITソリューション

1,243,216

126.2

526,311

110.6

合計

4,883,329

148.2

2,004,740

132.5

 

c.売上実績

 当事業年度の売上実績は次のとおりであります。なお、当社はサイバーセキュリティ事業の単一セグメントであるため、事業部門別に記載しております。

 

事業部門

当事業年度

(自2021年4月1日

至2022年3月31日)

前年同期比(%)

コンサルティング(千円)

1,202,622

143.7

教育(千円)

808,016

143.0

セキュリティソリューション(千円)

1,188,067

141.5

ITソリューション(千円)

1,192,611

163.3

合計(千円)

4,391,317

148.9

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自2020年4月1日

至2021年3月31日)

当事業年度

(自2021年4月1日

至2022年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

兼松エレクトロニクス株式会社

375,759

12.7

732,858

16.7

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において認識及び分析・検討したものであります。

 

a.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者により、一定の会計基準の範囲内で、かつ、合理的であると考えられる見積りについては、過去実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは次のとおりであります。

 

 

(繰延税金資産の回収可能性)

 当社は、繰延税金資産の回収可能性を定期的に検討しております。その判断に際して将来の課税所得を合理的に見積り、将来の税負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲内で繰延税金資産を計上しております。回収可能と認められない金額については、評価性引当額を計上しております。

 

(進捗度に基づく収益認識)

 当社では、コンサルティング事業のコンサルティングサービスおよびセキュリティソリューション、ITソリューション事業の一部サービスは、一定期間にわたり履行義務が充足される取引と判断し、当該期間に応じた進捗度に基づき収益を認識しております。

 

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

b.経営成績等

(売上高)

 当事業年度の売上高は4,391,317千円(前事業年度2,948,871千円)となり、前事業年度に比べ1,442,445千円増加しました。主な変動要因については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①重要な経営指標の状況及び③経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

(売上原価・売上総利益・売上総利益率)

 当事業年度の売上原価は3,031,047千円(前事業年度2,037,143千円)となり、前事業年度に比べ993,904千円増加しました。この主な要因は、売上高の増加によるものでありますが、原価を意識した効率的な事業運営が奏功し原価率が前年同期比で0.06ポイント減少しました。

 この結果、売上総利益は1,360,269千円(前事業年度911,728千円)となり、448,541千円の増加となりました。

 

(販売費及び一般管理費・営業利益)

 当事業年度の販売費及び一般管理費は920,318千円(前事業年度668,892千円)となり、前事業年度に比べ、251,426千円増加しました。この主な要因は、人員の拡充及び売上高の拡大及び当社の知名度向上を目的とした積極的な広告宣伝活動を実施したことによります。

 この結果、営業利益は439,950千円(前事業年度242,836千円)となり、197,114千円の増加となりました。

 営業利益は前事業年度に比べ81.2%の大幅な増加となっております。

 また、重要な経営指標と位置付けている営業利益率は、10.0%(前事業年度8.2%)となりました。

 

(営業外損益・経常利益)

 当事業年度の営業外収益は12千円(前事業年度218千円)となり、205千円の減少となりました。営業外費用は2021年12月20日付の東京証券取引所マザーズ上場にあたり、上場関連費用等を計上したことにより、25,632千円(前事業年度3,684千円)となり、21,947千円の増加となりました。

 この結果、経常利益は414,331千円(前事業年度239,370千円)となり、174,961千円の増加となりました。

 

(特別損益、法人税等、当期純利益)

 当事業年度において、特別利益及び特別損失は計上しておらず、税引前当期純利益は414,331千円(前事業年度239,370千円)、法人税等は153,232千円(前事業年度71,713千円)となりました。

 この結果、当期純利益は261,099千円(前事業年度167,657千円)となり、前事業年度に比べ93,441千円の増加となりました。

 

 

c.キャッシュ・フローの状況

 キャッシュ・フローの状況分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ④キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

d.経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

e.資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社は、事業運営上必要な資金を安定的に確保するために、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等でバランスよく調達していくことを基本方針としております。これらの資金調達方法の優先順位については、調達時期における資金需要の額、用途、市場環境、調達コスト等を勘案し、最適な方法を選択する方針であります。なお、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は1,146,528千円となっており、当面事業を継続していく上で十分な流動性を確保しております。

 

f.経営者の問題意識と今後の方針について

 当社が今後事業を拡大し、収益性を確保しながら持続的な成長を図るためには、経営者は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対処していく必要があると認識しております。それらの課題に対応するため、経営者は常に市場におけるニーズや事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、当社の経営資源を最適に配分し、最適な解決策を実施していく方針であります。

 

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