業績

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

  

(1) 分析の前提

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、当社グループの連結財務諸表に基づいて実施されております。当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

連結財務諸表の作成にあたっては一部に見積りによる金額を含んでおりますが、見積りにつきましては、過去実績や状況に応じ合理的と考えられる要因等に基づいており、妥当性についての継続的な評価を行っています。しかしながら、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表に影響を与え、より重要な経営判断や見積りを必要とする会計方針は以下のとおりであります。

 

 a. 貸倒引当金

 債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権につ

いては個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。

相手先の財政状態が悪化し支払能力が低下した場合、追加の引当金を計上する可能性があります。

 b. 固定資産の減損

 市場価格、営業活動から生ずる損益等から減損の兆候が識別された場合、将来の事業計画等を考慮して、減損

損失の認識の判定を行い、減損損失を認識すべきであると判定した場合は帳簿価額を回収可能価額まで減額し、
 減損損失を計上しております。

 将来の市況悪化等により事業計画が修正される場合、減損処理を行う可能性があります。

 c. 投資有価証券・関係会社株式

市場価格のない投資有価証券又は関係会社株式を所有しており、実質価額が取得原価に比べ50%程度以上低下した場合には相当の減額を行うこととしている。ただし、非上場の子会社株式の実質価額について、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合には、期末において相当の減額を行うこととしております。
 実質価額は、通常は、一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成した財務諸表を基礎に、原則として資産等の時価評価に基づく評価差額等を加味して算定した1株当たりの純資産額に所有株式数を乗じた金額ですが、会社の超過収益力や経営権等を反映して、1株当たりの純資産額を基礎とした金額に比べて相当高い価額が実質価額として評価される場合があるものとしております。
 超過収益力については、四半期毎に、会社の業績等を把握するとともに将来の事業計画に基づく決算予測数値との比較分析を実施すること等により、当該超過収益力の毀損の有無を確認しております。なお、今回取得した株式の取得価額はコントロールプレミアムで構成されており、超過収益力は考慮できないことから、当該株式の時価は零であると判断しております。また、赤字決算が続く中で、将来の事業計画等を考慮して、回復可能性がないことから、減損するものと判断しています。
 なお、将来の市況悪化または投資先の業績不振等により、現在の帳簿価額に反映されていない損失が生じ、減損処理を行う可能性があります。

 d. 繰延税金資産

 財務諸表と税務上の資産または負債の額に相違が発生する場合、将来減算一時差異に係る税効果について、繰

延税金資産を計上しております。繰延税金資産のうち、実現が不確実であると考えられる金額に対し評価性引当

額を計上して繰延税金資産を減額しております。

 繰延税金資産の実現の可能性により、評価性引当額が変動し損益に影響を及ぼす可能性があります。

 

なお、上記a~dについては、国内外における新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響について、2023年3月期にわたって影響が続くものと仮定し、足元の実績をもとに当初の事業計画値に反映し会計上の見積りを行っております。

当社グループの連結財務諸表作成にあたって採用しているその他の重要な会計方針は、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

当社グループは、AP事業を主要な事業としており、他の事業セグメントの重要性が乏しいため、セグメント情報の記載を省略しております

本項に記載した将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(2) 当社グループの事業に影響を与える経営環境に対する評価

当社グループは、機械(コンピュータやロボット)の「眼」に相当する人工知覚のアルゴリズムの研究開発とライセンス提供を行っております。人工知覚は機械の「脳」に相当する人工知能と並び相互補完するDeep Tech(深層技術)として、機械が自律的に機能できるように進化させる技術です。 

当社グループの基幹技術は、独自のSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術であり、機械が動きながらリアルタイムでの位置認識と地図作成を行うものです。2021年3月期には、当業界における当グループの優位性を強化するため、同研究分野を世界的にリードしている独ミュンヘン工科大学発のArtisense Corporation(本社:米国カリフォルニア州、以下アーティセンス社)をグループ会社化しました。これにより、アーティセンス社の独自技術である次世代アルゴリズム(直接法SLAM)や、人工知覚と人工知能の融合技術(GN-net)等を販売ラインナップに加え、より幅広い顧客ニーズへの対応を強化しました。加えて、顧客の開発プロセスを短縮化する開発パッケージ(VINS)をアーティセンス社から市場投入し、最終製品の早期化を後押しすることで製品ライセンス売上の拡大を見込んでおります。中長期でのロボティクス・自動運転領域の発展と社会変化を見据えて、より革新性の高い人工知覚技術をアーティセンス社と共同で推進してまいります。 

経営体制については、グローバルにおける機動的な執行及び短期と中長期の二軸経営の強化を目的として複数代表取締役体制の採用をしております。これにより代表取締役CEOの項がアーティセンス社を含む当社グループの事業経営を統括し、代表取締役大野智弘は同じく創業メンバーであるCTO John Williamsと共に中長期の成長に向けた次世代Deep Techへの投資や新領域強化を目指します。 

事業戦略については、ロボティクス関連産業の発展と人工知覚技術の市場拡大が急激に進むことを見据えて、代替や置き換えが困難なアルゴリズム層への集中を行なっています。中長期的には、最終製品の普及にともなう製品ライセンス売上の拡大を目指しており、市場成長性が極めて高い自動制御ロボット・自動運転自動車・モバイルセンサー・デジタルマップ等の領域を中心に、製品化確度が高い案件の大型化に注力をしています。加えて、販売戦略として、人工知覚と補完性が高いセンサ・半導体企業、システムインテグレータ、技術商社との提携拡大を通して、販売チャンネルとラインナップの拡大を進めています。 

 

(3) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討

① 経営成績

顧客製品化に向けた開発案件のフェーズ進捗に伴う収入増加及びより幅広い適用領域での案件拡大により、売上の回復基調を継続しております。

アーティセンス社の子会社化を含むグローバル規模での体制拡大に伴い、販売費及び一般管理費は557,727千円(前年同期比14.2%増)に増加し、主な内訳は人件費225,701千円、経費及び償却費203,814千円、研究開発費128,211千円であります。

その他、アーティセンス社を子会社化するまでの期中損益の取り込み等による持分法による投資損失403,780千円、アーティセンス社子会社化に伴う段階取得に係る差損50,183千円及び減損損失1,474,759千円が発生しております。(なお、個別決算においては、アーティセンス社に対する投融資の評価減として関係会社株式評価損1,477,147千円及び貸倒引当金繰入額768,076千円を計上しております。)

この結果、当連結会計年度の売上高は271,959千円(前年同期比112.7%増)、営業損失は433,078千円(前年同期は営業損失451,171千円)、経常損失は681,217千円(前年同期は経常損失1,575,840千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は2,237,129千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失1,608,900千円)となりました。

 

(4) 生産、受注及び販売の状況

①生産実績

 当連結会計年度における生産実績は、当社グループ全体の事業活動において重要性が乏しいため、記載を省略しております。

 

②受注実績

 当連結会計年度における受注生産に関する実績は、当社グループ全体の事業活動において重要性が乏しいため、記載を省略しております。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。

(単位:千円)

セグメントの名称

販売高

前年同期比(%)

AP事業

271,959

112.7%

合計

271,959

112.7%

 

 

(単位:千円)

顧客

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高

割合

販売高

割合

ソフトバンク株式会社

71,800

56.2%

75,000

27.6%

エレマテック株式会社

16,936

13.2%

―%

株式会社NTTドコモ

―%

64,144

23.6%

 

(注)前連結会計年度又は当連結会計年度の総販売実績に対する割合が10%未満の場合、該当する連結会計年度の実績値の記載を省略しております。

 

② 財政状態

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は754,455千円(前連結会計年度末比605,206千円減)となりました。これは主に、現金及び預金が減少(同626,554千円減)したことによるものであります。

また、固定資産は15,694千円(前連結会計年度末比164,982千円減)となりました。これは主に、長期貸付金が減少(同176,753千円減)したことによるものであります。

以上の結果、資産合計は770,149千円(前連結会計年度末比770,189千円減)となりました。

 

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は125,448千円(前連結会計年度末比43,566千円増)となりました。これは主に、契約負債の増加(同14,438千円増)、未払金の増加(同10,521千円増)、未払法人税等の増加(同14,857千円増)及び預り金の増加(同11,661千円増)によるものであります。

また、固定負債は6,716千円(前連結会計年度末比6,716千円増)となりました。これは、繰延税金負債の増加によるものであります。

以上の結果、負債合計は132,164千円(前連結会計年度末比50,282千円増)となりました。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産は637,985千円(前連結会計年度末比820,472千円減)となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失(2,237,129千円)と、株式発行に伴う資本金及び資本準備金の増加(計1,473,353千円増)によるものであります。

 

③ キャッシュ・フロー

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、514,967千円の支出(前年同期は349,811千円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失2,203,841千円、減損損失1,474,759千円、持分法による投資損失403,780千円、段階取得に係る差損50,183千円によるものです。

 
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 投資活動によるキャッシュ・フローは、137,481千円の支出(前年同期は705,604千円の支出)となりました。これは主に、貸付による支出328,269千円及び連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入188,301千円によるものです。


(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 財務活動によるキャッシュ・フローは9,395千円の収入(前年同期は1,777,535千円の収入)となりました。こ
れは主に、株式の発行による収入22,112千円によるものです。


 以上の他、現金及び現金同等物に係る換算差額の影響もあり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末と比べ626,554千円減少し、604,424千円となりました。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性に関する分析

当社グループは、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金政策の基本方針とし、事業展開および研究開発に係る資金需要に対して機動的に対応できるだけの十分な現金及び現金同等物の保有を図っております。

当社グループは、アルゴリズムの研究開発による事業を行っていることから運転資金の大部分は研究開発費を含む人件費関連コストであり、かつ少数の従業員での事業展開を行ってきております。したがって、必要となる運転資金の水準は相対的に低く、資金需要を満たすための資金は、原則として、営業活動によるキャッシュ・フローを財源としますが、ロボティクス・自動運転・ドローン等多くの産業で自動化技術のニーズが高まりAP(人工知覚)関連産業の規模拡大が見込まれる中で、AP(人工知覚)市場における専業独立企業としての独占的なシェアの維持・更なる拡大を推進するための中長期的な経営体制を構築するため、金融機関からの借入・新規株式発行を含む資金調達の実行を検討致しました。

このような方針の下、2022年5月には銀行借入2億円を実行致しました。これにより、顧客製品化案件の拡大を含む当社グループの中長期における飛躍的な成長を目指してまいります。

 

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