(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
なお、当事業年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載の通りであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当事業年度における我が国の経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の収束時期は未だ不透明な状況でありますが、官民一体の感染防止対策が行われる中で正常化に向かっており、また海外経済が回復基調にあることも背景に景気は緩やかに持ち直す動きを見せております。一方で、製造・物流業を中心に国内の景気回復が進む中、半導体をはじめとした部品不足が継続していることに加え、ウクライナ情勢による地政学リスクの高まりや原材料・エネルギー価格の高騰、グローバルサプライチェーンの混乱が経済活動への懸念材料となっており、足元では欧米各国がインフレ対策として金融引き締めに転じ金利上昇や円安をもたらしており、世界的な景気拡大にブレーキがかかることも懸念されます。
当事業年度における各事業分野の事業の状況と取り組みについて、以下に記載いたします。
1)組込み関連事業につきましては、車載向け組込み関連開発の需要が順調に拡大を続け、自動運転、AUTOSAR、モデルベース等の技術を活用した開発案件の売上は堅調に推移しました。一方、産業機器に係る組込み開発においては、機器メーカーの新製品開発や製品改良、製品開発の計画に期初以降の慎重な姿勢が継続し、今後も開発投資の動向を注視して参ります。このような状況の下、車載組込み関連開発におきましては、大手自動車メーカーが掲げるソフトウエアファーストの推進や国際的なカーボンニュートラルの流れを受けてEVシフトが加速することにより、今後車載組込みソフトウエア開発に大きな質的変化が予測されることから、主要顧客の開発計画や予算の執行状況等に十分な注意を払いながら業績拡大を目指して参ります。
2)製造・流通及び業務システム関連事業につきましては、コロナ禍において対面営業や顧客先対応業務の制限が当該事業推進へ多少の影響を与えたものの、オンラインによる営業活動やウェビナー等の新しい営業手法も定着し、生産管理パッケージソフトウエア及び製造実行管理パッケージソフトウエアの関連開発の売上を中心に当該関連開発の売上は順調に推移し、今後も積極的に受注と売上の拡大を目指して参ります。また、国内製造業の競争力強化を目的とした事業のデジタル化のためのシステム投資は引き続き活発な状況にあり、産業系システム関連開発の売上は堅調に推移いたしました。今後は、事業のデジタル化に加えSDGsの重要テーマであるカーボンニュートラル実現に向けた企業の取り組みを商機と捉え、提案活動を積極展開し新規・既存顧客双方からの受注拡大を目指すと共に、当社ソリューションノウハウの見える化を進め顧客毎のシステム開発投資のニーズに柔軟に対応し、更に業績の拡大を目指して参ります。
3)金融・公共関連事業につきましては、前期に比べ開発要員の稼働状況が通常状態に回復し、公共関連事業において新たな開発案件を積極的に受注したことにより、事業環境は堅調に推移しました。今後は既開発案件の改修・改造に加え、2021年9月に新設されたデジタル庁が推進する「行政のデジタル化(デジタル・ガバメント実行計画等)」の関連案件を視野に、顧客やパートナー企業との信頼関係を築きながら安定的・継続的な受注・売上を確保して参ります。
4)全社的取り組みにつきましては、技術開発力の持続的な発展のために人材育成へ注力することをテーマに進めて来た品質管理手法(PMBOK)について、より効率的かつ厳格な原価・工程・品質の管理手法へ進化させ、プログラム開発業務の改善による品質管理の向上により生産性と収益性の改善を進めた結果、収益の改善に一定の効果を確認しております。また、システム開発が複雑化・大規模化する中で業績拡大や付加価値の向上が期待される反面、トラブル発生時の損失リスクの拡大も懸念されることから、これまで以上に業務プロセスや管理体制の強化に努めて参ります。また、コロナ禍が推し進めた時差出勤や在宅勤務、Web会議やオンライン商談等、引き続き多様な働き方と事業活動環境づくりに挑戦して参ります。なお、当社事業の根幹をなす開発技術者の新卒・中途採用におきましても、コロナ禍においてWeb説明会やオンライン面接等、デジタル化を積極的に進め、引き続き優秀な人材の確保に努めて参ります。
当社はソフトウエア開発事業の単一セグメントであるため、当社事業区分別の業績について、以下に記載いたします。
<組込み関連事業>
民生・産業機器関連開発において、コロナ禍による新製品や新技術に関する投資計画見直しの影響はあったものの、車載向け組込み関連開発が堅調に推移し、組込み関連事業の売上高は、2,575,824千円(前期比3.3%増)となりました。
<製造・流通及び業務システム関連事業>
コロナ禍から順調に業績を回復した国内の製造・流通業における設備投資や関連する製造関連業務システム開発は、メーカーを中心とした積極投資により堅調な状況を維持し、製造・流通及び業務システム関連事業の売上高は、3,680,353千円(前期比12.7%増)となりました。
<金融・公共関連事業>
公共関連開発に係る受注及び売上はコロナ禍においても堅調を維持し、受注・開発体制も適切に対応できた結果、金融・公共関連事業の売上高は、1,047,409千円(前期比14.0%増)となりました。
この結果、当事業年度の売上高は7,303,586千円(前期比9.4%増)、営業利益は673,324千円(前期比44.6%増)、経常利益は658,582千円(前期比27.8%増)、当期純利益は442,789千円(前期比9.9%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ588,746千円増加し、1,881,756千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果獲得した資金は、1,226,824千円(前事業年度は160,036千円の支出)となりました。これは主に、税引前当期純利益が658,582千円、減価償却費が129,811千円、未払消費税等の増加額が304,516千円あったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果使用した資金は、74,050千円(前事業年度は2,545,283千円の支出)となりました。これは主に、差入保証金の回収による収入が38,096千円あった一方で、有形固定資産の取得による支出が63,500千円、無形固定資産の取得による支出が27,400千円あったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動の結果使用した資金は、564,027千円(前事業年度は1,761,006千円の収入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出が366,364千円、自己株式の取得による支出が170,920千円あったことによるものであります。
③生産・受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は、ソフトウエア開発事業の単一セグメントでありますので、セグメント別の記載に代えて、当社事業戦略上の事業区分別に記載しております。
事業区分 |
当事業年度 (自 2021年6月1日 至 2022年5月31日) |
前年同期比(%) |
組込み関連事業(千円) |
2,054,272 |
100.5 |
製造・流通及び業務システム関連事業(千円) |
2,601,880 |
114.5 |
金融・公共関連事業(千円) |
915,078 |
119.6 |
合計(千円) |
5,571,230 |
109.7 |
(注)上記の金額は製造原価によっております。
b.受注実績
当社は、ソフトウエア開発事業の単一セグメントでありますので、セグメント別の記載に代えて、当社事業戦略上の事業区分別に記載しております。
当事業年度(自 2021年6月1日 至 2022年5月31日)
事業区分 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
組込み関連事業 |
2,476,208 |
98.0 |
360,832 |
77.2 |
製造・流通及び 業務システム関連事業 |
3,644,390 |
109.9 |
892,631 |
108.1 |
金融・公共関連事業 |
1,067,147 |
109.5 |
208,546 |
95.9 |
合計 |
7,187,746 |
105.4 |
1,462,010 |
96.8 |
(注)上記の金額は、「収益認識に関する会計基準」等によらず、ソフトウエア開発又はソフトウエア開発に係る役務提供が完了した時点での金額を記載しております。
c.販売実績
当社は、ソフトウエア開発事業の単一セグメントでありますので、セグメント別の記載に代えて、当社事業戦略上の事業区分別に記載しております。
事業区分 |
当事業年度 (自 2021年6月1日 至 2022年5月31日) |
前年同期比 (%) |
組込み関連事業(千円) |
2,575,824 |
103.3 |
製造・流通及び業務システム関連事業(千円) |
3,680,353 |
112.7 |
金融・公共関連事業(千円) |
1,047,409 |
114.0 |
合計(千円) |
7,303,586 |
109.4 |
(注)1.「収益認識に関する会計基準」等を当事業年度の期首から適用しております。このため、前年同期比は当該会計基準等適用前の前年同期の実績値に対する比率であります。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。
相手先 |
前事業年度 (自 2020年6月1日 至 2021年5月31日) |
当事業年度 (自 2021年6月1日 至 2022年5月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
株式会社ネクスティエレクトロニクス |
506,023 |
7.6 |
857,058 |
11.7 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たりまして、経営者により、一定の会計基準の範囲内で、かつ合理的と考えられる見積りが行われている部分があり、資産・負債、収益・費用の金額に反映されております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
なお、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載の通りであります。
②当事業年度の経営成績の分析
「(1)経営成績等の状況の概況 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載の通りであります。
③経営成績に重要な影響を与える要因について
当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性のあるリスクにつきましては、「2 事業等のリスク」に記載の通りであります。
④資本の財源及び資金の流動性についての分析
a.資金需要
当社の主な資金需要は、運転資金、借入の返済及び利息の支払い、並びに法人税の支払等であります。
b.資金の源泉
当社は、必要な資金を主として営業活動によるキャッシュ・フローである自己資金により充当し、負債と資本のバランスに配慮しつつ必要に応じて金融機関からの借入を実施しております。
c.キャッシュ・フロー
「(1)経営成績等の状況の概況②キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
当社の事業活動により生じた利益につきましては、手元資金、成長投資、株主還元の順に優先順位を置きながら当社の事業環境や成長ステージを考慮しつつバランスよく運用・活用して参ります。当社事業の運営及び維持拡大に必要な運転資金となる手元資金と研究開発や設備に必要な成長投資につきましては、原則的に営業キャッシュ・フローの範囲で賄っておりますが、資金需要の季節性に配慮し金融機関からの借入も併せて対応しております。
なお、事業拠点の取得等の高額な設備投資やM&A等の資金につきましては、内部留保に加え増資や金融機関からの借入等により賄って参ります。
株主還元につきましては、手元資金、成長投資を優先させた上で配当性向の目標を20~30%とし、安定的な株主還元に努めて参ります。
⑤経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社事業におきましては、事業の効率性・収益性が売上高営業利益率と非常に強い関係があることから、売上高営業利益率を重要な経営指標としております。2022年5月期の売上高営業利益率は9.22%であり、2021年5月期の6.98%に比べ2.24ポイント増加いたしましたが、主な理由として、コロナ禍から順調に業績を回復した国内の製造・流通業における積極投資により、当社の製造・流通及び業務システム関連事業を中心に稼働率が上がり収益性に影響したものと考えております。
⑥当事業年度末の財政状態の分析
(資産)
当事業年度末における総資産は、前事業年度末に比べ536,998千円増加の7,811,447千円となりました。これは主に、現金及び預金が588,746千円増加、前事業年度の受取手形及び売掛金との比較において受取手形、売掛金及び契約資産が424,268千円増加した一方、仕掛品が387,025千円減少、その他に含めて表示している未収消費税等が55,759千円減少したことによるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債は、前事業年度末に比べ235,839千円増加の3,729,014千円となりました。これは主に、未払法人税等が203,373千円増加、その他に含めて表示している未払消費税等が304,516千円増加した一方、長期借入金が292,921千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べ301,158千円増加の4,082,432千円となりました。これは主に、収益認識に関する会計基準等の適用により利益剰余金の当期首残高が88,209千円増加、当期純利益の計上により利益剰余金が442,789千円増加した一方、配当金の支払いにより利益剰余金が73,800千円減少、自己株式が170,920千円増加(純資産の減少)したことによるものであります。
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