なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度における我が国の経済は、強い感染力が懸念される変異株の登場により、国内外で新型コロナウイルス感染症問題(以下「新型コロナ問題」)が長期化しているのに加え、ロシア・ウクライナ情勢の緊張が続いており、先行きが見通せない状況の中、経済回復に向けた動きは鈍く将来の見通しが不透明な状況が続いております。
当社グループはITセグメントと暮らしTechセグメントの2つから構成されております。
ITセグメントが注力する代表的市場の流通小売業界においては、新型コロナ問題による実店舗とネットを融合した顧客体験を抜本的に変えるニーズが高まり、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが求められております。
これらのニーズに対して、システム全般の導入におけるベンダーへの依存性の高さという構造の問題と、老朽化したシステムの運用保守を行う人材の枯渇及び導入企業内部でITシステムをリードできる人材の不足という人材の問題が指摘されています。また、企業の基幹システムは、2025年において21年以上経過している割合が60%、IT人材不足が約43万人といったことからも、その問題の大きさ(2025年問題)が示されます(出典:2018年9月経済産業省DXレポート)。
前述の問題の本質的な解決に向け、当社は2021年12月に「Redx」を発表しました。ユーザー主導でのDX推進をコンセプトに掲げ、プラグインと呼ばれる標準ソフトウェアを用意することで、導入コスト及び維持コストのローコスト化を実現し、合わせて機能追加などの開発スピードアップを目指します。また、標準インターフェースを使うことによって、必要な業務システムを追加(モダナイズ)することで、既存の基幹システムの改修を最小限にとどめ、周辺のクラウドサービス等との連携を実現し、更に新しいDXの取り組みをしやすくします。今後も継続して、Redxを中心とした流通小売のDX推進サービスの提供を目指します。
一方、暮らしTechセグメントが注力する不動産市場においては、新型コロナ問題により喚起されたリモートワークが継続・定着しており、「新しい暮らし方」や「新しい働き方」の動きが起こっています。東京都区部における人口の増加幅は引続き減少傾向にあり、特に23区の単身者向けの物件は低調な傾向が続いております。またリモートワークの定着に伴う縮小移転のトレンドの影響が継続しており、2022年3月現在オフィスの空室率は6.37%と高止まりで推移しております(出典:三鬼商事「オフィスマーケットデータ」2022年3月時点)。
暮らしTechセグメントは従来のビジネスカテゴリーであるリノベーション、不動産仲介、オペレーション、メディアについて「つくる=リノベーション」「貸す=不動産仲介、メディア」「運営する=オペレーション」を一気通貫で行い「新しい暮らし方」や「新しい働き方」の実現を目指しております。その一環として、2022年3月に城南信用金庫が所有する社員寮のコンバージョンを行い、ワークスペース及びキッチンスタジオを備えたコワーキングスペースを併設した「goodoffice宮前平/TOMOS宮前平」を開業いたしました。
以上の結果、最終的にグループ全体の当連結会計年度における売上高は6,108百万円(前年同期比12.2%増)、営業利益は449百万円(前年同期比181.2%増)、経常利益471百万円(前年同期比193.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は291百万円(前年同期比988.3%増)となり対前年比及び当初予想に対して増収増益となりました。なお、収益認識会計基準等を当連結会計年度の期首から適用しており、当該会計基準等を適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
ITセグメント
ITセグメントは、オープンリソース株式会社が担当しており、事業の内容としてはSEサービスビジネス、請負ビジネス及び物販ビジネスの3つから構成されております。
請負ビジネスにおいては、百貨店向けの店舗物流システムや金融機関向けのリース・クレジット関連の開発の受注が堅調に推移しました。ユーザーとの直接契約による受託開発や内製化支援の案件が増えたことにより、収益が改善傾向にあります。また、2021年12月に発表をしたRedxクラウドPOSについて大規模専門店より最初の受注を獲得しており、今期の売上に貢献しております。その結果、売上は前年同期比36.5%増となりました。
SEサービスビジネスにおいては、主要顧客である流通小売・金融機関に対して以前の派遣型サービスからアウトソーシング型サービスへの転換を提案・推進することにより、付加価値の向上、サービスレベルの高度化を通じた他社との差別化を図ってまいりました。今後Redxの内製化推進施策により顧客との共同内製化サービスに置き換えてまいります。「新型コロナ問題」による顧客先事業所のリモートワーク化や自宅待機等に伴い、第1四半期、第2四半期においてはエンジニア稼働率の低下を一時余儀なくされ、その後回復しておりますが、売上は前年同期比4.3%減となりました。
物販ビジネスにおいては、店舗DXを推進するスマートデバイスを活用した店舗端末システムの販売が堅調に推移しましたが、当該期首から収益認識会計基準等を適用しており、売上高で41,710千円減少しております。その結果、売上は前年同期比29.1%減となりました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は3,123百万円(前年同期比6.6%増)、セグメント利益(営業利益)は335百万円(前年同期比101.6%増)となりました。
暮らしTechセグメント
暮らしTechセグメントは、グッドルーム株式会社が担当しており、事業の内容としては、リノベーションビジネス、不動産仲介ビジネス、オペレーションビジネス、メディアビジネスの4つで構成されております。
リノベーションビジネスでは、営業体制を強化し自社運営メディア「goodroom」を活用したTOMOSリノベーションパッケージの拡販による受注が順調に進み売上が拡大しました。その結果、売上は前年同期比13.7%増となりました。
不動産仲介ビジネスでは、メディアビジネスとの連携を強化し、TOMOSブランド物件の仲介に注力する方針として、選択と集中により事業の収益性を改善させました。その結果、従来からの一般物件の取り扱いが減少し売上は前年同期比16.1%減となりました。
オペレーションビジネスでは、当連結会計年度に新たに新橋(東京)、渋谷駅前(東京)の2拠点をシェアオフィスとして開設しました。「新型コロナ問題」により引続きシェアオフィスの顧客獲得への影響があり、既存テナントの一部が退去するなど稼働率が低下しましたが、第3四半期以降で共用会議室のレンタルオフィスへの転用や価格を含めた販売施策の見直しなどにより稼働率は大幅に改善し、売上は前年度同期比124.9%増となりました。
メディアビジネスでは、「goodroom」を活用した賃貸管理会社向けの集客サービスの取り扱いに合わせて、リノベーションの販売も取り扱う方針とし、賃貸管理会社との連携を強化しました。一方で、不動産仲介ビジネスと同様で、TOMOSブランド物件に注力し一般物件の取り扱いが減ったため、売上は前年同期比31.8%減となりました。
以上の結果、売上高は2,985百万円(前年同期比18.8%増)、セグメント利益(営業利益)は76百万円(前年同期はセグメント損失(営業損失)63百万円)となりました。
生産、仕入、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1. セグメント間取引については相殺消去しております。
2. 金額は、製造原価によっております。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1. セグメント間取引については相殺消去しております。
2. 金額は、仕入価格によっております。
3. ITセグメントにおいて、著しい変動がありました。これは主に収益認識会計基準等の適用によ
って41,710千円が減少したことによるものであります。
③ 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.ITセグメントの受注残高において、著しい変動がありました。これは主に請負ビジネスにおいて大型の開発案件を受注したことによるものであります。
3.暮らしTechセグメントの受注残高において、著しい変動がありました。これは主に大型案件以外の案件の受注件数が増加したことによるものであります。
④ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
(2) 財政状態
(資産)
当連結会計年度期末における総資産は3,487百万円となり、前連結会計年度末に比べ481百万円増加いたしました。これは売上債権の回収により現金及び預金が430百万円増加、ソフトウェアが44百万円増加した一方で、未収還付法人税等が53百万円減少したことなどによるものであります。
(負債)
当連結会計年度期末における負債は1,414百万円となり、前連結会計年度末に比べ120百万円増加いたしました。これは主に未払法人税等が103百万円増加、未払消費税等の増加等に伴いその他流動負債及び契約負債が110百万円増加した一方で、買掛金が81百万円減少、短期借入金が43百万円減少、長期借入金が48百万円減少したことなどによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度期末における純資産は2,072百万円となり、前連結会計年度末に比べ360百万円増加いたしました。これは主に当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益によって利益剰余金が291百万円増加、第三者割当増資等により資本金及び資本剰余金が57百万円増加したことなどによるものであります。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前期末と比べ430百万円増加し、1,440百万円(前連結会計年度比42.6%増)となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、当連結会計年度における営業活動の結果、収入は507百万円(前連結会計年度は46百万円の収入)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益が464百万円、未払法人税等の増加等に伴いその他の負債が111百万円増加した一方で、仕入債務が81百万円減少したことなどによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、当連結会計年度における投資活動の結果、支出は44百万円(前連結会計年度は63百万円の支出)となりました。これは主に無形固定資産の取得による支出が46百万円あった一方で、オープンリソース株式会社が2021年4月1日にアネックスシステムズ株式会社の株式を取得し、2021年5月12日を効力発生日として吸収合併したことによる収入が18百万円あったことなどによるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、当連結会計年度における財務活動の結果、支出は33百万円(前連結会計年度は146百万円の収入)となりました。これは主に短期借入金の返済による支出が43百万円、長期借入金の返済による支出が48百万円あった一方で、第三者割当増資に伴う株式の発行による収入が56百万円あったことなどによるものであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、事業運営上必要な資金を安定的に確保し、グループ内で効率的に活用することとしており、原則として自己資金を中心に賄い、必要に応じて金融機関からの借入等による資金調達を行うことを基本としております。
当社グループは現段階を成長過程の途上と考えており、その後の営業活動で得た資金は既存事業の安定的成長及び新規分野の成長の資金にするとともに、成長の基礎を作る研究開発に充当する方針としております。またその成長資金の資金需要を充たすために、自己資金に加えて金融機関からの借入を活用し、株主価値が希薄化する安易な株式市場からの調達は慎重に対処することとしております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、下記については重要なものとして、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載しております。
①繰延税金資産の回収可能性
②固定資産の減損
なお、「新型コロナ問題」の影響に関する会計上の見積りについては、第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)に記載しております。
その他の重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は以下のとおりであります。
③完成工事補償引当金
完成工事高に対して将来予想される契約不適合責任費用を過去の補償実績を基礎にした一定の比率で算定し、完成工事補償引当金として計上しています。
引当金の見積りにおいて想定していなかった完成工事の不具合による補償義務の発生や、引当の額を超えて補償費用が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。一方、実際の補償費用が引当金の額を下回った場合は引当金戻入益を計上することになります。
④履行義務が一定の期間にわたり充足される場合の売上高及び売上原価の計上
ソフトウェア請負案件及びリノベーション工事については、財又はサービスに対する支配が顧客に一定の期間にわたり移転する場合には、財又はサービスを顧客に移転する履行義務を充足するにつれて、一定の期間にわたり収益を認識する方法により売上高を計上しています。想定していなかった原価の発生等により工事進捗度が変動した場合は、売上高及び売上原価が影響を受け、当社グループの業績を変動させる可能性があります。
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