業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績

当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が続くなか、ワクチン接種の進展などがありましたが依然として厳しい状況となりました。変異株の発生による感染症の再拡大などにより、今後の景気動向については未だ先行き不透明な状況となっております。

当社については、主たる事業領域であるPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)関連業界において、いわゆる「団塊の世代」がすべて75歳以上となり超高齢社会を迎える「2025年問題」を見据え、給付と負担のバランスを図りながら制度の持続可能性を確保するための医療制度改革が進む一方、高齢化に伴い慢性疾患罹患率が増加し、生活の中で生活の質(QOL)の維持・向上を図っていく必要性が高まるなど医療に対するニーズの変化が着実に進みました。

加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、医療従事者の負担が増大し十分に患者のケアができない一方、医療機関のキャパシティのひっ迫や感染症のリスクにより患者の医療機関への通院等アクセスが困難になるなど医療をめぐる情勢が極めて緊迫する中、当社が進めるPHRサービスの意義がこうした社会的課題の解決策の一つとして社会的に強く認識されることとなりました。

このような事業環境下、当社は「Empower the Patients」を事業ミッションのもと、医療関係者をはじめ、製薬企業、医療機器メーカー等とともに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応なども含めたPHRプラットフォームサービスの普及に取り組みました。

 

疾患ソリューションサービスにおいては、業界全体のDX(Digital Transformation)の加速化により製薬企業からの受注が好調なこと及び新規プロジェクトのリリースなどにより、パイプライン及び売上は着実に拡大しております。また、当社の注力領域であるオンコロジー領域にて2021年9月に乳がん患者向けに治療サポートを行うサービスをリリースしたこと、臨床研究分野にて新規PHRサービスをリリースしたこと及び既存PHRサービスの改修や機能追加を行ったことが売上増加の一因となっております。

オンコロジー領域においては、PSP(Patient Support Program)として、プラットフォームサービス「WelbyマイカルテONC」を製薬企業に展開したことや、医療機関が診療時に利用できる「WelbyマイカルテONC PRO」のリリースや機能強化を行うなどの継続した活動により更なる拡大を図っています。また、大学病院等と連携した乳がんや肺がんに関する臨床研究を推進するとともに、製薬企業スポンサーによる複数施設を対象とした臨床研究を開始しております。サービス普及の観点からは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、通院間隔が延びるなどの理由で新たに注目されている、がん患者自身のセルフマネジメント力向上や、医療機関による患者の遠隔モニタリングに対して、「WelbyマイカルテONC」導入時からのユーザーである相良病院の事例に代表される実臨床下での具体的な活用事例や、臨床研究での活用可能性について情報提供を行うなどして、がん拠点病院などを中心に普及施策を展開しております。新たな取組として、医薬品以外のオンコロジー領域周辺企業とも連携を行い患者QOL向上に向けた施策を順次開始しております。

臨床研究分野においては、株式会社インテージヘルスケアと資本業務提携を行うことで、製薬企業からの婦人科疾患での製造販売後調査案件の運営を両社共同で推進するなどPHRやePROにおいてさらなるデータ活用などを推進しております。加えて、製薬企業のマーケティング、メディカルアフェアーズ向けに当社の保有する利用者やデータベースを活用した調査サービスの開発を推進しております。

これらの結果、疾患ソリューションサービスの売上高は、817,727千円と、前年同期と比べて146,879千円(21.9%)の増収となりました。

 

Welbyマイカルテサービスにおいては、自社で新たにPHRサービスの展開を計画している顧客向けに、当社が既に保有しているPHR基盤プラットフォームのOEM提供を行う新たなサービスを開始し大型の第一号案件を受注したことや、Welbyマイカルテとの機能連携要望のある顧客向けに連携基盤の提供を行ったことなどにより今期の収益が拡大しております。今後も自社でPHRサービスを展開したい顧客の需要は旺盛であり、収益の拡大を見込んでおります。

サービス普及の観点からは、広範な顧客網を有するパートナー企業との協業を推進しております。株式会社スズケン、フクダ電子株式会社などと普及活動を継続しました。引き続き、新たに導入をする医療機関が増加するほか、これまでに導入を完了した医療機関を対象に実臨床におけるPHRの利用価値の訴求・情報提供を推進しました。また、糖尿病領域向けには株式会社三和化学研究所や各血糖測定器メーカーとの連携により、糖尿病専門医に特化した普及や利用促進が加速しております。また、PHRと電子カルテの連携推進として、富士通Japan株式会社が提供する診療所向け電子カルテとWelbyマイカルテサービスの連携を始めとした各サービスとの提携を強化することで医療の質的向上に寄与し、PHRサービスの更なる普及に取り組んでおります。Welbyマイカルテユーザーが登録したかかりつけ医療機関は2021年12月末時点で約25,500施設(無料利用施設を含み、重複を除く)となっています。なお、2021年12月末時点で各アプリの合計ダウンロード数は約92万回に達しております。

PHRサービスと他分野の協業の一環として、患者や利用者個人の健康状態や好みに合わせてパーソナライズ化された情報やユーザー体験を提供することや、そのサービス提供によるアウトカム向上(健康状態の改善)を目指すヘルスケア事業を展開しております。具体的には、生命保険分野において業務提携関係になる大同生命保険株式会社と保険契約者の生活習慣の改善に向けた取り組みや新たな保険商品・サービスの開発などを目的としたWelbyマイカルテ利用者の生活習慣・重症化予防効果についての共同研究を行った結果を踏まえ、2型糖尿病などを対象に生活習慣を改善するための保険商品と連動したサービス開発などを継続推進するとともに、対象疾患の拡大を進めております。

また、食品など関連分野においては、オンラインショッピングサービス「Welbyマイカルテモール」を運営し、Welbyマイカルテを利用する2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病患者や予防・健康管理などで利用する方々を対象に、Welbyマイカルテとのデータ連携機能に対応する血圧計などの各種測定器や食品を提供するなど、健康管理に関する様々な利用者のニーズにこたえるとともに、利用者基盤を活かした企業からの出店費や販売手数料を収益化する事業ベースを構築しました。生活習慣改善プログラムや臨床研究などへのPHRサービス利用の事業モデルを確立し、食品業界の企業と案件を推進しました。今後更なる収益化へ向けての取り組みを継続して行っております。

パーソナライズ化されたヘルスケア事業を展開するための新たな提携先として、株式会社電通と生活習慣病の予防・自己管理をおこなうPHRプラットフォームを活用したヘルスケア事業の創出・拡大、およびPHRの普及・啓発を目的に業務提携を行いました。その後、個別案件の事業化に向けた検討を本格的に開始し、食品をはじめとする健康増進・予防・未病領域や介護領域の業界と協議を行っております。本提携により両社は、日本国内におけるPHRの認知向上と活用促進に向けて、企業・自治体・学会・メディアなどとの共創ビジネスモデルを構築し、患者や利用者個人にパーソナライズされた情報やユーザー体験を提供する「パーソナライズド・ヘルスケア」の実現を目指します。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が全国民の8割に達している状況下、当社の提供する新型コロナワクチン接種前後の症状記録(問診)・管理や、市民・患者とかかりつけ医が情報連携する機能等の普及は落ち着いております。

これらの結果、Welbyマイカルテサービスの売上高は321,461千円と、前年同期と比べて127,665千円(65.9%)の増収となりました。

 

これらの結果、当事業年度の売上高は1,139,189千円(前年同期比31.8%増)、売上総利益については、683,914千円(前年同期比35.1%増)となりました。

販売費及び一般管理費については、業容拡大のためのプラットフォーム開発投資などを含めて797,038千円(前年同期比7.2%増)となりました。共通基盤での会員情報、データベース、各APIの整備を行い、PHRプラットフォーム基盤の更なる強化に取り組むための開発投資になり、こちらにより来期以降に収益性の更なる向上を見込んでおります。

営業損失は113,124千円(前事業年度は営業損失237,542千円)、経常損失は109,671千円(前事業年度は経常損失237,404千円)、当期純損失は130,675千円(前事業年度は当期純損失353,093千円)となりました。

 なお、当社は、PHRプラットフォームサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。

 

生産、受注及び販売の状況の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績

当社は、生産活動を行なっておりませんので、該当事項はありません。

② 受注実績

当社は、受注から売上高計上までの期間が短期であるため、当該記載を省略しております。

③ 販売実績

当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

 

当事業年度

(自 2021年1月1日

 至  2021年12月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

PHRプラットフォームサービス事業

1,139,189

131.8

 

(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度
(自 2020年1月1日
 至 2020年12月31日)

当事業年度
(自 2021年1月1日
 至 2021年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

興和株式会社

225,000

19.8

株式会社インテージヘルスケア

103,020

11.9

157,416

13.8

日本イーライリリー株式会社

80,924

9.4

141,360

12.4

アストラゼネカ株式会社

96,265

11.1

91,477

8.0

 

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 財政状態

① 資産

当事業年度末の資産については、総資産が1,394,108千円となり、前事業年度末と比較し126,031千円の減少となりました。

流動資産の残高は、前事業年度末に比べ141,358千円減少し、1,320,234千円となりました。主な増減内訳は、現金及び預金が137,644千円減少したことによるものであります。

固定資産の残高は、前事業年度末に比べ15,327千円増加し、73,874千円となりました。主な増減内訳は、投資その他の資産が15,327千円増加したことによるものです。

② 負債

負債については、134,830千円となり、前事業年度末と比較して27,769千円の減少となりました。

流動負債の残高は、前事業年度末に比べ20,629千円減少し、126,480千円となりました。主な増減内訳は、買掛金が36,013千円減少したことによるものであります。

固定負債の残高は、前事業年度末に比べ7,140千円減少し、8,350千円となりました。これは、長期借入金の返済による減少であります。

③ 純資産

純資産の残高は、前事業年度末に比べ98,261千円減少し、1,259,278千円となりました。主な減少内訳は、繰越利益剰余金が130,675千円減少したことによるものであります。

 

(3) キャッシュ・フロー

当事業年度末における現金及び現金同等物は、960,716千円となり、前事業年度末と比較して137,644千円の減少となりました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

① 営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、95,947千円の支出(前事業年度は110,970千円の支出)となりました。主な要因は、株式報酬費用32,413千円により資金が増加した一方で、税引前当期純損失の計上128,385千円により資金が減少したことによるものであります。

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動によるキャッシュ・フローは、34,557千円の支出(前事業年度は19,485千円の支出)となりました。主な要因は、差入保証金の差入による支出23,082千円、無形固定資産の取得による支出17,366千円によるものであります。

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動によるキャッシュ・フローは、7,140千円の支出(前事業年度は19,996千円の収入)となりました。これは、借入金の返済による支出7,140千円によるものであります。

 

 

(4) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度において当社が判断したものであります。

① 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 売上高

当事業年度の売上高は、前事業年度に比べて274,544千円増加し1,139,189千円(前年同期比131.8%)となりました。売上高の分析については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績」をご参照ください。

b. 売上原価、売上総利益

売上原価は、前事業年度に比べて96,925千円増加し455,274千円(前年同期比127.0%)となりました。売上原価の主たる増加要因は、外注費が83,061千円増加したためであります。

以上の結果、売上総利益は前事業年度に比べて177,619千円増加し683,914千円(前年同期比135.1%)となりました。

c. 販売費及び一般管理費、営業利益

販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べて53,200千円増加し797,038千円(前年同期比107.2%)となりました。主たる要因としては、業務委託費が39,966千円、給与手当が24,438千円増加したためであります。

以上の結果、営業損失は前事業年度に比べて124,418千円減少し113,124千円(前事業年度は237,542千円)となりました。

d. 営業外損益、経常利益

営業外収益は、前事業年度に比べ3,284千円増加し3,539千円(前事業年度は254千円)となりました。主たる要因は、雑収入が3,287千円増加したためであります。営業外費用は、前事業年度に比べ30千円減少し86千円(前事業年度は116千円)となり、主たる要因は、支払利息が30千円減少したためであります。

以上の結果、経常損失は109,671千円(前事業年度は経常損失237,404千円)となりました。

e. 当期純利益

当事業年度の法人税、住民税及び事業税(法人税等調整額を含む。)は2,290千円となりました。

以上の結果、当期純損失は130,675千円(前事業年度は当期純損失353,093千円)となりました。

② 財政状態の状況

「第3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 財政状態」に記載のとおりです。

③ 資本の財源及び資金の流動性

当社の運転資金については、自己資金、金融機関からの借入金、新株発行による調達資金により充当することとしております。

なお、当社の資金の流動性については、「第3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3) キャッシュ・フロー」に記載のとおりです。現時点において重要な資本的支出の予定はございません。

重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当社の財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債の報告数値、並びに報告期間における収益・費用の報告数値は、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき、見積り及び判断が必要となる場合があります。経営者は、これらの見積りについての過去実績や状況に応じて合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う会計上の見積りに与える影響は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、事業内容、事業運営・組織体制等、様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に市場動向や業界動向を注視しつつ、優秀な人材の確保と適切な教育を実施するとともに、事業運営体制の強化と整備を進めることで、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に適切な対応を図ってまいります。

⑥ 経営者の問題意識と今後の方針について

当社の経営者は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、当社が今後更なる成長と発展のためには、厳しい環境の中で、様々な課題に対処していくことが必要であると認識しております。

そのために、PHRプラットフォームサービスにおける対象疾患領域の拡大とサービスメニューの強化、及び患者PROデータ活用分野の拡大等を行ってまいります。

⑦ 経営戦略の現状と見通し

当社は設立以来「Empower the Patients」を事業ミッションに掲げ、当社のPHRプラットフォームサービスの利活用を通じて、患者及び医療者の治療継続への支援、及びアウトカムの改善に努めてまいりたいと考えております。

「患者の治療アウトカムの改善」をコアコンセプトとして、様々の医療機関と連携して患者及び医療者により良いサービスを提供するとともに、企業と連携してデータの活用を図ってまいります。

 

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