課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社グループは、「私たちは品質にコミットし、安心・安全なICT社会の実現に貢献します」、「私たちはICT社会に貢献する人材を育成します」、「私たちは多くの価値を創り、お客様と共に歓びを分かち合います」を企業理念とし、提供サービスを通じて、豊かで安全なICT社会の実現へ貢献していく事を目指しております。

 

(2) 経営戦略等

 当社グループは、品質向上のトータルサポート企業へ向けた事業領域の拡大に取り組んでおります。昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる中、大手企業を中心に、レガシーシステムを新しいシステムに置き換えるマイグレーションを行う企業が増加しています。マイグレーションを行う際、古い開発言語を現代的な開発言語に移行をしたり、複数のシステムを繋ぎ合わせるため、品質問題が発生しやすいと言われております。また、スマートフォンやタブレット等のモバイル端末は一般利用もさることながら、ビジネスでの利用も加速度的に増えてきており、今後のモビリティの時代には、高品質でセキュアなソフトウェアが求められます。

 これらのソフトウェア品質を根幹から支えるために、テストのアウトソース、自動化、オフショア、脆弱性と言った昨今のソフトウェア開発に欠かせないサービス領域の拡大が予測される中、当社グループは品質向上のトータルサポート企業を目指して参ります。

 

(3) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループが属する情報サービス業界においても、新型コロナウイルス感染症の拡大は、顧客企業のIT投資戦略に少なくない影響を与えております。ワクチン接種を始めとする感染拡大防止策により、今後徐々に景気は持ち直しに向かうことが期待されますが、変異株の発生拡大が続くなど引き続き情勢は不透明な状況にあります。しかしながらこのような環境下においても、リモートワーク、クラウド環境の導入、IoT、AI、5G、メタバースなどのDXに関連するIT投資を積極的に行う企業は確実に増加しており、DXはいまや社会の革新のための最も有益かつ一般的な活動として認知され、多くの企業がその推進によって生産性の向上を遂げております。またウクライナ情勢等の影響により、日本国内においてもサイバー攻撃が本格化しており、これらに備えるためにセキュリティ対策を行う企業も近年大幅に増加しております。これらDXやセキュリティ対策等のIT技術は、企業や社会にはかり知れない恩恵を与えると同時に、その重要性から、もはや必要不可欠な存在になりつつあり、情報サービス業界市場は今後も継続的かつ加速度的に拡大していくものと確信しております。

 このような経営環境の中で、当社グループは今後更なる成長を実現する上で以下の事項を経営課題として重視しております。

 

 ①人的資本への投資拡大

 当社グループが継続的に企業価値を向上させていくためには人的資本への投資継続が経営上の最重要課題であると認識しております。その拡充のために、リファラル採用制度等の導入による採用活発化、優秀なITエンジニアの積極採用、充実した社内研修メソッドによる未経験人材の早期戦力化、業界別ナレッジの蓄積によるキャリア人材の高スキル化及び外部人材の有効活用といった諸施策を積極的に展開することで、現状のIT人材不足が続く厳しい環境下においても、引き続き高い成長率を維持し事業規模の拡大に努めてまいります。

 

 ②エンタープライズ領域拡大

 デジタル技術の発展により、旧来の大規模基幹システムが大容量高速通信時代に対応できない等のシステム老朽化問題が発生しており、これに起因するシステム等の切り替えの作業「マイグレーション」の増加によって、特に歴史のある大手企業は多大な負担を強いられております。当社では現状拡大を続けるソフトウェアテスト市場の中でも、これら基幹システムを指す「エンタープライズ系」領域の市場は、特に拡大可能性の高い最重点市場であると認識し、当市場の早期開拓を重要課題ととらえております。この開発拡大のために、経験豊富なハイレイヤーの採用、専門部署の設置、エンタープライズ領域に強い外部企業との取引拡大及び業界固有(特に金融業界)ナレッジの蓄積を推し進め、顧客囲い込みによる参入障壁構築と案件規模の拡大及び利益率の向上を目指してまいります。

 

③知的財産の拡大

 あらゆる要素がデジタル化されていく中で、従前の有形固定資産の設備投資に頼らず、知的財産への投資を通じてビジネスモデルを抜本的に変革し、高い利益率で新たな成長を実現する企業が現れてまいりました。一方で、これら新たなビジネスモデルにより既存ビジネスが破壊される事例(デジタルディスラプション)も増加しております。当社においても、今後これら外部環境の変化に対応しつつ高い利益率を維持するためには、知的財産への投資を拡大することが必須であると認識し、これを欠くことのできない重要課題の一つとして位置付けております。この推進のために、当社が強みとするソフトウェアテストのノウハウ、エンジニア教育のノウハウ及び各業界における固有ナレッジの継続的な積上げはもちろんのこと、2022年2月リリースのテスト自動化ツールT-DASH(※1)及び拡大するサイバーセキュリティ市場獲得のため2022年3月にリリース致しましたクラウド型のセキュリティ対策サービスPrimeWAF(※2)の利用拡大、従前から取組んでおります自社開発のソフトウェア品質向上のためのプラットフォームQbook(※3)の運営を通じて、顧客及びエンジニアの囲い込みを進め、強固な参入障壁の構築を図ってまいります。

 また今後はすでにリリースしたソフトウェアを広く展開し、ストック収入増加による経営の安定化を進める一方で、新規ソフトウェア開発や新技術企業とのアライアンスも積極的に行い、新たな企業価値の創造に努めてまいります。

 

④M&Aによる拡大と組織強化

 加速するIT化、デジタル化の影響により今後も国内ソフトウェアテスト市場は高い成長率を維持するものと見込んでおりますが、それゆえに今後のIT人材の不足傾向も明らかであり、従前のままの拡大戦略を踏襲すれば機会損失のリスクも相応に高まるものと考えております。加えて気候変動リスクや地政学的リスクも近年大きく上昇しております。当社ではこれらのリスクに対応するために、M&Aによる事業ポートフォリオの更なる拡大が必須であると認識し、これを重要課題の一つに位置付けております。

 現状当社グループは、「品質向上のトータルサポート企業」をスローガンとして掲げ、ソフトウェアテストサービス事業を提供する当社を中心に、Web/モバイルアプリ開発サービス事業を提供する「バルテス・モバイルテクノロジー株式会社」、「株式会社アール・エス・アール」、「株式会社ミント」及びオフショアサービス事業を展開する海外現地法人「VALTES Advanced Technology,Inc.」等、シナジー効果の最大化を目的に、主に既存技術領域にてグループの拡大を続けてまいりました。

 今後も引き続きこれら既存技術領域における水平型M&Aを進め、エンジニアの確保とサービスの多面化によって、売上規模の継続的拡大を目指してまいります。その一方で、新規技術領域のM&Aやシード・アーリーステージのベンチャー企業に対しても、従前以上に積極的に投資を行い、多角化型の事業ポートフォリオ構築で、外部環境に対するレジリエンスとダイナミックケイパビリティ(自己変革能力)の向上を目指してまいります。

 また今後はM&Aに適した組織体制の確立(グループガバナンスの向上)を推し進め、M&A及びPMIの高速化によってグループの成長加速とガバナンス水準向上による企業価値拡大に努めてまいります。

 

 

 

※1 T-DASH

非エンジニアでも“カンタン”にWebアプリケーションの動作確認を行うことが可能なテスト自動化ツール。

従来のソフトウェアテストの自動化を阻んでいた、メンテナンスコスト・技術的難易度に対し、T-DASHは、コードを書かず、”日本語”で作られたテストケースと、画面を定義することで自動化スクリプトを作成することができ、“回数無制限”でテストを自動実行することが可能なツール。当社試算で手動テストと比較し、最大50%のコスト削減が可能。

 

※2 PrimeWAF

当社が展開するクラウド型のセキュリティ対策サービス。

Webサイトを始めとしたWebアプリケーションに対する様々なサイバー攻撃を可視化、防御ができ、また非常に簡単に導入可能なクラウド型のWAFサービス。初期費用0円、通信量に対する従量制で、定額制に対し無駄なく提供が可能。「WAF(Web Application Firewall)」は、一般的なファイアウォールでは防げないWebアプリケーションに対する不正な攻撃を防御するセキュリティシステムとして注目されている。

 

※3 Qbook

当社が運営するソフトウェア品質向上のためのプラットフォーム。

URL https://www.qbook.jp/

“品質”を意味する「Quality」と、”知識の源”を意味する「book」に由来し、ソフトウェア開発やテストに関わる人に向けて、現場で役立つ情報を発信するWebサイト。日々の知識向上につなげるコラム提供やソフトウェア品質の勉強用書籍の検索など、品質のスキルアップや現場の仕事で活用できるコンテンツを掲載。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高増加率、売上総利益率、人材の確保を重要な経営課題と認識していることから営業利益率を重視しております。

 

 

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