研究開発活動

5【研究開発活動】

当社グループは、持続的な成長と技術革新の実現をめざし、研究開発活動に注力しております。

当連結会計年度は、引き続き徹底した新型コロナウイルス感染症対策の実施と、デジタルツールの積極的な導入・活用によるデータ駆動型研究開発活動の推進を通して当社グループの研究開発中核拠点である「NICCA イノベーションセンター」(以下「NIC」)での研究開発活動を維持・高度化することにより、ビジネスパートナーとの距離を縮め、社内外の情報やアイデアを組み合わせることで、新しい製品と事業の創出に取り組んでまいりました。また、中長期重点領域である「EHD(E/環境、H/健康・衛生、D/先端材料)」における開発においては、全世界の共通課題であるSDGsの達成に向け、当社の技術力を活かし、各分野でのオープン・イノベーションを推進しており、実績化と横展開の加速による早期事業化を進めております。

さらに、化学品事業の界面科学研究所と化粧品事業の毛髪科学研究所が一体となり、日華化学(中国)有限公司の研究開発部門、台湾日華化学工業股份有限公司の先端研発センター、NICCA KOREA CO.,LTD. の研究開発部門など、海外子会社の研究開発部門と連携しながら相乗効果を発揮することで、既存事業の強化と新展開、新規事業の創生を進めております。

当連結会計年度における特許登録件数は、国内で18件、海外で19件となりました。特許の期間満了及び不要特許の整理を実施したため、当連結会計年度末において当社の保有する特許登録件数は、国内は20件減少して、208件となり、海外は9件増加して104件となりました。

当連結会計年度の各セグメント別研究開発活動の状況は、次のとおりです。

研究開発費については、当社グループの研究開発費を各セグメントに配分したもので、当連結会計年度の総額は2,166百万円であります。

 

(1)化学品事業

当連結会計年度における研究開発費は、1,865百万円となっております。

①Eの領域

当社主力の繊維加工用薬剤では、これまでも有機溶剤を含まず環境と健康により優しい水系ウレタン樹脂やフッ素フリー系撥水剤、常温洗浄が可能で一般的な高温洗浄と比較しCO₂排出量の削減が期待される金属洗浄剤など、業界に先駆けて環境対応に取り組んでまいりました。特に今期は、二酸化炭素排出削減につながる繊維加工提案であるSDP(Smart Dyeing Process)関連での共同開発が進み、紙資源のリサイクル技術関連では、第16回福井県科学技術大賞を「キャタライザー技術」で受賞、環境対応洗浄剤関連知財では、令和3年度近畿発明協会会長賞を「スプレー洗浄剤」で受賞致しました。

今後は、益々要望が高まっている環境対応に向け、非石油ベース・天然由来原料等を活用した製品そのものの環境対応をさらに進めると共に、CO₂排出量削減に貢献する製品ならびにソリューション開発に注力し、持続可能な社会と循環型経済の実現に寄与してまいります。

②Hの領域

業界でも画期的な新製品として、2020年度に立ち上げた開発プロジェクトから、全素材対応の耐洗濯性抗ウイルス加工処方(特許出願中)を上市致しました。本処方はこれまで対応ができなかった素材に対しても耐洗濯性の抗ウイルス性を付与できるものであり、アパレル製品の他、インテリア・産業資材など新用途への展開が期待されます。新領域開拓では衛生関連製品向けの薬剤採用が進み、医療分野の洗浄領域における展開進展と人工核酸製品のラインナップ拡充を行うとともに、次世代医療である個別化医療に有用な体外診断薬キット開発では、複数の医工系大学との連携強化により性能向上が進み、研究試薬としての早期実績化が見えてくるなど、引き続き世界中の人々の健康と豊かな暮らしの実現に貢献してまいります。

③Dの領域

光学材料分野では、スマホなど光学レンズに使用される特殊樹脂原料が堅調に伸びるとともに、今後の業界トレンドに沿った新たな開発が進みました。また、引き続きDX・5G通信分野では、フィルムコンデンサー向けマスキングオイルなどの採用が進んでおり、高周波領域での低誘電損失が特徴のフッ素化学品の開発につきましても、お客様とのコラボレーションを通じて推進しており、引き続き数品目の上市を予定しております。子会社の大智化学産業で既に開発、実用化している環境にやさしい水系でリサイクル可能なクーラント剤のグローバル展開も加速させることにより、IoTやAIなど最新技術の活用がますます進行するスマート社会の進展に寄与してまいります。

研究開発体制は、日本、中国・台湾、韓国、インドネシアの5つの拠点で約280名の研究人員を擁しておりますが、現地ニーズ開発はナショナルスタッフ主導で加速すべく、現地のお客様に近いナショナルスタッフを部長級に配置しました。また、今期からCTO室を設置、国内外の技術マーケティング、アライアンスの他、特許などIP(知的財産)全般において本社知財部門と連携、横串を通す体制を整備いたしました。人材開発面でも研究人員の能力や経験実績等を把握するタレントマネジメントシステムを導入、データ駆動型研究開発推進に不可欠なデジタル人材の育成を5年計画で開始しました。今後も積極的なデジタル活用とR&D基盤確立により、開発品投入と新規事業創出の早期化を進め、当社グループの技術力のベースを更に押し広げ、社会課題の解決に寄与してまいります。

 

(2)化粧品事業

当連結会計年度における研究開発費は301百万円となっております。

美容業界は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、社会的経済活動が制限され厳しい状況が続いております。ワクチン普及を背景に一時は回復の兆しも見られましたが、感染力の高い変異株の出現により、感染者数が増加傾向に転じ、いまだ十分に回復していない状況であります。このような市場環境のもと業界が一体となって、新型コロナウイルス感染症対策を十分に行った上での美容室における来店頻度の向上、スタッフの生産性アップのための高付加価値メニュー創出と店頭販売商品の推進にデジタルを取り入れながら取り組んでおります。

国内においては大人社会の本格的到来、高齢化により、ヘアカラー、パーマの繰り返しによる髪のダメージ、頭皮のトラブル、髪が細くなる、薄くなる、白髪が増えるなどの悩みが年々増加しており、安全、安心に対する意識の高まりと相まって、本物志向の自然派商品、高付加価値商品の店頭販売商品の市場は伸び続けております。

このような状況に対応すべく、当社の毛髪科学研究所は、ヘアケア、スキャルプケアの店頭販売商品開発及び美容室におけるヘアカラーの高付加価値商品開発にさらに注力しております。

ヘアケアの分野においては、「デミコスメティクス」の最高峰ブランドである「フローディア」に新たな独自技術を搭載しフルリニューアルいたしました(全25アイテム)。コア技術である選択的補修ケア技術「バルネイドシステム」に、結合の乱れを整え、うねりのない扱いやすい艶髪を実現する新独自技術「ボンデイドシステム」を追加し、“より美しい髪”を“長く実感”できることを可能にするヘアケアブランドに進化いたしました。さらに大人女性の髪と頭皮の悩みを解決するために機能性植物成分の探索とそれを生かした商品開発に取り組んでおります。

また、ヘアカラーの分野においては、酸化染料と酸性染料をミックスした当社独自処方を搭載し、多彩な色を表現できるヘアカラー「FUSIONIST(フュージョニスト)」(1剤全37アイテム、2剤全2アイテム)ブランドに、更に透明感と艶を重視するお客様のニーズに対応すべく、1剤全4アイテム、カラートリートメント1アイテムを追加いたしました。女性のファッションカラーに対する意識の高まりに対し、さらに付加価値を高めるべく、カラーバリエーションの充実に取り組んでおります。

基礎研究においては、「すべての人に10代の髪を生やす」という長期ビジョンをかかげ、研究機関や大学との共同研究による毛髪と皮膚の微細構造の解析、毛髪と皮膚のダメージの解析ならびに植物抽出成分、天然成分による新たな機能性探究を進めるとともに、新規市場創造のための素材開発、用途開発に取り組んでおります。また、サステナブルな社会を実現するために、さらに環境にやさしい製品開発に取り組んでおります。

 

 

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