事業等のリスク

2【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財務状況、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項につきましては別段の記載のない限り、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。また、記載されている内容は当社株式への投資に関するリスク全てを網羅するものではありません。

 

(1)個人情報保護について

当社グループは、顧客企業の従業員の個人情報を大量に保有していることから、個人情報の適切な管理は、極めて重要な責務と認識しております。このため、当社では、2004年10月にプライバシーマーク、2007年4月にISMS(ISO/IEC 27001:情報セキュリティマネジメントシステム)の認証を取得し、以降、更新を続けております。入室制限及び書類保管等の物理的な対処はもちろん、外部からのアクセス遮断、社内でのアクセス権限を設定するなど、細心の注意を払い、情報漏洩防止に取り組んでおります。また、当社はマイナンバー管理サービスにて顧客企業の従業員の特定個人情報を大量に取り扱うため、個人情報保護委員会が定める「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」に基づき、特定個人情報の取扱い開始以前に定めたルールよりも高いセキュリティルールを定め、この徹底を図るため、研修や教育を通じて役職員への啓発活動を継続的に実施しております。

しかしながら、万が一事故若しくは自然災害等によって当社のネットワークセキュリティに障害が発生した場合や、関係者による人為的な事故若しくは悪意による情報の漏洩が発生した場合は、当社グループの情報管理に多大な支障をきたし、又は当社グループの業務に対する信用を喪失し、その後の当社グループの事業展開及び業績に非常に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)法的規制について

当社グループは、「個人情報の保護に関する法律」、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」といった法規制の対象事業者となっております。当社グループは、上記を含む各種法的規制などに関して、それらを遵守するよう、社員教育を行うとともに法令を遵守する体制の整備・強化を図っております。

また、General Data Protection Regulation※(以下、「GDPR」という。)に関しても、必要に応じてGDPRに対応した契約を顧客と締結する等、適切に対応しております。

しかしながら、将来的に当社グループの事業に関連する分野において、これらの法令等の改正や新たな法律等の制定・施行により、当社グループの行う事業が制約を受け、新たな対応を余儀なくされる場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

※個人的データ保護やその取り扱いについて詳細に定められたEU領域内の各国に適用される法令

 

(3)業績の季節変動について

当社グループは、給与計算サービスの一つとして、年末調整補助業務を提供しており、売上収益、利益又は損失が1月(第4四半期)に集中する傾向にあります。

したがって、同一年度内においても、当社グループの四半期毎の業績に偏りが生じます。

なお、2022年3月期における四半期別の「給与計算関連サービス」及び「年末調整補助業務」の売上収益の構成は、次のとおりであります。

 

給与計算関連サービス

 

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

通期

売上収益(千円)

1,780,518

1,724,419

1,774,900

1,869,868

7,149,707

構成比(%)

100.0

100.0

99.6

64.0

87.1

 

年末調整補助業務

 

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

通期

売上収益(千円)

97

158

7,336

1,050,682

1,058,275

構成比(%)

0.0

0.0

0.4

36.0

12.9

 

合計

 

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

通期

売上収益(千円)

1,780,616

1,724,578

1,782,237

2,920,550

8,207,982

構成比(%)

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

 

(4)誤支給等の人為的ミス等により発生する損害賠償やレピュテーションリスクについて

当社グループは、誤支給等の人為的ミス等の発生防止のため、各種作業手順をマニュアル化し、担当者及び上長が各タスクについて実施チェックを行い、毎月、その品質監査を行うことで、業務の精度向上、誤支給の防止に努めております。また、人為的ミスを減らすための施策として、新基幹システム(P3)の開発により、人的作業をシステムでカバーすることも推進しております。しかしながら、当社グループの瑕疵により、誤支給等が発生した場合は、相手方からの損害賠償請求により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

併せて、このような事態により、当社グループが社会的信用を失うことで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)品質不良に関するリスクについて

当社グループでは、高品質で顧客満足度の高いサービスを提供できるよう、社員教育による業務レベルの向上や、お客様のニーズを正確に捉えたシステムの強化改修により、日々サービスの向上に努めておりますが、顧客企業が求める品質水準に至らない場合や、満足度の低下により解約に至るなど、給与計算処理人数が急激に減少する等の影響が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社が提供するサービスに係る取引先上位5社の占める割合は、約13%(2022年3月末)となっていることから、これらの企業が解約となる場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)新基幹システム(P3)を用いた新規顧客の稼動が遅れることによるリスクについて

当社は、新基幹システム(P3)を用いた新規顧客の初期導入を行い、初期導入の完了(稼動)することで、これらにかかる売上が計上され、顧客の給与計算サービスの提供が開始されます。このため、受注残状況及び翌期受注計画を基に稼動計画を策定し、新規顧客の稼動について計画的に対応を行っておりますが、当社及び顧客のリソースの逼迫、顧客の給与計算制度等の変更があった場合や、新型コロナウイルスの更なる拡大、自然災害等の予期せぬ外部起因で当社及び顧客が影響を受けることなど、計画通りに初期導入作業が進まず、サービス稼動が遅れることにより、初期導入費用や運用開始時期が遅れることにより生じる喪失が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)減損リスクについて

当社グループが保有する資産のうち、減損リスクがあると考えられる使用権資産、のれん及び無形資産として、ブランド、ソフトウェア等を有しております。なお、当該のれんは、2017年6月における当社の旧株式会社ペイロール②の買収で生じたものであります。

この中でも、当連結会計年度末現在、当社グループの非流動資産にのれん11,015,117千円及び耐用年数を確定できない無形資産であるブランド2,849,000千円が計上されており、総資産に占める割合はそれぞれ53%、14%であります。

当社はIFRSを採用しているため当該のれんの毎期の償却負担は発生いたしませんが、対象となる事業の収益力が低下し、減損損失を計上するに至った場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 12.のれん及び無形資産」をご参照ください。

 

また、当社グループでは、上記リスクを逓減するため、事業の収益力強化に努めており、主に以下の取組みを実施しております。

①新規受注による顧客増加

新規受注による顧客増加に伴う事業の収益力強化のため、人事部門をターゲットとした給与計算業務のアウトソーシングに関するセミナーだけでなく、経営層等の改革を中心に行っていく部署をターゲットとした人事改革や働き方改革等に関するセミナーを実施し、新規受注の増加を図っております。

 

②顧客満足度向上による既存顧客維持

当社グループでは、既存顧客維持に関して、チャーンレート(月平均解約率)をKPIとして重視し、継続的に既存顧客維持の状況について確認を行っております。既存顧客維持による事業の収益力強化のため、システムの機能追加等、継続的にシステムの開発を行い、顧客満足度の向上を図っております。

 

(8)人材の確保について

当社グループは、新規顧客の獲得を推進しており、給与計算処理実績社数及び処理実績人数の拡大に向け、それに応じた人員を一定数確保する必要があります。このため、当社の一定の利益率の確保できる範囲で社員が適正人数となるよう、日々積極的な採用活動により人員確保に努めることで当該リスクの発生せぬようにしておりますが、計画のとおりに人員の確保ができない場合、あるいは人員の流出により社員が減少した場合には、当社のサービス提供が限定的となり、お客様の給与計算サービス処理人数が減少するなど、今後の事業拡大に支障を来たすことが考えられ、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)システム障害について

当社グループは、事業に関する情報管理をコンピュータシステム及びネットワークに依存しており、サービスの信頼性等の観点から、システムの冗長化、サーバーの負荷分散、定期的なバックアップの実施等により、システム障害等のトラブルの発生の防止及び回避を図っております。また、自然災害等の有事に備えて、BCP(事業継続計画)を策定しており、有事の際にもサービスを継続できる体制を整えております。

しかしながら、人為的過誤、自然災害、停電、コンピュータウイルス等による障害、当社グループの予測不可能な様々な要因等によってコンピュータシステムにトラブルが発生し、サービスが提供できない事態が生じた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)税制、社会保険等の制度変更に関するリスクについて

当社グループの事業は所得税法、社会保険料等の改正の影響を受けやすいため、法改正担当部署を設置し、当社グループ事業への影響を迅速に把握できる体制を整えることで、これらのリスク発生が生じぬよう努めております。しかしながら、重要な法改正の発生やそれに基づく対応等(当社のサービス提供ができなくなる場合や、大幅なシステム改修が必要になるなど)の要因により、これらの対応費用や、サービス停止となる状況が生じた場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)新型コロナウイルス感染拡大に伴うリスクについて

当社グループは、時差出勤及び在宅勤務の推奨や、検温・体調チェック・手洗いの徹底、業務スペースの消毒等、オフィスにおける感染防止対策等を実施し、ソフトインフラとして業務を継続できる体制の整備に努めております。

しかしながら、新型コロナウイルス感染症は不透明な状況であり、新規顧客の業績悪化に伴う新規稼動作業の中断等が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)競合に関するリスクについて

給与計算業務のアウトソーシングを含むBPO市場は、企業のペーパーレス化、テレワークの推進及び人事部門がコア業務へ特化するための施策や、BCP対策の一環として検討を進める企業が多く、需要が拡大しており、今後も発展していくことが見込まれることから、新規参入企業の増加により競争が激化する可能性があります。当社は、給与計算業務のアウトソーシングのパイオニアとして、豊富な経験と数多くのノウハウを有しており、幅広い範囲のサービスを提供することで、新規顧客の獲得と業容の拡大に努めております。しかしながら、将来、顧客獲得をめぐる競合がさらに激しくなった場合、又は当社グループが市場における競争力を維持できない場合、当社からの顧客が他社のサービスに移行することで、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)配当政策について

当社グループは、株主に対する利益還元を経営上の重要な課題と考えており、将来の事業展開と経営体質強化のために必要な内部留保を確保しつつ、株主還元方針に則り剰余金の配当を検討していく所存でありますが、財政状態及び経営成績等によっては配当を実施できない可能性があります。

 

(14)ストック・オプションについて

当社は、ストック・オプション制度を採用しており、当社の役員及び従業員に対して会社法の規定に基づき新株予約権を付与しております。これらは、当社の事業発展のために優秀な人材の確保・獲得のためのインセンティブ施策として実施しております。

これらの行使に伴い、既存の株主様に影響が生じぬよう、業容の拡大に努めておりますが、現在付与している新株予約権が大量に行使された場合、潜在株式の顕在化に伴い、当社の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。また、これらの行使による需給の変化が当社株式の株価形成に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)金利の変動及び財務制限条項の抵触について

当社グループは、株式取得に係る資金を金融機関からの借り入れにより調達しており、その借入額の総資産に占める割合は23.1%(当連結会計年度末)となっております。

当借入金は、元本が変動金利となっているため、市場金利が上昇する場合、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当借入金の金銭消費貸借契約には財務制限条項が付されており、本項に抵触した場合、貸付人の請求があれば本契約上の期限の利益を失い、ただちに債務の弁済をするための資金の確保が必要となり、当社グループの財政状態及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。また、係る資金の確保ができない場合には、当社グループの存続に影響を及ぼす可能性があります。

なお、本借入金に関する詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 14.借入金(リース負債を含む)」に記載のとおりであります。

 

 当社グループでは、上記の金融機関からの借入に関係した、金利上昇に係るリスクと財務制限条項への抵触による一括返済リスクに対応するため、主に以下の取組みを実施しております。

①収益性を重視した経営管理

 当社グループでは、特に赤字計上等による財務制限条項への抵触を回避するため、収益性を重視した経営管理を行っております。具体的には、新規受注の際に想定される当社費用を精査した上で、新規稼動に係る期間や継続して安定したサービスを提供することの可否等も含め、受注稟議に対して多面的な情報をもとに継続した収益確保の検討を常勤役員会で計り、慎重に意思決定を行っております。また、当社は顧客継続率が高く、一度顧客となった場合、数年間の継続取引となることから、サービス内容やサービスにおける当社及び顧客の役割について顧客が適切に理解した上で、発注を行っていることも確認し、将来的な当社の収益確保の可能性を慎重に判断しております。

 今後も継続取引先に対して適切なサービスを行い、また人件費についても最適化する等、現在の収益確保の水準を維持又は向上させる取組みを実施する方針であります。

②財務バランスを意識した投資計画、資金計画の立案と実行

 当社グループにおける主な資金需要は新基幹システム(P3)に関する開発関連費用となります。財務バランスを悪化させるような不必要な借入を発生させないため、営業活動におけるキャッシュ・フロー等の金額を参考にした投資計画を立案し、これに従って必要な投資を実行しております。

 

③金利条件及び財務制限条項に係る金融機関との交渉の継続

 多額の借入金が計上されていることを踏まえ、当社グループでは、金融機関との金利条件及び財務制限条項に係る交渉を継続的に実施しております。具体的には、財務制限条項の見直し交渉により、金利条件等の良化を目指しております。現状の金利条件及び財務制限条項は一般的なコーポレートローンと比較して相応に高い水準ではないものと考えており、また、当社グループの収益基盤及び財務基盤であれば、特別な条件ではないものと認識しております。一方で、当該リスクの低減に向けて引き続き金融機関との交渉に努めてまいります。

 

(16)大株主がファンドであること等について

 当社はクレアシオン・キャピタル株式会社が無限責任組合員である5つの投資事業有限責任組合(Pacific グロース投資事業有限責任組合、Pacific戦略投資1号投資事業有限責任組合、Pacific2号投資事業有限責任組合、Pacific グロース3号投資事業有限責任組合、Pacificプリンシパル投資事業有限責任組合)から、純投資を目的とした出資を受けており、本書提出日現在、同組合は当社の主要株主となっております。また、社外取締役である浅野氏は、クレアシオン・キャピタル株式会社から派遣されております。

 5つの投資事業有限責任組合は、当社株式上場時において、保有する当社株式の一部を売却いたしましたが、上場後も保有する当社株式の保有・処分方針によっては、当社株式の流動性及び株価形成等に影響を及ぼす可能性があります。また、当社株式の上場後の保有状況によっては、役員の選解任、他社との合併等の組織再編、剰余金の配当等の当社の株主総会決議の結果に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

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