当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりとなりました。
当連結会計年度において、クラウド・コンピューティング契約におけるコンフィギュレーションまたはカスタマイゼーションのコストについて会計方針の変更を行っており、遡及処理の内容を反映させた数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2 作成の基礎 (4)会計方針の変更」をご参照ください。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ
62億円減少
の
7,392億円
となりました。
流動資産は、
売上債権及びその他の債権や現金及び現金同等物の増加
などから
336億円増加
の
2,813億円
となりました。
非流動資産は、
投資有価証券や繰延税金資産の減少
などから
398億円減少
の
4,579億円
となりました。
負債は、
引当金や未払法人所得税の減少
などから
282億円減少
の
775億円
となりました。
親会社の所有者に帰属する持分は、
自己株式の取得があった一方で、利益剰余金の増加など
から
218億円増加
の
6,559億円
となりました。
(経営成績)
(単位:百万円)
[売上収益]
売上収益は、前連結会計年度比521億円(16.8%)増加の3,614億円となりました。
・ 抗悪性腫瘍剤「オプジーボ点滴静注」は、競合他社製品との競争が激化する一方、非小細胞肺がん一次治療や食道がん、胃がん一次治療における使用が拡大したことなどにより、前連結会計年度比136億円(13.8%)増加の1,124億円となりました。
・ その他の主要新製品では、糖尿病、慢性心不全および慢性腎臓病治療剤「フォシーガ錠」は367億円(前連結会計年度比64.0%増)、2型糖尿病治療剤「グラクティブ錠」は245億円(同3.8%減)、関節リウマチ治療剤「オレンシア皮下注」は229億円(同4.5%増)、血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症治療剤「パーサビブ静注透析用」は89億円(同10.2%増)、多発性骨髄腫治療剤「カイプロリス点滴静注用」は84億円(同17.5%増)となりました。
・ 長期収載品は、後発品使用促進策等の影響を受け、末梢循環障害改善剤「オパルモン錠」は47億円(前連結会計年度比13.4%減)、アルツハイマー型認知症治療剤「リバスタッチパッチ」は29億円(同56.6%減)となりました。
・ロイヤルティ・その他は、前連結会計年度比 207億円 ( 21.8 %)増加の 1,154億円 となりました。
[営業利益]
営業利益は、前連結会計年度比 49億円 (4.9%)増加 の 1,032億円 となりました。
・売上原価は、 製品商品の売上が増加したことなどにより、 前連結会計年度比 79億円 (9.3%)増加 の 935億円 となりました。
・研究開発費は、 研究に係る費用および提携企業との共同開発費用や治験薬準備費用が増加するとともに、開発化合物に係る無形資産の減損損失を計上したことなどにより、 前連結会計年度比 135億円 (21.6%)増加 の 759億円 となりました。
・ 販売費及び一般管理費(研究開発費を除く)は、新製品の上市および効能追加に係る費用、フォシーガ錠の売上拡大に伴うコ・プロモーション費用やIT・デジタル関連の情報基盤強化に伴う費用などが増加したことにより、 前連結会計年度比 78億円 (11.3%)増加 の 771億円 となりました。
・その他の収益は、前期にロシュ社から抗PD-L1抗体関連特許に関するライセンス契約締結に伴う契約一時金を得ており、その反動などで前連結会計年度比72億円減少の10億円となりました。
・その他の費用は、PD-1抗体関連特許に関する訴訟の和解に伴う解決金等50億円および京都大学への寄附金230億円と、すでに計上していた特許権等実施料引当金207億円との差額73億円を計上したことや、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社とのオプジーボに係る提携契約に関連する費用を計上したことなどにより、前連結会計年度比108億円増加の127億円となりました。
[親会社の所有者に帰属する当期利益]
親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前当期利益の増加に伴い、前連結会計年度比51億円(6.8%)増加の805億円となりました。
<新型コロナウイルス感染症拡大による事業および業績への影響>
当社グループは、生命関連企業として、従業員および事業関係者の感染防止策に取り組んでおります。関係会社や取引先とも連携し、当社医薬品の生産および医療機関への供給体制に重要な問題は発生しておりません。医療従事者への情報提供活動につきましては、地域の感染状況や医療機関の状況を十分に考慮した上でウェブミーティングツールの活用を優先して実施しております。
当連結会計年度における新型コロナウイルス感染症拡大による業績への影響は軽微でしたが、今後長期化もしくは深刻化した場合は影響を受ける可能性がありますので、引き続き注視していきます。
なお、懸念される経営リスクについては、「2 事業等のリスク <主要なリスク>(18)新型コロナウイルス感染拡大について」に記載しています。
② キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
当連結会計年度における現金及び現金同等物の増減額は、 76億円の増加 となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動によるキャッシュ・フローは、 法人所得税等の支払額 343億円 や引当金の減少額 207億円 などがあった一方で、 税引前当期利益 1,050億円 などがあった結果、 618億円の収入 となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動によるキャッシュ・フローは、無形資産の取得による支出 68億円 や 有形固定資産の取得による支出 55億円 などがあった一方で、投資の売却及び償還による収入 228億円 などがあった結果、 60億円の収入 となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動によるキャッシュ・フローは、 自己株式の取得による支出 300億円 や配当金の支払額 277億円 などがあった結果、 602億円の支出 となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:百万円)
(注) 1 金額は、売価換算額によっております。
2 連結会社間の取引は相殺消去しております。
3 当社グループのセグメントは、「医薬品事業」単一であります。
当社グループでは、主に販売計画に基づいて生産計画を策定し、これに基づき生産を行っております。受注生産は一部の連結子会社で行っておりますが、受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:百万円)
(注) 1 連結会社間の取引は相殺消去しております。
2 当社グループのセグメントは、「医薬品事業」単一であります。
3 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
医薬品業界においては、新薬創製の成功確率は年々低下し、研究開発費負担が増大するとともに、医療制度改革による種々の医療費抑制政策が強化されるなど、新薬開発型企業にとっては厳しい経営環境が続いています。このような経営環境の中、当社グループでは「製品価値最大化~患者本位の視点で~」「パイプライン強化とグローバル開発の加速」「欧米自販の実現」「事業ドメインの拡大」および経営基盤であるデジタル・IT基盤、人財、企業ブランド等の無形資産の拡充を経営上の重要課題と捉え、これらの課題を達成していくことにより、持続的な成長に努めています。
当社グループの収益は、医薬品事業の単一セグメントですが、売上収益の内訳としては、「製品商品」「ロイヤルティ・その他」に区分しています。
「製品商品」については、抗悪性腫瘍剤「オプジーボ点滴静注」の売上収益が、経営成績に重要な影響を与えるものと認識しています。「オプジーボ点滴静注」については、これまでの薬価の引き下げに加え、今後も競合他社製品との競争は激化すると予想されるものの、これまで承認取得したがん腫での使用拡大に加え、新たな適応がん腫の拡大と治療ラインの拡大、併用療法の開発等により使用対象患者数の拡大を見込んでおり、持続的に伸長できると考えています。
「ロイヤルティ・その他」については、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社からの「オプジーボ点滴静注」に係るロイヤルティ収入等が、経営成績に重要な影響を与えるものと認識しています。引き続き、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社との協力関係を維持することで、グローバルにおいても、「オプジーボ点滴静注」のさらなる適応拡大と治療ラインの拡大、併用療法の開発等により使用対象患者数の拡大を見込んでおり、中期的に伸長できるものと考えています。
また、「オプジーボ点滴静注」の価値最大化に加え、「オプジーボ点滴静注」のような革新的新薬を継続的に創出できるような研究開発力の強化に取り組んでおり、研究開発費の増大が、経営成績に重要な影響を与えるものと認識しています。いまだ満たされない医療ニーズの高いがんや免疫疾患、中枢神経疾患、スペシャリティ領域を重点研究領域に据えて、経営資源を集中させ、効率的な経費支出に努めることで、利益の確保も図っていきます。
中期的には、研究開発費は増加するものの、売上収益の拡大により売上収益の20~25%程度を投資しつつ、かつ営業利益率20%以上を目指していきたいと考えています。また、これらの水準を目標としつつ、売上収益の拡大によって利益拡大を図ることがROEの水準を高めていくことにつながるものと考えています。なお、当連結会計年度は、売上収益に対する研究開発費率21.0%(前連結会計年度20.2%)、営業利益率28.6%(前連結会計年度31.8%)、ROE12.5%(前連結会計年度12.6%)でありました。
②資本の財源及び資金の流動性に関する状況
当社グループは、円滑な事業活動に必要となる流動性の確保と財務の健全性および安全性の確保を資金調達の基本方針としており、市場環境等を考慮した上で、有効かつ機動的な資金調達を実施していきます。資金需要としては、研究開発投資に加え、有形・無形の固定資産への投資が中心となりますが、当社グループでは以前より流動資産が流動負債を大きく上回っており、資金の源泉については、内部資金を充当しています。
当連結会計年度末の流動資産は、2,813億円(内、現金及び現金同等物は691億円)、流動負債は659億円であり、必要な流動性は十分に満たしていると認識しています。
③重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、収益および費用、資産および負債の測定に関する経営者の見積りおよび仮定を含んでおります。これらの見積りおよび仮定は過去の実績および決算日において合理的であると考えられる様々な要因等を勘案した経営者の最善の判断に基づいております。しかし、その性質上、将来において、これらの見積りおよび仮定とは異なる結果となる可能性があります。
見積りおよびその基礎となる仮定は経営者により継続して見直されております。これらの見積りおよび仮定の見直しによる影響は、その見積りおよび仮定を見直した期間およびそれ以降の期間において認識しております。
当社グループの連結財務諸表で認識する金額に重要な影響を与える見積りおよび仮定は以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響等、不確実性が大きく将来事業計画等の見込数値に反映させることが難しい要素もありますが、期末時点で入手可能な情報をもとに検証を行っております。
(1)無形資産(特許権及びライセンス等)の減損
当社グループは、無形資産について、各報告期間末日に減損の兆候の有無を判定し、減損の兆候がある場合には、減損テストを実施しております。また、耐用年数が確定できない無形資産および未だ使用可能でない無形資産については、減損の兆候の有無にかかわらず毎年一定の時期に、減損テストを実施しております。
減損テストは、各資産の回収可能価額を算定し、帳簿価額と比較することにより実施しております。個別資産についての回収可能価額の見積りが不可能な場合には、当該資産が属する資金生成単位の回収可能価額を見積っております。
資産または資金生成単位の回収可能価額は、売却費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方の金額で測定しております。使用価値は、見積り将来キャッシュ・フローを現在価値に割り引くことにより算定しております。使用価値の算定には、販売予測数量および割引率といった経営者による仮定が使用されております。
使用する割引率は、貨幣の時間価値と当該資産に固有のリスクのうち、将来キャッシュ・フローの見積りを調整していないものを反映した税引前の利率を用いております。
将来の事象によって、減損テストに用いられた仮定が変更され、その結果、当社グループの将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)繰延税金資産の回収可能性
資産および負債の会計上の帳簿価額と税務上の金額との間に生じる一時差異に係る税効果については、繰延税金資産を回収できる課税所得が生じると見込まれる範囲において、当該一時差異に適用される法定実効税率を使用して繰延税金資産を計上しております。当社グループは、事業計画等に基づいて将来獲得しうる課税所得の時期およびその金額を合理的に見積り、課税所得が生じる可能性を判断しています。
(3)退職給付会計の基礎率
当社グループは確定給付型を含む複数の退職給付制度を有しております。
確定給付債務の現在価値および関連する勤務費用等は、数理計算上の仮定に基づいて算定しております。数理計算上の仮定には、割引率や利息の純額等の変数についての見積りおよび判断が求められます。
当社グループは、これらの変数を含む数理計算上の仮定の適切性について、外部の年金数理人からの助言を得ております。
数理計算上の仮定は、経営者の最善の見積りと判断により決定しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、連結財務諸表において認識する金額に重要な影響を与える可能性があります。
(4)偶発債務の将来の経済的便益の流出の可能性
当社グループは、製造または販売する製品が第三者の知的財産権に抵触した場合や、通常の事業活動を営む上で、様々な訴訟や賠償要求を受ける可能性があります。不利益な結果を引き起こす可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当該債務を計上します。見積りを行う際には、当社グループが受けている訴訟の進捗および他の会社が受けている同種の訴訟やその他関連する事項を考慮します。発生した負債は見積りに基づいており、将来における偶発債務の発展や解決に大きく影響されます。
引当金の認識基準を満たさない債務については、その発生可能性および金額的影響等を入手可能な情報に基づいて考慮した上で、偶発債務として注記しております。
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