(1)企業理念および基本方針
当社グループは、「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という企業理念のもと、いまだ満たされない医療ニーズに応えるため、真に患者さんのためになる革新的な新薬の創製を行う「グローバル スペシャリティ ファーマ」を目指して積極的な努力を続けています。また、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献するため、財務と非財務の経営課題を統合的に捉えて価値創造につなげるサステナブル経営方針を定め、重点課題への取り組みを推進しています。
そして、すべての事業活動において、人の生命に関わる医薬品を取り扱う製薬企業としての責任を深く自覚し、法令遵守はもとより、高い倫理観に基づき行動すべく、コンプライアンスの一層の強化に努めています。
(2)経営課題
新薬開発型医薬品企業として永続的な発展を実現するため、次のとおり現状の課題を定め、対応に取り組んでいます。
<現状における課題と取り組み>
新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、変異ウイルス株の発生もあり収束についてはまだ不透明な状況です。こうした中で当社では、医薬品の安定供給体制の確保・維持をはじめ、事業活動の継続のため、従業員および事業関係者への感染防止など様々な対応を行っています。
医薬品業界を取り巻く環境は目まぐるしいスピードで日々変化していますが、オープンイノベーションの活発化やデジタルを核とした異業種連携による新しい価値の創出、セルフメディケーションの重要性の高まりなど、新薬開発における様々な成長機会は残されています。当社では、あらゆる状況に柔軟かつ迅速に対応して世界で通用する企業となることを目指し、4つの成長戦略「製品価値最大化~患者本位の視点で~」「パイプライン強化とグローバル開発の加速」「欧米自販の実現」「事業ドメインの拡大」を定めて事業活動に取り組んでいます。さらに、これらの成長戦略を支える経営基盤であるデジタル・IT基盤、人財、企業ブランド等の無形資産の拡充に努めます。
成長戦略:製品価値最大化~患者本位の視点で~
患者さんとその家族のウェルビーイング(心身的・社会的・生活満足度が満たされている状態)実現に、医療従事者とともに挑み、その結果として新薬が速やかに浸透している状態を目指して、スピーディーかつ効果的な開発、競争力のあるマーケティング、そして精緻な情報提供・収集に取り組みます。
マーケティング、情報提供・収集においては、医療課題に対して医療従事者とともに患者視点で取り組むスペシャリティ人財を育成するとともに、デジタルを活用して効果的かつ効率的な情報提供・収集を実践し、製品のポテンシャルを最大限引き出せるよう取り組んでいます。開発においては現在、重要戦略分野であるオンコロジー領域を中心に、100近くに及ぶ多くの臨床試験を行っています。
オンコロジー領域の主力製品の一つであるオプジーボでは、パートナー企業である米国ブリストル・マイヤーズ スクイブ社とともに、適応がん腫の拡大・治療ラインの拡大・併用療法の開発を行い、製品価値の最大化を目指します。
プライマリー領域の主力製品の一つであるフォシーガでは、パートナー企業である英国アストラゼネカ社とともに、糖尿病だけでなく、昨年度に適応拡大した慢性心不全や慢性腎臓病患者さんにも、早く、確実に届けることにより、健康寿命延伸に向けた課題の解決にも挑んでいきます。
成長戦略:パイプライン強化とグローバル開発の加速
世界には現在も治療法のない病に苦しむ人が大勢います。当社は、いまだ満たされない医療ニーズに応えることができる「グローバル スペシャリティ ファーマ」を目指し、医療ニーズの高いがんや免疫疾患、中枢神経疾患、スペシャリティ領域を重点研究領域に据えて、それぞれの領域で疾患ノウハウを蓄積し、医療現場に革新をもたらす新薬を創出していきます。世界をリードする大学や研究機関、バイオベンチャー企業との研究・創薬提携を強化・拡充し、ファーストインクラスが狙える独自性の高いパイプラインの充実を図ります。また、創薬テーマに応じた様々な創薬モダリティを活用し、独自性の高い自社創薬に挑み続けるとともに、患者さんやヒト由来のデータを積極的に用いた創薬標的の検証やトランスレーショナル研究の強化により、研究開発の確実性の向上に努めます。加えて、医療ニーズの高い分野での革新的な化合物の導入や新技術の獲得も、積極的に進めていきます。
成長戦略:欧米自販の実現
新薬を世界中に提供できるよう、海外での自社販売を目指して取り組んでいます。すでに、韓国、台湾では、現地法人を設立して自社製品の販売を開始しています。欧米についても、今後の自社販売活動を視野に入れて、米国でのブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤であるONO-4059(ベレキシブル錠)の開発をはじめとして複数のプロジェクトの開発を進めるとともに、販売体制の整備に努めています。
成長戦略:事業ドメインの拡大
拡大するヘルスケア分野のニーズを捉え、新たな価値を提供し続けるため、事業ドメインの拡大に取り組んでいます。昨年、機能性表示食品等を主な事業とする小野薬品ヘルスケア株式会社を設立しました。さらに本年、これまでの医療用医薬品の研究開発で当社が培ってきた資産を最大限に生かした機能性表示食品 睡眠サプリメント「REMWELL(レムウェル)」を発売しました。脂質研究のパイオニアとしてリピドサプリ事業を通じて、今後さらに様々な健康課題の解決に取り組みます。またデジタルを活用し、顧客の未解決課題と向き合い、新たな価値創出に挑戦します。さらにこれらの活動と並行して、ヘルスケア分野でのベンチャー企業への投資活動を通じて新たな事業の創出/拡大を目指します。
成長戦略を支える経営基盤:無形資産の拡充
4つの成長戦略を支え、飛躍的な成長を果たすため、人財、企業ブランド、デジタル・IT基盤等の無形資産の拡充に取り組みます。人財育成では、次期経営人財、世界を舞台にビジネスができるグローバル人財、企業変革をけん引するデジタル人財、次世代の成長を牽引するイノベーション人財の育成に注力します。また、特に欧米進出で大きな課題となる企業認知度の向上については、「革新的な医薬品」「Pharma」「社会から必要とされる企業」といった企業ブランドの浸透に努め、企業価値の向上に努めます。さらに全社で、デジタル・ITによる企業変革に取り組み、グローバル化を見据えたシンプルに構造化されたIT基盤への刷新を図るとともに、創薬バリューチェーンの変革をはじめとしたデジタルトランスフォーメーションを推進します。
(3) 過年度の奨学寄附を巡る事案への対応について
2017年度に実施した三重大学医学部への奨学寄附が贈賄に該当するとして、2021年1月に当社元社員2名が逮捕されました(同年6月29日付で有罪判決を受け、判決が確定しています)。
これを受け、当社は、3名の外部弁護士で構成される調査委員会を設置して、事実関係の調査、原因究明等の調査を行い、同年8月6日付で調査報告書を受領しました。
当社は、調査委員会の調査結果・提言および社内調査結果を踏まえ、奨学寄附の中止を含む再発防止策や内部統制強化に向けた取り組みを進めています。今後とも、全社一丸となってコンプライアンスの一層の強化に努め、ステークホルダーの皆様からの信頼回復に取り組んでいきます。
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