業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ。)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度は、日本国内では新型コロナウイルスの感染者数が増減を繰り返し、経済は一進一退の動きが続きました。一方で、海外では新規変異株のまん延やワクチン接種後のブレイクスルー感染の増加など、感染再拡大のリスクは消えておらず、各国における収束時期の見通しは困難な状況が続いております。
 臨床検査薬業界においては医療費抑制策とコロナ禍における物流コストや原材料調達コストの上昇により経営環境は一層厳しさを増し、各企業はより一層のコスト競争力と積極的な海外展開が求められる状況となっております。
 このような経営環境の下、当社グループは経営構想「EIKEN ROAD MAP 2019」に基づき中期経営計画を策定し、経営効率を高めるための基盤整備、グローバル展開の推進、国内販売の維持とシェアアップ、研究開発力の強化の4つを重点施策として、グループ全体で持続的な成長と収益性の向上に努めております。また、新型コロナウイルス検出試薬の国内安定供給及びグローバル展開を通じ、同感染症対策への貢献を目指しております。
 当連結会計年度の売上高は、各種検診・スクリーニングプログラムの再開や外来患者数が回復傾向となったことから便潜血検査用試薬を含む免疫血清検査用試薬が大きく伸びたほか、第4四半期における新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い新型コロナウイルス検出試薬が大きく伸び、42,996百万円(前期比11.2%増)となりました。
 製品の種類別区分ごとの売上高は、微生物検査用試薬は3,924百万円(同1.6%減)、尿検査用試薬は3,783百万円(同11.9%増)、免疫血清検査用試薬は20,593百万円(同9.8%増)、生化学検査用試薬は599百万円(同0.8%増)、器具・食品環境関連培地は2,252百万円(同6.0%増)となりました。その他(医療機器・遺伝子関連等)につきましては、新型コロナウイルス検出試薬の需要継続により、11,842百万円(同20.5%増)となりました。
 また、海外向け売上高は、各国スクリーニングプログラムの再開により、便潜血検査用試薬・装置が大きく伸び、8,868百万円(同28.6%増)となりました。
 利益面では、新型コロナウイルス検出試薬及び便潜血検査用試薬など高利益品目の売上が増加し、営業利益は8,387百万円(同26.8%増)、経常利益は8,508百万円(同25.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は6,218百万円(同23.3%増)となりました。

なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。)等を当連結会計年度の期首より適用しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載しております。

 

当連結会計年度末の財政状態は以下のとおりであります。

前連結会計年度末に比べ総資産は6,827百万円増加、負債は2,696百万円増加、純資産は4,131百万円増加いたしました。

増減の主なものとして、資産の部では、現金及び預金が6,971百万円増加、受取手形、売掛金及び契約資産が341百万円減少、棚卸資産が465百万円増加しております。また、新研究棟建設費用支払に伴う建設仮勘定計上等により有形固定資産が2,506百万円増加した一方、長期預金が3,000百万円減少しております。負債の部では、支払手形及び買掛金が450百万円増加、電子記録債務が325百万円増加、設備投資等の支払により流動負債その他が967百万円減少しております。また、2021年10月に環境・社会双方の課題解決に貢献する施策・プロジェクトに充当する資金の調達手段として、当社として初めて「サステナビリティボンド」を3,000百万円発行したこと等により、固定負債が2,935百万円増加しております。純資産の部では、配当金の支払があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が3,996百万円増加いたしました。自己資本比率は前連結会計年度末の74.3%から72.8%となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ3,931百万円増加し、当連結会計年度末には10,900百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金は、7,769百万円の収入(前連結会計年度は5,451百万円の収入)となりました。これは主に、売上債権の増加により406百万円の支出、棚卸資産の増加により449百万円の支出、仕入債務の増加により774百万円の収入及び、税金等調整前当期純利益が8,482百万円あったことによります。

なお、減価償却費は2,058百万円発生しております。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金は、5,044百万円の支出(前連結会計年度は2,193百万円の支出)となりました。これは主に、新研究棟建設等の設備投資による有形固定資産の取得による支出が4,428百万円、無形固定資産の取得による支出が465百万円、定期預金の預入による支出が2,231百万円及び、定期預金の払戻による収入が2,231百万円あったことによります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金は、1,200百万円の収入(前連結会計年度は1,275百万円の支出)となりました。これは主に、社債発行による収入が3,000百万円、配当金の支払が1,699百万円あったことによります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループは、検査薬事業のみの単一セグメントであるため、生産、受注及び販売の実績については製品の種類別区分ごとに記載しております。

(ア)生産実績

当連結会計年度における生産実績を製品の種類別区分ごとに示すと、次のとおりであります。

 

製品の種類別区分の名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前期比(%)

微生物検査用試薬(百万円)

3,760

99.5

尿検査用試薬(百万円)

3,947

97.7

免疫血清検査用試薬(百万円)

7,853

106.1

器具・食品環境関連培地(百万円)

261

104.2

その他(百万円)

6,060

128.0

合計(百万円)

21,882

108.3

 

(注) 金額は、売価換算値で表示しております。

 

 

(イ)商品仕入実績

当連結会計年度における商品仕入実績を製品の種類別区分ごとに示すと、次のとおりであります。

 

製品の種類別区分の名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前期比(%)

微生物検査用試薬(百万円)

258

85.5

尿検査用試薬(百万円)

17

125.2

免疫血清検査用試薬(百万円)

9,256

123.7

生化学検査用試薬(百万円)

369

113.3

器具・食品環境関連培地(百万円)

1,659

109.9

その他(百万円)

3,407

90.8

合計(百万円)

14,969

111.8

 

 

(ウ)受注実績

当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

(エ)販売実績

当連結会計年度における販売実績を製品の種類別区分ごとに示すと、次のとおりであります。

 

製品の種類別区分の名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前期比(%)

微生物検査用試薬(百万円)

3,924

98.4

尿検査用試薬(百万円)

3,783

111.9

免疫血清検査用試薬(百万円)

20,593

109.8

生化学検査用試薬(百万円)

599

100.8

器具・食品環境関連培地(百万円)

2,252

106.0

その他(百万円)

11,842

120.5

合計(百万円)

42,996

111.2

 

(注)  最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりで

    あります。

 

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

アルフレッサ㈱

4,927

12.7

5,491

12.8

㈱スズケン

5,067

13.1

5,251

12.2

東邦薬品㈱

4,292

11.1

4,447

10.3

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、将来のリスク、不確実性及び仮定を伴う予測情報を含んでおります。「2 事業等のリスク」などに記載された事項及びその他の要因により、当社グループの実際の業績は、これらの予測情報から予測された内容とは大幅に異なる可能性があります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発資産・負債の開示、並びに報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行わなければなりません。経営陣は、貸倒債権、退職金、投資、偶発事象や訴訟等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、他の方法では判定しにくい資産・負債の簿価及び収入・費用の報告数字についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。

(ア)貸倒引当金

当社グループは、顧客の支払不能時に発生する損失の見積額について、貸倒引当金を計上しております。顧客の財務状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。

(イ)退職給付費用

当社においては従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、将来の給与水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率及び年金資産の収益率などが含まれます。当社の年金制度においては、割引率は日本の国債の市場利回りを参考値として、在籍従業員の平均残存勤務期間内の一定の年数で算出しております。期待収益率は、年金資産が投資されている資産の種類毎の期待収益率の加重平均に基づいて計算しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。また、割引率の低下及び年金資産運用での損失は、当社グループの退職給付費用に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

(ウ)投資の減損

当社グループは、取引関係維持のために、特定の顧客の株式を保有しております。これらの株式には価格変動性が高い公開会社の株式と、株価の決定が困難である非公開会社の株式が含まれます。また、関係会社に対して出資を行っております。当社グループは投資価値が著しく下落し、回復の見込みがないと判断した場合、投資の減損を計上しております。将来の市況悪化または投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失または簿価の回収不能が発生した場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。

(エ)固定資産の減損

「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、以下のとおりであります。
  当連結会計年度の売上高は、各種検診・スクリーニングプログラムの再開や外来患者数が回復傾向となったことから便潜血検査用試薬を含む免疫血清検査用試薬が大きく伸びたほか、第4四半期における新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い新型コロナウイルス検出試薬が大きく伸び、42,996百万円(前期比11.2%増)となりました。
 売上原価は22,431百万円、売上原価率は52.2%となり、前連結会計年度に比べ0.1ポイント上昇いたしました。
 売上総利益は前連結会計年度に比べ2,045百万円増加し、20,572百万円となりました。販売費及び一般管理費については前連結会計年度に比べ270百万円増加し、12,184百万円となりました。
 営業利益は前連結会計年度に比べ1,775百万円増加し、8,387百万円となりました。売上高営業利益率は19.5%となり前連結会計年度に比べ2.4ポイント上昇いたしました。
 営業外収益は164百万円を計上し、前連結会計年度に比べ55百万円減少いたしました。
 営業外費用は43百万円を計上し、前連結会計年度に比べ18百万円増加いたしました。
 経常利益は営業外損益で121百万円を計上し、8,508百万円となり、前連結会計年度に比べ1,700百万円増加いたしました。経常利益率は前連結会計年度に比べ2.2ポイント上昇し、19.8%となりました。
 特別利益は1百万円を計上し、前連結会計年度に比べ109百万円減少いたしました。特別損失は27百万円を計上し、前連結会計年度に比べ21百万円減少いたしました。
 税金等調整前当期純利益は特別損益で25百万円の純損失を計上し、8,482百万円となりました。税金等調整前当期純利益に対する法人税、住民税及び事業税の負担率は前連結会計年度26.6%に対して当連結会計年度が26.7%となり、0.1ポイント上昇いたしました。
 親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ1,174百万円増加し、6,218百万円となり、当期純利益率としては1.4ポイント上昇14.5%となりました。
 当社グループは、経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等として、2022年3月期に売上高40,400百万円、営業利益6,370百万円、ROE11.5%の達成を目指しておりましたが、新型コロナウイルスの感染者数が増加と減少を繰り返すなか、新型コロナウイルス検出試薬を安定供給したことや各種検診・スクリーニングプログラムの再開や外来患者数の回復傾向を受け、売上高42,996百万円営業利益8,387百万円、ROE14.3%となり、すべての指標で目標を達成いたしました。
 2022年4月からは、2025年3月期を最終年度とする新たな中期経営計画がスタートさせており、「EIKEN ROAD MAP2030」のビジョンに従って重点施策に取り組み、2025年3月期の経営指標(連結売上高43,500百万円、海外向け売上高11,230百万円(海外売上比率25.8%)、営業利益6,250百万円(営業利益率14.4%)、ROE9.2%を達成することを目指します。

 

指標

2021年3月

2022年3月

目標

実績

目標

実績

連結売上高(百万円)

37,100

38,667

40,400

42,996

連結営業利益(百万円)

5,540

6,612

6,370

8,387

ROE(%)

11.1

12.9

11.5

14.3

 

 

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については以下のとおりであります。

(ア)キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

(イ)財務政策

当社グループの財務政策における基本方針は、資本効率の向上による財務体質の強化であり、継続的に実行しております。
 資金の調達及び運用については、当社グループとして一体となり実行しており当社の信用力を最大限に活用しております。運転資金及び設備投資については、基本的に手持資金(利益等の内部留保資金)にて調達しております。なお、運転資金の効率的な調達を行うため金融機関との間で、総額5,400百万円の当座貸越契約及び貸出コミットメント契約を締結しております。余剰資金の運用については、安全性・流動性の高い金融商品にて実行しております。当社グループの高いキャッシュポジションに対して、今後の効率的・戦略的な資金運用を検討しております。
 当社グループは、その健全な財務状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力、売掛債権信託(債権流動化)及び貸出コミットメント契約により、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えておりますが、設備投資等の長期資金需要に関しては金融機関からの長期借入、社債またはその組み合わせによる調達方法も実施しております。
 また、当社グループは株主の皆様に対する利益還元を経営の最重要課題のひとつと位置づけたうえで、財務体質の強化と積極的な事業展開に必要な内部留保の充実を勘案し安定した配当政策を実施すること、また、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。具体的には、上記方針を踏まえ連結配当性向30%以上の配当を目標といたします。
 

 

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