文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「経営理念」、「経営ビジョン」、「モットー」からなる “EIKEN WAY”を制定し、グループ全体で“EIKEN WAY”を実践することにより持続的な企業価値の向上を図り、取引先の繁栄と株主並びに社会への貢献を果たしてまいります。
□経営理念 :ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。
□経営ビジョン:EIKENグループは、人々の健康を守るため、検査のパイオニアとしてお客様に信頼される製品・サービスを提供し、企業価値の向上を図ります。
□モットー :品質で信頼され、技術で発展する“EIKEN”
(2) 経営戦略等
当社グループは、事業を取り巻く環境変化に対応するとともに、サステナビリティ経営の視点を取り込むため、経営構想「EIKEN ROAD MAP 2019」を見直し、2030年をゴールとして、新たに「EIKEN ROAD MAP 2030」として再定義いたしました。
2030年の当社グループが目指す姿に向かっていくためのスローガンとして、
「Beyond the Field ~ Team × Challenge ~」を掲げ、従業員一人ひとりがそれぞれの能力を高め自らが活躍できる領域を広げていくこと、その高めた個の力を、領域を超えて結集しチームでチャレンジすることで新しい可能性を生み出すこと、そして、現在の事業領域から一歩踏み出し、医療のプロセスにイノベーションを起こし、検査の未来を創っていくことを目指してまいります。
「EIKEN ROAD MAP 2030」では、現在の事業領域を中核事業としつつ、注力事業分野として「がんの予防・治療への貢献」、「感染症撲滅・感染制御への貢献」、「ヘルスケアに役立つ製品・サービスの提供」の3つを設定しております。
「がん」の分野ではより治療に直結する領域に、「感染症」の分野ではより簡易な検査技術の確立に注力いたします。また、「ヘルスケア」の分野では遠隔診療や在宅での検査に対応できる製品・サービスを拡大してまいります。
<中長期を見据えたビジョン>
■がんの予防・治療への貢献
当社グループは、これまで検診事業(予防と早期発見)に注力し、特に大腸がんではスクリーニングプログラムをグローバルに構築し、早期発見により死亡率減少と医療費抑制に貢献してまいりました。一方で、がんの治療には高額の医療費を必要とすることから適切な治療の選択が重要です。がんの予防・早期発見だけではなく、このような医療課題に対しても対応すべく、治療薬の選択や治療効果の判定まで網羅した検査システムを開発し提供することによって、がんによる死亡率の更なる減少を目指してまいります。
■感染症撲滅・感染制御への貢献
脅威となる感染症への対策として製品ラインアップを拡充し、グローバルでの結核やマラリアなど遺伝子検査システムを展開してまいります。また、より簡易で誰でもどこでも使える迅速で精確な感染症診断システムを開発することで、医療アクセスの向上に寄与してまいります。
■ヘルスケアに役立つ製品・サービスの提供
健康寿命の延伸に向けて、遠隔診療や在宅での検査の領域を広げて、モバイルヘルスへ発展させていきます。最終的には本人が意識しなくても健康状態を知らせてくれる暮らしに寄り添ったモニタリングシステムの開発を目指してまいります。
<サステナビリティの取り組み>
当社グループは、「ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。」の経営理念のもと、事業活動を通じてさまざまな社会課題の解決に努めてまいりました。より積極的にグループ全体でサステナビリティの推進を図るため、サステナビリティ方針を策定し、代表執行役社長を委員長、各機能・事業グループの担当執行役で構成されるサステナビリティ委員会を設置して活動を推進しております。サステナビリティ委員会の内容は取締役会にて報告され、監督される体制となっております。
「EIKEN ROAD MAP 2030」では、持続可能な社会の実現に向けて、優先的に取り組むべき11の課題(マテリアリティ)を特定し、具体的な行動計画に展開いたしました。特定した課題については、達成度を評価するための指標(KPI)を設け、進捗状況をモニタリングしながら取り組みを進めてまいります。世界の人々の健康を守る企業として「医療」の課題、そして、「環境」・「社会」・「ガバナンス」の課題に積極的に取り組み、社会課題の解決を通じてステークホルダーの皆様への責任を果たすことにより、さらなる企業価値の向上と持続可能な社会の実現につなげてまいります。
サステナビリティサイト:https://www.eiken.co.jp/sustainability/
<気候変動への取り組みとTCFDへの対応>
当社グループは、社会の持続可能性にとって、気候変動への対応が特に重要な課題であると認識しております。気候変動の原因となるCO2を含む温室効果ガス排出量削減のため、環境マネジメント体制における省エネルギー活動として、これまでも中長期の削減目標を設定し、その達成に向けた活動を推進してまいりました。昨今の激甚化・頻発化する気象災害、パリ協定等の地球温暖化に対する世界潮流の変化を踏まえ、当社グループは2050年のカーボンニュートラルを目指してその取り組みを強化いたします。これまで、売上高あたりのCO2排出量(排出原単位)削減を目標としてきましたが、 カーボンニュートラルへの筋道をより明確にするため、2022年度より排出「絶対量」削減の目標に改め、気候変動の緩和へさらに注力しております。
金融安定理事会(FSB)により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は気候変動がもたらすリスクと機会に関して、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つの要素による情報開示を推奨しています。
当社グループは、気候変動が金融市場にもたらすリスクを認識し、これまでの気候変動に関する取り組みをより一層推進するとともに、TCFD提言を踏まえた情報開示について、今後も分析・議論を重ね、順次、情報開示を拡充する方針です。
①ガバナンス
当社グループは、気候変動に対する取り組みはマテリアリティの1つとして経営の重要課題であることを認識し、代表執行役社長を委員長とするサステナビリティ委員会において目標と行動計画の策定、進捗管理を実施いたします。サステナビリティ委員会で審議された気候変動対応活動は、取締役会にて報告され、監督される体制となっております。なお、実績の一部は執行役の業績評価と報酬に反映されます。環境マネジメントの体制としては、経営管理統括部門の執行役を委員長とする環境管理委員会にて継続的な改善に取り組んでおります。
②戦略
当社グループは、2015年のパリ協定、2018年のIPCC「1.5℃特別報告書」、2021年のCOP26を踏まえ、今後、TCFD提言のフレームワークに基づき、気候変動がもたらす「リスク」と「機会」が財務に及ぼす影響についてシナリオ分析を実施し、取り組む課題を特定して経営戦略・計画を策定いたします。
③リスク管理
当社グループは、環境マネジメントシステムの中で事業活動が環境に与える影響を「法令遵守」と「環境への影響」の2つの観点から毎年評価しております。また、リスクマネジメント体制の中で、環境や気候変動以外のリスクも含め包括的なリスクアセスメントを年1回実施しております。気候変動への適応として、想定される洪水等の自然災害へ対応するためのリスク管理体制及びインフラの整備、温暖化により蔓延化が進行するまたは新規発生する感染症対策としての診断用医薬品の迅速な製品開発及び提供を推進しております。
今後、TCFDの提言を踏まえ、気候変動がもたらすリスクと機会のアセスメントを行い、環境管理委員会及びサステナビリティ委員会で議論し、リスクの低減及び事業機会の創出に取り組んでまいります。
④指標と目標
当社グループは、2050年のカーボンニュートラルを目指し、CO2排出量(スコープ1+2)を2030年に30%削減(2018年度比)する目標を設定しております。スコープ3についてもCO2排出量の算定を進めており、今後、目標設定に向けて取り組んでまいります。
スコープ1:自社での燃料使用や生産プロセスからの直接排出
スコープ2:自社が購入した電気や熱の使用による間接排出
スコープ3:スコープ1、2以外の間接排出(原料調達、製品輸送・使用・廃棄、社員の通勤・出張等)
<中期経営計画>
「EIKEN ROAD MAP 2030」の実現に向けて、最初の中期経営計画を策定しております。本計画では、「EIKEN ROAD MAP 2030」のビジョンに従って重点施策を設定し、加速する医療のパラダイムシフトに応えてまいります。そして、経営基盤の強化を進めるとともに、人財にフォーカスした経営を推進し、従業員のやりがい・働きがいを高め、イノベーションを創出できる環境を整備し、持続的な成長と着実な収益性の向上を目指します。
中期3か年の注力分野と重点施策
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中期経営計画において2025年3月期を最終年度として、売上高43,500百万円(海外向け売上高11,230百万円)、営業利益6,250百万円(営業利益率14.4%)、ROE9.2%を達成することを目指しております。
(4) 経営環境
今後の見通しにつきましては、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種拡大による集団免疫の効果や経口薬の開発及び普及に期待が高まる一方で、新たな変異株の出現や感染拡大に対する懸念は依然として払拭されておらず、早期に市場の環境が好転する想定は難しい状況にあります。また、ロシアのウクライナ侵攻に端を発する不安定な世界情勢も相まって、資源価格の上昇が原材料費や光熱費の高騰につながっており、引き続き厳しい状況が見込まれます。
医療を取り巻く環境につきましては、高齢化に伴う医療の効率化や新興国の経済発展に伴う医療需要の拡大のほか、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)の医療現場への応用が急速に進んでいることから、今後も継続した市場の成長が期待されています。また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを機に医療提供体制が大きく変わりつつあり、規制緩和やインフラ整備に伴うさらなるサービス拡大の機会が見込まれています。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、当連結会計年度において、「EIKEN ROAD MAP 2019」及び中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)に基づき、以下の重点課題に取り組んでまいりました。
① 経営効率を高めるための基盤整備
全社最適化による経営効率向上のため全社IT化施策を推進し、2021年8月に生産管理システムが稼働いたしました。また、2021年6月に新研究棟の建設に着工し、2022年8月に竣工予定です。
② グローバル展開の推進
新型コロナウイルスの感染拡大により中断していた各地域の大腸がんスクリーニングプログラムが再開し、Web検診、郵送検診、薬局検診、内視鏡トリアージの考え方が浸透し、需要掘り起こしを推進いたしました。海外向け尿検査用試薬・装置につきましては、シスメックス株式会社との協業推進により販売拡大を図りました。
③ 国内販売の維持とシェアアップ
各種検診・スクリーニングプログラムの再開や外来患者数が回復傾向となったことから便潜血検査用試薬を含む免疫血清検査用試薬が大きく伸びたほか、第4四半期における新型コロナウイルスの感染拡大に伴い新型コロナウイルス検出試薬が大きく伸び、売上拡大を牽引いたしました。
④ 研究開発力の強化
医療ニーズ及び中長期的な視点に基づき新製品・新技術の研究開発を行っております。2021年度はイルミナ社と契約を締結し、次世代シークエンサーを用いたコンパニオン診断システムの開発を開始いたしました。
中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)では、中核事業のグローバル展開と注力事業分野における重点施策の推進を図るとともに、経営基盤の確立及び人財にフォーカスした経営を推進し、持続的な成長と着実な収益性の向上を目指してまいります。
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