当社グループは、当社及び連結子会社3社より構成され、遺伝子医薬品を中心とする医薬品の開発及び販売を進めております。
当社グループと各事業における位置付け及び事業系統図は、以下のとおりです。
<当社グループと各事業における位置付け>
当社グループの事業の系統図は、次のとおりであります。
当社グループは、“遺伝子医薬のグローバルリーダー”を目指し、遺伝子治療を中心に医薬品開発に取り組んでおります。HGF(Hepatocyte Growth Factor、肝細胞増殖因子)遺伝子を含む遺伝子治療用製品「コラテジェン®」に加え、2019年末から拡大している新型コロナウイルス感染症に関しては、予防用のワクチンと治療薬の二軸で、国内外で開発を進めております。また、究極の遺伝子治療であるゲノム編集については、先進の技術を持つEmendoBio Inc.(以下Emendo社といいます。)を子会社とし、共にゲノム編集技術を用いて、いままで治療法のなかった疾患をもつ患者さんの方々にお届けできる医薬品開発を進めてまいります。
(1) プロジェクト
① HGF遺伝子治療用製品
当社グループはHGF遺伝子を含む遺伝子治療用製品を主要プロジェクトとして開発しています。HGFは、肝臓の細胞を増やす因子として1980年代に発見されました。最初は、肝臓の病気の治療薬として研究されていましたが、HGFに血管新生作用があることが1990年代に明らかにされました。この発見に基づき当社グループは、血管が詰まり血流が悪くなる虚血性疾患を対象に、新たな血管を再生する画期的な薬効を持つHGF遺伝子治療用製品(以下、本品といいます。)の開発を進めております。
a) 対象疾患
血管が詰まることにより生じる疾患には主に、動脈硬化や血管炎症が原因で足の血管が閉塞し、足先に血液が十分に届かない結果、痛みや潰瘍、最終的には足の切断に至る末梢性血管疾患(閉塞性動脈硬化症やバージャー病)や、心臓の冠動脈の血液の流れが悪くなって起こる虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)があります。これらの疾患の重症患者に対しては、薬物療法に加え、カテーテルなどにより血管を広げる血管内治療やバイパス手術による血行再建術が行われますが、それでも十分な回復が期待できない場合があります。
本品は、既存療法では効果が期待できず、潰瘍を伴う重症の末梢性血管疾患(重症虚血肢)に対して治療効果が期待されています。本品は血管が詰まっている、あるいは狭くなっている部分周辺の筋肉への注射をすることで血管新生を促す、簡便な方法による血管新生療法です。当社グループでは、まず慢性動脈閉塞症を対象として開発を進めてまいりました。
<末梢性血管疾患におけるHGF遺伝子治療の治療概念図>
b) 技術導入の概況
当社グループは、本品の開発にあたって、田辺三菱製薬株式会社(旧三菱ウェルファーマ株式会社)からHGF遺伝子の物質特許について実施権の許諾を受けております。さらに、大日本住友製薬株式会社及び当社メディカルアドバイザー森下竜一からHGF遺伝子をHGF遺伝子治療用製品に用いるための基本特許の譲渡を受けております。また、本品の投与法に関して、米国Brickell Biotech, Inc.(バイカル社は2019年9月に Brickell Biotech, Inc.に吸収合併されました)から特許実施権の許諾を受けております。
これらの一部については、実施権の許諾又は特許権の譲渡の対価として、一定期間中、本品の開発の進捗に依存したマイルストーン、製品が上市されたことにより、売上高に応じたロイヤリティの一部支払いを行っております。
c) 研究開発の概況
当社グループでは、慢性動脈閉塞症を対象に開発を進めております。
国内においては、2018年1月に再生医療等製品として本品の製造販売承認申請を厚生労働省に対して行い、国内初の遺伝子治療用製品として、2019年3月26日に条件及び期限付承認を取得し販売を開始しております。今回の承認は、条件及び期限付であり、製造販売後承認条件評価を2024年までに行い、本承認取得を目指してまいります。製造販売後承認条件評価のための目標症例数である実薬120症例、プラセボ80例の登録が2021年末までに完了いたしました。
また、並行してこの「コラテジェン®」の適応拡大を目的として、2019年10月に慢性動脈閉塞症の安静時疼痛を有する患者を対象にした第Ⅲ相臨床試験を開始し、2021年12月に目標症例の投与を完了しております。
一方海外では、2020年2月より米国において下肢潰瘍を有する慢性動脈閉塞症を対象とした後期第Ⅱ相臨床試験を実施しております。
d) 製造体制
当社グループは、本品を自社では製造しておらず、外部に委託しております。
e) 販売体制
当社グループは、末梢性血管疾患分野における米国及び国内の独占的販売契約を田辺三菱製薬株式会社と締結しており、同契約に基づき国内については2019年9月から同社に対し販売を行っております。
② NF-κBデコイオリゴDNA
遺伝子医薬には大きく分けると二つの方法があり、一つはHGF遺伝子治療用製品のように遺伝子そのものを利用する手法、もう一つは遺伝子の構成成分の一部を使うもので、後者は核酸医薬と呼ばれます。
デコイオリゴDNAはこの核酸医薬の一種です。遺伝子は通常、転写因子と呼ばれる遺伝子の発現を調節するタンパク質がこのDNAに結合してそのスイッチが入ります。NF-κBデコイオリゴDNAはDNA上のNF-κB転写因子結合部分と同じ配列を含む短い核酸を人工的に合成したもので、体内に投与すると転写因子がゲノムに結合することを妨げて遺伝子の働きを抑えます。
NF-κBは炎症及び免疫反応を強める種々のタンパク質を作る遺伝子のスイッチ役を担う転写因子で、NF-κBに対するデコイオリゴDNAを患部に投与することで、過剰な炎症反応を抑えて炎症性の疾患を治療することが期待されています。
a) 対象疾患
NF-κBデコイオリゴDNAの対象となる疾患には、過剰な炎症反応を原因とする炎症性疾患及び過剰な免疫反応を原因とするアレルギー疾患及び自己免疫疾患があります。これらの疾患では、免疫や反応を強める遺伝子が過剰に働いているため、NF-κBデコイオリゴDNAを投与すると、これら遺伝子の働きを抑えることで疾患を治療することが期待されます。当社グループは、慢性の椎間板性腰痛症を対象に、新たな疼痛改善作用を持つNF-κBデコイオリゴDNAの開発を進めています。
b) 技術導入の概況
当社グループは、NF-κBデコイオリゴDNAの開発にあたって、アステラス製薬株式会社及び当社メディカルアドバイザー森下竜一からNF-κBデコイオリゴDNAに関する特許権の譲渡を受けております。この特許権の譲渡の対価は、当社グループが開発するNF-κBデコイオリゴDNAが上市された後の一定期間中、売上高に応じて支払う予定となっております。
c) 研究開発の概況
NF-κBデコイDNAの作用メカニズムから、数多くの疾患が治療対象となる可能性がありますが、現在、椎間板性腰痛症における慢性腰痛に対する鎮痛効果と共に、椎間板変性に対しても有効な可能性がある新しいタイプの腰痛治療薬として、米国で後期第Ⅰ相臨床試験を実施しております。NF-κBデコイDNAの投与後12ヶ月間の観察期間を通して、重篤な有害事象は認められず、高い安全性が確認されました。さらに、探索的に有効性を評価したところ、腰痛の軽減が認められ、その効果は投与12か月後まで持続しました。これらの結果を踏まえて、第II相臨床試験に移行する準備を進めております 。
d) 製造体制
当社グループは、NF-κBデコイオリゴDNAの研究用及び治験用原薬は自社で製造しておらず、外部に委託しております。
③ アンジオテンシンⅡ高血圧治療用DNAワクチン
a) 対象疾患
高血圧を起こす原因の一つに血液中に存在するアンジオテンシンⅡというペプチドホルモンの増加があり、それに対する抗体は高血圧の治療剤として期待されます。
b) 研究開発の概況
当社グループは、遺伝子治療用製品、核酸医薬につづく遺伝子医薬の第三の事業として、DNAワクチンの開発を手がけており、アンジオテンシンⅡに対する抗体を産生する高血圧治療用のDNAワクチンの開発をオーストラリアにて実施しております。2020年12月に第Ⅰ相/前期第Ⅱ相臨床試験の最終投与群の患者登録を終了後、観察期間を経て初期の結果を評価し、重篤な有害事象がなく、安全性に問題ないことを確認し、またアンジオテンシンⅡに対する抗体産生を認めました。分析結果は、論文としてHypertension Researchに掲載し、第43回日本高血圧学会総会Late Breaking Abstractでも発表いたしました。今後、安全性、免疫原性および有効性の評価を継続していきます。
c) 製造体制
当社グループは、アンジオテンシンⅡ高血圧治療用DNAワクチンの研究用及び治験用原薬は自社で製造しておらず、外部に委託しております。
④ 新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチン
a) 対象疾患
現在、世界的な流行をしている新型コロナウイルスに対する抗体を体内で産生するDNAワクチンは新型コロナウイルス感染症予防ワクチンとして期待されます。
b) 研究開発の概況
当社グループは、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を受け、当社の持つDNAワクチンの技術を用いて2020年3月より、大阪大学と共同で新型コロナウイルス感染症に対する予防ワクチンの開発を開始し、これまでに第Ⅰ/Ⅱ相および第Ⅱ/Ⅲ相の臨床試験を実施しました。これらの分析の結果、安全性において問題はなく、細胞性免疫においてある程度の上昇を確認したものの、液性免疫については期待する効果を得ることができず、今後さらに有効性を高める必要があることを確認いたしました。さらに有効性を高めるための取り組みとして、高用量製剤での第Ⅰ/Ⅱ相試験を、接種方法を筋肉注射と皮内投与の2種類とし、プラセボ(偽薬)なしの実薬のみで、目標症例数400例にて実施し、2021年11月に目標症例の接種を完了しました。
c) 製造体制
当社グループは、新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの研究用及び治験用原薬は自社で製造しておらず、外部に委託しております。
⑤ 新型コロナウイルス感染症治療薬(共同開発品)
a) 対象疾患
現在、世界的に流行している新型コロナウイルス感染症において、感染症発症後に重症化した患者での急性呼吸不全など血管の不全に対する治療薬が望まれています。
b) 研究開発の概況
当社グループは、カナダのバイオ医薬品企業であるVasomune Therapeutics Inc(以下Vasomune社といいます。)と急性呼吸不全などを原因とする疾患を対象とした医薬品に関する共同開発契約を締結し、現在Vasomune社のAV-001を新型コロナウイルス感染症対する治療薬として、2020年12月より健康成人を対象とした第Ⅰ相臨床試験を米国において実施いたしました。第Ⅰ相臨床試験では、48名の健康成人での投与を行い、安全性と忍容性を確認し、良好な結果を発表しました。その後、FDA(アメリカ食品医薬品局)との協議結果を踏まえ、前期第Ⅱ相臨床試験を開始しております。
AV-001については、米国およびカナダ政府より助成金を獲得しております。具体的には、米国国防総省より医療研究プログラム(PRMRP)として、2020年9月に280万ドル、2021年11月に640万ドルを受賞しました。また、カナダ政府からはNRC IRAP(the National Research Council of Canada Industrial Research Assistance Program)を通じて、2021年3月(金額非開示)と2021年11月に最大 280万加ドルの資金援助を受けることとなりました。COVID-19治療薬として米国、カナダ政府の力強い支援で、この後に続く臨床試験を加速させます。
c)製造体制
AV-001 の研究用及び治験用原薬は当社グループの共同開発先であるVasomune社で製造しております。
(2) 事業の内容
当社グループの医薬品事業は、主に提携先から得られる収益、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®筋注用4mg(以下「コラテジェン®」といいます。)」の販売による収益によって構成されております。
「コラテジェン®」は、末梢性血管疾患を対象疾患とした国内開発について、田辺三菱製薬株式会社に対し独占的販売権を付与する契約を2015年6月に締結しており、当該契約に基づいて当社グループは、開発の進捗に伴いマイルストーンを受け取り、研究開発事業収益に計上しております。また、「コラテジェン®」は、2019年に厚生労働省より国内の慢性動脈閉塞症における潰瘍に対する条件及び期限付製造販売承認を取得し、同年9月より田辺三菱製薬株式会社への販売を開始し、製品売上高に計上しております。今回の承認は、条件及び期限付であり、製造販売後承認条件評価を2024年までに行い、本承認取得を目指してまいります 。
また、田辺三菱製薬株式会社と、米国における末梢性血管疾患を対象とした独占的販売契約を2012年10月に締結しております。当該契約に基づいて当社グループは、米国での開発の進捗に伴いマイルストーンを受け取り、事業収益に計上する予定です。さらに将来、本製品が米国で上市された際には、当社グループは売上高の一定率を対価として受取る予定です。
2021年4月に開設したアンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(以下ACRLといいます。旧:衛生検査所)において希少遺伝性疾患検査のオプショナルスクリーニング検査を実施しており、手数料収入に計上しております。
<主な収益内容>
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