課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは「健康と美を願う生活者に納得していただける優れた医薬品・健康関連商品、情報及びサービスを、社会から支持される方法で創造・提供することにより、社会へ貢献する」ことを使命とし、健康増進、病気の予防から治療まで、生活者の健康と美のトータルサポートを目指すとともに、持続可能な社会の実現を目指してまいります。

 

(2)経営戦略等

当社グループの経営は、この使命を全うすべく、セルフメディケーション事業(国内、海外)と医薬事業それぞれを成長させながら、国際的な競争の中でも着実に成長・発展し続けられるように、一層強固な経営基盤を構築することを目指しております。

また、その事業活動において、生活者、得意先・取引先、従業員、地域社会、株主から期待されている責務を果たし、持続的な成長を続けてまいります。

 

(3)経営環境並びに事業上及び財務上の対処すべき課題

現在の当社グループを取り巻く経営環境は、人、カネ、モノ、技術、情報のグローバル化により、豊かな国と人々が増え、高齢長寿の社会が出現し、生活者主権の社会へと変化した一方で、種々の格差、地球資源の乱獲、温室効果ガスの排出、政治及び経済体制の諸問題が表面化してまいりました。

この変化に対しては様々な動きが生じており、その一つとして国際間の協調が深まっております。持続可能な開発目標(SDGs)が設定され、格差縮小を図り、賢い資源利用の実現を目指す動きへと繋がっております。

また、技術革新によって第4次産業革命「ソサエティ5.0」の実現への期待が高まっております。第3次産業革命によって発展した、全ての文字や絵をデータ化するデジタルの概念をベースに、データ化した情報の活用方法や領域を広げるオープンイノベーションにより、領域を超えた融合が生じ、社会問題の解決や、新たな経済価値創造のための解決策がもたらされつつあります。

このような時代の流れの中で、当社グループを取り巻く事業環境も大きく変化しております。

セルフメディケーション事業の分野は、小売企業のM&Aによる大型化に伴い買い手側の力が強まることによって、ビジネスの関係が変貌してまいりました。また、特定保健用食品・機能性表示食品が大幅に増加しております。一方で、急速に進む高齢化に伴う医療財政と社会保障制度への影響を背景に、生活者は「自分の健康は、自分のために、自分で守る」という新しい考え方が求められています。この考え方を行動に繋げるため、セルフメディケーション税制をさらに広げる活動が業界団体を中心に進んでおります。

医薬事業の分野では、創薬ターゲットの変化や新しい医療技術の発展により、研究・診断・治療の手法が変わり、これまで以上に新薬の研究開発難易度が高まっております。また、医療財政の逼迫に応じた医療費適正化を図るためにジェネリック医薬品の推進、薬価制度の改革も進んでいます。

 

① セグメント別の状況(セルフメディケーション事業)

セルフメディケーション事業(OTC医薬品及び健康関連商品事業)におきましては、国内OTC医薬品メーカーシェアNo.1の強みをベースに、「リポビタンシリーズ」「パブロンシリーズ」「リアップシリーズ」などの主力ブランドをはじめ、各薬効にて製品を取りそろえることで生活者のセルフメディケーションに貢献しています。またOTC医薬品のみならず、健康食品や化粧品などの健康関連商品を含めて、生活者の健康ニーズに対応する製品展開をしております。

OTC医薬品市場は、前年に引き続き新型コロナウイルス感染症の影響に伴う外出自粛、マスクの着用や手洗い・うがいなどの感染症予防対策の定着や訪日外国人客の減少による影響を受けておりますが、新型コロナワクチン接種による副反応対策商品の伸長もあり横ばいで推移しております。また生活者の健康ニーズも変化しており、予防意識の高まりや、健康食品等での対処など、OTC医薬品以外の健康関連商品にもニーズが拡充しております。これらにより国内OTC医薬品だけでは事業の成長が厳しい市場環境であり、領域の拡大等による成長ドライバーが必要であると考えられます。

この市場環境を受けまして、当社グループはセルフメディケーション事業を大きく国内・海外に分けて対応を行っております。

国内におきましては、OTC医薬品市場にて「リポビタンシリーズ」「パブロンシリーズ」「リアップシリーズ」など、既存ブランドの価値を一層高め、新たなブランドの育成に取り組むと共に、食品や化粧品などOTC医薬品以外の健康関連商品への領域拡大を行うことで生活者ニーズの変化に対応しております。また生活者の購買行動におけるネットチャネルへのシフトに対応するため、「大正製薬ダイレクト」「TAISHO BEAUTY ONLINE」を展開し、生活者の購入の利便性向上に取り組んでおります。

海外におきましては、2009年度のアジアOTC医薬品事業への本格参入以来、M&Aやブランド買収で現地に根付いたブランドアセットを獲得し、それらのアセットを活用することにより、OTC医薬品を中心とした事業の強化に取り組んでおります。2019年度にはベトナムのハウザン製薬に加えてフランスのUPSA社を連結子会社化いたしました。これにより、フランスを中心に東欧を含む欧州諸国及び西アフリカ地域における強固な事業基盤を獲得しました。今後は東南アジア市場に欧州市場を加えた2極体制により、品質管理、製造管理、情報管理などの一元化・一体化を進めるとともに、製品開発、ブランド育成、及びマーケティングノウハウなど、日本で培った当社のビジネスモデルを活かし市場を開拓することで、セルフメディケーションの浸透及び事業の拡大に努めてまいります。

 

② セグメント別の状況(医薬事業)

医薬事業(医療用医薬品及び同関連事業)におきましては、新薬創出の難易度が増す中で、医療費適正化政策の推進や薬価制度の抜本改革の影響等もあり、依然として厳しい事業環境が続いております。

このような市場環境の中、当社グループでは研究開発型企業として、「整形外科疾患」「代謝性疾患」「感染症」「精神疾患」の4つの重点領域に取り組んでおります。

営業面では、きめ細かい情報提供活動を行いながら自社オリジナル創製品である「ルセフィ」「ロコア」等の売上最大化に注力しております。また研究開発面では、開発化合物の早期承認取得を目指すとともに、ライセンス活動によるパイプラインの強化を進めております。さらに創薬研究では、外部研究機関との連携強化や先端技術の活用等にも取り組むことで、継続的なオリジナル新薬の創出に努め、持続的な成長を目指してまいります。

 

医薬品業界を取り巻く市場環境は厳しさを増しておりますが、変化への積極的な対応無くして成長はありません。当社グループでも、既存の事業領域にとらわれずに、新しい事業の種を探索するなど新しい取り組みを進めております。環境変化にも機動的に経営判断できる体制構築と併せてコーポレート・ガバナンスの強化に努め、グループ全体で価値創造力の向上を図ってまいります。

 

なお、新型コロナウイルス感染症の拡大は世界的に継続しており、予断を許さない状況が続いています。一方で、“withコロナ”と呼ばれる感染予防と経済活動の共存に向けた動きは活発化しており、中長期的にはOTC医薬品の需要は回復すると見込んでおります。

同感染症による当社グループの事業活動への影響は限定的であり、翌連結会計年度において一定期間続くものの、緩やかに回復すると仮定し、会計上の見積りを行っております。

しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大による影響が当該前提と乖離する場合には、当社グループの財政状態、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

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