業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析の検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

(業績等の概要)

(1)事業の進捗の状況

①  国内事業

[自社販売体制への移行、事業拡大について]

当社は、エーザイ株式会社(以下「エーザイ」)との事業提携契約が2020年12月に満了したことに伴い、2020年12月に自社によるトレアキシン®(一般名:べンダムスチン塩酸塩)販売を開始し、2021年度の最重要課題である収益化とその後の収益の持続的拡大という今後の事業基盤を盤石なものとしました。

自社での販売を行うことで、市場に密着した情報提供を行い、ニーズをくみ上げ、製品についてのよりきめ細かい情報提供を行い、またセミナーを企画し、より高い生産性をもつ営業組織体制を確立するに至りました。また、医薬情報担当者に加え、より専門性の高いヘマトロジー・エキスパートを各地域に配置しております。そして、全国流通体制を確立するため、株式会社スズケン及び東邦薬品株式会社との間で2社を総代理店とする医薬品売買に関する取引基本契約を締結し、全国物流体制の構築では、株式会社エス・ディ・コラボとの取引を開始し、東日本と西日本の2拠点に物流センターを設置しております。

当事業年度においては、2021年1月より、2020年9月に製造販売承認を取得したトレアキシン®点滴静注液剤[RTD (Ready-To-Dilute)製剤]の販売を開始し、従来のトレアキシン®凍結乾燥注射剤[FD(Freeze-Dried)製剤]からの切り替えを進めてまいりました。再発又は難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(以下「r/r DLBCL」)を対象としたベンダムスチンとリツキシマブの併用療法(以下「BR療法」)、及びベンダムスチンとリツキシマブ、ポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え)との併用療法(以下「P-BR療法」)の製造販売承認事項一部変更承認(一変承認)を2021年3月に取得し、トレアキシン®FD製剤のBR療法に関しては直ちに使用が可能となり、従来の多剤併用療法からの切り替えを進めてまいりました。

2021年4月には、トレアキシン®RTD製剤について、r/r DLBCLを対象としたBR療法及びP-BR療法の一変承認を取得しました。さらに2021年5月には、中外製薬株式会社(以下「中外製薬」)のポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え)が薬価収載され、P-BR療法との併用においてトレアキシン®の使用が可能となりました。

 

 [製品の安定供給について]

当社は、2021年1月よりトレアキシン®RTD製剤の製造販売を開始し、トレアキシン®FD製剤からトレアキシン®RTD製剤への切り替えを鋭意進めてまいりました。

トレアキシン®FD製剤はアステラス製薬株式会社の連結子会社であるアステラスドイッチランド社から、トレアキシン®RTD製剤はイーグル・ファーマシューティカルズ社(本社:米国ニュージャージー州、以下「イーグル社」)から輸入しております。

品質保証面では、トレアキシン®FD製剤・トレアキシン®RTD製剤ともに輸入品の二次包装と品質検査を国内で実施しており、品質的には安定しております。

供給面では、トレアキシン ® FD製剤からトレアキシン ® RTD製剤への切り替えを推進する中で、その進捗が当社の計画より遅れ、FD製剤が欠品となる可能性があったため、FD製剤の出荷調整を2021年9月から開始しましたが、医療従事者の皆様のご理解とご協力もあり、RTD製剤への切り替えは急速に進展しました。なお、RTD製剤につきましては、安定供給が可能な在庫量を十分確保しております。

 

[抗がん剤SyB L-0501(FD製剤) / SyB L-1701(RTD製剤) / SyB L-1702(RI投与)(一般名:ベンダムスチン塩酸塩またはベンダムスチン塩酸塩水和物、製品名:トレアキシン®)]

未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫(低悪性度NHL)(注1)及びマントル細胞リンパ腫(MCL)(2016年12月に製造販売承認を取得)、再発・難治性の低悪性度NHL及びMCL(2010年10月に製造販売承認を取得)、慢性リンパ性白血病(CLL)(2016年8月に製造販売承認を取得)を適応症として悪性リンパ腫領域においては幅広く使われております。2018年7月に日本血液学会が発行した造血器腫瘍診療ガイドラインにBR療法が新たに収載され、既承認のすべての適応症において、標準的治療の選択肢として推奨されることになりました。これによりトレアキシン®が悪性リンパ腫における標準療法として位置づけられています。

また、低悪性度NHLの代表的な組織型であるCD20陽性の濾胞性リンパ腫(FL)に対して、リツキシマブのみならず新規の抗CD20抗体製剤との併用に係わる一変承認取得(2018年7月)により、オビヌツズマブ(注2)との併用療法が治療選択肢として提供されていることに加え、腫瘍特異性T細胞輸注療法(注3)の前処置に関する一変承認取得(2019年3月)により、国内初のキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法(注4)「キムリア®点滴静注」(注5)の前処置としてトレアキシン®の使用が可能となっており、再生医療等製品の前処置としての使用方法の広がりによって悪性リンパ腫における標準療法としてのトレアキシン®の位置づけはより強固なものとなっています。

既に承認を取得した適応症に加え、r/r DLBCLを対象とするBR療法による第Ⅲ相臨床試験については、2020年5月に一変承認申請を行い、2021年3月に承認を取得しました。2021年4月には、トレアキシン®RTD製剤について、r/r DLBCLを対象としたBR療法及びP-BR療法の一変承認を取得しました。さらに、ベンダムスチンとリツキシマブを併用投与した時の生存時間データ(全生存期間、無増悪生存期間など)を評価することは、本剤のDLBCL治療における位置付けに重要なデータとなるため、全生存期間を主要評価項目とする追跡調査試験を実施し、その試験結果は日本血液学会などで発表し、論文での公表を準備中です。また、中外製薬が、r/r DLBCLを対象としたポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え)(注6)とBR療法との併用に対して、2020年6月に製造販売承認申請を行ったことを受けて、2020年7月に当社はトレアキシン®とポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え)、リツキシマブとの併用療法に対する一変承認申請を行い、2021年3月に承認を取得しました。2021年5月にポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え)が薬価収載され、ポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え)とBR療法との併用においてトレアキシン®の使用が可能となりました。本追加適応症については、これまで有効な治療方法がないため、救援化学療法として複数の抗がん剤を組み合わせた多剤併用化学療法が使われておりましたが、高い有効性と安全性が期待できる新たな治療薬の開発が切望されておりました。またBR療法につきましては、既に欧米においてr/r DLBCLの患者さんの治療に使われており、日本においても早期に使えるよう患者団体及び関係学会から厚生労働省に対して要望書が出ておりました。速やかに従来の多剤併用療法からの切り替えを進めることにより、多くの患者さんの治療選択肢として浸透することを期待しております。

2017年9月にイーグル社との間で日本における独占的ライセンス契約を締結したトレアキシン®RTD製剤及び投与時間を短縮可能とする投与[RI(Rapid Infusion)投与(注7)]については、RTD製剤は2020年9月に製造販売承認を取得し、2021年1月より販売を開始しました。RI投与につきましては、安全性に関する臨床試験が終了し、2021年5月に一変承認申請を完了し、2022年2月に承認を取得しました。さらにRTD製剤は、2021年11月に長期安定性試験の結果に基づき有効期間を30箇月に延長することを目的とした一変承認を取得しました。

RTD製剤は、従来のFD製剤に比べて、手動による煩雑な溶解作業が不要で、そのために要する時間を短縮することができ、医療従事者の負担を大幅に低減することが可能となります。

また、RI投与は、投与時間が、従来のFD製剤及びRTD製剤の1時間に対して大幅に短縮されるため患者さんと医療従事者の負担を大幅に低減することが可能となることから大きな付加価値を提供することができます。

 

(注1) 非ホジキンリンパ腫とは、白血球の中のリンパ球ががん化した悪性腫瘍である悪性リンパ腫のうち、ホジキンリンパ腫以外の総称です。日本人の悪性リンパ腫では、大半を非ホジキンリンパ腫が占めています。
 

(注2) オビヌツズマブ(ガザイバ®:販売元中外製薬):非ホジキンリンパ腫の治療薬として国内外の治療ガイドラインで推奨されているリツキシマブと同様、幹細胞や形質細胞以外のB細胞上に発現するタンパク質であるCD20に結合する、糖鎖改変型タイプⅡ抗CD20モノクローナル抗体で、標的となるB細胞を直接、及び体内の免疫系とともに攻撃し、破壊するようデザインされています。
 

(注3) 腫瘍特異性T細胞輸注療法とは、がん患者さん自身の腫瘍特異的T細胞(がん細胞を特異的に認識するT細胞)に、体外で人工的にがん特異性を付与し、細胞を増幅した後に患者さんに投与する療法です。
 

(注4) キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法は、腫瘍特異性T細胞輸注療法の中でも、腫瘍細胞上の膜抗原を認識する抗体の抗原結合部位とT細胞受容体の細胞内ドメインを組み合わせたキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor: CAR)をコードする遺伝子をT細胞に導入して増幅・輸注する療法です。CARの標的としてB細胞上に発現するCD19を用いた臨床試験では、B細胞性腫瘍患者にCD19指向性CAR導入T細胞が投与され、著明な臨床効果が得られています。
 

(注5) キムリア®点滴静注(一般名チサゲンレクルユーセル:販売元ノバルティスファーマ株式会社):国内で初めて承認されたキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法で、再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)及び再発又は難治性のCD19陽性のDLBCLを適応症として2019年3月に製造販売承認を取得し、2019年5月に薬価収載されました。
 

(注6) ポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え):シアトルジェネティクス社のADC技術を使用してロシュ社が開発した、ヒト化抗CD79bモノクローナル抗体とチューブリン重合阻害剤をリンカーで結合させた、ファーストインクラスの抗CD79b抗体薬物複合体(ADC: antibody-drug conjugate)です。CD79bタンパクは、多くのB細胞で特異的に発現しており、新たな治療法を開発する上で有望なターゲットになり得ます。ポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え)は正常細胞への影響を抑えつつCD79bに結合し、送達された化学療法剤によりB細胞を破壊すると考えられます。
 

(注7) RTD製剤及びRI投与は、従来のFD製剤とは異なり既に液化された製剤です。RTD製剤(Ready To Dilute)は調剤作業を大幅に低減し、急速静注であるRI投与(Rapid Infusion)により点滴時間を従来の1時間から大幅に短縮することにより、FD製剤に比べ患者さんの負担を大幅に軽減し、医療従事者に大きな付加価値を提供することが可能になります。

 

[抗がん剤SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:リゴセルチブナトリウム)]

リゴセルチブ注射剤については、導入元であるオンコノバ・セラピューティクス社(本社:米国ペンシルベニア州、以下「オンコノバ社」)が、現在の標準治療である低メチル化剤による治療において効果が得られない、治療後に再発した、または低メチル化剤に不耐容性を示した高リスク骨髄異形成症候群(高リスクMDS)における全生存期間を主要評価項目として、全世界から20ヶ国以上が参加している国際共同第Ⅲ相臨床試験(INSPIRE試験)を実施しておりますが、2020年8月に医師選択療法との比較において主要評価項目を達成しなかったことを発表しました。当社は日本における臨床開発を担当しており、INSPIRE試験の追加解析から得られた知見を今後のリゴセルチブ注射剤の開発に活用するための検討を進めております。

リゴセルチブ経口剤については、オンコノバ社が米国にて実施の、初回治療の高リスクMDSを目標効能とする第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(アザシチジン(注8)併用)において、リゴセルチブ経口剤とアザシチジンを併用した際の有効性及び安全性が示唆されています。当社は、単剤により高用量の安全性及び日本人での忍容性を確認するために2017年6月に国内第Ⅰ相臨床試験を開始し、2019年6月に症例登録を完了しております。

リゴセルチブ及びトレアキシン ® に関して、東京大学や群馬大学との共同研究等を通じて、両化合物あるいは他の既存薬との併用により新たな有用性を見出すとともに新規適応症の探索を行い、事業価値の最大化に努めます。

 

(注8) アザシチジン(ビダーザ®:販売元日本新薬株式会社):2011年にMDSに対する第Ⅲ相臨床試験において、初めて生存期間の延長が認められたことから承認された低メチル化剤(注射用)で、現在、造血幹細胞移植が難しいMDS患者に対する第一選択薬として使用されています。MDSは一種の前白血病であり、その病態にはDNAの過剰なメチル化による癌抑制遺伝子の発現の低下が大きく関係していると考えられています。アザシチジンなどの低メチル化剤はDNAのメチル化を阻害する作用により癌抑制遺伝子の発現を回復させ白血病への進行を抑えると考えられています。

 

[抗ウイルス薬SyB V-1901(一般名:Brincidofovir)]

当社は2019年9月にキメリックス・インク社(本社:米国ノースカロライナ州、以下「キメリックス社」)との間で抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの注射剤及び経口剤(SyB V-1901、以下各々「BCV IV」及び「BCV Oral」)(注9)に関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、天然痘疾患を除くすべての疾患を対象としたBCVの世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利をキメリックス社から取得しております。

「空白の治療領域」でアンメット・メディカル・ニーズの高い造血幹細胞移植後のアデノウイルス(AdV)感染症を対象に、日本・アメリカ・ヨーロッパを中心としたBCV IVのグローバル開発を優先的に進めることを決定し、2021年3月に、主に小児対象(成人も含む)のアデノウイルス(AdV)感染症を対象とする第Ⅱ相臨床試験を開始するため、米国食品医薬品局(FDA)にInvestigational New Drug(IND)Application(治験許可申請)を行いました。本開発プログラムについては、2021年4月に、FDAからファスト・トラック(Fast track)指定を受けており、2021年8月には第1例目(FPI: First Patient In)の投与を開始しました。さらに、2022年1月に英国医薬品庁(Medicines and Healthcare products Regulatory Agency:MHRA)に治験申請(Clinical Trial Application:CTA)を提出し、受理されました。

アデノウイルス(AdV)感染症を対象とする試験により得られた有効性と安全性に関する知見に基づき、造血幹細胞移植後の各種dsDNAウイルス(注10)感染症に対する効果を検討し、抗マルチウイルス感染症へ対象領域を拡大し、さらには腎臓移植を含む臓器移植分野等の対象領域拡大の可能性を追求することで、市場の拡大とBCVの事業価値の最大化を目指してまいります。本剤は既にキメリックス社による欧米における臨床試験においてBCV Oralが高活性の抗ウイルス効果を示し、また広域のスペクトラムを有することが確認されており、各種dsDNAウイルスに対する幅広い抗ウイルス活性は、BCV IVに関しても造血幹細胞移植後の各種ウイルス感染症の予防及び治療に対する有効性と安全性が期待されます。

また、ブリンシドフォビルは高い抗ウイルス作用に加え、抗腫瘍効果も期待されています。シンガポール国立がんセンターやカリフォルニア大学サンフランシスコ校脳神経外科脳腫瘍センターとの共同研究等を通じて、難治性脳腫瘍、EBウイルス陽性リンパ腫等、がん領域における新規適応症の探索も行っています。

なお、キメリックス社は、2020年12月、FDAが天然痘の医学的防衛策としてBCV経口剤の新薬申請(NDA)の提出を受理したことを発表しておりましたが、2021年6月にFDAから承認を取得しました。

 

(注9) ブリンシドフォビル(BCV)は、シドフォビル(CDV、欧米では既承認・販売の抗ウイルス薬、本邦は未承認)に脂肪鎖(ヘキサデシルオキシプロピル:HDP)が結合した構造となっており、速やかに脂質二重膜へ取り込まれ効率よく細胞内へ移行した後、細胞内ホスフォリパーゼによる代謝によって脂肪鎖が切り離され、生成された活性化体(CDV-PP:CDV diphosphate)が細胞内で長時間保持される結果、抗ウイルス活性が飛躍的に向上した化合物です。また、HDP結合により、OAT-1トランスポーターによる腎尿細管上皮細胞への蓄積が生じないことに加え、CDVが血中に遊離するレベルは低いため、CDVの根本的問題であった腎毒性を回避できます。
 

(注10) dsDNAウイルス(二本鎖DNAウイルス): サイトメガロウイルス(CMV)、アデノウイルス(AdV)、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)、単純ヘルペスウイルス-1型又は2型(HSV-1/2)、BKウイルス(BKV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、JCウイルス、天然痘ウイルスなど、ヘルペスウイルス科、アデノウイルス科、ポリオーマウイルス科、パピローマウイルス科、ポックスウイルス科を含む。

 

②  海外事業

抗ウイルス薬ブリンシドフォビルのグローバル開発計画を加速し商業化を実現するため、100%出資の米国子会社シンバイオファーマUSA(SymBio Pharma USA, Inc. 社長:吉田文紀)が、2021年10月に副社長兼プロジェクトマネジメント及びクリニカルオペレーションズの責任者としてキャロリン・ヤナヴィッチ(Dr. Carolyn Yanavich)を選任し、本格的な稼働を開始しました。

 

③  新規開発候補品の導入

当社は2019年9月に導入した抗ウイルス薬ブリンシドフォビルのグローバル開発を推進するとともに、従来からの取り組みである複数のライセンス案件の検討を進め、新規開発候補品のライセンス権利取得に向けた探索評価の実施を通じて、収益性と成長性を兼ね備えたバイオ製薬企業として中長期的な事業価値の創造を目指してまいります。

 

④  経営成績の状況

以上の結果、当事業年度の売上高は、自社販売に移行する2020年12月以前にエーザイが販売したFD製剤の市中在庫が消化された影響、さらには新型コロナウイルス感染拡大による治療の遅延、施設訪問の規制強化が営業活動の制約となったこと等の悪化要因はあったものの、 8,256,924千円(前年同期比176.4%増)と自社販売に移行したこと等により大幅に増加しました。特に第3四半期以降に関しましては、高齢者を対象とした新型コロナウイルスワクチン接種等による新型コロナウイルス感染症対策の進展に伴う治療遅延の解消が進み、また3月に承認となったBR療法及びP-BR療法のr/r DLBCLの適応追加、並びに5月に中外製薬のポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え)が薬価収載されたことによるr/r DLBCLの売上の増加が本格化し、下半期の売上高は前年同期の1,626,402千円から大幅に増加し、5,110,316千円となりました。

差引売上総利益は、売上の増加による増益とトレアキシン®FD製剤からトレアキシン®RTD製剤への切り替えが急速に進展し売上総利益率が改善したことにより、5,800,110千円(前年同期比569.1%増)と大幅に増加しました。一方、トレアキシン®FD製剤からトレアキシン®RTD製剤への剤形の切り替えに伴ってトレアキシン®FD製剤のたな卸資産の評価損失等331,866千円を計上しました。

販売費及び一般管理費は、トレアキシン ® 、リゴセルチブ及びブリンシドフォビルの臨床試験費用等が発生したこと等により研究開発費として1,736,126千円(前年同期比23.4%減)、自社販売体制への移行による販売費の増加を含めたその他の販売費及び一般管理費として3,047,982千円(前年同期比1.8%減)を計上したことから、合計で4,784,109千円(前年同期比11.0%減)となりました。

これらの結果、当事業年度の営業利益は1,016,001千円(前年同期は営業損失4,506,220千円)となりました。また、受取手数料14,757千円を主とする営業外収益17,462千円を計上した一方、為替差損20,186千円、支払手数料9,499千円を主とする営業外費用32,330千円を計上したこと等により、経常利益は1,001,133千円(前年同期は経常損失4,615,903千円)、当期純利益は、2021年12月期の業績等を考慮し繰延税金資産の回収可能性について慎重に検討した結果、繰延税金資産を1,275,759千円計上したこと等により2,032,203千円(前年同期は当期純損失4,090,216千円)となりました。

なお、当社の事業は医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。

 

⑤  財政状態の状況

当事業年度末における総資産は、売掛金が1,740,521千円、前渡金が149,081千円、前払費用が64,366千円増加した一方、半製品が412,950千円、未収消費税等が314,761千円、商品及び製品が146,284千円減少したこと等により、前事業年度末に比べ2,178,290千円増加し、8,452,997千円となりました。

負債の部については、未払消費税等が516,036千円、未払法人税等が301,671千円、商品及び製品切替引当金が186,437千円増加した一方、買掛金が595,776千円、未払金が130,738千円減少したこと等により、前事業年度末に比べ89,935千円増加し、1,707,324千円となりました。

純資産の部については、当期純利益の計上により利益剰余金が2,032,203千円増加し、資本剰余金が113,015千円、資本金が112,684千円増加、新株予約権が101,041千円減少したこと等により、前事業年度末に比べ2,088,354千円増加し、6,745,672千円となりました。

この結果、自己資本比率は73.7%と前事業年度末に比べ9.3ポイント増加しました。

 

⑥  キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ11,480千円増加3,860,106千円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

税引前当期純利益1,001,331千円の計上、未払又は未収消費税等830,797千円の減少、たな卸資産559,235千円の減少等により営業活動資金が増加した一方、売上債権1,740,521千円の増加、仕入債務595,776千円の減少等により、全体では140,042千円の増加(前年同期は4,122,483千円の減少)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

無形固定資産の取得による支出38,383千円、有形固定資産の取得による支出25,454千円、敷金及び保証金の差入による支出7,011千円により、全体では70,849千円の減少(前年同期は160,309千円の減少)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

自己株式の処分による収入649千円、新株予約権の行使による株式の発行による収入254千円により財務活動資金の増加要因はあったものの、自己株式の取得による支出68,825千円、株式の発行による支出4,001千円により、全体では71,922千円の減少(前年同期は4,222,090千円の増加)となりました。

 

⑦ 生産、受注及び販売の状況

(生産実績)

当社は生産を行っていないため、該当事項はありません。

 

(仕入実績)

当事業年度の仕入実績は次のとおりであります。

 

 

当事業年度

(自  2021年1月1日

至  2021年12月31日)

仕入高(千円)

前年同期比(%)

仕入

1,893,236

59.9

合計

1,893,236

59.9

 

(注) 1.当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

     2.金額は仕入価格で表示しており、消費税等は含まれておりません。

 

(受注実績)

当社は受注生産を行っていないため、該当事項はありません。

 

(販売実績)

当事業年度の販売実績は次のとおりであります。

 

 

当事業年度

(自  2021年1月1日

至  2021年12月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

商品及び製品販売

8,256,924

277.4

マイルストーン収入

合計

8,256,924

276.4

 

(注) 1.当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントである ため、セグメント別の記載を省略しております。

   2.最近2事業年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前事業年度

(自  2020年1月1日

至  2020年12月31日)

当事業年度

(自  2021年1月1日

至  2021年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

エーザイ株式会社

2,545,650

85.2

△25,133

△0.3

株式会社スズケン

125,526

4.2

5,042,274

59.7

東邦薬品株式会社

119,510

4.0

3,426,221

40.6

 

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

⑧ 資本の財源及び資金の流動性について

当社は、新規開発品の導入と、その開発に対して積極的に資金を投下しておりますが、当社はこれまでは、創業期を脱し収益確保への途上にあるベンチャー企業であったため、開発第1号品であるSyB L-0501の販売収益資金は十分ではなく、主に第三者割当による新株ないし新株予約権の発行により調達してきました。

しかしながら、自販化とr/r DLBCLへの新規適応追加に伴い売上及び収益力が向上し、また新たな運転資金需要に対応するために銀行から融資枠の設定を受けており、当面の資金需要に関しては、事業から生じるキャッシュフローの範囲内で賄ってゆく計画です。

 

⑨ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」および「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。

 

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