業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績の状況

当社は、「バイオで価値を創造する-こども・家族・社会をつつむケアを目指して-」を目標に掲げ、これまでの事業活動で得てきたバイオ技術に関するノウハウ及び知見を最大限活用し、従来より手掛けてきた希少疾患、難病に加えて、小児疾患を重点的なターゲットと定め、これらの疾患に悩む患者様、そのご家族や介護者の方を含めた包括的なケアを目指して、新薬のみならず新たな医療の開発・提供に取り組んでおります。具体的には、バイオ後続品事業で安定的な収益基盤を確立させつつ、バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)で成長性を追求しております。このような状況の中、当社は2022年5月12日に新たに中期経営計画-KWB2.0-を公表し、上述の各事業における今後の具体的な戦略方針と成果目標をコミットし、さらなる成長に向けて活動を強化しております。

当連結会計年度における各事業の進捗状況は以下のとおりであります。

イ バイオ後続品事業

富士製薬工業㈱と持田製薬㈱による好中球減少症治療薬「フィルグラスチムBS」の原薬販売及び2019年11月27日より販売が開始された㈱三和化学研究所と共同開発を行っていたダルベポエチンアルファバイオ後続品の売上高に応じたロイヤリティによる収益を安定的に計上しております。また、千寿製薬㈱と共同で開発を行ってきたラニビズマブバイオ後続品について、2021年9月27日付で、同社が国内での製造販売承認を取得し、2021年12月9日に上市されました。同剤は、当社のバイオ後続品事業における第3号製品となる上市品であり、今後は経営基盤を支える収益源として期待されるものであります。その他、開発中のパイプラインについても着実に開発活動を推進しております。

ロ バイオ新薬事業

次世代型抗体医薬品等の研究開発を進めた結果、2020年1月にがん細胞内侵入能力を有する抗体を用いた抗がん剤の開発を目的として札幌医科大学との共同研究契約を、同じくがん細胞殺傷効果を有する新たな抗体の取得を目的としてMabGenesis㈱との共同研究契約を、それぞれ締結し、その他の開発中のパイプラインと合わせて研究開発活動を継続しております。

ハ 細胞治療事業(再生医療)

当社は、再生医療事業の研究開発において、重要な研究ソースとなるSHED及びCSCを活用したプロジェクトの推進、アカデミア及び企業との共同研究又は提携を推進しております。

SHEDについては、SHEDの疾患に対する適性を見極め、骨及び神経疾患といった分野で新たな治療法を提供できる可能性を複数のアカデミア及び企業に評価いただき、それぞれ研究開発活動を推進しております。

CSCについては、小児の重篤な心臓疾患である機能的単心室症を主な対象とした再生医療等製品の開発(開発番号JRM-001)を推進してまいりました。その一方、将来の上市を目指したパートナリング活動を継続する中で、心疾患領域における研究開発経験・ノウハウを保有する㈱メトセラに当該事業を譲渡し、同社が主体となって開発を行っていただくことが最善と判断したため、JRM-001の開発を行う当社の完全子会社である㈱日本再生医療の株式譲渡を2022年4月4日付で決議し、実行いたしました。なお、今後も当社による開発活動の支援を継続いたします。

そのほか、将来の成長戦略として、高い治療目標を達成するために強化型細胞治療「デザイナー細胞」の具体的な進捗として、2021年9月8日にナノキャリア㈱と共同研究契約を締結、さらには同12月6日には㈱バイオミメティクスシンパシーズと、疾患指向性のあるSHEDを取得可能とする新規培養法の開発に係る委託開発契約をそれぞれ締結し、開発活動を本格化させております。また、再生医療分野での事業を進展させていくための重要なステップとして、SHEDを再生医療等製品として製品化するための基となるマスターセルバンク(MCB)開発について、SHED製造の原料となる乳歯を提供頂くための体制構築のため「ChiVo Net 未来医療子どもボランティアネットワーク」、東京大学医学部附属病院、昭和大学歯科病院、それぞれとの連携を進めてまいりました。先般、その準備が整ったことから㈱ニコン・セル・イノベーションのGMP/GCTP対応製造施設において、マスターセルバンクの製造を開始いたしました。これにより当社における再生医療等製品の研究・開発活動を加速すると共に、アカデミアや企業との連携による研究・開発パイプラインの強化を進めてまいります。

これらの結果、当連結会計年度の売上高は1,569,232千円(前連結会計年度比57.5%増)、営業損失は919,118千円(前連結会計年度は969,687千円の営業損失)、経常損失は952,640千円(前連結会計年度は991,166千円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は535,259千円(前連結会計年度は1,001,461千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う当連結会計年度における業績への影響はありませんでした。

② 財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における総資産の残高は、前連結会計年度末比10.9%減の3,503,335千円となりました。これは主に、仕掛品が408,656千円、製品が129,405千円増加したものの、投資有価証券が408,486千円、売掛金が354,882千円減少したことによるものであります。

 

(負債)

当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末比23.2%減の1,784,822千円となりました。これは主に、受注損失引当金が96,000千円増加したものの、転換社債型新株予約権付社債が400,000千円、未払金が107,963千円、繰延税金負債が89,491千円減少したことによるものであります。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末比6.7%増の1,718,513千円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純損失を535,259千円計上し、その他有価証券評価差額金が202,965千円減少したものの、資本金及び資本剰余金がそれぞれ389,033千円、新株予約権が68,285千円増加したことによるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、1,187,189千円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により減少した資金は1,169,561千円となりました。これは主に、売掛債権の減少354,882千円があったものの、税金等調整前当期純損失を535,759千円、投資有価証券売却益を417,736千円計上したほか、棚卸資産の増加538,062千円があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により増加した資金は526,509千円となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入526,669千円があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により増加した資金は369,083千円となりました。これは、新株予約権の行使による株式の発行による収入369,083千円があったことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。

区分

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

生産高(千円)

前年同期比(%)

バイオ後続品事業

583,762

388.3

 

原薬等販売収益

583,762

388.3

合計

583,762

388.3

(注)金額は、製造原価によっております。

 

b.受注実績

 フィルグラスチムバイオ後続品及びラニビズマブバイオ後続品につきましては、ロット単位での受注であり、各ロットの生産高に応じて売上高が変動し、受注金額を確定できないことから、記載を行っておりません。

 なお、上記以外の品目につきましては、研究開発段階での売上であり、その不確実性に鑑み、記載を行っておりません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。

区分

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

バイオ後続品事業

1,543,101

163.4

 

原薬等販売収益

1,447,568

183.8

 

知的財産権等収益

95,533

60.8

バイオ新薬事業

細胞治療事業(再生医療)

26,130

50.3

 

知的財産権等収益

26,130

116.8

合計

1,569,232

157.5

(注)最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおり

であります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

富士製薬工業㈱

787,435

79.0

1,005,440

64.1

千寿製薬㈱

294,971

18.8

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容

当連結会計年度における売上高は、新たに販売開始となったラニビズマブバイオ後続品を含めて主にバイオ後続品の原薬等の販売が順調に推移したことに加え、ダルベポエチンアルファバイオ後続品の販売に伴うロイヤリティ収益、バイオ後続品の第4製品目の製造プロセス開発に係る原薬販売等により、1,569,232千円となりました。一方、主にバイオ後続品事業におけるラニビズマブバイオ後続品の商用製造に向けた最終段階の開発及び将来の原価低減に向けた開発費用並びに細胞治療事業(再生医療)におけるSHEDマスターセルバンク開発等に取り組んだ結果、研究開発費を1,150,209千円計上したため、営業損失は919,118千円、親会社株主に帰属する当期純損失は535,259千円となりました。

なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う当連結会計年度における業績への影響はありませんでした。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社が業を営む医薬品業界の特質として、研究開発投資がリターンを生み出すまでの期間が長く、これに伴うリスクも高いと考えられております。当社は、そのリスクを分散させるために、複数の開発品を保有し、パイプラインの充実を図ることが最重要課題であると考えておりますが、そのためには多額の研究開発資金が必要となります。一方で、特にバイオ後続品については、既存バイオ医薬品の特許期間の満了時期から逆算して研究開発を開始する必要があるため、機を逸することのない意思決定と経営資源の投入を行う必要があります。今後も直接金融による資金調達が基本になりますが、開発品の優先順位を考慮しつつ財務会計面及び管理会計面からも検討を加えた上で意思決定を行っていくことで、パイプラインの充実と安定的な収益基盤の確立につながるものと考えております。

なお、今後1年の資金繰りの状況は研究開発費として1,400,000千円を計上する予定であります。これら研究開発費は、SHEDの成長戦略実現に向けた開発、ラニビズマブバイオ後続品の原価低減のための施策による一時的支出が主な内訳であります。当社グループは、当連結会計年度末で現金及び預金並びに売掛金を合わせて1,649,044千円の残高を有しており、今後中長期的には上述のとおり原価低減施策の結果、高い利益率を持ったバイオ後続品の販売による売掛債権の回収及びロイヤリティ収益並びに新株予約権行使等で必要十分な資金調達がされることが見込まれるため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在していないものと評価しております。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化も想定し、資金調達も含め、手許流動性の維持・向上に努めてまいります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、連結会計年度末日における資産及び負債、連結会計期間における収益及び費用について会計上の見積りを必要としております。この見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

 

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