課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 経営方針

当社は創薬バイオベンチャー企業として研究開発先行型の事業を展開しており、独自性の高いウイルス遺伝子改変がん治療薬、重症感染症治療薬及びがん検査薬などの開発と事業化を推進しています。

特に、がんのウイルス療法テロメライシン、次世代テロメライシンOBP-702、がんの早期発見・再発予測を行うテロメスキャンを揃え、がんの発見から治療までを網羅する「がん領域」と、コロナウイルス感染症治療薬OBP-2011を中心とした「重症感染症領域」でパイプラインを構築し、さらにこれまでHIV感染症治療薬として開発してきたOBP-601を神経難病治療薬として開発しており、「ウイルス創薬企業」として成長を目指しています。今後は、各パイプラインの製薬企業へのライセンス活動を推進して商業化を早め、さらに新規パイプラインの創製にも取り組んでゆく方針です。

「オンコリスなしでは医療現場が、ひいては患者様が困る」そういう存在感ある創薬を展開することを基本方針とし、いち早く医療現場の課題解決に貢献してゆきたいと考えています。

 

(2) 当社を取り巻く経営環境

がんのウイルス療法は1990年代から欧米を中心に研究開発が進み、2010年代以降に大きな進展を遂げました。2015年に米国アムジェン社がヘルペスウイルスを使ったがんのウイルス療法を上市させ、日本国内では2021年に第一三共株式会社が同様なヘルペスウイルス「デリタクト注」(一般名:テセルパツレブ)を上市させました。現在も、世界で数十社が様々なウイルス療法の開発に着手し、研究開発競争が激しくなっています。当社が開発しているアデノウイルスによるウイルス療法テロメライシンは、食道がんに対する適応に対して、厚生労働省による『先駆け審査制度への指定』を受けることができ、米国ではFDAから食道がん治療に対する『オーファンドラッグ指定』を受けています。これらの指定により、薬事承認にかかわる相談・審査において優先的な取り扱いを受けることができるようになりました。

また、医薬品業界では、パテントクリフを補う新薬の創出が大きな課題となってきており、大手製薬会社も独自の新薬の創出に頼るのではなく、ベンチャー企業が創出した従来にない遺伝子治療や細胞治療などの新しいモダリティを求めるようになってきました。一方、新型コロナウイルス感染症のパンデミック拡大により医療機関の機能が逼迫し、全世界規模での診療の遅れのみならず、新薬の臨床試験の進捗に大きな遅れが目立つようになってきています。このような環境下、当社のような小規模組織は、経営資源であるヒト・モノ・カネを戦略的かつ効率的に活用し、事業のスピードと質を最大化する必要に迫られています。

医療現場や外部委託会社であるCRO(Contract Research Organization)やCMO(Contract Manufacturing Organization)との関係を強化するとともに、当社米国子会社のOUS社と連携し、前臨床から臨床段階への橋渡し(Translational Research)を効率的に進め、ニューモダリティを求める大手製薬会社との提携に繋げて新薬承認へのスピードアップを実現させたいと考えています。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社は、組織戦略において下記の課題を重要な課題として取り組んでおります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において判断したものであります。

 

a.経営理念の浸透

当社のビジョンは、未来のがん治療にパワーを与え、その実績ががん治療の歴史に私たちの足跡を残してゆくことです。

私たちが求めて止まないのは、医療の“イノベーション”です。そのために、普段からの医学研鑽を惜しみません。少人数で大きな仕事を成し遂げてこそ、アドベンチャーと言えるでしょう。大企業にできないことこそ、私たちが成し遂げるべき目標です。いくら儲かるからではなく、どれだけの人を救えるかに価値観をもち、その結果としての利益を追求してゆきたいと考えます。経営者と社員だけではなく、株主様ともこの意識を共有してゆきます。常に透明な経営を心がけ、定期的な情報公開を行ってゆきます。社会貢献を目指す社会人として、常にコンプライアンスの遵守を心がけます。

 

この経営理念を役職員に浸透させ、経営理念に基づいた経営戦略の遂行を柔軟且つ活気を持って執り行う組織を構築することが、重要な経営課題です。そのために、経営理念を具現化するための行動規範を策定し、役職員に行動規範の遵守を指導するとともに、経営トップが役職員に経営理念を語る機会を積極的に設定しています。その上で、研究開発部門と事業開発部門が一元的に情報を共有することを第一義に組織を構築しています。また、社内リソースを管理する管理部門は、常にステークホルダーを意識し、コンプライアンス遵守を徹底します。さらに、内部監査部門は、経営理念及び行動規範の浸透状況をはじめとするモニタリング機能を充実させていきます。

 

b.人財の確保と成長

役職員個々の自発的な成長こそが当社の成長を支える必須要素です。その実現のために人財の採用・育成を積極的に推進します。特に、当社の研究開発やビジネスは国内外に渡るため、英語能力をはじめ国際的視野を持つ人財を育てることが重要です。社内外ネットワークを活用し、確かな技術・能力・成長意欲のある人財の採用を行い、併せてOJTや各種研修プログラムによる人財育成を行うことで、陣容の充実を図ります。また、業績評価や株式報酬制度を充実させ、業務のスピード及び質を最大化することに努めます。

 

c.研究開発体制の強化

当社の研究開発は、医薬品及び検査薬候補の探索・創製から前臨床試験及び初期臨床試験(POC: Proof of Concept)までを中心とし、前臨床から臨床段階への橋渡し(TR:Translational Research)が主業務です。従って、研究開発計画の企画立案並びにその進捗管理を主たる業務とするプロジェクトリーダーを担える人財の確保並びに育成が重要な課題です。当社の研究開発体制は、国内のみならず海外にも展開しております。当社米国子会社のOUS社の臨床開発部門との連携を充実させ、世界の医療や研究機関との共同研究開発を通じて先進技術を取り込み、技術レベルの向上を図るとともに、アウトソーシング先を積極的に活用し、ローコスト且つハイレベルな研究開発体制の構築を行います。

 

d.事業開発部門の強化

当社は、ウイルス製剤を用いたがん治療薬領域と重症感染領域を事業領域に定めており、この業界においては非常に特殊なウイルス創薬の事業化を目指しています。従って、ビジネス能力だけではなく科学的知識の豊富な人財を確保・育成し、世界の製薬企業とのネットワークをより強固なものにしていきます。さらに、OUS社との連携を強化することでライセンスの機会を数多く創出し、当社のキャッシュ・フロー獲得に貢献できる事業開発体制を構築します。

 

e.アウトソーシング戦略

アウトソーシングを主体とする当社のビジネスにおいて、その効率化は重要な課題であります。必要且つ十分な研究開発及び製造力の確保に向け、外部委託会社であるCRO及びCMOとの関係を強化するために、定期訪問等による綿密なコンタクト体制をとるべく全組織に啓蒙しています。また、常に最良のアウトソーシング体制を確保するべく、各々の業務領域において特定の1社依存にならぬよう、セカンドコントラクターの探索及び関係構築も行います。

 

主要製品・サービス内容、顧客基盤、販売網等については、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (1)主要なパイプライン」及び「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」をご参照ください。

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得