当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当事業年度(2021年1月1日~2021年12月31日)におけるわが国経済は、繰り返す新型コロナウイルス感染症の再拡大により国民生活や企業活動も大きな影響を受け続けました。デルタ変異株による夏場の第5波は、それまでの過去最大の波となりましたが、ワクチン接種が幅広い年代へ普及するなか急速に収束に向かい、社会経済活動の正常化が段階的に進むことが期待されました。しかしながら、11月末に発生が確認されたオミクロン変異株は極めて感染力が高いとされ、世界的に急激に感染拡大するなか水際対策などが施されたものの、わが国においても過去最大の感染拡大となるなど、先行きは未だ不透明な状況が続いております。
体外診断用医薬品業界におきましては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、新型コロナウイルスの遺伝子検査や抗原検査等の検査需要は急激に高まる一方で、インフルエンザウイルスをはじめとした既存の感染症は、新型コロナウイルス感染症に対する感染防御の効果や受診控え等により、検査需要が減少するという影響を受けました。当事業年度におきましては、それらの影響から徐々に脱しつつあるものの、新型コロナウイルス感染症は変異株による再拡大を繰り返し、その影響は継続しております。今後の既存の感染症全般の検査需要の見通しにつきましては、オミクロン変異株による第6波が収束したのち、ワクチン接種や治療薬が普及していくなかで、新型コロナウイルス感染症は終息への兆しが見えるのかどうか、注視を要する状況にあります。
このようななか、当社は、「全自動遺伝子解析装置 Smart Gene」の累計販売台数の増加を背景に、感染急拡大により需要が急増した「スマートジーン SARS-CoV-2」の安定供給に尽力いたしました。また、新型コロナウイルス感染症の検査体制のさらなる拡充に貢献するべく、新製品の開発にも積極的に経営資源を投下いたしました。
2021年3月に、高感度感染症迅速診断システム「クイックチェイサー Immuno Reader シリーズ」の専用試薬として、新型コロナウイルス抗原キット(銀増幅イムノクロマト法)「クイックチェイサー Auto SARS-CoV-2」、同年4月に、クイックチェイサーシリーズの専用機器として検査結果を自動で判定できるデンシトメトリー分析装置「スマートQCリーダー」、同年11月に、新型コロナウイルス抗原・インフルエンザウイルス抗原同時検出キット「クイックチェイサー SARS-CoV-2/Flu(Flu A,B)」を発売いたしました。
このような環境下におきまして、当事業年度の売上高は、131億37百万円(前期比212.4%増)となりました。
当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントでありますが、市場分野別の売上高は、以下のとおりであります。
病院・開業医分野におきましては、新型コロナウイルス検査薬(遺伝子検査及び抗原検査)につきましては、「全自動遺伝子解析装置 Smart Gene」は世界的な半導体不足の影響により累計販売台数の増加のペースは落ちているものの、遺伝子検査キット「スマートジーン SARS-CoV-2」は、感染拡大の波の影響も受けながら、約125万テスト(第1四半期 18万テスト、第2四半期 40万テスト、第3四半期 41万テスト、第4四半期 26万テスト)を出荷しました。また、新型コロナウイルス抗原キット(銀増幅イムノクロマト法)及び新型コロナウイルス抗原・インフルエンザウイルス抗原同時検出キットも堅調に推移し、新型コロナウイルス検査薬全体の売上高は、97億94百万円(前期は12億70百万円)となりました。
一方、インフルエンザ検査薬につきましては、2020/2021及び2021/2022シーズンのインフルエンザの流行は、新型コロナウイルスへの感染予防対策や渡航制限による海外との人的交流の減少が、インフルエンザの感染拡大防止にも奏功したといわれており、海外の状況と同様に異例の低水準となりました。この影響により、インフルエンザ検査薬全体の売上高は、2億39百万円(前期は7億50百万円)とさらなる減収となりました。
その他感染症項目の検査薬につきましては、第1四半期までは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が残りましたが、第2四半期以降の売上高は全般的に前年同期を上回る結果となりました。特に、RSウイルスの季節外れの大流行により、RSウイルス検査薬及びRSウイルス/ヒトメタニューモウイルス検査薬の売上高は大幅に増加しました。また、「全自動遺伝子解析装置 Smart Gene」につきましては、世界的な半導体不足の影響を受け、出荷は断続的となったものの、当期は約3,200台を出荷し、累計販売台数は約4,200台となっております。これらの結果、その他感染症項目の検査薬を含むその他の検査薬及び機器全体の売上高は、26億89百万円(前期比51.7%増)となりました。
以上により、病院・開業医分野全体の売上高は、127億23百万円(前期比235.3%増)となりました。
OTC・その他分野におきましては、妊娠検査薬及び排卵日検査薬は、新型コロナウイルス感染症の影響を脱しつつありますが、OTC・その他分野全体の売上高は、4億14百万円(前期比0.7%増)となりました。
利益面につきましては、遺伝子POCTをはじめとした新製品に係る研究開発費の増加、人件費の増加、インフルエンザ検査薬に係るたな卸資産廃棄損及び評価損並びに返品調整引当金繰入額の計上があったものの、主に「スマートジーン SARS-CoV-2」の大幅な増収に伴う売上総利益の増加により、営業利益は66億98百万円(前期は4億16百万円)、経常利益は67億円(前期は4億15百万円)となりました。また、新型コロナウイルス感染症対策の一環として公募され、感染症検査キット等生産設備の導入支援として交付された補助金等1億24百万円を特別利益に計上しております。この結果、当期純利益は48億16百万円(前期は3億6百万円)となりました。
当事業年度末の財政状態につきましては、以下のとおりであります。
当事業年度末における資産の残高は、前事業年度末に比べ61億41百万円増加し、121億92百万円となりました。これは主に、たな卸資産の減少1億89百万円があったものの、現金及び預金の増加42億72百万円、売掛金の増加15億27百万円、電子記録債権の増加4億37百万円及び繰延税金資産の増加1億55百万円があったことによるものであります。
当事業年度末における負債の残高は、前事業年度末に比べ18億96百万円増加し、41億64百万円となりました。これは主に、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金含む)の減少5億13百万円、短期借入金の減少80百万円があったものの、未払法人税等の増加21億5百万円、買掛金の増加1億38百万円、未払消費税等の増加75百万円及び電子記録債務の増加65百万円があったことによるものであります。
当事業年度末における純資産の残高は、前事業年度末に比べ42億45百万円増加し、80億28百万円となりました。これは主に、利益剰余金の増加42億45百万円によるものであります。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ42億72百万円増加し、43億26百万円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動により増加した資金は、55億96百万円(前期は2億95百万円の増加)となりました。これは主に、売上債権の増加19億64百万円及び法人税等の支払1億35百万円によるキャッシュ・フローの減少があったものの、税引前当期純利益68億24百万円、仕入債務の増加2億3百万円、たな卸資産の減少1億89百万円及び減価償却費1億72百万円によるキャッシュ・フローの増加があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動により減少した資金は、1億59百万円(前期は97百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得1億54百万円によるキャッシュ・フローの減少があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動により減少した資金は、11億64百万円(前期は3億61百万円の減少)となりました。これは主に、配当金の支払5億70百万円、長期借入金の返済5億13百万円及び短期借入金の純減80百万円によるキャッシュ・フローの減少があったことによるものであります。
当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントであるため、生産、受注及び販売の状況については市場分野別に記載しております。
当事業年度の生産実績を市場分野別に示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は販売価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.当事業年度において、生産実績に著しい変動がありました。これは、病院・開業医分野におきまして、主に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、遺伝子検査や抗原検査の検査需要が急激に高まるなか、設備投資などで生産体制を強化しつつ、新型コロナウイルス検査薬の安定供給に注力したため、生産実績が大幅に増加しております。
当社は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
当事業年度の販売実績を市場分野別に示すと、次のとおりであります。
(注) 1. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
(注)前事業年度の株式会社スズケンについては、当該割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。
3.当事業年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは、病院・開業医分野におきまして、主に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、遺伝子検査や抗原検査の検査需要が急激に高まるなか、設備投資などで生産体制を強化しつつ、新型コロナウイルス検査薬の安定供給に注力したため、販売実績が大幅に増加しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
① 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ.経営成績の分析
(売上高)
売上高は、前事業年度に比べ89億31百万円増加して131億37百万円(前期比212.4%増)となりました。
病院・開業医分野におきましては、新型コロナウイルス検査薬(遺伝子検査及び抗原検査)につきましては、「全自動遺伝子解析装置 Smart Gene」は世界的な半導体不足の影響により累計販売台数の増加のペースは落ちているものの、遺伝子検査キット「スマートジーン SARS-CoV-2」は、感染拡大の波の影響も受けながら、約125万テスト(第1四半期 18万テスト、第2四半期 40万テスト、第3四半期 41万テスト、第4四半期 26万テスト)を出荷しました。また、新型コロナウイルス抗原キット(銀増幅イムノクロマト法)及び新型コロナウイルス抗原・インフルエンザウイルス抗原同時検出キットも堅調に推移し、新型コロナウイルス検査薬全体の売上高は、97億94百万円(前期は12億70百万円)となりました。
一方、インフルエンザ検査薬につきましては、2020/2021及び2021/2022シーズンのインフルエンザの流行は、新型コロナウイルスへの感染予防対策や渡航制限による海外との人的交流の減少が、インフルエンザの感染拡大防止にも奏功したといわれており、海外の状況と同様に異例の低水準となりました。この影響により、インフルエンザ検査薬全体の売上高は、2億39百万円(前期は7億50百万円)とさらなる減収となりました。
その他感染症項目の検査薬につきましては、第1四半期までは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が残りましたが、第2四半期以降の売上高は全般的に前年同期を上回る結果となりました。特に、RSウイルスの季節外れの大流行により、RSウイルス検査薬及びRSウイルス/ヒトメタニューモウイルス検査薬の売上高は大幅に増加しました。また、「全自動遺伝子解析装置 Smart Gene」につきましては、世界的な半導体不足の影響を受け、出荷は断続的となったものの、当期は約3,200台を出荷し、累計販売台数は約4,200台となっております。これらの結果、その他感染症項目の検査薬を含むその他の検査薬及び機器全体の売上高は、26億89百万円(前期比51.7%増)となりました。
以上により、病院・開業医分野全体の売上高は、127億23百万円(前期比235.3%増)となりました。
OTC・その他分野におきましては、妊娠検査薬及び排卵日検査薬は、新型コロナウイルス感染症の影響を脱しつつありますが、OTC・その他分野全体の売上高は、4億14百万円(前期比0.7%増)となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
売上原価は、前事業年度に比べ17億89百万円増加して32億34百万円(前期比123.9%増)となりました。売上原価率は24.6%となり、前事業年度に比べ9.7ポイント改善いたしました。これは主に、インフルエンザ検査薬に係るたな卸資産廃棄損及び評価損の計上があったものの、売上構成比が大幅に変化したことによるものであります。このほか、インフルエンザ検査薬に係る返品調整引当金繰入額2億51百万円を計上しております。
販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ6億11百万円増加して29億53百万円となりました。これは主に、遺伝子POCTをはじめとした新製品に係る研究開発費の増加及び人件費の増加によるものであります。
(営業利益)
営業利益は、前事業年度に比べ62億82百万円増加して66億98百万円となりました。
(営業外収益、営業外費用)
営業外収益は、前事業年度に比べ3百万円増加して4百万円となりました。これは主に、受取補償金1百万円の計上によるものであります。また、営業外費用は、前事業年度と同水準の2百万円となりました。
(経常利益)
経常利益は、前事業年度に比べ62億85百万円増加して67億円となりました。また、売上高経常利益率は51.0%となり、前事業年度に比べ41.1ポイント改善し、収益性が大幅に上昇しております。
(特別利益、特別損失)
特別利益は、新型コロナウイルス感染症対策の一環として公募され、感染症検査キット等生産設備の導入支援として交付された補助金等1億24百万円を計上しております。
特別損失の計上はありませんでした。
(当期純利益)
当期純利益は、前事業年度に比べ45億10百万円増加して48億16百万円となりました。
インフルエンザ検査薬は、過去7年ほどにわたり、当社の売上高の約50%を占める主力製品でありました。しかし、2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、インフルエンザの流行は世界的に著しく低い水準に抑えられ、2020年第1四半期よりインフルエンザ検査薬の売上高は大幅に減少しております。
一方、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、遺伝子検査の需要が急激に高まるなか、2020年第3四半期より発売を開始した「スマートジーン新型コロナウイルス検出試薬(現 スマートジーン SARS-CoV-2)」の売上高が急激に増加しております。結果として、インフルエンザ検査薬への依存度が低下し、新型コロナウイルス検査薬への依存度が高まる状況となっております。新型コロナウイルス検査薬は、今後の感染拡大の動向やそれに伴う医療・検査体制の変化などの外的要因によって、本検査薬の需要が大きく左右される可能性があります。
当事業年度(第45期)の四半期会計期間ごとの売上高及び営業利益は、以下のとおりであります。
(ご参考) 直近2事業年度の四半期会計期間ごとの売上高及び営業利益又は営業損失
(注)1.インフルエンザ検査薬には、「クイックチェイサー Flu A,B」、「クイックチェイサー Auto Flu A,B」及び富士フイルム株式会社向け機器試薬システムの試薬が含まれております。
2.新型コロナウイルス検査薬には、「スマートジーン新型コロナウイルス検出試薬(現 スマートジーン SARS-CoV-2)」、「クイックチェイサー Auto SARS-CoV-2」、富士フイルム株式会社向け機器試薬システムの試薬及び「クイックチェイサー SARS-CoV-2/Flu(Flu A,B)」が含まれております。
3.当期返品分を除いた金額を記載しております。
ロ.財政状態の分析
当事業年度末における資産の残高は、前事業年度末に比べ61億41百万円増加し、121億92百万円となりました。これは主に、たな卸資産の減少1億89百万円があったものの、現金及び預金の増加42億72百万円、売掛金の増加15億27百万円、電子記録債権の増加4億37百万円及び繰延税金資産の増加1億55百万円があったことによるものであります。
当事業年度末における負債の残高は、前事業年度末に比べ18億96百万円増加し、41億64百万円となりました。これは主に、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金含む)の減少5億13百万円、短期借入金の減少80百万円があったものの、未払法人税等の増加21億5百万円、買掛金の増加1億38百万円、未払消費税等の増加75百万円及び電子記録債務の増加65百万円があったことによるものであります。
当事業年度末における純資産の残高は、前事業年度末に比べ42億45百万円増加し、80億28百万円となりました。これは主に、利益剰余金の増加42億45百万円によるものであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの分析につきましては「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
当社の資金需要につきまして、運転資金として主なものは、原材料購入等の製造費用、商品の仕入のほか、研究開発費や人件費を含む販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、設備資金として主なものは、製造または研究開発のための設備の新設または更新であります。
運転資金及び設備資金につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローからの充当を基本とし、手元資金、回収期間及びリスク等を勘案したうえで、必要に応じて金融機関からの短期借入または長期借入による調達を行う方針であります。また、機動的かつ安定的に資金の調達が行えるよう、取引銀行と当座貸越契約(総額16億円)を締結しており、緊急の資金需要や不測の事態にも備えております。
株主の皆様への利益還元につきましては、当社は、業績に対応した配当を行うことを基本としつつ、配当性向、企業体質の一層の強化及び今後の事業展開に備えるための内部留保の充実などを総合的に勘案して決定する方針を採っております。この方針に基づき、配当性向30%を目標として配当を実施するよう努めております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や会社の状況・経営環境等に応じ、合理的だと想定される様々な仮定に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、将来の不確実性により、最善の見積りを行った結果としての見積られた金額と事後的な結果との間に乖離が生じる可能性があります。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
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