業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営業績等の状況の概要

①  経営成績の状況

当社グループは、がん領域を対象とする製品の開発事業化に特化するスペシャリティファーマであり、バイオベンチャー企業の一種です。医薬品等の研究開発は臨床試験等を実施するために多額の先行投資を要し、かつその期間は中長期に亘ることから、収益確保、投資資金回収には相当程度の期間を要するものとなります。これまでの先行投資の結果として、2つの開発品について開発に成功し、販売開始に至りました。製品の販売開始により、投資資金回収の端緒に就いたものと認識しておりますが、医薬品等の研究開発過程において最大の投資が必要とされる最終段階の開発を複数行っていることから、事業全般においては未だ先行投資を継続している状況にあります。

バイオベンチャー企業の成功事例を多数有する米国において、その大半の企業の単年度損益は赤字です(米国ナスダックバイオインデックス構成企業のうち、株式時価総額1,000億円超の企業は145社あり、うち営業赤字計上の企業は109社。本年1月31日現在。当社調べ)。これは、当該企業の単年度損益への評価に比して、有望な医薬品開発への先行投資を積極的に図る事業戦略への評価が金融市場においてより重要視されていることによるものと考えられます。当社グループは、現時点において同様の事業戦略によって運営されております。

当連結会計年度は、主に、以下の各開発品等の事業活動に務めてまいりました。

 

[開発完了した販売開始済製品]

SP-01(抗悪性腫瘍薬投与に伴う悪心・嘔吐)

SP-03(がん等化学療法及び放射線療法に伴う口内炎)

中国販売を中心とするSancuso®(SP-01)及びepisil®(SP-03)は、新型コロナウイルス感染症流行により当社グループや販売パートナーの営業担当者(MR:医薬情報担当者)の医療現場アクセス等の拡宣諸活動が制約を受け、両製品の処方及び出荷数量に影響が生じております。但し、当社自販地域である中国3都市(北京市、上海市、広州市)での出荷数量(なお、出荷数量は処方数量に近似する数値となります)につき、SP-01は対前年度102%増加、SP-03は同90%増加しており、2019年の販売開始以降の営業活動投資の成果実現が端緒に就いた状況にあります。

[臨床試験段階以降の開発品]

SP-02(がん化学療法剤、再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫)

承認申請に至る最終試験として実施された国際共同第Ⅱ相臨床試験は、試験結果として主要評価項目達成を2020年に確認し、日本において2021年6月末に当局への製造販売承認申請を完了しました。また、2021年10月に日本国内における商業化等に関するライセンス契約を日本化薬株式会社と締結しました。

SP-05(がん化学療法剤、フルオロウラシルの抗腫瘍効果増強)

承認申請に至る最終試験である国際共同第Ⅲ相臨床試験の中間解析結果を受け、当該臨床試験の目標症例数が、複数の症例数設計のうち最小である440症例に設定されました。本書提出日現在、2022年度上半期での臨床開発完了とトップラインデータ確認を目指し、当該臨床試験の最終段階を遂行しております。

[非臨床試験段階の開発品]

SP-04(がん化学療法に伴う末梢神経障害)

オキサリプラチン投与に起因する末梢神経障害を対象とした第Ⅲ相臨床試験結果に鑑み、当該対象の開発を留保し、タキサン製剤誘発末梢神経障害を対象とした開発の可能性を探索するため、追加の動物試験を実施中です。

■新規開発候補品プロジェクト

RNA編集技術を用いた創薬事業

・九州大学発のバイオテク企業であるエディットフォース株式会社と共同研究開発契約を締結し(2019年)、中長期にわたる開発候補品獲得手段を確保いたしました。同社RNA編集技術を基にした新規がん領域等での遺伝子治療薬への展開を意図します。

腹膜播種治療薬候補(核酸医薬)

・バイオベンチャー企業である株式会社ジーンケア研究所と同社の有する核酸医薬開発品RECQL1-siRNA及び関連技術の権利取得にかかる独占交渉権(オプション権)に関する契約を締結いたしました(2020年7月)。RECQL1-siRNA核酸医薬は、米国 Alnylam Pharmaceuticals社(Nasdaq: ALNY)からのライセンス技術を基盤に同社で創成された開発品であり、今後の非臨床試験以降の進捗状況に鑑み、オプション権行使による権利取得を検討してまいります。

 

上記のとおり製品開発品の進捗に一定の成果を得たものの、財務面においては、製品販売が未だ初期段階にあることにより、製品販売利益を超過する新規医薬品開発に必要な先行投資を継続している状況にあります。このため、当連結会計年度の単年度損益業績は次のとおりとなりました。

売上収益は、Sancuso®(SP-01)及びepisil®(SP-03)の製品販売収益等及びSP-02の契約一時金により559百万円生じ、また、売上総利益は373百万円となりました。

研究開発費は845百万円発生いたしました。これは主にSP-02第Ⅱ相臨床試験(最終試験)・製造販売承認申請費用及びSP-05第Ⅲ相臨床試験(最終試験)への臨床開発投資によるものです。販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比べ484百万円減少し、1,948百万円となりました。売上総利益より研究開発費と販売費及び一般管理費を減じた営業損益は2,419百万円の損失となり、当期損益は2,478百万円の損失となりました。

無形資産については、当連結会計年度において、開発パイプラインへの投資のうち資産性を有すると認識される開発費用等につき、161百万円を無形資産の増加として計上いたしました。当連結会計年度の開発パイプラインへの投資は、当該無形資産増加額161百万円と研究開発費845百万円の合計額1,007百万円です。

また、Sancuso®(SP-01)及びepisil®(SP-03)の無形資産の償却により、当連結会計年度において438百万円の償却が発生しました。これらの結果、無形資産残高は2,079百万円となりました。

 

② 財政状態およびキャッシュ・フローの状況

キャッシュ・フローについては、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に記載のとおりです。

 

③生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当社グループは生産活動を行っていませんので、該当事項はありません。

 

b. 受注実績

当社グループは受注生産を行っていませんので、該当事項はありません。

 

c. 販売実績

当連結会計年度の販売実績は、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年1月1日

至 2021年12月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

医薬品事業(百万円)

559

23.1

(注)1.当社グループは、医薬品事業の単一セグメントです。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年1月1日

至 2020年12月31日)

当連結会計年度

(自 2021年1月1日

至 2021年12月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

Itochu Chemicals America Inc.

396

87.2

244

43.7

日本化薬株式会社

200

35.8

伊藤忠商事株式会社

69

12.4

3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

① 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの重要な会計方針及び見積りにつきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項3.重要な会計方針、注記事項4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載のとおりです。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の経営成績及び分析は以下のとおりです。

経営成績

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

前期比

(百万円)

売上収益

454

559

104

売上総利益

244

373

128

営業利益(△損失)

△4,116

△2,419

1,696

当期利益(△損失)

△4,127

△2,478

1,648

 

当社グループは、販売開始済2製品と開発後期段階3製品により構成されるがん領域医薬品パイプラインの拡充育成を中心に事業運営を図っており、当期は主に上記「(1)経営業績等の状況の概要①経営成績の状況」に記載の通り、事業活動に務めてまいりました。

 

上記のとおり製品開発品の進捗に一定の成果を得たものの、財務面においては、製品販売が未だ初期段階にあることをもって、製品販売利益を超過する新規医薬品開発に必要な先行投資を継続している状況にあります。このため、当連結会計年度の単年度損益業績は次のとおりとなりました。

 

(売上収益、売上総利益)

売上収益は、Sancuso®(SP-01)及びepisil®(SP-03)の製品販売収益等及びSP-02の契約一時金により559百万円生じ、また、売上総利益は373百万円となりました。

 

研究開発費、販売費及び一般管理費の内訳

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

前期比(百万円)

研究開発費

1,928

845

△1,082

販売費及び一般管理費

2,432

1,948

△484

4,361

2,793

△1,567

(内訳)人件費

685

882

197

業務委託費

2,196

1,159

△1,036

減価償却費、無形資産償却費及び減損損失

1,296

495

△801

その他

182

256

73

(研究開発費、販売費及び一般管理費、営業損益、当期損益)

研究開発費は845百万円発生いたしました。これは主にSP-02第Ⅱ相臨床試験(最終試験)・製造販売承認申請費用及びSP-05第Ⅲ相臨床試験(最終試験)への臨床開発投資によるものです。販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比べ484百万円減少し、1,948百万円となりました。売上総利益より研究開発費と販売費及び一般管理費を減じた営業損益は2,419百万円の損失となり、当期損益は2,478百万円の損失となりました。

 

(資産性費用の無形資産計上と償却)

当連結会計年度において、開発パイプラインへの投資のうち資産性を有すると認識される開発費用等につき、161百万円を無形資産の増加として計上いたしました。当連結会計年度の開発パイプラインへの投資は、当該無形資産増加額161百万円と研究開発費845百万円の合計額1,007百万円です。

また、Sancuso®(SP-01)及びepisil®(SP-03)の無形資産の償却により、当連結会計年度において438百万円の償却が発生しました。これらの結果、無形資産残高は2,079百万円となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

前期比(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

△2,789

△2,473

316

投資活動によるキャッシュ・フロー

△171

△164

7

財務活動によるキャッシュ・フロー

1,829

361

△1,468

 

(資産)

当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末と比べ2,631百万円減少し、3,144百万円となりました。流動資産は894百万円であり、そのうち現金及び現金同等物は714百万円です。非流動資産は2,249百万円であり、そのうち開発投資にかかる資産計上額である無形資産は2,079百万円です。

 

(負債)

当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比べ1,566百万円減少し、556百万円となりました。流動負債は489百万円であり、そのうち営業債務及びその他の債務は386百万円です。非流動負債は67百万円であり、リース負債37百万円及び繰延税金負債18百万円が主要構成要素です。

 

(資本)

当連結会計年度末の資本は、前連結会計年度末と比べ1,064百万円減少し、2,587百万円となりました。主な増加要因は新株予約権行使による新株発行1,403百万円であり、主な減少要因は当期損失2,478百万円です。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは2,473百万円のマイナス(前連結会計年度は2,789百万円のマイナス)であり、税引前当期損失2,442百万円が主要因です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは164百万円のマイナス(前連結会計年度は171百万円のマイナス)であり、開発品SP-05の導入契約等による開発投資額資産計上に関連する支出161百万円が主要因です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは361百万円のプラス(前連結会計年度は1,829百万円のプラス)であり、普通社債償還による支出1,000百万円、新株予約権行使による株式発行収入1,403百万円が主要因です。

 

④ 経営戦略と見通し

当社グループの事業は、医薬品開発パイプラインの強化と収益化を経営戦略の中心に据えて、事業展開を図っています。当社グループはベンチャー企業であり、一般の製薬企業に対し相対的に経営資源に制約があることから、開発成功確率を高めることを最重要視し、体制構築、開発品選定、臨床試験戦略の策定と実行を図っています。具体的な戦略は、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりの以下を遂行することにあります。

a. 既存開発パイプラインの進捗

b. 中国における営業活動及び営業組織の管理

c. 新規開発パイプラインの拡充

d. 強固な販売パートナーシップの構築

e. 組織の強化

f. 内部統制の強化

g. 資金調達の実施

上記諸戦略は、すべて戦略目標を中長期に亘り設定しており、当面は継続して推進する所存です。

 

(3) 経営者の問題認識と今後の方針について

経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。

 

(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2.事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

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