文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、印刷用インキの製造・販売からスタートし、各種プラスチック着色剤や機能性製品、特殊な成形加工技術を駆使した樹脂加工品へと事業範囲を拡大しながら、暮らしに役立つ製品を提供し続けてきました。
また、常に市場や社会が求める価値を最優先に考え、お客様と共に創り上げることで、日々の暮らしに貢献し続けることを目指しております。
中期経営計画「TOKYOink 2020」策定の際、あらためて当社の「ありたい姿」・「あるべき姿」を下記のとおり明確にし、社会に貢献できる、継続的な高収益メーカーとして活動していくことを基本方針としております。
(2)経営戦略等
2016年に公表した、高収益メーカーへの成長の通過点として2020年度連結経常利益15億円を目標とする5カ年の経営計画「TOKYOink 2020」における経営戦略は以下のとおりであります。
①コア事業の更なる強化とコア事業周辺領域の事業を拡大することを目指した事業戦略
②素材を活かす要素技術と加工技術の拡充を目指した技術戦略
③株主価値の向上と事業戦略に応じた最適資本構成を目指した財務戦略
④人的資源の有効活用を目指した人事戦略
なお、本来、「TOKYOink 2020」は2020年度が最終年度でありましたが、新型コロナウイルス感染症の経営環境への影響が見通せない状況であったため、1年延長して取り組みを行ってまいりました。
合わせて、基盤の整備として「現場力の徹底強化」を推進してまいりました。
(3)経営環境
2021年度のわが国の経済は、新型コロナウイルスの感染拡大が長期化する中、ワクチン接種の進展で行動制限が緩和されたことを受け、経済社会活動の再開が進められました。しかしながら、新たな変異株の出現等新型コロナウイルス感染症の収束は未だ見通せず、経済社会活動の正常化は道半ばの状況にあります。
加えて、想定を超えた原油・原材料価格の高騰、急激な円安進行や半導体供給不足等のサプライチェーンの混乱、さらにはウクライナ情勢を含む地政学リスク等により国内外の企業活動は大きく左右され、今後の経済の先行きは不透明な状況が続いております。
また、近年のデジタル技術の急速な進化により行動様式に変化が見られることで、商業・出版印刷のデジタル化へのシフトが加速していることや、サステナビリティへの意識の高まりによる脱プラスチックの流れが加速していることにより、当社グループ製品の需要動向全体に影響が及んでおり、環境規制等による原材料の供給面等にも影響が生じております。
新型コロナウイルス感染症に対する十分な感染防止対策をとりつつ、当社グループの事業活動への影響が最小限となるよう努めるとともに、持続的に成長できる企業になるために、環境問題への長期的な取り組みや、外部環境変化に対応できる企業構造への変革を進めてまいります。
(4)経営計画「TOKYOink 2020」の取り組みと事業の状況について
①業績推移
中期経営計画期間の当社グループの業績推移は以下のとおりとなりました。
中期経営計画の数値目標である連結経常利益15億円に関しましては、コア事業周辺領域への製品展開、既存製品の収益維持に努めてきたこともあり、第145期(2017年3月期)、第146期(2018年3月期)に達成いたしました。しかし、その後は既存主力製品の市場縮小の加速化や新型コロナウイルス感染症拡大による需要の変化等、さまざまな外部環境変化が計画策定時の想定以上に進行し、直近では原油高等に起因する原材料高騰の影響を受けたこと等により未達成となりました。
「連結業績推移」
(単位:百万円)
決算年月 |
2017年3月期 |
2018年3月期 |
2019年3月期 |
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
売上高 |
43,949 |
44,866 |
44,628 |
42,572 |
38,165 |
41,401 |
セグメント利益 |
2,893 |
3,240 |
3,052 |
2,559 |
2,251 |
2,654 |
営業利益 |
1,181 |
1,464 |
1,238 |
592 |
256 |
675 |
経常利益 |
1,540 |
1,761 |
1,437 |
808 |
622 |
898 |
②事業戦略
中期経営計画「TOKYOink 2020」の事業戦略として、コア事業の更なる強化とコア事業周辺領域へ事業拡大することを目指して活動してまいりました。
各セグメントの主要製品別の取り組み・成果と今後、優先的に対処すべき課題は以下のとおりであります。
セグメント |
製品 |
取り組み・成果 |
優先的に対処すべき課題 |
インキ |
オフセット インキ |
・環境対応高バイオマス製品の開発・拡販 |
・高バイオマス製品開発によるカーボンニュートラルへ貢献 ・市場縮小が継続する中、他社との協業や生産体制の再構築を更に進め、収益維持・拡大に向けた事業運営体制の構築を図る |
・UVインキの開発・拡販 |
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・他社との協業推進 |
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・生産体制の再構築 |
|||
インキ |
グラビア インキ |
・環境対応バイオマス・ライスインキ製品の開発・拡販 |
・市場が堅調に推移する中、更なる機能性コート剤や環境対応製品の拡販および連結子会社化した荒川塗料工業㈱とのシナジー発揮により事業領域を拡大することで、成長路線を目指す |
・高意匠性製品の開発・拡販 |
|||
・モノマテリアル包材用機能性コート剤の開発・拡販 |
|||
インクジェットインク |
・産業用TIC-JET®の普及 |
・伸長が期待できる産業用インクジェット市場において、更に差別化製品開発・拡販を進め、成長路線を目指す |
|
・特許戦略による差別化製品 開発・拡販 |
|||
・偽造防止・セキュリティ 対応インキ開発・拡販 |
|||
化成品 |
・環境対応製品を含む機能性コンパウンド・マスターバッチ開発・拡販 |
・環境問題への関心の高まりから、更なる環境対応製品の開発・拡販やサーキュラーエコノミーに参画すること等により、成長路線を目指す ・液状マスターバッチを基軸に周辺事業領域であるエンプラ市場への事業拡大を図る |
|
・省力化に寄与する液状マスターバッチのシステム販売(着色剤および供給装置) |
|||
・自動車用着色材開発・拡販 |
|||
・生産体制の再構築 |
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加工品 |
ネトロン®(注) |
・水処理用精密ネット拡販 |
・今後も伸長が期待できる水処理用精密ネットの拡販により成長路線を目指す ・環境対応製品の拡販によりワンストップサービスを強化し包材のトップシェアの維持と更なる成長を図る |
・バイオプラネトロン®開発 |
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・生産体制の再構築(生産 能力の増強) |
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一軸延伸 フィルム |
・高機能・環境対応製品の 開発・拡販 |
・主力製品の拡販、バイオマスおよびモノマテリアルフィルム用途の開発・拡販を推進 |
|
・生産体制の再構築 |
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土木資材 |
・ジオセル新工法の開発・NETIS*取得(3件) (*新技術情報提供システム / 国土交通省) |
・国土強靭化計画継続により、今後も伸長が期待できる防災・減災需要において、ジオセル国産化、周辺領域の拡大、ニッチトップ戦略を推し進め、更に、新工法・新技術の開発によりNETIS*を取得し高収益化を目指す(*新技術情報提供システム / 国土交通省) |
|
・ジオセル製品および周辺部材の開発・拡販 |
|||
・ジオセル工法特許化等に よる認知度向上 |
|||
・災害復旧需要の取り込み・復興への貢献 |
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農業資材 |
・高機能内張カーテン資材を 中核とする環境対応製品の 開発・拡販 |
・国内耕作面積が減少傾向にあるものの、高機能ハウス分野の伸長が期待できるため、メーカー機能を強化し、高機能製品、環境対応製品の開発・拡販を目指す |
(注)ネトロン®は三井化学株式会社の登録商標です。
③技術・財務・人事戦略
中期経営計画「TOKYOink 2020」では、技術・財務・人事戦略として下記の戦略を掲げて活動してまいりました。計画期間内でのそれぞれの取り組み・成果、今後、優先的に対処すべき課題は以下のとおりであります。
戦略 |
取り組み・成果 |
優先的に対処すべき課題 |
技術戦略 |
・省力化、自動化設備の導入 |
・新製品開発の加速化、生産効率向上のための取り組みを継続 |
・新規混練装置の開発による分散技術の差別化 |
||
・新規分析装置の導入による評価技術の高度化 |
||
・産官学による共同研究推進 |
||
財務戦略 事業戦略に応じた 最適資本構成 |
・財務基盤の最適化(投資判断基準の整備、付加価値を高める投資管理と成長投資を支える機動的な資金調達) |
・株主価値・企業価値向上のための財務的な取り組みおよび法規制対応を継続 |
・新しい会計基準・各種改正法令への 対応 |
||
・ITツール活用による業務プロセス見直し、経営管理の水準向上 |
||
・企業価値向上のためのIR拡充 (決算情報の記載充実化、決算説明会開始) |
||
・株主還元拡充 (増配・株主優待開始、自己株式取得) |
||
人事戦略 |
・働き方改革への対応 |
・株主価値・企業価値向上のための人的資源に対する制度設計等の取り組みおよび法規制対応を継続 |
・賃金(給与・手当)体系の改定による就労環境整備 |
||
・人事評価制度設計の再設計 |
||
・e-Learning導入等、社員教育の拡充 |
④基盤の整備
中期経営計画「TOKYOink 2020」では、全社・各部門で持続的成長のための「基盤の整備」を掲げて活動してまいりました。計画期間内での取り組み・成果、今後、優先的に対処すべき課題は以下のとおりであります。
基盤の整備 |
取り組み・成果 |
優先的に対処すべき課題 |
|
価値を探し出す |
・営業管理体制の再構築による業務効率向上 |
・市場が求める価値の追求に向けた体制の最適化を図る |
|
・CRM(Customer Relationship Management) ツール導入による競争力強化 |
|||
・事業領域拡大のための荒川塗料工業㈱連結子会社化 |
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価値を創り出す |
・生産・技術部門統合による製品開発・上市の加速化 |
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・素材を活かす要素技術・加工技術を活用した既存事業に属さない新規製品開発 |
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価値を造り上げる |
安全対策強化 |
・耐震補強工事実施 |
・安全基準を改めて明確化した上で、各安全対策を強化する |
・安全確保のための各活動継続実施 |
|||
・設備の安全性向上対策実施 |
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生産体制構築 |
・生産能力増強のための設備導入と生産性 向上に向けた最適化を実施 |
・更なる省力化、高効率生産の実現に向け設備、体制の最適化を図る |
|
・大阪工場内に新工場建設し化成品の生産 能力を増強 |
|||
・連結子会社トーイン加工㈱に新工場建設しネトロン®の生産能力を増強 |
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土台・仕組みを整える |
コーポレート 機能強化 |
・事業継続計画(BCP)を策定 |
・高効率な業務体制構築のための更なるコーポレート機能強化 ・人事機能強化最優先 |
・全社的リスクマネジメント(ERM)体制刷新 |
|||
・ESG課題に対応するためにコーポレート ガバナンス体制を刷新 |
|||
・法務・広報の機能強化 |
|||
情報インフラ 整備 |
・経営効率向上のために基幹システムを刷新 |
・セキュリティ確保した上での高効率な運営体制構築に向け必要な仕組み、ツールを導入する |
|
・情報セキュリティ強化 |
|||
・RPA・電子ワークフロー導入および活用範囲 拡大による業務効率の向上 |
|||
・リモートワーク環境整備 |
以上のことを踏まえ、新経営計画「TOKYOink 2024」を策定し、企業価値の向上、企業活動と社会課題解決の両立を目指すための取り組みを進めてまいります。
(5)新中期経営計画「TOKYOink 2024」
上記「TOKYOink 2020」の取り組みの成果や残された課題を踏まえ、改めて、当社の「ありたい姿」、「あるべき姿」を原点とした、「TOKYOink 2020」の後継となる3カ年の新しい中期経営計画「TOKYOink 2024」を2022年4月より始動させております。「TOKYOink 2024」の経営方針は以下のとおりとなります。
(経営方針)
・市場が求める価値の追求 とりわけ環境・社会に貢献する製品・サービスの提供
・低成長時代にも耐えうる高効率な運営体制の実現
中期経営計画「TOKYOink 2024」につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容 c.新中期経営計画「TOKYOink 2024」」に詳しく記載しております。
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