業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご確認ください。

 

①経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」)の拡大により、2度の緊急事態宣言が出されるなど、経済活動に厳しい制限を受けました。ワクチン接種が進み、経済活動が正常化に向かう中で持ち直しの動きも見られましたが、年度末にかけてウクライナ情勢の影響により景況感は悪化し、物価上昇の加速や金融資本市場の変動が懸念されるなど、先行きは不透明な状況にあります。

 当社グループは、COVID-19の拡大に大きな影響を受ける環境下にあります。感染拡大は、COVID-19関連検査の受託検査数の増加要因となる一方、医療機関を受診する患者数を減少させ、COVID-19関連検査以外の受託検査数及び調剤薬局の処方箋枚数の減少要因となります。このような事業環境のもと、COVID-19の急激な拡大期には、前年度に引き続き著しく増加した関連検査の需要に対応するため、グループの人的資源・検査能力をフル活用いたしました。

 さらに、当社グループの持続可能性と持続可能な社会を両立させるサステナビリティ経営の一環として、ICTを活用した営業から集配、検査にわたる事業構造の改革を積極的に進め、収益力の強化を図りました。また、当社グループが今後も活力ある企業として継続するため、人財への投資を目的に人事制度の改定を実施いたしました。

 こうした取り組みの結果、当連結会計年度における売上高は50,007百万円(前年同期比14.7%増)、営業利益は5,496百万円(同110.2%増)、経常利益は5,809百万円(同103.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、3,533百万円(同90.6%増)となり、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益とも過去最高益を更新いたしました。なお、営業利益及び経常利益につきましては、2期連続の最高益更新となります。

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

(臨床検査事業)

 受託臨床検査市場は、市場の成熟化を受け、同業他社間の競争がより一層強まっております。当連結会計年度の臨床検査事業は、デルタ株が猛威を振るった令和3年7月から9月までにかけてCOVID-19関連検査の受託検査数が大幅に増加いたしました。10月からは関連検査の受託検査数は次第に落ち着きを見せましたが、令和4年1月に入るとオミクロン株が猛威を振るい、2月中旬にかけて更に著しく増加いたしました。

 一方で、COVID-19関連検査以外の検査につきましては、引き続き大都市圏を重点地域とした新規顧客の獲得に努め、受託検査数は回復基調にありましたが、感染拡大前の水準には至りませんでした。

 体外診断用医薬品「MSI検査キット(FALCO)」(※1)は適応拡大を進め、順調に販売を伸ばしました。クラウド型電子カルテ「HAYATE/NEO」は、COVID-19拡大の影響を受けましたが、販売強化に努め、販売件数は前年度を上回りました。また、診療所向けクラウド型サービス「レセスタ」(※2)は順調に立ち上がり、契約件数を伸ばしました。

 さらには、タブレット端末の活用、臨床検査の依頼及び報告のICT化等による営業から集配、検査にわたる事業構造の抜本的な改革を引き続き進めてまいりました。

 このような事業展開の結果、臨床検査事業の売上高は6,463百万円増収の33,670百万円(前年同期比23.8%増)、営業利益は2,921百万円増益の4,894百万円(同148.0%増)となりました。

 (※1)キイトルーダ®(一般名:ペムブロリズマブ)の固形がん患者への適応判定、オプジーボ®(一般名:ニボルマブ)の結腸・直腸がん患者への適応判定、切除可能大腸がんにおける術後補助化学療法の選択及び大腸がんにおけるリンチ症候群の診断の補助に用いる体外診断用医薬品の名称です。平成30年に世界で初めてのがん種横断的なコンパニオン診断薬として薬事承認を取得いたしました。令和3年8月には「治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」に対するキイトルーダ®の適応判定補助に新たに保険適用される等、次世代がんゲノム医療の進展に寄与すべく販売強化に取り組んでおります。

 (※2)レセプト情報を基にした適正な診療・医事業務支援サービス。

 

(調剤薬局事業)

 調剤薬局市場は、厚生労働省による「患者のための薬局ビジョン」を踏まえ、患者本位の医薬分業の実現に向けて機能の充実が求められつつ、調剤報酬及び薬価の改定による影響を受けております。

 当社グループでは、かかりつけ薬剤師・薬局として求められる役割や機能を果たすとともに、高齢者施設及び在宅を中心とした地域医療との連携を進め、既存店舗の処方箋応需の拡大に取り組みました。当連結会計年度におきましては、3店舗を開局、1店舗をフランチャイズ化し、調剤薬局等店舗総数は109店舗(フランチャイズ店7店舗含む)となりました。

 これらの取り組みにより、当連結会計年度における処方箋応需枚数は、COVID-19の拡大以降医療機関を受診する患者数の減少による影響があったものの、前年度を上回る水準となりました。一方、処方箋単価につきましては、薬価改定の影響を受け、下落いたしました。コスト面については、調剤原価等の削減に努め、堅実で効率的な店舗運営を進めてまいりました。

 このような事業展開の結果、調剤薬局事業の売上高は63百万円減収の16,353百万円(同0.4%減)、営業利益は36百万円増益の1,005百万円(同3.7%増)となりました。

 

②財政状態の状況

(資産)

 当社グループの当連結会計年度末における資産につきましては、前連結会計年度末に比べ3,187百万円増加し、40,256百万円(前年同期末比8.6%増)となりました。流動資産は、主に売上債権が1,057百万円増加したことにより、前連結会計年度末に比べ1,218百万円増加し、22,668百万円(同5.7%増)となりました。固定資産は、主に土地が644百万円及び建設仮勘定が513百万円増加したことにより、前連結会計年度末に比べ1,968百万円増加し、17,588百万円(同12.6%増)となりました。

(負債)

 負債につきましては、前連結会計年度末に比べ194百万円増加し、16,778百万円(同1.2%増)となりました。流動負債は、主に仕入債務が646百万円及び未払法人税等が865百万円増加したことにより、前連結会計年度末に比べ1,149百万円増加し、11,389百万円(同11.2%増)となりました。固定負債は、主に長期借入金が830百万円減少したことにより、前連結会計年度末に比べ954百万円減少し、5,389百万円(同15.0%減)となりました。

(純資産)

 純資産につきましては、主に親会社株主に帰属する当期純利益3,533百万円、剰余金の配当609百万円、その他有価証券評価差額金の減少65百万円及び自己株式の処分134百万円等により、前連結会計年度末に比べ2,992百万円増加し、23,478百万円(同14.6%増)となりました。この結果、自己資本比率は58.1%(前連結会計年度末は55.0%)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベ-スの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ975百万円減少し、10,643百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は4,129百万円(前年同期は2,937百万円)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益5,567百万円、減価償却費942百万円、売上債権の増加額1,491百万円及び法人税等の支払額1,783百万円によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は2,690百万円(前年同期は52百万円)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出2,069百万円及び投資有価証券の取得による支出311百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は2,414百万円(前年同期は1,460百万円の獲得)となりました。これは主に、短期借入金の純減少額850百万円、長期借入金の返済による支出778百万円、配当金の支払額608百万円によるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 令和3年4月1日

 至 令和4年3月31日)

前年同期比(%)

  臨床検査事業(百万円)

33,655

123.8

  調剤薬局事業(百万円)

16,352

99.6

合 計(百万円)

50,007

114.7

(注)金額は販売価額によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

  臨床検査事業

33,636

123.0

322

94.5

  調剤薬局事業

     合 計

33,636

123.0

322

94.5

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 令和3年4月1日

 至 令和4年3月31日)

前年同期比(%)

  臨床検査事業(百万円)

33,655

123.8

  調剤薬局事業(百万円)

16,352

99.6

合 計(百万円)

50,007

114.7

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主要な販売先(総販売実績に対する割合が10%以上)に該当するものはありません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績の分析

(概要および売上高・営業利益)

 当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績等の概要および売上高、営業利益は、「(1)経営成績等の状況の概要①経営成績の状況」に記載しております。

 

(経常利益)

 経常利益は、営業利益の増加の影響に加え、COVID-19対策関連の補助金142百万円の影響等により、前連結会計年度に比べ2,955百万円増加し経常利益は5,809百万円(同103.5%増)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の増加の影響に加え、投資有価証券売却益55百万円を特別利益として計上すると共に、退職給付制度の改定による特別損失84百万円の影響により、前連結会計年度に比べ1,680百万円増加し、3,533百万円(同90.6%増)となりました。

 

財政状態の分析

 財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要②財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループでは、バランスシート重視の経営を行っており、資産効率性の状況を判断するための指標として、株主資本利益率(ROE)を主な経営指標としております。株主資本利益率(ROE)につきましては、中長期的には9%以上を目標としております。当連結会計年度の株主資本利益率(ROE)は、事業構造改革および固定費削減の影響による利益改善及び固定資産の売却等により、16.1%(前年同期比6.6ポイント改善)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要の主なものは、臨床検査事業における検査試薬や調剤薬局事業における医薬品の購入費のほか、各事業における人件費や製造・販売経費等があります。また、設備投資需要としては、臨床検査事業の検査設備や調剤薬局事業の店舗設備等があります。

 当社グループでは事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入れにより資金調達を行っており、当社においてグループ全体の運転資金及び設備資金を一元管理しております。

 運転資金は内部資金及び金融機関からの短期借入を基本としておりますが、当連結会計年度においてはCOVID-19拡大の影響がある中で手元資金確保のため、金融機関より長期借入による資金調達を行っております。また、当連結会計年度末現在において予定されている臨床検査事業の事務所建物・検査機器等や調剤薬局事業の店舗設備等の設備投資については、自己資金及び借入金を充当する予定です。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は4,070百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は10,643百万円となっております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

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