課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、創業以来「新しい足場文化と安全文化の創造」を理念に掲げ、単に「安全・安心」だけでなく「感動」も提供できるサービス会社として社会に貢献することを経営の基本方針としておりましたが、2021年4月21日付で新たに企業理念と経営の基本方針を設定いたしました。

 企業理念「私たちは志を高く持ち常に未来を創造します」「私たちは社会の持続と発展に貢献します」について、当社のコア事業である建築向け足場の生産・販売と足場の施工サービスは、ともに“仮設資材”の提供であり、使用される現場において常設されることはありません。しかしながら、建物を作る上では欠かせない資材であり、建物自体の品質や働く方の安全・安心を大きく左右する存在でもあります。そのため、当社で働くすべてのスタッフが、現場の安全を守る強い志を立て、お客様への対応や技術の向上に努めることで、快適で持続可能な社会の実現に貢献できることを理念としております。

 基本方針「ファーストなサービスを心から」については、当社グループ全体で掲げている方針であり、グループに所属するすべてのスタッフが、“心から”お客様に向き合い、最大限の技術と品質を提供することを表しており、行動の結果としてお客様からいただける“ありがとう”が、さらなる企業価値を創造し、業界の地位向上にもつながっていくと考えております。これからも常にお客様ファーストで物事を考え、感謝いただけるサービスを提供してまいります。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、事業を継続的に発展させていくためには、売上高を増加させ、適正な利益確保を図っていくことが必要であると考えております。また、成長のための財政基盤を強化する観点から営業外の活動も重視し、「売上高経常利益率」を重要な経営指標として捉え、その向上を図る経営に努めてまいりました。なお、49期より新たな経営指標として、経常損益に加えて人件費等を含む「付加価値額」を主体とした指標を目標にしていく方針です。これは、事業活動により稼得される分配前の収入の大きさと、その分配先の一つである人件費を重視する考えによるものですが、当社グループ事業は“ヒト”を源泉とする事業を主体としており、人的資本への投資と、その生産性の向上を追求していくことが、足場業界だけでなく建設業における各種課題の解決に繋がると考えているためです。

 

(3)経営環境

 当社グループを取り巻く経営環境について、日本国内では今後さらに若年層の減少と高齢化が進み、単独世帯が増加していくものと想定されます。そのため、当社に関連の深い住宅業界については、新築の戸建てに対する建設需要は減衰するものの、リフォームに対する需要は堅調に推移するものと考えられます。また、建設業全体において、従事する労働者は減少を続けており、全産業と比べても高齢化が進行しておりますが、足場施工の業界においても、人手不足と高齢化が重要な課題になっております。そのほか、道路や水道など、産業基盤の社会インフラ老朽化が、今後さらに深刻な状況になるものと考えております。

 このような中、政府としては、建設分野の全てのプロセスにおいて、ICT等の新たな技術を活用し、建設現場の生産性向上を目指す「i-Construction」が推進され、防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策が進んでおります。

 在外子会社のあるシンガポールについては、日本と同様に高齢化が続くことで、労働者不足と賃金上昇が進むものと想定されます。子会社に関連する石油化学産業は、定期的にプラントのメンテナンス工事は実施されるものの、中期的には原油の需給動向に左右され、プラント新設などの大型プロジェクトは先延ばしになるものと考えております。政府としては、国家の課題を解決すべく2014年より「スマートネーション構想」として、全産業にIOT、ICT技術の導入が進められております。

 また、各国の経済発展が進む一方で、地球規模での資源枯渇リスクが高まり、環境保護への関心がさらに強くなることで、今後、資源の循環型社会の形成に向けて、3Rやシェアリングなどの取り組みが、より進むものと考えられます。

 

(4)会社の対処すべき課題と中期経営計画

①会社の対処すべき課題

 当社グループでは、これからの経営環境を踏まえ、以下の課題を掲げております。

 

<戸建向け足場施工から戸建て以外用途へのシフト>

 当社の開発したビケ足場は、住宅向け足場のトップブランドとして市場に定着したことから、低層向けの足場として使用されることが多いですが、長期的には戸建住宅の建設需要が減少していくものと予測されるため、戸建て以外の建物へのシフトが求められています。

 

<労働集約型ビジネスモデルからの脱却>

 売上高の大半を占める施工サービス事業では、顧客から足場施工の依頼は多いものの、建設業界全体では雇用環境が好調であることから、全ての依頼に対応できる程度には施工スタッフ数の確保ができず、収益向上に対するボトルネックとなっており、労働集約型ビジネスモデルからの脱却が求められています。

 

<足場の施工効率向上と施工スタッフの高齢化への対応>

 足場施工に関する一連の作業は、ほとんどが手作業で、作業効率の向上に限界があり、また、体への負担が大きく、高齢での作業従事が困難であることから、作業者の負担を軽減し、より効率的に働くことが求められています。

 

<多様な人財の獲得と働き方改革>

 建設業全体での就業者数は減少を続けており、特に建設技能者の採用状況は厳しさを増していることから、様々な雇用形態、魅力的な労働環境等を整備し、多くの人財を確保すると共に、安心して一生涯働ける会社になることが求められています。

 

<足場施工技術の向上による安全な社会への貢献>

 社会の安全と高品質なインフラのために足場の果たす役割は大きいものと考えております。グループ内においては、国内外で対象とする施工現場が異なりますが、さらに安全な社会の実現に貢献するため、足場の施工技術向上が求められています。

 

<IT技術の活用による業務効率化>

 当社では、足場施工サービスを提供するため、施工スタッフ、足場部材、車両などの資源管理や取引先の管理を基幹システムにより効率化していますが、現場毎に必要な足場計画図の作図や足場資材の在庫管理など、未だ多くの作業が人手により行われていることから、IT技術を活用した業務効率化の実現が求められています。

 

<グローバル人財の育成>

 今後、グループとしてアジア圏内でのビジネスを展開してまいりますが、そのためには語学力、コミュニケーション能力の基礎的なスキルの習得だけでなく、様々な環境へ対応できるチャレンジ精神旺盛な人財の育成がグループ内で求められています。

 

②中期経営計画とその進捗

 当社グループでは、2022年4月期から2024年4月期までの3連結会計年度を期間とする中期経営計画を『第3次中期経営計画』として設定し、進めておりますが、その内容は、以下の通りになります。

 

<中期経営計画の基本方針>

「ヒト創りとデジタル技術の共進」

 当社グループでは、会社を支え発展させる源は人財であると考えておりますが、今後、国内における労働人口は減少し、高齢化も進むと想定されることから、各種の規制緩和が進まない限り、将来、事業活動で必要となる人財を十分確保していくことは難しくなると考えております。そのため、現場の足場施工も含め、さまざまな業務にデジタル技術を採用し、作業の効率化や自動化を進めると共に、お客様を含む社会からの期待に素早く応えられるよう、従来の考え方にとらわれない多様性を重視した組織を創り、自ら考え、判断し、行動できるヒトを育て、ひとりひとりが事業の成長と社会の発展に貢献する組織を目指してまいります。

 

<目標数値>

 当社グループでは、中期経営計画の最終年度である2024年4月期の連結売上高、連結営業利益の目標を以下の通り設定しております。

0102010_001.jpg

<5つの重点戦略>

a.既存事業の再構築と事業間連携の強化

 これまでの事業運営では、部門の取引先や取り扱う商材、ノウハウを部門間で共有する機会が少なかったため、各部独自の取引先を増やすことができ、また、技術を高めることができた一方、営業活動や生産・施工活動が非効率となっておりました。そのため、今後は収益性を高めるためにも、情報や人財の共有、デジタル技術の導入、部門統合、新規事業立上げのほか、子会社を含めたグループ内での資源共有により、組織全体での営業体制を整え、事業間連携によるシナジーを発揮し、資源の効率化を図り、お客様から、より選ばれる組織となることで、今まで以上に社会のニーズに応えてまいります。

 

b.新市場の創造と東南アジアでのビジネス基盤確立

 当社に関連の深い戸建てを中心とする住宅市場や国内での人材が確保しにくくなる労働集約型のビジネスは、今後、縮小を続けるものと考えております。そのため、新たな収益源を確保するためにも、これまで蓄積してきた足場の技術や取引先のネットワーク、業務効率化の仕組みを活用し、新たなマーケットに参入するほか、足場事業以外の市場を創造してまいります。また、事業活動の地域については、東南アジアを中心とした国外に拡げることで、新たなビジネスの機会を創出してまいります。

 

c.未来社会に貢献するヒト創りと商品サービスの開発

 当社グループが関わる社会課題として、建設技能者の不足と高齢化、建設現場における墜転落事故の防止、災害発生後の早期インフラの復旧などがあります。これまで社内で蓄積してきた教育プログラムや企業文化をさらに発展、浸透させることで、高い技術と安全への強い使命感を持つスタッフを増やしていくと共に、より安全な仮設資材や工事用の装備品、システムの開発に注力することで、事故のない社会の実現に貢献してまいります。また、足場施工サービスを通じて得られた人財やノウハウを活かし、人手不足にある業界にアプローチすることで、社会全体の課題にも取り組んでまいります。

 

d.ヒトとデジタル技術をつないだビジネス革新

 足場施工スタッフの大幅な増員は、今後も見込み難いと考えております。そのため、一人当たりの生産性を向上し、収益性を高めることが求められていますが、これまで取り組んできた施工管理システムを進化させるほか、IOT機器と連携したアプリケーションの開発、さまざまなデータの見える化など、デジタル技術の積極的な採用を進めることで、生産性を上げるだけでなく、スタッフの負担削減にも取り組んでまいります。また、社内で採用するデジタル技術を社外にも提供することで、社会全体での生産性向上に貢献してまいります。

 

e.ES(従業員満足)ファーストのガバナンス体制構築

 当社グループでは、会社が永続するために最も大事にすべきはスタッフである従業員と考えております。スタッフの働く環境や待遇の向上は、お客様に対する対応品質の向上に繋がり、お客様の満足度が向上すれば収益が向上し、結果として企業価値が高まると捉えております。そのため、従業員が最大限に満足して働くことができるよう、統治体制の見直しを進め、多様な働き方の実現、充実した福利厚生制度のほか、全てのスタッフが成長を実感できる教育体系の構築を目指して取り組んでまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループとして、優先的に対処すべき事業上の課題は、国内外とも現場で従事するスタッフの採用を増やすことと捉えております。財務上の課題としても、対象とするスタッフの採用と処遇向上に掛かる財源を優先的に確保することであると考えております。また、提出日時点において新型コロナウイルス感染症の流行は収束しておらず、コロナ禍での事業拡大と財務の強化は、引き続き重要な課題と認識しております。なお、課題に対する今後のセグメント別の取り組みは以下の通りですが、新型コロナウイルス感染症に対する政府・自治体の規制や経済の動向、感染拡大の状況によっては大きく変わる可能性があります。

 

①施工サービス事業

 施工サービス事業においては、施工スタッフの雇用維持と採用強化のため、給与を含むさらなる待遇向上に努め、施工技術、安全衛生などの品質強化に関わる教育への投資を増やすほか、将来の体力的な不安を解消するためにも、足場施工以外の職務が提供できる体制創りに取り組んでおります。また、政府による水際対策が緩和されていることから、当社への就業を希望する特定技能外国人と外国人技能実習生の入国が増えることが、施工力強化に繋がるものと考えております。

 新型コロナウイルス感染症の感染防止については、引き続き営業担当はマスク着用と営業車への除菌水常備を徹底し、施工現場においては、作業時以外はマスク着用を徹底、施工中に関しては顧客による取り決めに従い対応してまいります。

 

②製商品販売事業

 製商品販売事業については、施工力が必須となる足場施工サービスだけに頼らず、足場部材のみレンタルする事業を推進するために、貸出用資材の生産と社内への投入を進めるほか、これまでに製商品の取引を通じて協力関係を築いてきた外部の足場施工会社と連携を強化し、施工サービス事業の受注案件を委託することで、施工力不足を補完できる体制創りに取り組んでおります。

 新型コロナウイルス感染症による感染予防について、施工サービス事業同様、営業担当はマスク着用と営業車への除菌水常備を徹底すると共に、引き続き時差出勤やテレワークを実施してまいります。

 

③海外事業

 海外事業について、在外子会社のあるシンガポールでは、日本国内と同様に、これまでの入国規制が緩和され、海外からの労働力確保が進むものと考えておりますが、新型コロナウイルス感染者の入国防止の諸手続きと、現場での感染防止対策を徹底するための経費負担は続くと見込んでおります。また、国内での感染拡大による現場停止のリスクは日本よりも高いことから、不測の事態に備えるために、金融機関との関係性をさらに強め、財務強化に取り組んでおります。

 新型コロナウイルス感染症による感染予防については、政府によって一律に対策が義務付けられておりますので、各種ルールの順守を徹底してまいります。

 

 また、当社グループの経営環境として、コロナ禍の影響に加え、地政学的リスクに起因する各種資源の世界的な物価高と円安進行など、先行き不透明な状況が続くものと想定していることから、引き続き主要取引行との連携を強化し財務基盤の強化を図るとともに、厳格な予算統制を行ってまいります。

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得