文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当企業集団が判断したものであります。
(1) 経営方針
当企業集団は、「クライアントとともに社会問題をビジネスで解決する、価値共創企業」となることを方針として掲げております。これまで当社が培ってきた真の課題を探り出す能力、リソースの埋もれた価値を炙り出す能力、及び課題とリソースの最適な組み合わせを提案・実行し価値を最大化する能力、これら3つのケイパビリティをもとに、国内の民間企業のみならず、国内外の民間・政府・自治体へサービス提供を行います。そのために、既存事業の価値創造力の強化、新規事業への投資、及びM&Aを積極的に進めてまいります。
(2) 経営戦略等
当企業集団は、IT/AI/IoTを中心とする幅広い事業領域のポートフォリオを通じて、とりわけ価値創造経営支援事業領域、IT/AI/IoT関連事業領域、及び社会問題解決型事業領域に注力しつつ、上記ケイパビリティをベースに顧客価値を最大化してまいります。グループ内の連携のみならず、各業界のスペシャリストやパートナー企業をはじめ社外と有機的に連携し、これを実現してまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当企業集団は、中長期的な企業価値の向上を図るという観点から、Non-GAAP指標における売上収益及び営業利益、投下資本利益率(ROIC)、及び資本コスト(WACC)を重要視しております。
(4) 経営環境
社会全体において、将来の見通しが不透明で変化が激しく、新型コロナウイルスの影響も相まって、社会課題はますます複雑化してきております。このような中、企業や自治体等の公的機関は、その変化に適応できるよう更なるデジタル化に力を入れています。例えば、コンタクトセンターの受電業務や、申込書等書類の入出力作業等のAIによる無人化、ロボティクス技術を活用した省力化等へのデジタル投資が積極的に行われ、IT/AI/IoT市場は今後も急速な成長が続くことが予測されます。
当企業集団としては、一面的なデジタル化だけではなく、IT/AI/IoTを中心としてヒト・モノ・カネ・情報に加え、それらを組み合わせた幅広い事業領域のポートフォリオとソリューションを通じ、新しいイノべーションを創出しつつ、社会課題やニーズを捉え、解決に導くことで、クライアント企業やパートナー等、あらゆる関係者とともに成長することを意識して事業を進めております。
(5) 事業上及び財務上の対処すべき課題
① 人材採用・育成及び組織力の強化
当企業集団は、人材を最も重要な資産として捉えております。今後も事業の成長を支える優秀な人材の採用・育成に注力しています。特に国内のIT人材の需要が増しており、人材リソースの確保が難しくなってきている中、年齢等属性を問わず、ポテンシャルが高く、新しい取り組みに意欲溢れたスタッフを採用するとともに、専門分野を有するエキスパートの採用を強化しています。
更に、グループ内の適材適所への配置を柔軟に行い、グループ全体の生産性・機動性を高め、社内全体の士気向上、従業員のモチベーションアップ、ひいては組織力の強化に取り組んでまいります。
② M&Aや事業提携による成長
当企業集団は、飛躍的・継続的な成長と競争優位性を確保するとともに、次の効果創出を目的としたM&Aや事業提携を積極的に実施してまいります。
(ⅰ) 持続的な成長の柱となりうる新規事業ドメインへの参入
(ⅱ) 顧客基盤の獲得、既存サービスのシェア拡大
(ⅲ) 新たなノウハウや技術の獲得、サービスラインナップの充実によるサービス力の強化
(ⅳ) 有能なエンジニアの補強、開発体制の強化
③ 積極的な投資と財務の強化
継続的成長のための積極的な投資を進める当企業集団において、必要な資金の確保と財務体質の強化が重要となっております。これまでの投資による事業からの利益確保と投資のバランスを常に意識しながら、当企業集団全体の財務力の向上のため、各事業ごとの事業性評価とそれに対する細かなPDCAサイクルの実施及び金融機関との関係強化等に努めてまいります。
(6) 事業別の課題
① IT/AI/IoT/DX事業
(ⅰ) 技術開発リソースの確保
DXによる課題解決等、ITニーズはますます増え続け、対応に必要な技術力は高度化する一方で、国内におけるIT人材不足により、生産力の確保のための人材獲得がますます困難になってきています。これに対し、国内の地方開発拠点によるニアショア開発及び国外でのオフショア開発拠点を増やすことにより、開発リソースの確保をしております。また、IT技術の適用・応用先として、社会課題解決型のDX案件が増えてきており、自身の開発が社会貢献につながることで、意識の高い技術者が集まるようになってきており、優秀な人材の採用が進んでおります。
(ⅱ) 技術力の向上
IT技術の進化・発展はめざましく、あらゆる領域の技術力習得は困難な中で、特定領域の技術力への偏りは応用力や柔軟性が下がってしまいます。これに対し、新たな事業領域へのIT技術の適用においては、新たな技術力習得の機会が得られることが多く、ノウハウや経験も蓄積されます。そのため、当社が持つ事業ポートフォリオをはじめ、あらゆる事業領域に対するDX案件を獲得しながら、常に技術力向上に努めております。
(ⅲ) 共創による案件の創出
IaaSやPaaSといった、クラウドにおける開発環境の進歩が進み、当社の事業領域であるSaaS/ASP業界において、新しいサービスの開発とサービスインまでのハードルは下がり、開発スピードが早くなってきています。そのため、競争が激化していくことにより、便利なサービスから過剰なサービスが低価格で提供される中、継続的な売上成長を実現するためにも、大型案件を獲得していく必要があります。一方で一時的な大型案件は大規模な開発体制が必要であり、リスクが拡大します。
これに対し当社では、クライアント企業の成長が当社の成長にもつながる共創案件の拡大を意識しております。共創案件は、共同開発の形にすることで初期の開発売上は減少するものの、ともに事業を創出し成長することを前提としてその成果を共有するため、継続的な売上成長に繋がります。
当社グループが社会課題解決型DXを進めると同時に、グループ全体のヒト・モノ・カネ・情報に関する事業セグメントと連携していることで、他社では獲得しにくい大規模で良質な案件を獲得ができ、今後の継続的な成長につなげることに注力しております。
② カスタマーサポート事業
例えば通信サービスや金融サービス、保険等、ユーザーのニーズに沿ったきめ細かいサービスが増える中で、コールセンターの需要はますます高まっており、各社カスタマーサポートの品質向上にしのぎを削っています。これに対し当社では、リモートワーク下のコンタクトセンターに必要なAI、ITツール活用における課題解決の提案に加え、多くのパートナーとのフレキシブルかつ迅速な情報連携を武器とした、パンデミック禍等による突発的な人手不足における応急、恒久的なBPOの受託の提案を推進してまいります。従前型のコールセンター業務に代わるサービス、特にWithコロナの新時代のニーズを捉えたカスタマーサポート業務全般に対するコンサルティングを通じて支援し、このサービスの範囲拡大によって、サービス提供体制の強化に取り組んでおります。
③ 人材・教育事業
人材事業においては、新型コロナウイルス流行の影響により、企業の人材採用活動でこれまで直接対面だった説明会や面接がオンラインになる等形態が変化してきている一方で、採用決定後のミスマッチを最小限にするために、企業と学生の双方において対面での開催を望んでいる声もあります。当社では、従前の採用支援や関連イベントの企画・運営支援とコロナ禍を見据えたそれらの対応にとどまらず、女子学生に特化した採用支援『女子キャリ』事業にも注力し、近時の女性活躍推進の流れを受けた顧客企業の取り組みを採用の面から支援してまいります。
教育事業においては、子どもの人口が減ってきている中で、幼稚園・保育園における保育士の労働環境は依然厳しく、子どもに対する対応、教育が十分でない状況が続いております。これに対し、従来の幼保施設の運営やサービスにとどまらず、人の人格形成にとって重要な幼少期に子どもの成長に必要な学習の機会を与えるべく、付加価値が高い独自のサービスを築いてまいります。また、子育ては社会コミュニティの重要な構成要素であると考え、コミュニティ開発に積極的に取り組む企業との協業・連携も進めております。
④ EC事業
EC事業が属するトレーディングカードゲーム(TCG)業界は非常に活況が続いています。一般社団法人日本玩具協会の発表によれば2021年度のTCG市場規模は過去最大の1,782億円に達しました。TCG業界の歴史は浅く、25年程度となる中、親子で遊ぶ等2世代型の遊びになっていることに加え、代表的なタイトルであるポケモンや遊戯王をはじめとしてスマホゲームの広がりに伴ってTCGへの新規流入がおき、ユーザーの裾野が広がっております。そのような状況下、当社はネットショップ大手としてサービスの研鑽に取り組んでおり、ユーザー向け買取販売攻略サイトのフロントエンド、バックエンド、そして物流拠点のフルフィルメント関連システムすべてを内製化していることによるシステムの拡張性、柔軟性を十二分に生かし、UI/UXの継続的な向上を図っています。しかしながら内製化ゆえに、常にIT技術開発人材の獲得に苦慮しており、十分な開発人材の獲得を果たせているとは言えません。引き続き、優秀なIT人材獲得に注力し、常に新たなテクノロジーの導入に取り組んでまいります。また、国内TCG業界においては海外ユーザーからの需要も高く、足元の円安環境下も相俟ってますますの活況を呈しております。このような海外ユーザーニーズに対してもネットショップという利点とテクノロジーカンパニーとしての特徴を活かし、ユーザーの裾野を広げてまいります。
⑤ 保険事業
当社は、人の安心・安全及び暮らしの豊かさを提供するために、金融関連事業は必要と考えており、新たに保険事業に参入しました。保険サービスは、日常生活で発生するリスク(危険)に備えるもので、その加入者からの情報のデータベース化は進み、新たな保険商品の開発・設計等に活用されています。
これに対し、当社が参入したペット保険事業では、保険料収入及び契約件数について、競合他社に負けない保険商品の提供により順調に推移しており、今後については、保険料収入の増加とロスレシオ(損害率)の改善に軸足を置き、収益性・成長性・健全性の確保に取り組んでまいります。また、ペットと人との幸福な共生の実現とペット業界のあるべき姿への変革を目指すとともに、その先の幅広い金融サービスとして、グループのIT/AI/IoT技術を活用したデータ解析・リスク分析によるクライアント企業の新たな事業創出におけるリスク移転等、最適なソリューションへの発展を目指します。
⑥ 投資・インキュベーション事業
当企業集団の持続的な成長と企業価値向上につながるM&A等の投資活動、及び新規性のある事業やサービスの開発に向けたインキュベーションに取り組んでおります。
特にコロナの影響もあり、国内のM&A実施の件数が増えてきている中で、体制が整っておらずM&Aを実施したくてもスムーズに進められていない企業もあります。そのような中、当社自身が実施するM&Aだけではなく、M&Aニーズのある企業のサポート・コンサルティング、実行支援を行うサービスを進めております。
また、国内に限らず海外においても、共創による社会的意義のある事業の創出を推進している企業が増えてきている傾向があり、当社グループでは社会課題解決を意識した新しい官民共創の形態から派生する新規事業や、直接的な当社グループ内での新規事業開発、更には国外への展開にも取り組んでおります。
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