事業の内容

3【事業の内容】

当社は、医薬品等の研究開発事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの情報は記載しておりません。

なお、「(*)」を付している用語及び出所については、「3 事業の内容」の末尾に用語解説及び参考文献を設け、説明しております。

 

当社は、大阪大学大学院医学系研究科の研究成果である機能性ペプチドの研究開発を進め、医薬品分野で実用化することを主な事業としております。事業内容の詳細は以下のとおりであります。

 

(1)技術シーズの起源

① 「機能性ペプチド」とは?

ペプチドとは、アミノ酸2~50個程度が結合した物質であります。一般的に、50個以下のアミノ酸が鎖状に結合した物質をペプチドと呼び、それ以上の数のアミノ酸が結合した物質をタンパク質と呼んでおります。

ペプチドの中には、生体内等で機能を発揮するものがあり、「機能性ペプチド」と呼ばれています。機能性ペプチドは、医薬品、化粧品及び食品等の幅広い事業分野で実用化されています。

例えば、生体内のペプチドには、体内の器官の働きを調整するための情報伝達を担うホルモン等(インスリン(*)、グルカゴン、カルシトニン等が含まれます)があり、タンパク質のように生体内で機能を担っております。これらのホルモン由来の機能性ペプチドは、がんや糖尿病領域の医薬品として発売されております。また、タンパク質の分解過程で生じるペプチドが機能を持っていることもあり、血圧降下ペプチド等の特定保健用食品等の食品分野や、スキンケアやヘアケア商品として化粧品分野で利用されています。

 

<機能性ペプチドを利用した主な医薬品及び食品>

 

分野

領域

機能性ペプチド

売上高

医薬品

糖尿病

インスリン製剤(ホルモン関連)

2兆3,615億円(注)1
(世界、2017年度)

 

がん他

リュープロレリン(ホルモン関連)

1,575百万ドル(注)2
(世界、2020年度)

 

 

ゴセレリン(ホルモン関連)

947百万ドル(注)2
(世界、2021年度)

食品
(特定保健用食品)

血圧降下

イワシペプチド、ラクトトリペプチド、
ワカメペプチド、ゴマペプチド他

 

(注)1.出所:TPCマーケティングリサーチ株式会社「2018年 世界のバイオ医薬品市場」

2.出所:Informa社「Biomedtracker」(February 2022)

 

② 技術シーズの起源

当社の技術シーズの起源は、大阪大学大学院医学系研究科における新規血管新生因子の探索研究により同定されたAG30(angiogenic peptide 30)であります。AG30は30アミノ酸からなる機能性ペプチドで、血管新生作用を持っており、更に、抗菌活性を併せ持つ創薬シーズであります。

 

当社の研究者は、機能性ペプチドAG30を起源とし、そのペプチドを構成するアミノ酸の一部を置き換える検討を重ねることで、目的とする機能が増強したペプチド「SR-0379」、新しい機能が付与されたペプチド「AJP001」及び多機能の活性を示すペプチドの特定の機能が消失しているペプチド「キュアペプチン」などの機能性ペプチドを見出しました。

 

(A)SR-0379

SR-0379は、AG30を起源とし、生体内安定性や製造コストを改良し、医薬品として最適化を図った20個のアミノ酸からなる機能性ペプチドであります。SR-0379は、血管新生や肉芽(*)形成促進を主たる作用とし、抗菌活性を併せ持った皮膚潰瘍治療薬として、現在日本で第Ⅲ相臨床試験の段階まで開発が進んでおります。

 

(B)AJP001

AJP001は、AG30を起源とし、アジュバント(*)機能を増強した20個のアミノ酸からなる機能性ペプチドであります。当社は、AJP001を抗体誘導ペプチドの創薬プラットフォーム技術として利用しております。

当社は、この創薬プラットフォーム技術を強みとして新規開発品を創出して研究開発パイプラインの強化を図っております。現在、先行開発品FPP003は海外での臨床試験段階にあるほか、FPP004及びFPP005は前臨床段階にあり、更に多数の様々な研究テーマが進行中であります。

(C)キュアペプチン

キュアペプチンは、AG30を起源とし、血管新生作用を持たず、幅広い抗菌活性を持つ機能性ペプチドとして最適化を図った20個のアミノ酸からなる機能性ペプチドであります。

キュアペプチン含有商品については、その抗菌活性を生かした化粧品分野への応用を検討しております。

 

医薬品分野の開発品創生の経緯は、下記の通りであります。

AG30を起源として、機能性ペプチド「SR-0379」、機能性ペプチドの一種である抗体誘導ペプチド「FPP003」「FPP004」「FPP005」を創生し、現在、更なる抗体誘導ペプチドの開発品創生を図っております。

 

<技術シーズの起源>

 

 

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(2)抗体誘導ペプチド

当社の創薬活動の強みは、新しいモダリティ(創薬技術)である抗体誘導ペプチドの創薬プラットフォーム技術「STEP UP」を保有していることであります。このプラットフォーム技術にもとづき、多様な抗体誘導ペプチドを開発することによって社会に貢献していきたいと考えております。

 

抗体誘導ペプチドは、患者様の体内で「抗体」産生を誘導して治療効果を示すペプチドワクチンであります。

先進国では高齢化社会を迎え医療財政問題が深刻化しておりますが、その要因の一つは、高額な抗体医薬品等の市場が拡大していることであります(後述の「抗体医薬品市場の推移」のグラフをご参照ください)。

日本でも、「経済財政運営と改革の基本方針2018(平成30年6月15日閣議決定)」において、医薬品等の保険収載等に際して、費用対効果や財政影響などの経済性評価や保険外併用療養の活用などを検討するとされ、高額な医薬品に対する対応は、医療財政問題の重要課題と位置付けられております。

当社は、高額な抗体医薬品に対して医療費を抑制できる代替医薬品として抗体誘導ペプチドを開発し、医療財政問題の解決に貢献することを目指してまいります。

 

<抗体誘導ペプチドの特徴>

 

 

◆ 薬剤費抑制により医療費を抑制して医療財政問題への貢献を期待できる

・抗体医薬品と違い、化学合成で製造可能な抗体誘導ペプチドは製造コスト抑制を期待できる

・既存の抗体医薬品と(ターゲットとなる標的タンパク質を阻害する)作用メカニズムが同じであることから、開発成功確率が高まり、多額な医薬品開発費用の抑制を期待できる

 

◆ 患者様の体内で免疫細胞が一定期間抗体を産生するため、投与頻度が少なく患者様の負担が少ない

 

◆ 既存の抗体医薬品を参考に、創薬プラットフォーム技術を用いて多様な標的タンパク質・疾患に対する抗体誘導ペプチドを順次創生していくことができるため、広範な製品群・疾患への適用可能性をもつ

 

◆ 高額な抗体医薬品では投与対象にならなかった患者層への適用範囲拡大も期待できる

 

 

① 抗体医薬品との違い

抗体医薬品は「体外で製造する抗体」であるのに対し、抗体誘導ペプチドは、元々生体に備わった能力を利用して「体内で抗体を産生させる」ペプチドであるため、製造コストを低く抑制することを期待できます。

また、抗体誘導ペプチドは、患者様の体内で免疫細胞が「抗体」を一定期間持続的に産生するため、薬剤投与頻度が少なく患者様の負担が少ないと考えられます。

 

「抗体」は、細菌やウイルス等の「外来の異物」を排除するために免疫細胞(B細胞)が産生する物質であり、元々生体内で産生されている物質であります。この細菌やウイルス等の「外来の異物」に対する生体内の抗体産生能力を利用した薬剤が感染症予防ワクチンであります。

「抗体」は、標的となる物質に対する特異性が高いため、有効性及び安全性が高い抗体医薬品として実用化されており、従来型医薬品では十分な効果等が得られなかった難治性疾患の治療に活用されております。しかし、多くの抗体医薬品の標的タンパク質は生体内に存在する「自己タンパク質」であるため、免疫寛容(*)という仕組みによって生体内では抗体は産生されません。抗体医薬品は、分子量が約15万と大きく構造が複雑なタンパク質であるために、バイオ製造施設で生きた動物細胞を培養して製造する必要があり、設備、コストと手間がかかり製造コストが高くなります。

これに対し、抗体誘導ペプチドは、患者様の体内で標的タンパク質(自己タンパク質)に対する「抗体」を産生するように設計したペプチドワクチンであります。抗体誘導ペプチドは、化学合成で製造可能なペプチド(分子量数千)であり、投与後は体内で免疫細胞(B細胞)が「抗体」を一定期間持続的に産生するため、製造コストを抑制することができます。

 

<抗体医薬品と抗体誘導ペプチドの違い>

 

 

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② 創薬プラットフォーム技術「STEP UP」

多くの抗体医薬品、抗体誘導ペプチドの対象疾患は慢性疾患であり、標的タンパク質は「自己タンパク質」であります。通常、「自己タンパク質」に対して抗体は産生されませんが、抗体誘導ペプチドは、「自己タンパク質」に対して免疫反応を引き起こす役割を担う「キャリア」と、標的タンパク質の一部の短いペプチド(又は類似ペプチド)である「エピトープ」を結合することによって、標的の自己タンパク質に対する抗体を産生できるように設計しております。

当社の抗体誘導ペプチドプロジェクトの強みは、(A)「キャリア」に当社独自の機能性ペプチド「AJP001」を使用していること、(B)標的タンパク質の特性(物理化学的性質、立体構造及び生物学的機能)に応じた「エピトープ」を設計・選定する技術ノウハウを有していることであり、当社は、これら2つの強みを合わせてプラットフォーム技術「STEP UP(Search Technology of EPitope for Unique Peptide vaccine)」と呼んでおります。

 

<プラットフォーム技術「STEP UP」>

 

 

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(A)「キャリア」に使用する当社独自の機能性ペプチド「AJP001」

抗体誘導ペプチドは、標的の「自己タンパク質」に対する免疫反応を引き起こす役割を担う「キャリア」を結合しております。

 

一般的に「キャリア」には、スカシガイ由来ヘモシアニン(KLH, Keyhole limpet hemocyanin)、ウイルス様粒子(VLP, Virus like particle)、破傷風トキソイド(TT, tetanus toxoid)及びジフテリアトキソイド(DT, diphtheria toxoid)等が使用されておりますが、これらの生物由来の「キャリア」には、下記の課題があります。

 

生物由来の「キャリア」の課題

◆ 標的タンパク質に対する抗体に加え、「キャリア」に対する抗体(薬剤に対する抗体)が誘導され、初回投与後の反復投与時に効果が減弱する可能性があること

◆ 製造上の品質確保(「エピトープ」と「キャリア」の縮合反応の制御等)の難易度が高いこと

◆ アレルギーやアナフィラキシー(*)のような期待しない免疫反応を引き起こす懸念があること

 

当社が「キャリア」として使用している機能性ペプチドAJP001は20アミノ酸(分子量約3千)であり、生物由来のキャリア(分子量は数万~数百万)と比較して分子量が相対的に小さいものの、「キャリア」として機能することが非臨床試験で確認されており、これらの課題を解決することを期待しております。

 

(B)「エピトープ」を選定する技術ノウハウ

「エピトープ」は、抗体が認識する、免疫反応の対象となる物質(以下、抗原といいます)の一部のことであります。抗体は抗原と結合するとき、その抗原全体を認識するわけではなく、抗原の比較的小さな一部分のペプチド(通常6-10アミノ酸程度)のみを認識して結合します。このペプチドがエピトープと呼ばれています。通常、1つの抗原には多数のエピトープが含まれております。

抗体誘導ペプチドに用いる「エピトープ」は、多数ある候補ペプチドのうち、標的タンパク質の機能を阻害して治療効果が期待される「エピトープ」を選択する必要がありますが、当社は、大阪大学との共同研究等によって、標的タンパク質の特性(アミノ酸の物理化学的性質、立体構造及び生物学的機能)に基づき、治療効果が最も期待される「エピトープ」を選択する技術ノウハウを保有していることが強みであります。

 

 

(ご参考)抗体誘導ペプチドの作用メカニズム - 免疫寛容を回避する仕組み -

 

抗体誘導ペプチドが抗体産生を誘導するメカニズムの概要は前述の通りですが、ここでは医薬分野の専門知識をお持ちの投資家の方々に向けて、専門用語を用いた補足説明をいたします。

 

 

 

生体内で抗体が産生するためには、B細胞が抗原(標的タンパク質)を認識し、更にヘルパーT細胞からの刺激によってB細胞が活性化する必要があります。しかし、自己抗原(自己タンパク質等)に対しては、ヘルパーT細胞が活性化しないため抗体が産生されません。

抗体誘導ペプチドは、ヘルパーT細胞を活性化するT細胞エピトープを含んだ「キャリア」に、B細胞が認識する「エピトープ」(B細胞エピトープともいいます)を結合し、標的の自己タンパク質に対する抗体産生を誘導するように設計しております。

 

抗体誘導ペプチドの作用メカニズム

◆ 生体内に投与された抗体誘導ペプチドは、樹状細胞に取り込まれ、抗体誘導ペプチドを取り込んだ樹状細胞は、T細胞エピトープ(抗体誘導ペプチドの「キャリア(AJP001)」部分)をMHCクラスIIに提示します。そして、これを認識するAJP001特異的ヘルパーT細胞が活性化します。

◆ 一方、B細胞はB細胞受容体を介してB細胞エピトープを認識し抗体誘導ペプチドを取り込みます。抗体誘導ペプチドを取り込んだB細胞は、T細胞エピトープ(AJP001)をMHCクラスIIに提示します。樹状細胞により活性化されたAJP001特異的ヘルパーT細胞がAJP001を提示しているB細胞を活性化します。活性化されたB細胞は増殖しB細胞エピトープ特異的な抗体を産生します。この抗体が標的タンパク質に結合することにより阻害活性を示し治療効果を発揮します。

 

AJP001と他のキャリアとの違い

◆ 自己タンパク質に対する抗体を産生させる場合、生物由来のキャリア(スカシガイ由来ヘモシアニン(KLH)、ウイルス様粒子(VLP)、破傷風トキソイド(TT)及びジフテリアトキソイド(DT)等)を用いることが多いですが、これらのキャリアにはT細胞エピトープだけでなくB細胞エピトープも含まれるため、キャリアに対する抗体も産生されます。そのため、繰り返し投与するとキャリアに対する免疫誘導が強くなり、標的タンパク質に対する免疫誘導が減弱する可能性があります。一方、AJP001をキャリアとした場合、AJP001に対する抗体は産生されないため、標的タンパク質特異的に抗体産生を誘導することが可能です。

 

 

<抗体誘導ペプチドの作用メカニズム>

 

 

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*1:MHC class IIは樹状細胞やB細胞などの抗原提示細胞に発現する。抗原を取り込んだ抗原提示細胞は、取り込んだ抗原をペプチドに分解しMHC class IIとの複合体としてT細胞に抗原提示する。

*2:B細胞では細胞膜上に発現する抗体分子が抗原受容体(B細胞受容体)として働く。B細胞はB細胞受容体に結合した抗原を取り込みヘルパーT細胞に提示し活性化され抗体を産生する。B細胞受容体が放出されたものが抗体である。

 

 

 

 

このプラットフォーム技術「STEP UP」を創薬活動の強みとして、当社は、AJP001と、様々な標的タンパク質(エピトープ)を組み合わせることによって、標的タンパク質IL-17Aに対する抗体誘導ペプチド「FPP003」、標的タンパク質IgEに対する抗体誘導ペプチド「FPP004」及び標的タンパク質IL-23に対する抗体誘導ペプチド「FPP005」に続いて、様々な標的タンパク質に対する抗体誘導ペプチドを創生し、研究開発パイプラインの拡充を図ってまいります。

 

<抗体誘導ペプチドの開発パイプライン拡充>

 

 

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③ 抗体誘導ペプチドの将来性

抗体誘導ペプチドは、抗体医薬品の代替医薬品として、既存の抗体医薬品を参考に多様な標的タンパク質ごとに開発品を創生し、様々な疾患に開発対象を順次広げていくことができ、広範な製品群、疾患への適用可能性があります。

更に、高額な抗体医薬品では投与対象外であった重症度の患者層や、対象疾患への適用範囲拡大も期待できます。

 

(A)抗体医薬品の代替医薬品

抗体医薬品市場は、2020年に前年比13%増加の17兆8,246億円に達しており、大幅な増加傾向が続いております。ターゲット市場は既に顕在化した市場であり、抗体誘導ペプチドは、既存の抗体医薬品を参考にして開発戦略を構築することができます。

 

<抗体医薬品市場の推移>

 

 

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(出所)TPCマーケティングリサーチ社「2021年 世界の抗体医薬品市場」

 

抗体医薬品は、様々な標的タンパク質に対する製品が発売されております。当社は、標的タンパク質IL-17A(FPP003)、IgE(FPP004)及びIL-23(FPP005)に対する抗体誘導ペプチドの開発を進めておりますが、創薬プラットフォーム技術を活用し、既存の抗体医薬品を参考にして様々な標的タンパク質に対する抗体誘導ペプチドの開発品を順次創出していくことが可能と考えております。例えば、下記の標的タンパク質に対する新規抗体誘導ペプチドを創生していくことを想定しております。

 

 

<抗体医薬品の主な標的タンパク質と対象疾患>

 

領域

主な標的タンパク質 (注)1

主な対象疾患

主要製品の世界売上高

(2020年、百万ドル)

炎症

IL-17A IgE IL-23 、TNFα、

IL-12/23p40、IL-6、

α4β7インテグリン、IL-4/13、

IL-5、BLyS、IL-13、その他

関節リウマチ、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、

強直性脊椎炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、気管支喘息、慢性蕁麻疹、花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)、アトピー性皮膚炎、その他

Humira

Stelara

Remicade

Cosentyx

Xolair

20,408

8,050

4,502

3,995

3,279

精神神経

α4インテグリン、CGRP、NGF (注)2

アミロイドβ、タウ (注)2

αシヌクレイン (注)2、その他

多発性硬化症、片頭痛、疼痛、

アルツハイマー病、パーキンソン病、その他

Tysabri

Aimovig

Emgality

1,947

542

363

RANKL、スクレロスチン

骨粗鬆症、その他

Prolia

Evenity

3,074

649

循環器

PCSK9

家族性高コレステロール血症、

高コレステロール血症

Repatha

Praluent

926

445

その他

補体(C5)

発作性夜間ヘモグロビン尿症、その他

Soliris

4,064

 

(注)1.表中の標的タンパク質に対する受容体を含みます。

2.開発段階の抗体医薬品の標的タンパク質です。

(出所)主要製品の世界売上高は、Informa社「Datamonitor Healthcare」(November 2021)データを使用。

 

 

既存の抗体医薬品は、様々な対象疾患の薬事承認を取得しており有効性及び安全性が証明されております。したがって、抗体誘導ペプチドの各開発品は、初期の対象疾患で一定の有効性及び安全性を確認した段階で、高い成功確率のもとで抗体医薬品の対象疾患を参考にして開発対象疾患を拡大していくことが可能と考えております。

例えば、FPP003の場合は抗IL-17A抗体医薬品を参考に、現在開発中の乾癬、強直性脊椎炎から乾癬性関節炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎へ、FPP004の場合は抗IgE抗体医薬品を参考に、現在の開発中の花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)から気管支喘息、慢性蕁麻疹へと対象を拡大することを想定しております。

 

抗体誘導ペプチドは、既存の抗体医薬品と同じ作用メカニズム(同じ標的タンパク質を阻害して対象疾患を治療するメカニズム)であることから、医薬品開発リスクを低減でき、さらに抗体医薬品の対象疾患を参考に開発対象疾患を広げていくことが可能と考えております。

 

<抗体医薬品の代替医薬品としての将来性>

 

 

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<抗体誘導ペプチドの使用法>

抗体誘導ペプチドは、免疫反応を起こして患者様の体内で抗体を産生しますので、抗体誘導ペプチドを投与してから抗体が産生するまでに1ヶ月程度の期間が必要になります。一方、抗体医薬品は、抗体そのものを投与しますので、症状を速やかに改善する即効性を期待できます。

したがって、慢性疾患に対する治療プロセスにおいて、症状が重く速やかに症状を改善させる必要がある時期(活動期)には即効性がある抗体医薬品を投与し、その後改善された症状を維持・再発防止するために維持療法を行う必要がある時期(寛解維持期)に抗体誘導ペプチドを継続的に投与することが想定されます。

治療に必要な医療費や患者様の経済的負担を抑制でき、投与頻度が少ない(数カ月に一回投与を想定しています)抗体誘導ペプチドは、長期に亘って継続的な投与が必要な寛解維持期に適した薬剤であり、この疾患ステージにおいて既存の抗体医薬品の代替医薬品となることを期待しております。

 

(B)幅広い対象患者層への適用

抗体医薬品は治療効果が大きく副作用が少ないにもかかわらず、使用範囲が一部の重症患者に限定されております。その主要な要因は高額な薬剤費用ですが、抗体誘導ペプチドは、薬剤費用を抑制でき、その課題を解決して、現在は費用面が障害となって抗体医薬品の使用を控え他種類の薬剤が使用されている患者層や、価格面が障害となって抗体医薬品が開発されていない生活習慣病等の疾患への適用範囲拡大も可能と考えております。

 

(a)高額な抗体医薬品が使用できない患者層

高額な抗体医薬品は、既存療法で効果が不十分な患者等、投与対象患者が一定の患者層に限定されております。抗体誘導ペプチドは、重症度が早期ステージの患者層など薬剤費用がハードルとなって使用できなかった患者層への適用範囲拡大を目指してまいります。

 

(b)生活習慣病等の疾患への適用拡大

高血圧、糖尿病及び高脂血症等の生活習慣病に対しては、一般的に低分子医薬品が使用されております。これらの低分子医薬品は、連日投与の経口剤であります。しかし、生活習慣病は明確な症状がない場合が多く、また服薬管理を自ら行うことが難しい高齢者の患者が多いことから、服薬管理が良好な患者の割合は低い水準に留まっており、服薬アドヒアランス(*)向上が課題となっております(米国において実施された高脂血症治療薬の服薬状況の調査では25~40%(出所:Jackevicius et al.(2002)(*))。

抗体誘導ペプチドは、免疫細胞が一定期間抗体を産生して効果が持続するため、数カ月一回投与と投与間隔が長く患者様の負担が少なく、服薬アドヒアランス向上を通して生活習慣病を適正にコントロールし、心血管イベント等の合併症の発生を予防できる患者の割合が増えるものと考えられます。

当社では、大阪大学との共同研究によって、高血圧や抗血栓を対象とする抗体誘導ペプチドの探索研究を進めております。

 

<幅広い対象患者層への適用>

 

 

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以上の医療ニーズ及び社会ニーズを満たすため、抗体誘導ペプチドのように慢性疾患を対象とするペプチドワクチンは、当社のみならず世界各地で、アルツハイマー病、パーキンソン病、高血圧、がん、アレルギー性喘息及び糖尿病等を対象疾患として研究開発が行われております。

④ 抗体誘導ペプチドの開発パイプライン

現在、開発段階にある抗体誘導ペプチドは、標的タンパク質IL-17Aに対するFPP003、標的タンパク質IgEに対するFPP004及び標的タンパク質IL-23に対するFPP005であります。

(研究開発パイプライン表は、「(3)研究開発パイプライン」をご参照ください。)

 

(A)FPP003

◇ 概要

FPP003は、標的タンパク質IL-17A(Interleukin 17A)に対する抗体誘導ペプチドであります。

IL-17Aは、免疫反応に関するサイトカイン(*)の一つであり、乾癬及び強直性脊椎炎等に関与していることが明らかになっています。

 

◇ 対象疾患

現在開発中の対象疾患は、尋常性乾癬及び強直性脊椎炎であります。

IL-17Aを標的タンパク質とする既存の抗体医薬品は、日米欧で尋常性乾癬及び強直性脊椎炎以外に、乾癬性関節炎及びX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎等の薬事承認を取得しております。

当社といたしましては、乾癬性関節炎やX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎等への開発対象疾患の拡大を図り、抗体医薬品が使用されている幅広い患者様への貢献を目指してまいります。

 

対象患者層拡大に向けて

乾癬の患者数は、「軽症から中等症」の患者が約80%、皮疹範囲が体表面積の5%以上に及ぶ「中等症から重症」の患者は約20%であります(出所:The American Academy of Dermatology(*))。乾癬患者全体のうち、尋常性乾癬患者がほとんどで、約80~90%を占めております(出所:The American Academy of Dermatology)。

尋常性乾癬の治療は、「軽症から中等症」患者に対しては局所薬物療法の外用薬が使用されますが、「中等症から重症」患者に対しては光線療法や全身薬物療法が行われております。これらの全身薬物療法の対象患者のうち、効果が不十分な場合等には抗体医薬品が使用されております。

当社といたしましては、経済面で抗体医薬品が投与できない患者層に対して適用することや、他の薬剤を使った全身療法や光線療法に対して有効性、安全性及び利便性(投与頻度が少ない)で優位性を示すことにより、従来は抗体医薬品の投与対象にはならなかった幅広い患者層に抗体誘導ペプチドを適用することを目指してまいります。

 

<尋常性乾癬の治療選択肢>

 

全身療法

抗体医薬品(生物学的製剤)

 

メトトレキサート

シクロスポリン

アシトレチン

経口低分子医薬

光線療法

紫外線療法

局所療法

 

 

 

ビタミンD3外用薬

ステロイド外用薬

アンスラリン外用薬

レチノイド外用薬

 

(出所)WHO「Global report on PSORIASIS 2016」に基づき当社作成。

 

◇ 開発状況

FPP003は、大阪大学及び大日本住友製薬株式会社との共同研究のもとで当社が同定した開発化合物であります。

 

これまでに実施した動物を用いた薬効試験では、乾癬モデルマウスに対する皮膚症状改善効果、脊椎関節炎モデルラットに対する関節炎症状の改善効果が示されています(強直性脊椎炎、乾癬性関節炎及びX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎は、脊椎関節炎の一種であります)。

 

 

乾癬モデルマウスの薬効試験

イミキモド(IMQ)誘発乾癬モデルマウスにおいて、ペプチドA(FPP003(ヒト配列)に対応するマウス配列)は、乾癬発症マウス(未治療)と比較して、皮膚炎症状スコア(発赤、肥厚及び白色鱗屑)を有意に低下させることが確認され、皮膚炎症状の改善効果を示しました。

 

<皮膚炎症状>

 

 

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脊椎関節炎モデルラットの薬効試験

結核死菌(M. tuberculosis)誘発脊椎関節炎モデルラットにおいて、ペプチドA(FPP003(ヒト配列)に対応するラット配列)は、関節炎発症ラット(未治療)と比較して、関節炎症状(関節炎スコア(四肢、尾)及び足容積)を有意に低下させることが確認され、関節炎症状の改善効果が示されています。

強直性脊椎炎は、脊椎関節炎の一種です。

 

<関節炎症状>

 

 

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更に、 ヒトでの抗体産生を予測するため、カニクイザル及びヒト細胞を用いた試験を行い、下記の結果が得られております。

 

カニクイザルにおける抗体産生

カニクイザルにFPP003を皮下投与した際、経時的に抗体価(体内で産生した抗体量)が上昇し、追加投与によるブースター効果(免疫反応の増強効果)が確認されております。カニクイザルにてFPP003によって産生された抗体は、標的タンパク質の組換えヒトIL-17Aに結合し、ヒトIL-17Aへの中和活性が認められております。

 

ヒト細胞を用いた抗体産生

FPP003は、ヒト細胞を活性化するT細胞エピトープ(AJP001)を有し、ヒト細胞(ヒト末梢血単核球(PBMC))を用いた検討の結果から、ヒトT細胞活性化、ヒト抗IL-17A抗体の産生誘導活性が示されております。

 

当社は、日米欧等での世界展開を視野に入れて開発を進めており、本書提出日現在、ヒトでの初期の有効性及び安全性データを取得するため、尋常性乾癬を対象とするオーストラリアでの第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験を実施しております。強直性脊椎炎を対象とする開発については、前臨床試験の段階にあります。

日本での強直性脊椎炎に対する研究開発については、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」の支援の成果に基づき実施しております。

 

 

◇ 提携状況

当社は、2018年3月に、大日本住友製薬株式会社との間でオプション契約を締結いたしました。

このオプション契約により、大日本住友製薬株式会社は、当社が実施する初期臨床試験結果にもとづき、北米での全疾患に対する独占的開発・商業化権を取得する権利を保有しております。さらに北米以外の地域については、優先交渉権を保有しております。その対価として、当社は、契約一時金、FPP003の研究開発の進捗に伴い開発マイルストーンを受取ります(これらの収入は既に全額を受け取り事業収益に計上いたしました)。

さらに、同社が上記のオプション権を行使した場合、当社は、一時金、FPP003の研究開発の進捗に伴い、開発マイルストーンを受取る予定であります。更に製品上市後には、販売額に応じたロイヤリティー及び販売マイルストーンを受取る予定であります。

 

◇ 技術導入状況

当社は、2018年8月に、大阪大学より、FPP003を含む抗体誘導ペプチドの独占的な実施権の許諾を受けております(対象の特許を受ける権利は、大阪大学と当社の共同所有)。

 

 

(B)FPP004

◇ 概要

FPP004は、標的タンパク質IgE(Immunoglobulin E)に対する抗体誘導ペプチドであります。

IgEは、アレルギー反応に重要な役割を果たしており、アレルギー性疾患の発症に関与しております。

 

◇ 対象疾患

現在開発中の対象疾患は、花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)であります。

更に、IgEを標的タンパク質とする既存の抗体医薬品は、日本の花粉症以外に、日米欧で喘息及び慢性蕁麻疹の薬事承認を取得しております。

当社といたしましては、喘息や慢性蕁麻疹への開発対象疾患の拡大を図り、抗体医薬品が使用されている幅広い患者様への貢献を目指してまいります。

 

対象患者層拡大に向けて

日本での花粉症患者の有病率は42.5%(出所:鼻アレルギーの全国疫学調査2019(*))であり、花粉症は患者数が多い疾患であります。

花粉症の治療には、抗ヒスタミン薬、鼻噴射用ステロイド薬やアレルゲン免疫療法薬等が使用されております。これら既存療法で効果不十分な重症及び最重症患者に対して抗体医薬品が使用されております。

当社といたしましては、これらの薬剤に対し、薬剤費用、有効性、安全性及び利便性(投与頻度が少ない)で優位性を示すことにより抗体誘導ペプチドを幅広い患者層に適用することを目指してまいります。

 

◇ 開発状況

FPP004は、大阪大学との共同研究のもとで当社が同定した開発化合物であります。

本書提出日現在、前臨床試験の段階にあります。

 

(C)FPP005

◇ 概要

FPP005は、標的タンパク質IL-23(Interleukin-23)に対する抗体誘導ペプチドであります。

IL-23は、免疫反応に関するサイトカインの一つであり、乾癬、クローン病及び潰瘍性大腸炎等に関与していることが明らかになっています。

 

◇ 対象疾患

現在開発中の対象疾患は、尋常性乾癬であります。

IL-23を標的タンパク質とする既存の抗体医薬品は、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、クローン病及び潰瘍性大腸炎等の幅広い疾患を対象に開発が進んでおります。

当社といたしましては、尋常性乾癬を始めとする幅広い炎症性疾患を対象に開発を進めて社会に貢献することを目指してまいります。

 

◇ 開発状況

FPP005は、大阪大学との共同研究のもとで当社が同定した開発化合物であります。

本書提出日現在、前臨床試験を実施中であります。

本研究開発(IL-23を標的とした抗体誘導ペプチドの研究開発)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「研究開発型ベンチャー支援事業/橋渡し研究開発促進による事業化支援」の支援の成果に基づき実施しております。

 

⑤ 抗体誘導ペプチドの研究テーマ

当社は、FPP003、FPP004及びFPP005に続く新規開発品創出に向けて、大阪大学との共同研究により、数多くの抗体誘導ペプチドの探索研究を進めております。

抗体医薬品の代替医薬品として、疼痛及びアレルギー性疾患の慢性疾患に対する抗体誘導ペプチド、更に生活習慣病に対する抗体誘導ペプチドとして、高血圧、抗血栓を対象に研究を進めております。遺伝性疾患の家族性大腸腺腫症(*)に対する抗体誘導ペプチドの探索研究にも取り組んでおります。(研究開発パイプライン表は、「(3)研究開発パイプライン」を御参照ください。)

 

なお、家族性大腸腺腫症を対象とする抗体誘導ペプチドの研究については、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「橋渡し研究プログラム(PreB)」の支援を受けて、香川大学、大阪大学、京都府立医科大学及び岡山大学との産学連携により実施しております。

 

◇ 提携状況

当社は、2018年3月に、大日本住友製薬株式会社との間で、精神神経疾患を対象とする抗体誘導ペプチドの研究契約を締結しており、これに基づき、同社が探索研究を実施しております。

さらに、2019年2月に、塩野義製薬株式会社との間で、疼痛を対象とする抗体誘導ペプチドの共同研究契約(注)を締結しております。

(注)塩野義製薬株式会社との共同研究については、共同研究期間を終え、本共同研究の研究成果に基づき、当社が開発化合物の創生に向けた候補化合物の最適化研究を進めております。

 

[ 研究開発支援に関する提携 ]

当社は、2016年2月に、株式会社メディパルホールディングスとの間で抗体誘導ペプチドの研究開発に関する提携契約を締結しております。

これにより、当社は、契約時に一時金を受け取ったほか、2016年4月以降の3年間にわたって研究開発協力金を受け取りました。一方、その対価として、株式会社メディパルホールディングスは、当社が抗体誘導ペプチドプロジェクトから創出した医薬品候補を製薬会社に導出した際には、当社が導出先から受け取る契約一時金及び開発マイルストーンの一部を受け取るほか、当該医薬品の日本国内等の卸売販売について優先交渉権を取得する予定であります。

 

(3)研究開発パイプライン

当社の研究開発パイプライン表は、下記の図のとおりであります。

 

当社は、抗体誘導ペプチドの創薬プラットフォーム技術「STEP UP」を強みとして、大阪大学との産学連携のもとで様々な対象疾患に対する抗体誘導ペプチドの探索研究を行い、現在臨床試験段階にあるFPP003、前臨床試験段階にあるFPP004及びFPP005を創出し、更に今後の新規開発品についても、抗体誘導ペプチドの多様な研究テーマから創出していく方針であります。

一方、AG30を起源とする皮膚潰瘍治療薬SR-0379は、大阪大学大学院医学系研究科及びアンジェス株式会社との連携のもとで創生された開発品であり、その後アカデミア主導の前臨床試験及び複数の医師主導治験が実施され、現在、塩野義製薬株式会社と当社の共同開発により日本での第Ⅲ相臨床試験の段階にあります。

SR-0379は、高齢化社会を迎え益々重要性が増している褥瘡等の皮膚潰瘍治療において、今後拡大が見込まれる在宅医療でも取り扱いやすい簡便な使用法によって、幅広い患者様のQOL(Quality of Life、生活の質)に貢献できる薬剤として、当社は、早期の承認取得、上市に向けて開発を進めてまいります。

 

<医薬品>

・ 開発品

 

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(注)1.国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」の支援の成果に基づき、開発を進めています。

2.国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「研究開発型ベンチャー支援事業/橋渡し研究開発促進による事業化支援」の支援の成果に基づき、開発を進めています。

 

 

・ 研究テーマ

 

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(注)国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「橋渡し研究プログラム(PreB)」の支援を受けて、香川大学、大阪大学、京都府立医科大学及び岡山大学との産学連携により実施しています。

 

<化粧品等>

株式会社ファンケルより、2018年3月から当社の機能性ペプチドを含有するシャンプーとして「マイルドクレンジングシャンプー」が発売されております。また、株式会社SMV JAPANより、2020年4月から当社の機能性ペプチドを含有するアルコール除菌スプレーが発売されております。

これらの商品販売により、当社は、化粧品原料商社又は販社に対する機能性ペプチド販売収入を計上しております。

 

① SR-0379

◇ 概要

SR-0379は、AG30を起源とし、生体内安定性や製造コストを改良し、医薬品として最適化を図った20個のアミノ酸からなる機能性ペプチドであります。血管新生や肉芽形成促進を主たる作用とし、抗菌活性を併せ持っております。

皮膚潰瘍は、皮膚のバリア機能が欠損した状態にあり、創面には様々な細菌が付着しております。細菌増殖により感染状態になると創傷治癒が遅延し、更に敗血症により重篤な状態が生じる可能性があるため、細菌、感染のコントロールは重要であります。創傷治癒促進作用を持つ既存薬には抗菌活性はなく、SR-0379独自の強みであります。

 

<SR-0379の作用メカニズム>

 

 

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SR-0379は、天然に存在する抗菌ペプチドと類似の構造的特徴を持つことから、抗菌ペプチドと同様の作用メカニズムで抗菌活性を示します。

皮膚や免疫細胞には「抗菌ペプチド」と呼ばれる20~40個程度のアミノ酸から構成される一群のペプチドが存在し、免疫防御機能の一翼を担っております。「抗菌ペプチド」は、プラスに荷電している親水性(*)のアミノ酸と疎水性(*)のアミノ酸が偏在するという構造的特徴により、細菌や真菌の細胞膜を破壊して抗菌作用を示します。SR-0379は、天然に存在する「抗菌ペプチド」と類似の構造的特徴を持つことから、同様の作用メカニズムで抗菌活性を示します。

 

<抗菌ペプチドの抗菌作用メカニズム>

 

 

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SR-0379は、下記の表の通り、抗菌力を示す指標として最小発育阻止濃度MIC(Minimum Inhibitory Concentration)を用いた試験により細菌や真菌に対する抗菌活性が確認されております。MICとは、抗生物質の抗菌力を表す際に用いられる単位であり、薬剤により細菌や真菌が発育しない薬剤の最小濃度です。

 

<SR-0379の抗菌活性>

 

 

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◇ 対象疾患

SR-0379の対象疾患は、皮膚潰瘍であります。皮膚潰瘍は、皮膚の組織が一定程度欠損した状態であります。

このような皮膚潰瘍の治療は、創傷治癒メカニズムを働かせることが重要であります。SR-0379は、「創傷治癒を遅延させる要因」である感染を防御及び予防する機能を備えた上で、「創傷治癒を促進する要因」の血管新生作用や肉芽形成促進作用等により創傷治癒を促進します。

皮膚潰瘍の患部に消毒剤を用いる場合には、その組織障害性から創傷治癒を遅延させることが懸念されますが、SR-0379にはその懸念がなく、抗菌作用により本来皮膚の持つ感染防御機能を補いながら、創傷治癒を促進させる新しいタイプの皮膚潰瘍治療剤として期待されます。

皮膚潰瘍には、寝たきりの高齢者に発生することが多い「褥瘡(じょくそう(いわゆる「床ずれ」))」、高齢者での有病率が高い糖尿病の合併症である「糖尿病性潰瘍」や主に静脈うっ血を原因とする「下腿潰瘍」等があり、高齢化社会を迎え皮膚潰瘍治療の重要性が増しております。

皮膚潰瘍の患者数は多く、糖尿病性潰瘍患者は、糖尿病患者5,790万人(日本723万人、米国3,018万人、欧州主要5ヶ国2,048万人(出所:IDF「Diabetes Atlas 2017」)の5~10%程度(当社推定)が見込まれます。また、褥瘡患者数は米国で50万人(出所:Russo et al.(2008)(*))、下腿潰瘍患者数は米国で60万人(出所:Bowman et al.(1999)(*))との報告があります。

SR-0379は、今後拡大が見込まれる在宅医療でも取り扱いやすい簡便な投与方法(常温保存可能なスプレー剤)であり、幅広い患者様のQOLに貢献できる薬剤として開発を進めております。

 

◇ 開発状況

SR-0379は、日米欧等での世界展開を視野に入れ、日本での開発を先行して実施しております。

SR-0379の臨床試験は、日本において、医師主導治験として、2014年10月から健常人を対象とする第Ⅰ相臨床試験、2015年10月から難治性皮膚潰瘍患者(糖尿病性潰瘍、下腿潰瘍)を対象とする第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験、2017年9月から希少疾病であるWerner症候群の皮膚潰瘍患者を対象とする第Ⅱ相臨床試験が行われました。

更に、2018年7月からは、提携先の塩野義製薬株式会社が日本で皮膚潰瘍患者(褥瘡、糖尿病性潰瘍)を対象とする第Ⅱ相臨床試験を実施いたしました。この第Ⅱ相臨床試験結果は、下記のとおりであります。

 

 

[ 第Ⅱ相臨床試験の結果 ]

皮膚潰瘍患者(褥瘡、糖尿病性潰瘍)を対象とする第Ⅱ相臨床試験(プラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験(*))の有効性に関しては、主要評価項目(*)の「潰瘍面積の縮小率」においては統計学的有意差を示さなかったものの、重症度の高い患者(潰瘍面積4平方センチメートル以上)のサブグループにおいて、SR-0379の0.1%群はプラセボ群に対し、副次評価項目(*)の「DESIGN-R®」合計スコア(*)を統計学的有意に改善しました。また、安全性に関しては、治験薬と因果関係がある有害事象はありませんでした。

重症の褥瘡等の創傷は、壊死組織の除去等により感染をコントロールしながら、皮膚の再生組織である良性肉芽を形成して創底状態を整備し、更に皮膚の表面を覆う表皮の形成を促進させて治療いたします。「DESIGN-R®」合計スコアは、そのような創傷の治癒プロセスを多角的に評価する有効性評価指標であり、実臨床で広く使用されております。重みづけした6項目(「滲出液」「大きさ」「炎症/感染」「肉芽組織」「壊死組織」「ポケット」)の合計数値によって算定され、スコアが高いほど重症と判断いたします。

厚生労働省「難治性創傷治療機器の臨床評価に関する評価指標」(次世代医療機器評価指標の公表について(薬生機審発0925第1号))にて、創傷治療は、①保存療法(外用剤及び創傷被覆材)によって完全治癒を目的とすること(比較的小さな創傷が該当します)、②創部環境好転を目的とすることに大別され、各臨床的位置付けを踏まえて評価項目を選択することが望ましいことが提唱されました。本第Ⅱ相臨床試験の結果から、SR-0379は、①の潰瘍面積を縮小させて完全治癒を目指す目的で使用するのではなく、②の皮膚潰瘍に対して良性肉芽形成を促進して創底状態を整備するための薬剤として適していることが示唆されました。この結果を踏まえ、下記の第Ⅲ相臨床試験を実施しております。

 

<有効性評価指標「DESIGN-R®」合計スコアの推移>

 

 

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[ 第Ⅲ相臨床試験の概要 ]

第Ⅲ相臨床試験(プラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験)では、皮膚潰瘍患者(褥瘡、糖尿病性潰瘍及び下腿潰瘍等)を対象にSR-0379の有効性及び安全性を検証します。

植皮等の簡単な外科的措置が必要な皮膚潰瘍は、皮膚が深く欠損した状態にあり、感染をコントロールしながら、皮膚の再生組織である良性肉芽の形成を促進して創底の状態を改善し、植皮等が生着可能な状態まで皮膚潰瘍を早期に改善させることが重要であります。

本試験では、「簡単な外科的措置に至るまでの日数」を主要評価項目として設定し、SR-0379の投与により植皮等が生着可能な創底状態に皮膚潰瘍が改善するまでの期間が短縮することを確認します。

現在、塩野義製薬株式会社と当社は共同開発体制により第Ⅲ相臨床試験を進めております。

 

<皮膚潰瘍治療における植皮術>

 

 

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(写真提供)

埼玉医科大学形成外科市岡滋教授

 

 

 

◇ 提携状況

当社は、2015年10月に、塩野義製薬株式会社との間でSR-0379のライセンス契約を締結しております。

日本での塩野義製薬株式会社との共同開発において、当社は第Ⅲ相臨床試験及び薬事承認申請を担当し、同社は治験薬製造(CMC)を担当する予定です。製品上市後については、同社が販売を担当し、当社が製品供給する予定であります。

この契約に基づき、当社は、契約一時金、開発マイルストーン、製品上市後には販売額に応じたロイヤリティー及び販売マイルストーン、製品供給に関する収入を受取ります(契約一時金と一部の開発マイルストーンは既に受取り事業収益に計上いたしました)。

 

◇ 技術導入状況

当社は、2015年3月に、アンジェスMG株式会社(現アンジェス株式会社)との間で現物出資契約を締結し、同社よりSR-0379の知的財産権を取得しております。

 

 

② 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防ワクチン

当社は、大阪大学との連携のもと、抗体誘導ペプチドの技術基盤を活用し、新型コロナペプチドワクチンの研究開発を行っております。

既存のワクチン(mRNAワクチン及びウイルスベクターワクチン)と異なり、ペプチドワクチンは、一般的に重要な機能を持った短い配列(エピトープ)のみで免疫を誘導することが特徴であり、副反応が少ないワクチンになること、誘導される中和抗体のターゲット部位の特異性が高く変異が入りにくい部位をターゲットとすることで様々な変異株に対応可能なワクチンになることが期待されます。

当社は、2020年4月から、大阪大学及びアンジェス株式会社との間で、当社のペプチドワクチン技術を活用した次世代ワクチンの共同研究を実施しております。

 

 

 

(4)ビジネスモデル

当社の事業系統図は、以下のとおりであります。

 

<当社の事業系統図>

 

 

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(注)1.研究開発・販売権等のライセンス契約を締結する前に、その契約締結に対するオプションを付与するオプション契約を締結する場合もあります。

2.株式会社メディパルホールディングスとの提携契約に基づき、抗体誘導ペプチドプロジェクトから創出した医薬品候補を製薬会社に導出した際には、当社は同社に対し「利益分配金」として、製薬会社から受け取る契約一時金及び開発マイルストーンの一部を支払う予定であります。

 

 

当社は医薬品及び化粧品分野等において事業展開しておりますが、ビジネスモデルの特徴については、現時点での事業計画に対して影響が大きい医薬品分野での事業展開を中心に記載しております。

 

 

① 大学発ベンチャーの役割

当社は、大阪大学発の創薬系バイオベンチャー企業であり、大学の研究成果を製薬会社への橋渡しに向けてインキュベート(研究開発を推進)する役割を担っております。この役割を担うため、当社は、大阪大学を始めとする大学等の研究機関との間で、共同研究等により連携を図り、大学の技術シーズを生かした基礎研究を実施しております。更に、当社は、開発品の開発規模(試験規模及び必要資金規模)を踏まえ、医薬品の研究開発プロセスのうち、基礎研究から一定段階の臨床試験や薬事承認までを実施して開発品の価値向上を図り、技術シーズのインキュベーションを行う方針であります。

 

<一般的な医薬品の研究開発プロセスの内容>

 

プロセス

期間

主な内容

基礎研究

2~3年

新薬候補化合物の探索(合成及び絞込み等)研究

前臨床試験

3~5年

実験動物等を用いて有効性及び安全性等を確認する試験

臨床試験

3~7年

第Ⅰ相

少数の健康な人を対象に安全性等を確認する試験

第Ⅱ相

少数の患者を対象に有効性及び安全性を探索的に確認する試験

第Ⅲ相

多数の患者を対象に有効性と安全性を検証的に確認する試験

申請・承認

1~2年

各国の規制当局による審査

 

(注)臨床試験開始前に実施する非臨床試験を前臨床試験といいます。

 

② 製薬会社との提携体制

医薬品の研究開発は期間が長く必要資金も大きいのが特徴であります。このため、当社は、研究開発の早期段階から製薬会社等との提携体制を構築し、その提携収入等により、研究開発遂行上の財務リスクの低減を図っていく方針であります。

一般的な提携形態としては、基礎研究段階では共同研究契約等、前臨床試験や臨床試験段階ではライセンス契約を締結して、製薬会社と当社の間で研究開発段階や商業化段階の役割分担と経済条件を決めます。また、ライセンス契約に先行して、その契約締結に対するオプションを供与するオプション契約を締結する場合もあります。当社の場合は、機能性ペプチドSR-0379は塩野義製薬株式会社との間でライセンス契約、抗体誘導ペプチドFPP003は大日本住友製薬株式会社との間でオプション契約を締結しており、抗体誘導ペプチドの研究開発に関しては、株式会社メディパルホールディングスとの間で研究開発支援契約、大日本住友製薬株式会社との間で精神神経領域の抗体誘導ペプチドの研究契約、塩野義製薬株式会社との間で疼痛領域の抗体誘導ペプチドの共同研究契約を締結しております。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防ワクチンに関しては、アンジェス株式会社との間で共同研究を実施しております。

これらの提携体制のもと、当社の主な事業収益は、提携製薬会社等からの収入であり、医薬品の研究開発段階においては、契約一時金、研究開発協力金及び開発マイルストーン、販売段階においては、ロイヤリティー及び販売マイルストーン等を想定しております。当社は、現時点で事業収益に計上しているのは研究開発段階の収入のみであり、これらの収入により研究開発投資による財務リスク低減を図りながら研究開発を進めております。そして、当社開発品が将来上市に至った場合に提携製薬会社から受け取るロイヤリティー収入等によって本格的な利益拡大を実現する計画であります。

 

<医薬品の開発プロセスと提携会社から受け取る一般的な収入>

 

 

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<主な収入の内容>

 

収入名

内容

契約一時金

契約締結時に一時金として受け取る収入

開発マイルストーン

研究開発の進捗に応じて、事前に設定したイベントを達成した際に受け取る収入

研究開発協力金

研究開発を推進するために提携会社から受け取る収入

ロイヤリティー

医薬品販売後に、年間販売額に応じて受け取る収入

販売マイルストーン

医薬品販売後に、事前に設定した年間販売額を達成した際に受け取る収入

製品供給収入

製品供給の対価として得られる収入

 

 

③ 業務受託会社の活用

当社は、研究開発に従事する中で、当社が研究開発戦略を描いたうえで、製造及び研究開発に関する業務を積極的に外部委託しております。これらの業務委受託契約は、契約金額が大きく、かつ、単一の契約に支払条件や費用の発生パターンの異なる活動が数多く含まれるため契約内容が複雑になりますが、当該委託により、当社は、少人数制による低い固定費で研究開発を推進することができ、財務リスクの低減を図っております。

 

 

<用語解説> (50音順、アルファベット順)

 

用語

意味・内容

アジュバント

主剤の免疫反応を増強する物質のことです。ワクチン製剤に含まれます。

アナフィラキシー
 

アレルギーの原因物質が体内に入ることにより複数の臓器や全身に表れるアレルギー症状のことで、生命に危険が生じうる過敏な反応のことです。

インスリン

膵臓から分泌されるペプチドホルモンのことです。血糖値を下げる働きをします。

家族性大腸腺腫症
 
 
 
 
 

大腸に多数(100個以上)の腺腫(ポリープ)が発生する遺伝性疾患です。放置すれば、40歳代で約50%、60歳頃にはほぼ100%の患者で大腸癌が発生します。

大腸癌発生予防を目的として外科的大腸切除が行われていますが、下痢や軟便、脱水、腸閉塞等の後遺症によるQOL(生活の質)低下が問題になっています。大腸切除以外の治療法として、薬物療法や内視鏡的ポリープ切除の臨床試験が行われていますが、現時点では実臨床での治療法として確立しておらず、家族性大腸腺腫症に対する新規治療法が切望されています。

サイトカイン

細胞から分泌され、細胞間相互作用に影響を与えるタンパク質のことです。

主要評価項目
 

臨床試験を実施するにあたり、主要な目的を評価するのに適した評価項目として設定されるものです。

親水性

水に溶けやすいことです。

疎水性

水に溶けにくいことです。

肉芽

皮膚潰瘍が治癒する過程で形成される、赤く柔らかい粒状の結合組織のことです。

副次評価項目

 

臨床試験を実施するにあたり、主要評価項目以外の有効性を評価するための項目で、主要評価項目とは異なる視点から有効性を評価する項目や主要評価項目を支持する補足的な項目です。

服薬アドヒアランス
 

医師との連携のもとで患者が治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けることです。

プラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験
 
 
 
 
 
 

「プラセボ」とは、偽薬のことです。臨床試験では、患者様が薬を使っていると思うことで症状が改善する「プラセボ効果」が生じることが指摘されています。この影響をコントロールし、開発化合物の薬理効果のみを評価するため、臨床試験では、「プラセボ」を投与した被験者群(プラセボ群)と、開発化合物を投与した被験者群(実薬群)の有効性等を比較する「プラセボ対照二重盲検」試験が行われています。

また、薬の効果は、投薬開始前の患者様の状態(病気の重症度等)により影響を受ける可能性があります。したがって、臨床試験では、プラセボ群と実薬群の間で、被験者をランダムに登録し、群間において患者様の状態のバラツキを少なくする「ランダム化(無作為化)」試験が行われています。

 

 

 

用語

意味・内容

免疫寛容
 
 

特定の抗原に対する特異的な免疫反応の欠如あるいは抑制状態のことをいいます。

免疫系は、自己抗原(自己組織や自己タンパク質等)を認識しないようになっており、これを自己免疫寛容といいます。

「DESIGN-R®」合計スコア
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「DESIGN-R®」は、2008年に日本褥瘡学会が公表した褥瘡状態評価スケールであり、[深さ(Depth)]、[滲出液(Exudate)]、[大きさ(Size)]、[炎症/感染(Inflammation/Infection)]、[肉芽組織(Granulation)]、[壊死組織(Necrotic tissue)]、[ポケット(Pocket)]の7項目で評価されます。

DESIGN-R®合計スコアよる重症度判定は、重みづけした6項目(深さ(Depth)を除く)の合計スコアによって行われ、スコアが高いほど重症と判断します。

 

・DESIGN-R®合計スコア評価表(褥瘡経過評価用)

http://www.jspu.org/jpn/info/pdf/design-r.pdf

 

DESIGN-R®スコア合計スコアの改善は、「1週間で1ポイント改善することにより、30日以内の褥瘡治癒確率は、浅い褥瘡で21%、深い潰瘍で23%上昇する」(Iizaka et al.(2012)(*))と考えられ、臨床的意義が高いと考えられます。

 

 

 

<参考文献> (50音順、アルファベット順)

 

松原 篤,他:鼻アレルギーの全国疫学調査2019(1998年,2008年との比較):速報─耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として,日本耳鼻咽喉科学会,2020;123:485-490

 

Bowman PH, Hogan DJ. Leg ulcers: a common problem with sometimes uncommon etiologies. Geriatrics. 1999;54:43,47-8.50 passim.

 

Iizaka S, Sanada H et al. Predictive validity of weekly monitoring of wound status using DESIGN-R score change for pressure ulcer healing: a multicenter prospective cohort study. Wound Repair Regen. 2012 Jul-Aug;20(4):473-81.

 

Jackevicius CA, Mamdani M, Tu JV. Adherence with statin therapy in elderly patients with and without acute coronary syndromes. JAMA 2002;288:462–7.

 

Russo A, Steiner C, Spector W. Hospitalizations Related to Pressure Ulcers among Adults 18 years and older, 2006. Healthcare Cost and Utilization Project (HCUP) Statistical Briefs [Internet]. Rockville (MD): Agency for Healthcare Research and Quality (US); 2006-.2008 Dec.

 

The American Academy of Dermatology website.

“Psoriasis.”  https://www.aad.org/media/stats/conditions/psoriasis (Accessed August 2017)

 

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