3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当社は2021年4月1日付で単独株式移転により設立され、当連結会計年度より第1期としてはじめて連結財務諸表を作成しておりますが、従前の沢井製薬の連結グループの範囲に実質的な変更がないことから、本項では沢井製薬の2021年3月期(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)及び同連結会計年度末(2021年3月31日)を比較情報として用いております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当社グループでは、資本市場における財務情報の国際的な比較可能性を向上させることを目的として、設立第1期よりIFRSを適用しております。同基準に基づいた当連結会計年度の業績につきましては、売上収益193,816百万円(前期比3.5%増)、営業損失35,888百万円(前期は18,888百万円の営業利益)、税引前当期損失36,214百万円(前期は18,460百万円の税引前当期利益)、親会社の所有者に帰属する当期損失28,269百万円(前期は12,340百万円の親会社の所有者に帰属する当期利益)となりました。なお、当社は、IFRSの適用に当たり、会社の経常的な収益性を示す利益指標として、「コア営業利益」を導入し、経営成績を判断する際の参考指標と位置づけることとしております。「コア営業利益」は、営業利益から当社グループが定める非経常的な要因による損益を除外しております。同基準に基づいた当連結会計年度の「コア営業利益」は、26,321百万円(前期比22.7%減)となりました。
当社グループは、持株会社体制の下、2021年5月に長期ビジョン「Sawai Group Vision 2030」と2024年3月期を最終年度とする中期経営計画「START 2024(以下「中計」という。)」を発表しました。長期ビジョン「Sawai Group Vision 2030」では、2030年度に目標とする企業イメージを(創りたい世界像)「より多くの人々が身近にヘルスケアサービスを受けられ、社会の中で安心して活き活きと暮らせる世界」、(ありたい姿)「個々のニーズに応じた、科学的根拠に基づく製品・サービスを複合的に提供することで、人々の健康に貢献し続ける存在感のある会社」と掲げると共に、「国内ジェネリック医薬品市場におけるシェア拡大」「米国事業における将来の成長に向けた事業投資」「新たな成長分野の開拓」を3つの柱としています。また、中計においては、ジェネリック医薬品事業では新製品の売上増加、安定供給力の強化、新規事業への進出に向けては、デジタル・医療機器事業、オーファン医薬品事業(ALS等)、健康食品事業の3領域に重点的にリソースを投入することとしております。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
(日本セグメント)
日本セグメントにおいては、2017年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2017~人材への投資を通じた生産性向上~」(骨太方針2017)において、「2020年9月までに、後発医薬品の使用割合を80%とし、できる限り早期に達成できるよう、さらなる使用促進を検討する」とされていました。その後、2019年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2019~『令和』新時代:『Society5.0』への挑戦~」(骨太方針2019)では、「後発医薬品の使用促進について、安定供給や品質のさらなる信頼性確保を図りつつ、2020年9月までの後発医薬品使用割合80%の実現に向け、インセンティブ強化も含めて引き続き取り組む」とされました。そして、2020年4月の診療報酬改定では、ジェネリック医薬品のさらなる使用促進を図る観点から、ジェネリック医薬品の調剤割合が高い薬局や使用割合が高い医療機関に重点を置いた評価や、ジェネリック医薬品普及上のポイントとなる一般名での処方を推進するために、一般名処方加算の評価の見直しが行われました。さらに、ジェネリック医薬品の数量目標に関しては、2021年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太方針)では、「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性の確保を柱とし、官民一体で、製造管理体制強化や製造所への監督の厳格化、市場流通品の品質確認検査などの取組を進めるとともに、後発医薬品の数量シェアを、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上とする」とされています。これらにより、2021年9月の政府の薬価調査でジェネリック医薬品使用割合は速報値で79.0%となっています。
その一方で、2018年4月に通常の薬価改定、2019年10月には消費税率の引上げに伴う臨時の薬価改定、2020年4月に通常の薬価改定、2021年4月には初めてとなる中間年の薬価改定、そして、2022年4月の通常の薬価改定(3月に告示)と、毎年薬価改定が行われる状況となっており、当社グループを取り巻く収益環境は一層厳しいものとなっております。
このような中で、2020年末の準大手ジェネリック医薬品企業の製造する医薬品での健康被害の発生や、その後の大手ジェネリック医薬品企業をはじめとした複数のジェネリック医薬品企業の薬機法違反を起因として、ジェネリック医薬品全体で供給不安が発生しております。このため、2021年9月に厚生労働省から発表された「医薬品産業ビジョン2021」には「製造所の実態を把握し、適切なGQPで製品が製造されているかを管理監督できるもののみが製造販売業者となるべきである」「医療現場に継続して安定的に供給することの重要性を再認識すべきである」と明記される等、品質や供給体制がジェネリック医薬品産業・企業の優先課題として認識されております。
このような環境におきまして、中計の下、ジェネリック医薬品業界のリーディング・カンパニーとして、業界全体への信頼回復と「国内ジェネリック医薬品市場におけるシェア拡大」に向け「品質管理の一層の強化」とともに、「新製品の売上増加」、「安定供給力の強化」に取り組んでおります。
品質管理面においては、ジェネリック医薬品業界において重大な不祥事が発生していることから、中核会社の沢井製薬を中心に、製造管理・品質管理基準(GMP)を遵守した原薬の品質の確保、製造工場でのGMP遵守の恒常的確認による品質管理体制、国際基準であるPIC/S-GMPに基づく製造管理・品質管理を行う等の取組により、品質に係るリスクを最小限に抑えています。また、2021年6月には医療関係者の皆様が安心してご使用いただけるよう、沢井製薬の製剤製造企業に関する情報と原薬製造所の監査に関する情報を公開し、「沢井製薬の品質に対する取組紹介動画」を公開しました。
生産・供給体制面においては、ジェネリック医薬品の需要拡大とひっ迫する需給状況の中、さらなる高効率・低コストを追求しており、沢井製薬の全国6工場それぞれの特徴を活かした生産効率のアップに取り組んでおります。それに加えて、2021年10月には第二九州工場の敷地内に最終的に30億錠の生産能力となる新たな固形剤棟の建設を決定しました。さらに、12月には小林化工株式会社(以下「小林化工」という)との間で、生産活動に係る資産及び関連部門人員を当社グループが譲り受けることで合意し、譲渡契約を締結しました。小林化工が所有していた資産については、新たに設立したトラストファーマテック株式会社への譲受が2022年3月に完了しました。今後、自社生産能力年間200億錠以上の早期確立へ向け、転籍する人材を活用しつつ取り組んでまいります。なお、当該譲受により取得した純資産の公正価値と取得対価の差額8,704百万円を負ののれん発生益として認識しております。また、2021年11月には東日本第2物流センター、2022年2月には西日本第2物流センターを開設・稼働し、物流面での供給体制も強化しました。
製品開発・販売面においては、沢井製薬が2021年6月に『エスゾピクロン錠』を含む8成分23品目を発売し、12月に『レベチラセタム錠』を含む5成分9品目が新たに薬価収載されました。
また、沢井製薬において、「お薬を服用する時により飲み心地がいいと感じられるような技術、お薬をより効率的に製造できる技術など、お薬に付加価値をプラスし、製剤上のハーモニーを生み出す技術」の中から6つを選択し、3つの技術カテゴリに分け、それらのオリジナル製剤化技術を総称して「SAWAI HARMOTECH®」と名付け、2022年2月に公開しました。
さらに新たな取組として、オンライン診療の認知の急速な拡大、普及とともに重要となってくるPHR(パーソナルヘルスレコード)事業に関しまして、2021年5月に株式会社インテグリティ・ヘルスケアと協業を開始しました。その後、10月にはインテグリティ・ヘルスケア社が提供しているPHR管理システム「Smart One Health」を、沢井製薬ブランドのパーソナルヘルスレコード(PHR)管理アプリ「SaluDi(サルディ)」として、リリースしました。また、生活習慣病を中心とする慢性疾患の予防から治療にPHRデータの管理・共有を通して貢献するサービスとして、医療機関だけでなく、企業や健康保険組合、自治体に対して、様々なソリューションを展開していく予定です。
新型コロナウイルス感染症への対策については、災害BCPとして2020年2月に危機管理本部を立ち上げ、社内においてはオフィスの換気・除菌の強化を図り、従業員の手指消毒・手洗い・マスク着用・検温の励行を徹底し感染予防を行ってまいりました。上記に加えて、会議の原則WEB化、長距離出張の抑制など社内ルールの見直しを行うとともに、フレックスタイム制・時差出勤・在宅勤務等への勤務体系変更も柔軟に対応しながら、国内の各工場を継続して稼働し、安定供給の確保に努めました。社外においても、政府による緊急事態宣言下では、医薬情報担当者(MR)の医療機関等への訪問自粛を行い、WEB等を活用した業務にシフトする等の対応を行いました。今後、本感染症の影響が長引けば、原材料の輸入や物流の停滞による医薬品供給面への影響、コロナ禍での患者さんの受診抑制による需要面への影響、及び医薬品の情報提供活動の制限等の影響も予想されます。当社グループは、医薬品製造販売業を中核事業としていることから、ワクチン接種率が上昇していく中であっても、引き続き感染予防・対策を徹底し、国民の生命、健康の保持に必要不可欠な医薬品の安定供給体制の維持に努めてまいります。
この結果、日本セグメントにおける売上収益は163,841百万円(前期比6.7%増)、セグメント利益は32,361百万円(前期比23.1%増)、コア営業利益(参考値)は27,016百万円(前期比10.7%減)となりました。
(米国セグメント)
米国セグメントにおいては、2017年5月にUSLを買収し米国市場進出を果たしており、中計では、「既存のブランド薬及びジェネリック医薬品の販売推進による売上への寄与」「ニッチなジェネリック医薬品を中心にさらなる製品ラインナップの充実」「沢井製薬との協働による難易度の高いパイプラインと製品ラインナップの強化」を成長ドライバーとして「米国事業における将来の成長に向けた事業投資」を行うこととし、USLの持分20%を所持している住友商事株式会社の米国子会社Sumitomo Corporation of Americasとともに取り組んでまいります。
米国におけるジェネリック医薬品業界は、卸・薬局等の統合により3大購買グループのシェアが約90%を占めていること、米国食品医薬品局(FDA)による医薬品簡略承認申請(ANDA)承認件数が高い水準を記録したこと等により、下落基調となっております。USLにおきましては、ジェネリック主力品への競合他社の参入が続いたことに加え、主力ブランド品であるQudexy®へもジェネリックの参入があり、依然として経営環境は厳しいものとなっております。
このような環境におきまして、上市製品の拡充に取り組み、ジェネリック医薬品としては、2021年5月に『モキシフロキサシン点眼液』、6月に『イソトレチノインカプセル』、8月に『カルバマゼピン徐放錠』を発売しました。
また、同年4月に既存のコロラド州のデンバー工場につきセール・アンド・リースバック取引を行い、当該工場の製品をUSL本社敷地内に建設中の新工場に今後集約することで、品質と効率のさらなる向上に努めてまいります。
新型コロナウイルス感染症への対策については、2020年3月初めには部門横断の対策チーム(COVID-19 Response Team)を立ち上げ、幅広く情報収集し対策を行ってまいりました。製造部門や研究開発部門などオンサイトでの業務が不可欠な従業員を除きテレワークへと移行し、従業員の感染防止対策を施すとともに、ITを活用した営業活動に切り替えました。一方、米国ではワクチンの接種が順調に伸長し、経済活動が正常化しつつあります。本感染症により、患者さんの受診控え、営業活動の制限などによる影響もみられましたが、USLとしましては、引き続き感染予防・対策を徹底し、ヒトの生命、健康の保持に必要不可欠な医薬品の安定供給体制の維持に努めてまいります。
また、USL取得に際して調査・訴訟の解決時に補填される寄託口座を契約相手と設定しておりましたが、当連結会計年度に契約相手との合意に基づきリリースしたことにより、精算益が4,122百万円発生しました。
この結果、米国セグメントにおける売上収益は29,975百万円(前期比10.9%減)となりましたが、USLの持続的成長のあり方を検討し、事業再構築に着手することに伴い米国セグメントの将来計画を見直した結果、のれんをはじめとした米国セグメントの資産について減損損失68,770百万円を認識することとなり、セグメント損失は68,249百万円(前期比822.8%減)となりました。コア営業損失(参考値)は708百万円(前期は3,765百万円のコア営業利益)となりました。
当連結会計年度末における財政状態は、次のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は202,123百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,551百万円減少いたしました。これは主に、主原料の増加等により棚卸資産が6,733百万円増加した一方、現金及び現金同等物が6,552百万円減少、また暦の影響及び極度額の増加による債権流動化の取組額の増加に伴い売上債権及びその他の債権が5,048百万円減少したためです。非流動資産は147,379百万円となり、前連結会計年度末に比べ40,288百万円減少いたしました。これは主に、日本セグメントで小林化工の生産設備の譲受により有形固定資産が22,367百万円増加した一方、米国セグメントでのれんを含む固定資産を減損したことにより有形固定資産、無形資産及びのれんが68,770百万円減少したためであります。
この結果、資産合計は349,502百万円となり、前連結会計年度末に比べ43,839百万円減少いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は88,840百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,388百万円増加いたしました。これは主に、その他の金融負債が支払期日を迎えたこと等により2,024百万円減少した一方、2022年6月に償還予定の社債を流動負債に振替えたこと等により社債及び借入金が9,282百万円増加したためです。非流動負債は60,579百万円となり、前連結会計年度末に比べ11,560百万円減少いたしました。これは主に前述のとおり、社債を流動負債に振替えたこと等により社債及び借入金が13,108百万円減少したためです。
この結果、負債合計は、149,419百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,172百万円減少いたしました。
(資本)
当連結会計年度末における資本合計は200,083百万円となり、前連結会計年度末に比べ40,667百万円減少いたしました。これは主に、当期損失の計上、剰余金の配当及び為替レートの変動によるものであります。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は54.4%(前連結会計年度末は55.5%)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は47,717百万円となり、前連結会計年度末に比べて6,552百万円減少いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期損失36,214百万円、減価償却費及び償却費17,045百万円、減損損失71,003百万円、負ののれん発生益8,704百万円、売上債権及びその他債権の減少6,711百万円、棚卸資産の増加5,625百万円、法人所得税等の支払額6,010百万円を主因として34,310百万円の収入(前期比2,453百万円の収入増)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出14,513百万円、有形固定資産の売却による収入3,122百万円、無形資産の取得による支出8,831百万円、事業譲受による支出10,114百万円を主因として30,395百万円の支出(前期比8,601百万円の支出増)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額5,693百万円、長期借入金の返済による支出3,834百万円を主因として11,262百万円の支出(前期比729百万円の支出減)となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記金額は、売価換算額で表示しております。
当社グループは見込み生産が主で受注生産は僅少であるため記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
a.概要
当社グループは、主としてジェネリック医薬品の研究開発、製造及び販売を日本及び米国で行っております。「なによりも健やかな暮らしのために」の企業理念の下で、ジェネリック医薬品事業では、いち早く新しいジェネリック医薬品を開発・上市するとともに、品質・安定供給・情報提供においてトップレベルの水準を維持し続けることにより、ブランド価値を比類のないものに高め競争に打ち勝つこと、米国事業では、既存のブランド薬及びジェネリック医薬品の販売推進による売上への寄与に努め、持続的な成長を通じて企業価値向上を図りました。
当社グループは、循環器官用薬、中枢神経系用薬、消化器官用薬など、さまざまな薬効の約900品目を提供しております。当社グループは、当連結会計年度末現在で9つの製造拠点を有し、そのうち7つは日本、2つは米国に所在しております。生産能力は当連結会計年度末で190億錠超(錠換算)となっております。
b.経営成績の分析
当連結会計年度の業績を前連結会計年度と比較した表は、次のとおりです。
売上収益は前連結会計年度より6,597百万円(3.5%)増加し、193,816百万円となりました。事業セグメント及び薬効別で売上収益を分解した表は、次のとおりであります。
日本セグメントでは、10,257百万円(6.7%)増加し、163,841百万円となりました。2021年4月の薬価改定が売上収益に全般的なマイナスの影響を及ぼしております。また、他社の供給停止等による需要増加はあったものの、安定供給の見地から限定出荷せざるを得ない品目が発生し、下半期の伸びは鈍化しました。薬効別では、中枢神経系用薬で前期に発売したプレガバリンの通期寄与や当期新製品(エスゾピクロン等)の発売、血液・体液用薬でイコサペント酸エチルをはじめとした需要増加、その他の代謝性医薬品で前期に発売したバゼドキシフェンの通期寄与により、売上収益が増加しました。米国セグメントでは、3,660百万円(10.9%)減少し、29,975百万円となりました。競合他社の参入により主要品目で売上収益が大きく減少しました。薬効別では、中枢神経系用薬でブランド薬のVigadrone®が増加した一方、Qudexy®をはじめとした主要品目で大きく減少しました。またその他では、2021年6月発売のイソトレチノインの売上収益が増加しました。
売上原価は前連結会計年度より12,379百万円(10.8%)増加し、127,164百万円となりました。売上総利益率は4.3%減の34.4%となりました。売上原価は、主に原材料費、人件費、減価償却費で構成されております。日本及び米国の両セグメントで売上総利益率は減少しておりますが、日本セグメントでは薬価改定による影響、米国セグメントでは利益率の高い主力品の売上減少に加え、資産の減損損失の一部が売上原価に計上された影響(下記参照)によるものであります。
販売費及び一般管理費は前連結会計年度より6,753百万円(16.9%)増加し、46,690百万円となりました。米国セグメントにおいて、前連結会計年度にTosymra ™ の製造販売関連ライセンスを5,572百万円減損し、当連結会計年度において償却負担が減少した一方、当連結会計年度に減損損失(下記参照)14,141百万円が発生したため、増加いたしました。
研究開発費は前連結会計年度より10,530百万円(75.8%)増加し、24,413百万円となりました。このうち、日本セグメントは4,413百万円、米国セグメントは6,117百万円それぞれ増加しております。日本セグメントの増加は開発コストの増加に加え、複数品目で開発を中止したことにより減損損失を認識したためであり、米国セグメントの増加は当連結会計年度に減損損失(下記参照)を認識したためであります。
当連結会計年度のその他の収益は15,181百万円となりました。日本セグメントにおいて、小林化工株式会社から生産設備等を譲り受けたことにより負ののれん発生益を8,704百万円認識、米国セグメントにおいて、デンバー工場のセール・アンド・リースバックによる利益1,905百万円及び寄託口座精算益4,122百万円をそれぞれ認識した影響によります。
当連結会計年度のその他の費用は46,618百万円となりました。これは、米国セグメントにおいて当連結会計年度に減損損失(下記参照)を認識したためであります。
以上より、営業損失は35,888百万円(前連結会計年度は18,888百万円の営業利益)となりました。
なお、各科目で記載した当連結会計年度における米国セグメントの減損損失の内容は、以下のとおりです。当該セグメントでは、2022年3月期に主要品目への競合他社の参入が続き、上市製品の拡充に取り組んだものの経営環境は厳しいものとなりました。そのため当社は、USLの持続的成長のあり方を検討し、この度事業再構築に着手することとしました。これに伴い米国セグメントの将来計画を見直した結果、のれんをはじめとした米国セグメントの資産について、回収可能価額が帳簿価額を下回ると判断し減損損失を認識しました。
詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 16.のれん及び無形資産 (3) 減損テスト」を合わせて参照ください。当連結会計年度における米国セグメントの減損損失は、連結純損益計算書の以下の科目に含まれております。
Ⅰ キャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、34,310百万円の収入となりました(前連結会計年度比2,453百万円の収入増)。当連結会計年度は36,214百万円の税引前当期損失となったものの、減損損失71,003百万円など現金支出を伴わない費用の増加による影響が大きく、営業活動によるキャッシュ・フローはプラスとなりました。また、製品及び商品は欠品にならない範囲でできる限り需要増加に対応し出荷しておりますが、原材料は安定供給に向けた生産用に購入しており、棚卸資産全体は増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、30,395百万円の支出となりました(前連結会計年度比8,601百万円の支出増)。増加の要因は、小林化工株式会社からの事業譲受による支出10,114百万円によるものであります。また、当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローのうち、有形固定資産の取得による支出は14,513百万円でありますが、これは主に、日本セグメントにおける沢井製薬九州工場注射剤棟新設によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、11,262百万円の支出となりました(前連結会計年度比729百万円の支出減)。長期借入金の返済支出が前連結会計年度より減少したこと等が影響しております。
Ⅱ 資金需要
当社グループにおける主な資金需要は、市場の環境変化に対応した安定供給及び生産効率の最適化を目的とした設備投資並びにニーズを捉えた高付加価値ジェネリック医薬品の実現を目的とした研究開発投資によるものであります。
Ⅲ 財務政策
当社グループでは、持続的な企業価値の向上とそれを通じた株主還元の向上を実現するために、資本効率を向上させつつ、財務の健全性・柔軟性も確保された、最適な資本構成を維持することを基本方針としております。設備投資及び研究開発投資による資金需要につきましても、営業活動によるキャッシュ・フローを継続的に確保していくとともに、市場の環境変化に対応した柔軟な財務政策を実現していくことで基本方針を実現していきます。
当連結会計年度においては、営業活動によるキャッシュ・フローが34,310百万円となり、当該資金をもとにUSL買収時の借入金の一部を返済しております。また、中期経営計画でも示しているとおり、成長に向けた投資を積極的かつ効果的に実施する予定であり、その内訳は、研究開発・製品等買収約750億円、設備投資約700億円、新規事業(投資枠)300億円となっております。このうち、設備投資については、将来の需要増に応じて生産キャパシティを拡大するべく、沢井製薬の第二九州工場新固形剤棟新設(ステップ1で総額約350億円)等を見込んでおります。設備投資計画の詳細については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」をご参照ください。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
④ 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大等に伴う当社グループの影響
2019年12月頃からCOVID-19に関連する病気が報告され、ウイルスはそれ以来、地域全体の日常生活と経済に広範囲にわたる重大な混乱を引き起こしました。 世界保健機関はこの発生をパンデミックに分類しました。
当社グループは、COVID-19がビジネス、業務、財政状態及び業績に及ぼす影響を継続して監視しており、事業計画や予算策定上、当面の患者さんの受診の傾向やワクチン接種を経たCOVID-19の収束後の世界経済の変化など、パンデミックに関して一定の仮定を行っております。
前連結会計年度において、COVID-19の流行に伴い患者さんが受診を控え一部製品の売上収益が減少したほか、Tosymra ™ の販売がCOVID-19の流行によるマイナス影響で伸び悩み、製造販売関連ライセンスの減損損失5,572百万円を認識するなど、当社グループの財政状態及び業績に一部影響が生じましたが、現時点では、以下のとおり当社グループに及ぼす影響は限定的であると判断しております。当社グループでは、製造、販売及び研究開発の各方面の関係者から常に情報収集し、慎重に事業計画や予算策定に反映しておりますが、将来の動向の不確実性のために、パンデミックが当社グループの事業、運営、財政状態及び結果に与える影響の範囲を正確に予測することはできません。当社グループは、引き続き関係者からの情報収集に努め、デジタル技術を使用して製造、販売及び研究開発に係る業務を支援する等、問題を軽減するための対策を実施しています。
a.危機管理体制について
日本セグメントでは、2020年2月に危機管理本部を立ち上げ、継続的に従業員の感染防止対策を徹底するとともに、一部従業員の在宅勤務等も実施しております。米国セグメントでは、同年3月初めに部門横断の対策チーム(COVID-19 Response Team)を立ち上げ、幅広く情報収集し対策を練りました。製造部門や研究開発部門などオンサイトでの業務が不可欠な従業員を除きテレワークを継続しており、従業員の感染防止対策を徹底し、従業員へのワクチン接種も進んできております。日米とも、医薬品製造販売業として、引き続き感染予防・対策を徹底し、国民の生命、健康の保持に必要不可欠な医薬品の安定供給体制の維持に努めてまいります。
b.販売活動への影響
日本セグメントでは、同年3月より医薬情報担当者(MR)の医療機関等への訪問を自粛し、医療機関への情報提供体制はITを活用しております。米国セグメントも同様に、IT を活用した営業活動に切り替えました。当社グループは医療用医薬品を販売しており、COVID-19に関係なく様々な適応症の患者さんに当社グループ製品を提供しており、現時点で当社グループに及ぼす影響は限定的であります。ただし、営業活動の変化が将来の新製品の販売開始に及ぼす影響を正確に予測することはできません。
c.製造及びサプライチェーンへの影響
日米両セグメントともに、患者さんへの当社グループ製品の安定供給という使命のもと、製造活動はCOVID-19前と変わらず継続されました。原材料の確保、卸売業者や販売会社等への供給についても、滞りなく進められております。そのため、現時点で当社グループに及ぼす影響は限定的であります。ただし、今後、本感染症の変異株の発生などで供給網に混乱が生じれば、原材料の確保等に影響が発生することも予想されます。
d.研究開発活動への影響
日米両セグメントともに、研究開発活動はCOVID-19前と変わらず継続されました。現時点で当社グループに及ぼす影響は限定的でありますが、今後政府による製造販売承認プロセスに及ぼす影響を正確に予測することはできません。
e.財務への影響
当社グループの売上債権等の回収及び資金調達はCOVID-19前と変わらず、当社グループは予測可能な将来にわたり流動性リスクは無いと考えております。
当社グループの連結財務諸表はIFRSに準拠しております。当連結財務諸表の作成にあたり、経営者は資産及び負債の金額、財務諸表の末日時点の偶発資産及び偶発負債の開示、並びに報告期間における収益及び費用の金額に重要な影響を及ぼす見積り及び仮定の設定を行うことが求められております。見積り及び仮定は継続的に見直されます。経営者は過去の経験及び見積り及び仮定が設定された時点において合理的であると判断されたその他の様々な要因に基づき、当該見積り及び仮定を設定しております。実際の結果はこれらの見積り及び仮定とは異なる場合があります。
経営者の見積り及び仮定に影響を受ける重要な会計方針は次のとおりです。また、見積り及び仮定の変更が連結財務諸表に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(収益認識)
当社グループの収益は主に医薬品販売に関連したものであり、製品に対する支配が顧客に移転した時点で認識されております。収益の認識額は、当社グループが製品と交換に受け取ると見込まれる対価に基づいております。収益からは、主要顧客である卸売業者及び販売会社に対するリベートやチャージバック等の様々な項目が控除されております。これらの控除額は関連する義務に対し見積られますが、報告期間における当該収益に係る控除額の見積りには判断が伴います。総売上高からこれらの控除額を調整して、純売上高が算定されます。
収益に係る調整のうち最も重要なものは、次のとおりであります。
・顧客に対するリベート: 当社グループは、マーケットシェアの維持と拡大を確実にするために、卸売業者、販売会社等の顧客に対してリベートを付与しております。リベートは契約上取決めがなされているため、係る負債は各取決めの内容、過去の実績に基づく予想割戻率及び予想される流通チャネル内の在庫量を基に算定しております。
・卸売業者に対するチャージバック: 当社グループは米国において、特定の製品について当社グループが卸売業者の顧客と合意した売買価格と当社グループが卸売業者に請求した金額との差額を補償するため、特定の卸売業者に対してチャージバックを支払います。チャージバックの見積りに係る負債は、過去の実績に加え、当社グループの製品が最終的にどの卸売業者の顧客に販売されるのかの見積りを基に算定しております。
・返品に関する負債: 返品権付き製品を顧客に販売する際は、当社グループの返品ポリシーや過去の返品実績に基づいた予想返品率を考慮して返品見込み額を測定し、負債として計上しております。
引当額は見積りに基づくため、実際の発生額を完全に反映していない場合があり、特に予想される流通チャネル内の在庫数量及び当社グループの製品が最終的にどの卸売業者の顧客に販売されるのかの見積りにより変動する可能性があります。
これまで実績又は見積りの見直しの反映による当初の見積りに対する調整額が、当社グループの業績に重要な影響を与えたことはありません。しかしながら、当社グループが見積りに際して使用した比率、要因、評価、経験もしくは判断が将来の事象の見積りにおける適切な予測値ではなかった場合、当社グループの業績に重要な影響を与える場合があります。見積りの感応度は、制度及び顧客の種類により左右される可能性があります。
(のれん及び無形資産の減損)
当社グループは、償却を開始している無形資産について、その資産の帳簿価額が回収不能であるかもしれないことを示す事象又は状況の変化がある場合、減損テストを行っております。のれん及び他の未償却の無形資産については、少なくとも年次で減損テストを実施しております。
資産は、通常、連結財政状態計算書上の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合に減損していると判断されます。回収可能価額は個別資産、又はその資産が他の資産と共同で資金を生成する場合はより大きな資金生成単位ごとに見積られます。資金生成単位は独立したキャッシュ・インフローを形成する最小の識別可能な資産グループであります。のれん及びUSL取得時に識別した商標権は、すべて資金生成単位の1つである米国セグメントに配分され、回収可能価額は米国セグメントで見積られます。製品に係る無形資産及び仕掛中の研究開発は、個別に回収可能価額を見積ります。
米国セグメントでは、2022年3月期に主要品目への競合他社の参入が続き、上市製品の拡充に取り組んだものの経営環境は厳しいものとなりました。そのため当社は、USLの持続的成長のあり方を検討し、この度事業再構築に着手することとしました。これに伴い米国セグメントの将来計画を見直した結果、のれんをはじめとした米国セグメントの資産について、回収可能価額が帳簿価額を下回ると判断しました。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 16.のれん及び無形資産」を参照ください。
回収可能価額の見積りには、以下を含む複数の仮定の設定が必要となります。
・予測最終成長率
・割引率
・将来キャッシュ・フローの金額及び時期
・競合他社の動向
・将来の税率
キャッシュ・フローが変動する可能性のある事象としては、資金生成単位である米国セグメントの業績悪化、研究開発プロジェクトの失敗又は上市後製品の価値の下落があげられます。研究開発プロジェクトの失敗には、開発の中止、オーソライズドジェネリックの販売見込みや競合他社の参入等による収益性の悪化が含まれます。
当社グループは、これらの仮定を慎重に検討し、米国セグメントののれん及び無形資産の減損損失は適切であると判断しております。
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