業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における総資産は前事業年度末より2,670,125千円増加し、4,718,649千円となりました。これは、現金及び預金が2,024,924千円、仕掛品が448,479千円、投資有価証券が304,538千円増加した一方で、原材料及び貯蔵品が108,024千円、無形固定資産が11,210千円減少したことが主な要因であります。

(負債)

 当事業年度末における負債は前事業年度末より178,778千円減少し、1,639,026千円となりました。これは、未払金が24,941千円、未払法人税等が21,403千円増加した一方で、長期借入金が160,008千円、未払費用が45,074千円、長期未払金が12,636千円減少したことが主な要因であります。

(純資産)

 当事業年度末における純資産は前事業年度末より2,848,904千円増加し、3,079,623千円となりました。これは、新規上場に伴う新株式発行により、資本金及び資本剰余金それぞれが1,798,600千円、ストック・オプションの行使により、資本金及び資本剰余金がそれぞれ9,711千円増加した一方で、当期純損失767,719千円を計上したことが主な要因であります。

 

② 経営成績の状況

 当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大を抑制するため、同感染症に対するワクチンの接種が進み、増加傾向にあった感染者数は一時的に減少したものの、新種の変異ウイルスによる感染者数の再拡大と減少のサイクルが継続しており、国内経済は依然として不透明な状況で推移いたしました。

 一方、欧米等の先進国においてもワクチンの接種は進むものの、新種の変異ウイルスの影響が拡大し、また一部の国では新規感染者数の高止まりの傾向が続くなど、世界経済の回復を鈍らせる要因となっております。加えて、ロシアによるウクライナへの侵攻により、一部の原材料や燃料価格が高騰するとともに、世界経済が抱える地政学的リスクを上昇させ、世界経済全体は一層不透明かつ緊迫した状況で推移いたしました。

 また、当社が属する医療用医薬品業界につきましても、膨張する社会保障費を背景に、薬価引き下げによる薬剤費抑制の方針が示されるなど、事業環境はより一層厳しい状況になることが予想されております。

 このような環境のもと、当社は、BNCTの認知度向上とさらなる事業の拡大のために、2021年4月に東京証券取引所マザーズ(現、グロース市場)に上場しました。また、同年8月にはリゾートトラスト株式会社の子会社である株式会社ハイメディックとの間で業務提携契約を締結し、両社との間で連携強化を図るとともに、関連学会での共催セミナー等の実施やWebセミナーの開催といったBNCTの認知度向上に向けた取り組みを積極的に進めました。

 しかしながら、同感染症の拡大による影響により、がん検診の受診控えや医療施設への移動を躊躇されるなどの影響に加え、医薬品卸売業者の保有在庫水準の変更も重なり、売上高は前年の水準を下回る結果となりました。

 以上の結果、当事業年度の売上高は100,096千円(前年同期比51.4%減)、営業損失は741,902千円(前事業年度は営業損失680,567千円)、経常損失は764,088千円(前事業年度は経常損失656,392千円)、当期純損失は767,719千円(前事業年度は当期純損失659,244千円)となりました。

 

 なお、当社は医薬品開発事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

<創薬パイプラインの状況>

(ⅰ)SPM-011[対象疾患:再発悪性神経膠腫]

 日本国内において、2015年12月に第Ⅱ相臨床試験の治験届を提出し、2017年4月には厚生労働省の「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定され、2020年7月に治験終了届を提出いたしました。

 当該治験の主要評価項目は、BNCT施術後1年後における生存割合とし、安全性及び有効性について評価しております。その結果、再発膠芽腫24例の1年生存率が79.2%となり、試験開始前の設定期待値60%を超える結果となりました。当該試験結果をもって、先駆け審査指定制度の枠組みにおいて独立行政法人医薬品医療機器総合機構と一部変更申請に向けた協議を行っておりました。当該試験の主要評価項目である生存率は、年齢やがんの組織型(grade)、術前の全身状態等の患者背景因子が影響することから、同機構からは、当該因子の相違を排除した上で有効性を示す追加的な臨床データの必要性について指摘されてきました。

 これに対して当社は、レトロスペクティブ調査による追加データを提出すること等での承認申請の可能性について相談を継続してまいりましたが、これまでの同機構との協議の結果から、悪性神経膠腫に対する開発の方向性について再検討することにいたしました。

 

(ⅱ)SPM-011[対象疾患:再発高悪性度髄膜腫]

 大阪医科薬科大学病院において、医師主導治験として第Ⅱ相臨床試験を実施しており、2021年9月には当該試験の被験者登録が終了しました。今後は被験者の経過観察期間(最長3年間)を経て、評価、データ解析等が実施される予定です。

 なお、当該試験で使用される治験薬は当社が提供しております。

 

(ⅲ)SPM-011[対象疾患:悪性黒色腫及び血管肉腫]

 日本国内において、2019年9月に治験届を提出し、第Ⅰ相臨床試験を実施しつつ、第Ⅱ相臨床試験に向けた計画案の作成を進めております。

 なお、本試験は株式会社CICSが開発した加速器中性子捕捉療法装置「CICS-1」を用い、国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院において実施しております。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、3,235,502千円(前事業年度末は837,952千円)となり、前事業年度末に比べ2,397,549千円増加いたしました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において営業活動の結果使用した資金は1,081,129千円(前年同期は772,811千円の支出)となりました。これは主に、税引前当期純損失764,088千円を計上するとともに、棚卸資産が380,736千円増加、仕入債務が13,225千円減少した一方で、売上債権が38,113千円減少、減価償却費を34,132千円計上したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において投資活動の結果使用した資金は350,562千円(前年同期は22,864千円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出304,720千円、有形固定資産の取得による支出46,262千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において財務活動の結果獲得した資金は3,829,240千円(前年同期は332,402千円の支出)となりました。これは株式の発行による収入3,616,623千円、引出制限付預金372,625千円が減少した一方で、長期借入金の返済による支出160,008千円によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

事業部門の名称

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

医薬品事業

504,333

73.8

(注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当社は市場動向の予測に基づく見込み生産を行なっており、受注生産は行なっておりません。

 

c.販売実績

当社は医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を行っておりません。

当事業年度の販売実績は以下のとおりであります。

事業部門の名称

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

医薬品事業

100,096

48.6

 

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前事業年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社エス・ディ・コラボ

205,968

100.0

100,096

100.0

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

 なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を会計上の見積りに反映するにあっての仮定については「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

 当社の運転資金は、上場による新株式の発行と金融機関からの借入であります。当事業年度末における現金及び現金同等物は3,235,502千円であり、充分な流動性を確保しております。当社は、研究開発投資が資金需要の大部分を占めており、今後も継続して研究開発投資を実施する方針であります。必要な資金につきましては、自己資金のほか、新株式の発行及び金融機関からの借入によるデットファイナンス等により、資金調達を行う方針であります。

 

④ 経営戦略の現状と見通し

 当社の経営上の目標は、BNCTの認知度の向上と上市後の安定的な収益の獲得及びそれに伴う事業基盤の確立であります。そこでBNCTの実施症例数の伸長に基づく月次売上高(ステボロニン®の受注数量)を上記目標の達成状況を判断するための主要な経営指標としております。

 当事業年度の月次売上高の推移は次のとおりとなっております。

(単位:千円)

売上高

4月

5月

6月

7月

8月

9月

年間累計

7,699

7,699

53,898

100,096

10月

11月

12月

1月

2月

3月

15,399

7,699

7,699

 今後もBNCTの認知度の向上と上市後の安定的な収益獲得が実現できるよう経営資源を重点的に配分してまいります。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」をご参照下さい。

 

⑥ 経営者の問題意識と今後の方針

 経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。

 

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