当社の事業運営及び展開等について、リスク要因として考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社が必ずしも事業上の重要なリスクであると認識していない事項も含まれておりますが、投資判断上若しくは当社の事業活動を十分に理解する上で重要と考えられる事項については、投資家や株主に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。
当社は、これらのリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針でありますが、その対策の成否には不確実性を伴うため、当社株式に関する投資判断は、以下の事項及び本項以外の記載も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。また、当社の事業は、これら以外にも様々なリスクを伴っており、下記の記載は投資判断のためのリスクを全て網羅するものではありません。
当社は、医薬品等の開発、製造及び販売を行っておりますが、医薬品等の開発には長い年月と多額の研究開発費用を要し、全ての開発が成功するとは限りません。特に研究開発段階のパイプラインを有する製造開発型バイオベンチャー企業は、事業のステージや状況によっては、一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられており、当社への投資はこれに該当します。
なお、文中の将来に関する記載は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
Ⅰ.医薬品等の研究開発事業及び医薬品業界に関するリスク
(1)研究開発の不確実性について
適応疾患の拡大を含む医薬品等の研究開発は、一般的に基礎研究から承認取得まで長期間を要し、相当規模の研究開発投資が必要となります。その一方で、新規医薬品の安全性及び有効性の評価は臨床試験による検証を要し、その成功の可能性は、他の産業と比較して相対的に低いものとされております。
従って、新規医薬品の開発過程においては、臨床試験の結果等に起因して、開発が遅延し又は中止となる場合があることから、研究開発活動の将来性は不確実性を伴っております。
新規医薬品の開発は、製薬企業のほか、臨床試験を実施する医師及び医療機関、各国の薬事関連法規等に基づき承認権限を有する規制当局の三者によって実施されます。製薬企業が策定した臨床試験計画等について、臨床試験を実施する医師の見解あるいは医療機関における意思決定等の内容によっては、計画の変更を余儀なくされる場合があります。また、承認取得には厳格な審査を受ける必要があり、審査過程において規制当局からの要望又は指導等により、計画の変更を余儀なくされる場合があります。また、医薬品業界を規制する医薬品医療機器等法や他の関連法令の改定により、計画の変更を余儀なくされる場合があります。これらの要因により、開発が遅延し又は中止となる場合があり、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(2)副作用及び製造物責任について
医薬品は、臨床試験段階から上市後まで、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。医薬品の安全性は、非臨床試験及び臨床試験において十分に検討されますが、少数例での臨床試験では検出されなかった発現頻度の低い副作用が、当該医薬品の上市後において検出される可能性があります。
当社では、これらの副作用発生による補償又は賠償に対応するために、想定し得る範囲で治験保険あるいは製造物責任保険に加入又は加入を予定しておりますが、保険契約でカバーされる補償の範囲を超えた賠償責任を問われる可能性は否定できません。また、重篤な副作用や死亡例の発現は、製品及び企業のイメージ・ブランドを損ねることとなり、当該製品以外の事業への影響が生じる可能性があります。重篤な副作用や死亡例の発現により、製品の回収、製造販売の中止、薬害訴訟の提起、製造物責任賠償及び他の事業への影響等が生じた場合は、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(3)医薬品業界特有の競合関係について
医薬品の開発は、国際的な巨大企業から創薬ベンチャー企業まで国内外の数多くの企業又は研究機関等により、激しい競争環境の下で行われております。当社の開発パイプラインは、特に競争が激しいとされるがん治療の分野であり、新薬等の研究成果あるいはその開発結果によっては、当社開発品の優位性が低下する可能性があります。従って、新薬等の開発、上市又は上市後の販売における競争結果により、当社の製品開発や販売計画等の事業計画が計画どおりに進捗しない場合は、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(4)薬事関連法規及び医療保険制度による規制について
当社の属する医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事関連法規、医療保険制度及びその他関係法令等により、様々な規制を受けており、国内における医薬品の製造販売に関しては、以下の許認可を取得しております。当社は、当該許認可を受けるための関連法規及び諸条件の遵守に努めており、当事業年度末現在において当該許認可が取り消しとなる事由は発生していないものと認識しておりま
す。しかし、法令違反等により当該許認可が取り消された場合には、医薬品の回収又は製造及び販売を中止することを求められる可能性があります。このような事象が生じた場合は、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、適応疾患の拡大を含む医薬品の開発には、相当規模の研究開発投資と長い歳月を必要としますが、安全性、有効性及び品質に関する十分なデータが得られず、規制当局が医薬品としての有用性を認めない場合には、承認が計画どおり取得できず上市が困難になる可能性があります。これは開発品を他社に導出する場合も同様であり、当初計画した条件での導出が行えない可能性、導出そのものが困難になる可能性、導出した場合にその契約内容が変更になる可能性若しくは導出契約が解消される可能性があります。また、日本国内では医療費の増加により、定期的な薬価引下げ等の医療費抑制のための施策が実施される傾向にあり、薬価改定等で想定している保険価格が付されない可能性があります。このような事象が生じた場合は、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(主たる許認可の状況)
許認可の名称 |
所轄官庁等 |
有効期限 |
主な許認可等の取消事由 |
第一種医薬品製造販売業許可 (医薬品医療機器等法第12条) |
大阪府 |
2023年6月 (5年ごとの更新) |
薬事関連法規に関する法令若しくはこれに基づく処分等に違反する行為があったとき又は役員等が欠格条項に該当したときは許可の取り消し (医薬品医療機器等法第75条第1項) |
Ⅱ.事業遂行上のリスク
(1)販売体制及び販売計画について
当社は、国内では自社販売モデルを採用しておりますが、中性子発生装置の設置状況の進捗や想定する患者数の見積りの精度により実績と計画に相違が生じる可能性があります。また、BNCTは臨床研究として実施した症例数を含めても、その治療実績数は限定的であります。BNCTによる治療が適した症例の数及びその施術数は未知であることに起因し、販売計画が想定通りに進捗しない可能性もあります。
これらの場合には、当社の棚卸資産及び固定資産の収益性の低下に伴う減損損失の計上等が検討され、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社はBNCTの適応疾患の拡大を計画しておりますが、適応疾患の拡大が想定どおりに進捗しない場合においても、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(2)BNCT事業の特異性について
当社が開発するBNCTは、ホウ素薬剤を投与した患者に中性子線を照射することで効果を得るものであり、医薬品と医療機器の双方を使用するコンビネーションプロダクトによる治療法となります。医療機器については、住友重機械工業株式会社において、医療機関に設置可能な小型加速器が開発され、当社と共同で世界初となるBNCTの臨床試験を実施し、2020年3月に製造販売承認を取得されております。また、同社以外においても中性子発生装置の研究開発が進められておりますが、将来、中性子発生装置の研究開発や製造販売の遅延又はその他の何らかの事由の発生により、医療機関への機器の設置が進まない場合や、医療機関に設置された中性子発生装置に不具合が生じた場合等においては、医療機関でのBNCTによる治療が制限され、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(3)仕入先に対する依存度について
当社開発品であるステボロニン®の原薬「ボロファラン(10B)」の製造には、その原材料となるホウ素の安定同位体であるB-10を高純度まで濃縮する必要があり、当社は、唯一その技術を国内で有しているステラケミファ株式会社から独占的に仕入れを行っております。
原材料の代替性の確保のため、新たな研究開発や相当期間分の販売に対応できる在庫数量を保有するなど検討して取り組んでおりますが、現状においては、当該原材料は代替性が無いものであり、将来、災害等を含む何らかの事由の発生により、同社との関係で取引や生産が停止した場合は、当社におけるステボロニン®の製造販売が困難となり、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、同社との原材料の仕入取引に関して、医療用途に限定した独占的取引基本契約を締結しておりますが、同契約の有効期間は医薬品製造販売承認取得日から10年間(以後、1年間ごとに特段の意思表示がない限りは自動的に継続)であります。10年経過以降、同契約の解除又は独占権が付与されない場合、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(4)製造委託について
当社開発品であるステボロニン®の製造については、外部の製造委託企業と良好な関係を保ちながら、品質管理及び安定供給に努めております。
しかしながら、万が一、製造委託企業が災害等に見舞われ、製造設備への被害等不測の事態が発生した場合や、製造委託企業の生産管理及び品質管理体制の不備を原因とした製造ラインの休止や法令違反に伴う営業停止処分がなされた場合は製品の品質や安定供給等に支障をきたし、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、製造委託企業の経営破綻や法令違反に伴う営業許可の取消処分がなされた場合は、当社は製造委託企業
の変更を余儀なくされ、代替企業の選定から製造、検証及び医薬品の一部変更承認申請まで一定の期間を要する
ことから、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(5)海外展開について
当社は今後、米国、欧州及びアジアを中心とした海外市場への展開を計画しております。海外市場への展開においては、適切なパートナー企業との提携が想定どおりに進まない可能性や、提携先での製造や販売に支障が生じる可能性があるほか、法令や規制の変更、政情不安、経済動向の不確実性、税制の変更や解釈の多様性、為替相場の変動、商習慣の相違などに直面する場合があり、これらに伴うコンプライアンスに関する問題の発生を含め、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(6)会社組織について
a.小規模組織及び少数の事業推進者への依存
当社は、当事業年度末現在、取締役7名及び従業員43名の小規模組織であり、現在の内部管理体制は組織規模に応じたものとなっております。今後、業容の拡大に応じて内部管理体制の拡充を図る方針ですが、体制の整備が予定どおり進捗しない可能性があります。
また、当社の事業活動は、現在の経営陣、事業を推進する各部門の責任者及び少数の研究開発人員に強く依存するところがあります。そのため、常に優秀な人材の確保と育成に努めていますが、人材確保及び育成が順調に進まない場合、並びに人材の流出が生じた場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
b.社歴について
当社は、2007年6月に設立された社歴の浅い企業であります。従って、当社の過去の業績から当社の将来の業績等を推測することは難しい状況にあります。また、企業として未経験のトラブル等が発生する可能性は否定できず、それへの組織としての対応能力については、未知のリスクがあります。
(7)知的財産権について
当社は研究開発活動等において様々な知的財産権を使用しており、これらは当社所有の権利であるか、あるいは適法に使用許諾を受けた権利のみであると認識しております。当社は、製剤処方にかかる特許権を複数取得又は出願しており、今後も周辺特許の出願を積極的に行っていく方針であります。しかしながら、出願中の特許が登録に至らない、又はその一部のみしか登録に至らない可能性があります。また、当社が所有又は使用許諾を受けた知的財産権に比して優位な知的財産権が第三者によって産み出される可能性や、第三者の知的財産権の侵害に基づく将来の紛争の可能性を完全に回避することは困難であり、これらの事象が生じた場合は、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社では他社の知的財産権の侵害を未然に防止するため、当社として必要と考える特許の調査を実施しております。しかしながら、当社のような研究開発型企業にとって知的財産権侵害の問題を完全に回避することは困難であり、第三者との間で知的財産権に関する紛争が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(8)訴訟等について
当社は、当事業年度末現在において提起されている訴訟はありません。しかしながら、将来何らかの事由の発生により、訴訟等による請求を受ける可能性を完全に回避することは困難であり、そのような事態が生じた場合は、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(9)経営上の重要な契約等について
当社の経営上の重要な契約等は、「4 経営上の重要な契約等」に記載のとおりです。事業環境の変化、契約の相手方の方針の変更等何らかの事由により契約が終了する場合、契約の履行に支障が生じる場合には、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(10)情報管理について
当社は、事業の過程において技術、営業に関しての機密情報を保持し、また一定の個人情報を有しています。これらの機密情報の外部への流出を防止するため、セキュリティシステムを継続的にアップデートするとともに、情報管理に関する社員教育を実施し、機密情報へのアクセス管理等の管理体制についても強化を図っております。しかしながら、何らかの事由により機密情報が流出する可能性は存在し、そのような事態が生じた場合は、社会的信用の失墜を招き、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
Ⅲ.業績等に関するリスク
(1)財務状況について
当社は、適応疾患の拡大を含む医薬品の研究開発を先行して行う、いわゆる創薬系ベンチャー企業であります。医薬品の研究開発には多額の先行投資を要し、その投資資金回収にかかる期間も他産業と比較して相対的に長期に及ぶため、創薬系バイオベンチャー企業が当該事業に取り組む場合は、当期純損失が先行して計上され、一般的に繰越利益剰余金がマイナスとなる傾向にあります。
当社は、開発パイプラインを進捗させるとともに、製品上市後の利益計上及び利益拡大を目指しております。しかしながら、開発計画及び販売計画が計画どおりに進捗しない場合には、将来において当期純利益を計上する時期が遅延する可能性もあります。また、計画どおりに当期純利益を計上できない場合には、繰越利益剰余金がプラスとなる時期も遅延し、配当による株主還元の実施時期が遅れる可能性があります。
(2)業績見通しについて
当社は、事業年度ごとに業績予想を公表しております。しかしながら、経営環境の変化及び上記の不確実性等に伴う予測不可能な要因により、業績予想や目標を期限内に達成すること、また目標を維持することが困難になる可能性があります。
(3)資金繰りについて
当社は、研究開発費用の負担により長期にわたって先行投資の期間が続きます。この先行投資期間においては、継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローもマイナスとなる可能性があります。
このため、当社製品の上市後も安定的な収益源が確保されるまでの期間においては、必要に応じて適切な時期に資金調達等を実施し、財務基盤の強化を図る方針ですが、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合は、当社事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。
(4)有利子負債について
当社の借入金には、財務制限条項が設定されております。取引銀行との間では良好な関係を築いておりますが、同条項に抵触した場合には、期限の利益の喪失により、当社事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。また、当社の総資産に対する有利子負債合計の構成は、2021年3月期69.0%、2022年3月期26.6%であります。これは新規上場に伴い現金及び預金等を含む総資産が増加したことから、2022年3月期の有利子負債の構成比は減少しております。
今後、事業規模の拡大に伴い借入が増加する可能性があり、金利の急激な変動や金融情勢の変化等により、計画どおり資金調達ができない場合においても当社事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。
借入金に係る財務制限条項についての詳細は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表」の注記事項をご参照下さい。
また、有利子負債合計の構成についての詳細は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 ①貸借対照表」をご参照下さい。
(5)調達資金の使途について
上場時の公募増資等により調達する予定の資金は、ステボロニン®の適応疾患の拡大のための国内外における研究開発資金、長期借入金の返済原資並びに事業運営及び開発のために必要な人件費等に充当する計画であります。ただし、研究開発活動等の成果が収益に結びつくには長期間を要する一方で、研究開発投資から期待した成果が得られる保証はなく、その結果、調達した資金が期待される利益には結びつかない可能性があります。
また、がん治療の分野においては、外部環境が急速に変化する可能性があります。新薬の上市の動向、法令等の改正、当社の研究開発活動の進捗状況及び結果によっては、上記の資金使途以外の事象に資金を充当する可能性があります。
(6)新株発行による資金調達について
当社は、医薬品の研究開発型企業であり、将来の研究開発活動の拡大に伴い、増資等の新株発行を伴う資金調達を機動的に実施していく可能性があります。その場合には、当社の発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
(7)新株予約権について
当社は、当社取締役及び従業員の業績向上に対する意欲や士気を高めるほか、優秀な人材を確保するための施策として、ストック・オプション制度を採用しております。会社法第236条、第238条及び第239条の規定に基づき、株主総会の承認を受け、当社取締役及び従業員に対して、新株予約権の付与を行っております。
当事業年度末現在における当社の発行済株式総数は28,676,100株、新株予約権による潜在株式数は918,400株(発行済株式総数に対する割合3.20%)であり、これらの新株予約権の権利が行使された場合は、当社の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。また、今後も優秀な人材の確保のため、同様のインセンティブ・プランを継続する可能性があります。従って、今後付与される新株予約権が行使された場合にも、当社の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
(8)配当政策
医薬品の研究開発には多額の先行投資が必要であり、その投資回収までの期間も長期に及ぶ傾向にあり、当社においても繰越利益剰余金がマイナスとなっております。
2022年3月期においては、会社法の規定上、配当可能額がありませんが、株主への利益還元については重要な経営課題と認識しており、製品上市後、医薬品事業の収益力が安定し、継続的に当期純利益が計上され、相当の財政状態になった場合は、配当による利益還元の実施を検討したいと考えておりますが、予測不可能な要因による経営環境の変化や研究開発計画の遅延等により想定どおりに配当を実施できない可能性があります。
Ⅳ.大株主(ステラケミファ株式会社)との関係について
(1)資本関係について
ステラケミファ株式会社(以下、「同社」という。)は、当事業年度末現在、当社議決権の39.93%を所有する大株主であります。当社は同社の100%子会社として設立されましたが、2022年3月15日の臨時報告書に記載のとおり、同社による当社株式の一部売却により、当社は同社の関連会社に該当しております。
(2)同社との取引関係について
当社が開発している医薬品の主となる原材料は、ホウ素の安定同位体であるB-10を高純度まで濃縮する必要があり、唯一その技術を国内で有している同社から独占的に仕入を行っております。当該原材料は代替品が無いものであり、取引の合理性及び取引条件の妥当性を慎重に検討した上で、今後も継続的に取引を行う方針であります。
(3)同社との取引条件について
当社と同社は「(2)同社との取引関係について」に記載しております原材料の仕入取引に関して、医療用途に限定した独占的取引基本契約を締結しております。同契約の有効期間は、医薬品製造販売承認の取得日から10年間(以後、1年間ごとに特段の意思表示がない限りは自動的に継続)であります。なお、同契約においては、①同契約又は同契約に基づく個別契約に定める個別の条項に違反し、催告しても是正されなかった場合、②反社会的勢力の排除に係る条項に違反した場合、③破産手続、民事再生手続又は会社更生手続開始の申し立てがあった場合、④手形や小切手の不渡り処分を受けた場合、⑤合併(存続会社となる場合を除く)、会社分割、事業全部若しくは重要な一部の譲渡又は解散を決議した場合、⑥監督官庁より営業許可若しくは営業登録の取消処分を受けた場合、⑦その他財政状態が著しく悪化したと認められる相当の事由がある場合は、相互に同契及び同契約に基づく個別契約の一部又は全部を解除できることとなっております。当社は、当事業年度末現在において同契約の継続に支障をきたす要因は存在しておりません。
同契約において定められている取引価格については、第三者間で通常行われる取引に準じ、製造原価に適正な利益率を付加して、取引価格を決定しております。取引価格の基礎となる製造原価(直接費)は、設備投資にかかる減価償却費及びメンテナンス費用等の固定費が大部分を占めております。同契約においては、経済情勢の変動又は製造原価の大幅な変動等があった場合には取引価格が変更できる旨定めておりますが、取引価格の改定時に同社の恣意性が働かないようにするため、取引価格の改定は大規模な設備投資が追加的に必要になった場合等に限定しており、その場合には当社に対し数値的根拠の開示及び改定後の取引価格についての当社の承諾が必要な旨を定めております。さらに、当社の業容拡大に応じ、取引量が増加した場合には、一定の値引きが行われる旨を定めております。なお、取引価格については、監査等委員会及び取締役会で慎重に検討の上、適切な水準で決定しております。
また、当社のホウ素製剤に使用している同社の原材料が売上原価に占める構成割合は相対的に低く、取引価格の改定が及ぼす影響は限定的であります。今後の取引においても第三者取引に準じた公正な取引価格及び取引条件を継続する旨、同社から意見表明を得ております。
(4)同社からの独立性の確保について
当社と同社との間に競合関係はなく、同社からの出向者はおらず、原材料取引及び債務保証以外に当社の事業活動に影響を与えるものはありません。
当社の経営判断については、同社の承認を必要とする事項はなく、当社が独自に検討した上で決定し、独立性は確保していると認識しております。
現在、同社との関係について大きな変更を想定しておりませんが、将来において、同社との関係に大きな変化が生じた場合は、当社の経営に影響を及ぼす可能性があります。
Ⅴ.新型コロナウイルス感染症の影響について
新型コロナウイルス感染症が報告されて以降、がん検診の受診控えや医療施設への移動を躊躇されるなどの影響により当社売上高への影響はあったものの、当社の経営体制に与える影響は、リモートワークの推進をはじめ、出張の自粛や在宅勤務体制の整備などの対策を講じた結果、限定的であるものと認識しております。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響が長期化、深刻化した場合は、感染防止に向けた事業活動の縮小や医療機関における通常診療以外の業務に対する規制拡大により治験、治療及び開発パイプラインの進捗が大幅に遅延する可能性があります。
また、海外における新型コロナウイルス感染症の感染拡大が収束せず、渡航制限が長期間に亘り継続した場合も当社における海外事業の展開が遅延する可能性があります。
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