経営者の視点による当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びにこれらの状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。
重要な会計方針及び見積りについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記3 重要な会計方針」及び「同 注記4 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。
(2)経営成績の状況
当連結会計年度(以下「当期」)における経済情勢を振り返りますと、当期第2四半期連結会計期間(以下「当第2四半期」)頃から半導体等の部材不足や物流ひっ迫等が経済活動に大きく影響しました。また、新型コロナウイルスの変異株による感染症が各地域へ再拡大しました。当期第4四半期連結会計期間(以下「当第4四半期」)では感染の影響が徐々に改善され景気は回復傾向でしたが、ウクライナ情勢により経営環境の不確実性が高まっています。米国では個人消費や雇用情勢は堅調に推移し景気はゆるやかな回復基調となりました。中国ではゼロコロナ政策に伴う局地的な活動制限により、継続していた経済成長が鈍化しています。日本では当第4四半期にまん延防止等重点措置の適用に伴い景気回復は鈍化しました。
こうした経営環境の下、当期における当社グループの連結売上高は、9,114億円(前期比5.6%増)となりました。当第2四半期から回復基調となり前期比で増収となりました。地域別では、前期比で欧州は約4%、北米は約2%、中国は約12%、日本は約0.3%と全地域で増収となっています。事業別では、デジタルワークプレイス事業のオフィスユニットは、半導体等の部材不足やマレーシアでの新型コロナウイルス感染症の変異株拡大を受けた工場停止による生産遅延や当第2四半期に発生したグループ会社の株式会社コニカミノルタサプライズ辰野工場の爆発事故、国際的な輸送期間の長期化により製品供給や部材費及び物流費に影響を受けました。この結果、需要に対する製品供給を行うことが出来ず、前期比で約1%の減収となりました。一方で、DW-DXユニットは、欧米でのITサービス等の需要拡大を捉えリカリングビジネスが伸長し、前期比で約5%の増収となりました。プロフェッショナルプリント事業のプロダクションプリントユニットは、上述のトナー工場事故により、トナーの供給が不足したことが影響しましたが、機器本体と消耗品やサービスなどの需要が回復し前期比で約12%の増収となりました。産業印刷ユニットは、好調な需要により前期比で約46%の増収となりました。ヘルスケア事業のヘルスケアユニットは、日本の病院への販売が好調を維持し前期比で約4%の増収となりました。プレシジョンメディシンユニットは、売掛金の回収見込額を見直したことによる売掛金(及び売上)の減額や、米国内での新型コロナウイルス感染症の再拡大により病院への来院者や治験参加者の減少が生じたため前期比で約8%の減収となりました。今後の成長の柱の1つであるインダストリー事業全体では前期比で約18%の増収となりました。特にセンシング分野では約31%の増収となり、材料・コンポーネント分野は約14%の増収となりました。
中期経営計画「DX2022」の最終年度である2023年3月期に向けて、今後の成長に向けた潜在的なリスクを先送りせず、将来の事業計画を保守的かつ慎重に検討した結果、プロフェッショナルプリント事業のマーケティングサービスユニットや、インダストリー事業の画像IoTソリューションユニットにおいて過去の買収により生じたのれんの減損損失109億円を当第4四半期に計上しました。加えて、ヘルスケア事業のプレシジョンメディシンユニットにおける売掛金の回収見込額を見直し、92億円の売掛金(及び売上)を当第4四半期に減額しました。これらの結果、デジタルワークプレイス事業のオフィスユニット、プロフェッショナルプリント事業のマーケティングサービスユニット、ヘルスケア事業のプレシジョンメディシンユニット、インダストリー事業の画像IoTソリューションユニットでは前期比で減益となりました。一方で、「計測・検査・診断」領域であるプロフェッショナルプリント事業のプロダクションプリントユニット、産業印刷ユニット、ヘルスケア事業のヘルスケアユニット、インダストリー事業のセンシング分野、材料・コンポーネント分野は前期比で増益となりました。
これらにより、当期の連結営業損失は222億円(前期は162億円の営業損失)で前期から拡大となりました。税引前損失は236億円(前期は200億円の税引前損失)、親会社の所有者に帰属する当期損失は261億円(前期は152億円の親会社の所有者に帰属する当期損失)となりました。
当社は2020年度から、2030年を見据えた長期の経営ビジョンと3カ年中期経営計画「DX2022」を推進しています。インダストリー事業は当初の計画どおりに進捗しましたが、全社としてはポートフォリオ転換の途上にあります。また、潜在的なリスクを将来に先送りしない考えのもと、過去の買収に関連するのれんの減損を計上したこともあり、2期連続の営業損失となりました。
短期的にはオフィス事業など主力事業の迅速な収益性の立て直しによる安定したキャッシュの創出、中長期的には2025年度までの事業ポートフォリオ転換の完遂、そして、2030年に向けた5つのマテリアリティ(重要課題)、「働きがい向上及び企業活性化」「健康で高い生活の質の実現」「社会における安全・安心確保」「気候変動への対応」「有限な資源の有効利用」に対する価値の創造を実現していきます。
セグメント別の状況は以下のとおりであります。
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
|
|
|
(自 2020.4.1 |
(自 2021.4.1 |
|
|
|
|
至 2021.3.31) |
至 2022.3.31) |
|
|
|
|
億円 |
億円 |
億円 |
% |
デジタルワークプレイス |
売上高 |
4,652 |
4,654 |
2 |
0.0 |
事業 |
営業利益 |
△27 |
△62 |
△34 |
- |
プロフェッショナル |
売上高 |
1,695 |
1,947 |
251 |
14.8 |
プリント事業 |
営業利益 |
△78 |
10 |
89 |
- |
ヘルスケア事業 |
売上高 |
1,090 |
1,099 |
8 |
0.8 |
|
営業利益 |
△64 |
△203 |
△139 |
- |
インダストリー事業 |
売上高 |
1,182 |
1,392 |
210 |
17.8 |
|
営業利益 |
156 |
185 |
29 |
18.7 |
小計 |
売上高 |
8,620 |
9,093 |
472 |
5.5 |
|
営業利益 |
△13 |
△69 |
△56 |
- |
「その他」及び調整額 |
売上高 |
12 |
21 |
8 |
64.1 |
(注2) |
営業利益 |
△148 |
△153 |
△4 |
- |
連結損益計算書計上額 |
売上高 |
8,633 |
9,114 |
480 |
5.6 |
|
営業利益 |
△162 |
△222 |
△60 |
- |
(注1)売上高は外部顧客への売上高であります。
(注2)売上高は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 5 事業セグメント」に記載の「その他」の外部顧客への売上高、営業利益は同記載の「その他」と調整額の合計であります。
①デジタルワークプレイス事業
オフィスユニットでは、A3複合機の需要は当期第1四半期連結会計期間より継続して回復していますが、半導体等の部材不足とマレーシアでの新型コロナウイルス感染症の変異株拡大を受けた工場停止による生産遅延、また港湾混雑による輸送期間長期化の影響が当第2四半期以降で拡大し、当期末での受注残高は約515億円に増加し、販売台数は前期比でカラー機は84%、モノクロ機は83%、全体では84%になりました。新型コロナウイルス感染症は世界的に拡大と収束を繰り返し、顧客企業での従業員の出社再開状況は、国や地域により異なりますが一定の水準に留まっています。このため、トナー工場の事故によるトナー空輸費用の増加や販売活動の抑制による影響はありましたが、消耗品やサービスなどのノンハードの売上は穏やかに回復が続き、前期をやや上回りました。オフィスユニット全体では、前期比で減収となりました。従来のITサービス・ソリューションユニットとワークプレイスハブユニットをあわせたDW-DXユニットでは、複合機の販売に伴いITサービスを提供するオフィス・ソリューションの分野は、複合機の販売台数減少の影響を受け停滞しました。顧客のIT基盤を一括受託するマネージドITサービスは、米国のセキュリティサービスに対する需要を捉えたことが奏功し、欧米でリカリング収益が好調に推移しました。顧客のビジネスプロセス効率化に貢献するデジタルワークフローソリューションは、米国政府系の顧客向けの売上が伸長しました。ワークプレイスハブは、受注数、顧客平均単価ともに増加しました。この結果、DW-DXユニット全体では、前期比で増収となりました。
これらの結果、当事業の売上高は4,654億円(前期比0.0%増)、営業損失は前述の半導体等の部材不足などによる生産遅延の影響180億円などもあり、62億円(前期の営業損失は27億円)となりました。
②プロフェッショナルプリント事業
プロダクションプリントユニットでは、当期の機器本体の販売台数は、前期比でカラー機は91%、モノクロ機は93%、全体では92%になりました。前述の辰野工場の爆発事故により、当期第3四半期連結会計期間(以下「当第3四半期」)よりトナー供給が不足し、それに伴い既存顧客へのトナー供給を優先するために機器本体の販売を一時的に抑制した影響によるものです。消耗品やサービスなどのノンハードの売上高は、中堅大手の印刷会社を中心に商業印刷需要の回復基調が継続し、新型コロナウイルス感染症が欧米でまん延する以前の水準にまで回復しました。この結果、プロダクションプリントユニットは、前期比で増収となりました。また、ユニット全体での受注残高は当第3四半期末から大きな変化は無く、当第4四半期末も約80億円になりました。
産業印刷ユニットでは、機器本体の販売台数は、日用品の堅調な需要回復や欧州アパレル市場の回復に加え、商業印刷会社でのデジタル印刷へのシフトが進み、インクジェット印刷機、ラベル印刷機、テキスタイル印刷機、デジタル加飾印刷機の全てで増加しました。需要回復による既設機器の稼働率向上に加え、機器本体の好調な販売に伴い稼働台数も増加したことにより、インクジェット印刷機をはじめ全ての分野でノンハードの売上高が伸長しました。これらの結果、産業印刷ユニット全体では前期比で増収となりました。
マーケティングサービスユニットでは、欧州での景気回復、アジアでの新規顧客獲得、及び、主要顧客の販売促進活動の段階的な再開に伴い売上が拡大した結果、前期比で増収となりました。一方、新型コロナウイルス感染症拡大の長期化による販売促進用印刷物需要及び収益性の低下により欧州のKonica Minolta Marketing Services EMEA Limitedの買収により生じたのれんの減損損失15億円を計上しました。
これらの結果、当事業の売上高は1,947億円(前期比14.8%増)、営業利益は10億円(前期の営業損失は78億円)となりました。
③ヘルスケア事業
ヘルスケアユニットでは、DR(デジタルラジオグラフィー)の販売台数は、日本では病院市場を中心に前期を上回り、国外では新型コロナウイルス感染症の診察に用いられる需要の増加を捉え、特にインド、アジア市場で数量が増加しました。また、ベッドサイドでのⅩ線動画撮影を可能にする回診用Ⅹ線撮影装置「AeroDR(エアロディーアール) TX m01」を世界に先駆けて発売しました。超音波診断装置の販売台数は、国内の整形外科、産科向けを中心に前期を上回るとともに、米州、中国市場でも増加しました。また、新型コロナウイルス感染症の自宅療養者への貸出用途で自治体向けにパルスオキシメーターの販売台数が増加しました。医療ITでは、国内では医療画像管理や施設間連携をサポートするITサービス「infomity(インフォミティ)」の販売が引き続き好調に推移しました。米国ではPACS(医用画像保管・管理システム)の販売の回復基調が継続しています。これらの結果、ヘルスケアユニットは前期比で増収になりました。
プレシジョンメディシンユニットでは、遺伝子検査は、米国での新型コロナウイルス感染症再拡大により病院への来院者数減少の影響を受けていますが、検査数は前期の第3四半期連結会計期間に新型コロナウイルス感染症拡大前の水準を超え、以降は回復傾向にあります。また、遺伝子検査の中でも重点施策である生殖細胞系列遺伝子変異を評価するRNA検査は順調に検査数が増えています。検診機関向けサービスの「CARE Program」の検査数は、米国での新型コロナウイルス感染症再拡大に伴い検診機会が減少した影響を受けています。創薬支援サービスは、当第2四半期には新型コロナウイルス感染症が収束に向かい、製薬会社の治験が再開されましたが、当第4四半期の感染症再拡大の影響により、再度の治験開始と進捗の遅延が生じました。一方で、創薬研究や前臨床の分野では売上が拡大しています。また、子会社であるREALM IDx, Inc.の米国株式市場への上場準備を進めてきた経緯の中で、当期よりREALM IDx社の子会社Ambry Genetics Corporation において、売掛金の回収見込額を、直近回収実績率を基に慎重に見直したことにより、当会計期間末に92億円の売掛金(及び売上)を減額しました。これらにより、プレシジョンメディシンユニットは、前期比で減収となりました。
上記のとおり、ヘルスケアユニットが好調に推移しましたが、プレシジョンメディシンユニットの売掛金の回収見込み額の見直しなどの影響もあり、当事業の売上高は1,099億円(前期比0.8%増)、営業損失は203億円(前期は64億円の営業損失)となりました。
④インダストリー事業
センシング分野(計測機器ユニット)では、光源色向け計測器は大手顧客からの受注やアジアでのディスプレイ需要を着実に捉えて売上が増加しました。物体色向け計測器は中国、米国で売上が好調に推移し、外観計測では自動車製造ライン向け案件が順調に増加しました。また、前期にSpecim社を買収して獲得したHSI(ハイパースペクトルイメージング)技術を活用し、リサイクル向け選別ソリューションの受注を欧州で順調に獲得しました。これらの結果、前期比で増収となりました。
材料・コンポーネント分野では、機能材料ユニットは、大型テレビやIT領域の好調な需要を確実に捉え、液晶テレビ向けの高付加価値製品の販売が堅調に推移しました。年間を通じて新樹脂を含む位相差フィルムや超薄膜フィルムなどの高付加価値製品の販売が伸長し、前期比で増収となりました。IJコンポーネントユニットは、前期から堅調に回復してきた欧州市場において、工業用途及び大判印刷用途の大型注文を獲得しました。また、アジア地域における工業用途等の販売増加により、前期比で増収になりました。光学コンポーネントユニットは、一部の顧客で発生した半導体調達不足により自動車向けなどの販売の伸長が鈍化したものの、プロジェクタレンズや交換レンズなどの販売が堅調に推移し、前期比で増収となりました。
画像IoTソリューション分野では、画像IoTソリューションユニットにおいて、欧州向け監視カメラソリューションの販売が回復していましたが、当第3四半期に新型コロナウイルス感染症の再拡大、また当第4四半期にウクライナ情勢の影響を受けて商談、受注が遅れ、前期比で減収となりました。また、ソリューション開発の遅れ、半導体等の部材の供給制限等が起因し、MOBOTIX AGの買収により生じたのれんの減損損失94億円(同社単体に配分したのれんの減損損失58億円、画像IoTソリューション分野に配分したのれんの減損損失35億円)を当第4四半期に計上しました。一方で、顧客やパートナーと共に社会のDXを加速させていくために、当社の強みであるイメージング技術をベースに最新のIoT、AI技術を融合させた画像IoTプラットフォーム「FORXAI(フォーサイ)」は戦略的パートナー数を約100社に拡大し、ソリューション展開を加速しています。映像ソリューションユニットでは、日本初の8K LEDドームを採用したプラネタリウムを名古屋と横浜にオープンしました。また、デジタル機器販売が好調に推移し、前期比で増収となりました。
これらの結果、当事業の売上高は、1,392億円(前期比17.8%増)、営業利益は185億円(同18.7%増)となりました。
(3)財政状態の状況
|
前連結会計年度末 |
当連結会計年度末 |
増減 |
資産合計 (億円) |
12,997 |
13,381 |
383 |
負債合計 (億円) |
7,490 |
7,766 |
275 |
資本合計 (億円) |
5,507 |
5,615 |
107 |
親会社の所有者に帰属する持分合計(億円) |
5,398 |
5,498 |
99 |
1株当たり親会社所有者帰属持分 (円) |
1,093.98 |
1,113.71 |
19.73 |
親会社所有者帰属持分比率 (%) |
41.5 |
41.1 |
△0.4 |
当連結会計年度末(以下「当期末」)の資産合計は、前期末比383億円(3.0%)増加し1兆3,381億円となりました。これは主に、棚卸資産の増加287億円、営業債権及びその他の債権の増加173億円、その他の非流動資産の増加151億円、のれん及び無形資産の増加66億円、その他の金融資産の減少109億円、繰延税金資産の減少67億円、現金及び現金同等物の減少61億円によるものであります。
負債合計については、前期末比275億円(3.7%)増加し7,766億円となりました。これは主に、社債及び借入金の増加389億円、その他の金融負債の増加84億円、退職給付に係る負債の減少75億円、繰延税金負債の減少64億円によるものであります。
資本合計については、前期末比107億円(2.0%)増加し5,615億円となりました。
親会社の所有者に帰属する持分合計は、前期末比99億円(1.8%)増加し5,498億円となりました。これは主に、その他の資本の構成要素(主に在外営業活動体の換算差額)の増加443億円、親会社の所有者に帰属する当期損失の計上261億円、資本剰余金の減少96億円によるものであります。
これらの結果、1株当たり親会社所有者帰属持分は1,113.71円となり、親会社所有者帰属持分比率は0.4ポイント減少の41.1%となりました。
(4)キャッシュ・フローの状況
(単位:億円)
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
営業活動によるキャッシュ・フロー |
780 |
374 |
△406 |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△343 |
△509 |
△166 |
計 (フリー・キャッシュ・フロー) |
437 |
△135 |
△572 |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△130 |
21 |
152 |
当期の連結キャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フロー374億円の収入と、投資活動によるキャッシュ・フロー509億円の支出の結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは135億円のマイナスとなりました。
また、財務活動によるキャッシュ・フローは21億円の収入となりました。
そのほかに、現金及び現金同等物に係る為替変動の影響額があり、当期末の現金及び現金同等物の残高は、前期末比61億円減少の1,176億円となりました。
当期における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税引前損失236億円に、減価償却費及び償却費757億円、減損損失及びその戻入益109億円等によるキャッシュ・フローの増加と、棚卸資産の増加による減少173億円等によるキャッシュ・フローの減少により、営業活動によるキャッシュ・フローは374億円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出412億円、無形資産の取得による支出197億円、投資有価証券の売却による収入61億円等があり、投資活動によるキャッシュ・フローは509億円の支出となりました。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは135億円のマイナス(前期は437億円のプラス)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
短期借入金の純増加額578億円、社債の発行及び長期借入106億円等の収入と社債の償還及び長期借入金の返済323億円、リース負債の返済192億円、配当金の支払148億円等の支出により、財務活動によるキャッシュ・フローは21億円の収入(前期は130億円の支出)となりました。
(5)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前期比 |
|
百万円 |
% |
デジタルワークプレイス事業 |
251,544 |
105.5 |
プロフェッショナルプリント事業 |
||
ヘルスケア事業 |
16,527 |
99.4 |
インダストリー事業 |
129,546 |
118.3 |
報告セグメント計 |
397,619 |
109.1 |
その他 |
△0 |
- |
合計 |
397,619 |
109.1 |
(注1)金額は、売価換算値で表示しております。
(注2)デジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業につきましては、共通の設備にて生産を行っておりますので、当該生産拠点における生産実績を記載しております。
②受注実績
当社グループは見込み生産を主としておりますので、記載を省略しております。
③販売実績
販売状況については、「(2)経営成績の状況」において各セグメントの業績に関連付けて示しております。
(6)資本の財源及び資金の流動性
①資本政策の基本的な方針
当社は事業ポートフォリオ転換とDX as a Serviceビジネスモデルの変革に取組み、中長期的な企業価値向上に向けた持続的な成長を支えるための最適な資本政策を実施していきます。
特にキャッシュ・フロー創出力の強化と資本効率(ROIC)の向上を重視し、その実現に向けて、「成長投資の実施」「株主還元の充実」及び「財務基盤の強化」について、これらの最適バランスを目指した資本政策を推進し、資金効率の向上と資本コストを意識した最適な資本・負債構成を目指します。
1)資本効率の向上
資本コストを重視し、資本コストを安定的に上回るROICの向上を目指します。このために、KM-ROIC及び投下資本収益(注)を全社資本効率向上のための両輪と位置付けており、両指標の最大化を通して、継続的な資本効率と企業価値の向上を実現していきます。
2)株主還元の充実
連結業績や成長分野への投資、キャッシュ・フローなどを総合的に勘案し、配当を基本として利益還元の充実に努めます。自己株式の取得については、当社の財務状況や株価の推移等も勘案しつつ、利益還元策の一つとして適切に判断していきます。
3)財務健全性の担保
当社は、オフィス事業をその顧客基盤を活用したうえで「デジタルワークプレイス事業」へ転換することと、「計測・検査・診断」領域を新たな事業の柱として確立することの『二つの事業転換』を2025年までに完遂させることを最優先課題としておりますが、財務ガバナンスの強化、財務リスクの最小化、資金効率の向上、株主資本の充実により、財務基盤をより強固なものとし、積極的な成長投資を後ろ支えするという考え方そのものに変更はありません。
(注)KM-ROIC:投下資本収益率。事業利益を投下資本で除した比率。事業活動のために投下した資本を使って、どれだけ事業利益を生み出したかを示す指標。
投下資本収益:事業収益から投下資本コストを控除した収益。どれだけ投下資本コストを上回る価値を創造したかを示す指標。
投下資本収益の最大化によりROICの向上を図ります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりであります。
②資金需要
当社グループの主な資金需要は、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに当社グループの設備新設、改修等に係る投資や、将来の成長及び企業価値向上を目的としたM&Aによる投資であります。
③資金の源泉
当社グループの資金の主な源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入や社債の発行による資金調達であります。
④資金調達についての方針
当社グループは、円滑な事業活動に必要な流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金調達の基本方針とし、主に金融機関からの短期借入及び長期借入や社債の発行により資金調達を行っております。社債については、国内社債発行登録枠を有しており、当社の既発行社債の債券格付、発行登録予備格付はともに株式会社格付投資情報センター(R&I)及び株式会社日本格付研究所(JCR)からA格を取得しております。長期資金の調達に際しては、償還や返済の時期を分散することにより借り換えリスクの低減を図っております。また、資金調達は主に当社が行っており、必要資金を関係会社に主にキャッシュ・マネジメント・システムを通じて供給することで資金調達の一元化や効率化を図っております。
(注)2018年3月31日以降の残高には、ハイブリッドローンが含まれております。格付機関の評価により、資金調達額1,000億円の50%に対して資本性の認定をうけております。
(注)ハイブリッドローンは、2022年10月以降の各利払日に元本の全部又は一部を返済期限(2077年10月)前に返済することが可能となっております。
⑤流動性
当社は営業活動によるキャッシュ・フローに加え、複数の金融機関との間で2026年9月末を期限とする1,000億円のコミットメントラインを締結するほか、アンコミットメントベースの融資枠も有しております。
また、当社グループ内の資金の効率化については、日本・北米・欧州・アジアパシフィックの各統括拠点においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入しており、各地域の余剰資金を当社へ集中し一元的に管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化及びガバナンスの向上を図っております。なお、一時的な余剰資金は、安全性が極めて高い金融資産で運用しております。
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