課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)当連結会計年度の総括

当連結会計年度における外部環境は当社にとって厳しいものとなり、半導体供給のひっ迫、物流輸送期間の長期化・物流コスト増により、主にデジタルワークプレイス事業のオフィスユニットとプロフェッショナルプリント事業のプロダクションプリントユニットの収益が影響を受けました。加えて内部要因として、当社グループ会社のトナー工場における二度にわたる爆発事故、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による当社生産拠点の散発的な稼働率低下といった要因が重なり、価格対応等の回復施策の実施でも全ての影響を吸収することはできず、オフィスユニットとプロダクションプリントユニットの業績は大きく悪化しました。これら事業業績の悪化に加え、過去の買収により生じたのれんの減損損失の計上及びヘルスケア事業のプレシジョンメディシンユニットにおける売掛金回収見込額の修正による利益影響により、通期では222億円の営業損失となりました。

このような経営状況下、当年度に達成できた点・達成できなかった点については以下のように認識しております。

達成できた事項として、インダストリー事業においては、センシング分野、材料・コンポーネント分野が成長をけん引し、期初計画どおり増収増益を達成しています。また、プロフェッショナルプリント事業では産業印刷ユニット、ヘルスケア事業ではヘルスケアユニット(モダリティ、医療IT)も期初計画どおり進捗し、増収増益を達成しています。オフィスユニットとプロダクションプリントユニットにおいては、前連結会計年度に実施した構造改革の効果を予定どおり顕在化させるとともに、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で前連結会計年度に大きく減退した需要の回復を捉え、受注は拡大しました。全社費用構造としては、収益構造改善のための目線として設定している四半期販管費1,000億円の水準を維持することができております。

一方で、達成できなかった事項としては、主にオフィスユニットとプロダクションプリントユニットにおいて、前連結会計年度から回復基調にある需要に対し、半導体供給ひっ迫・物流輸送期間の長期化・当社グループ会社のトナー工場事故の影響により十分な製品の供給ができず、売上減少、受注残の増加、輸送中在庫の増加につながりました。また、空輸費用を含む物流費や部材費の高騰による費用増に対し、一部で価格対応を実施いたしましたが、全てを吸収することができず利益減少となりました。プレシジョンメディシンユニットでは、米国での新型コロナウイルス感染症の再拡大の影響により病院や健康診断での遺伝子検査の需要が停滞し、製薬会社での治験の再開も遅延していることから、売上成長が計画に対し遅延しております。また、当社の事業ポートフォリオにおいて「低収益事業」と位置付ける事業では外部資本の活用も含めた収益構造改革を進めておりましたが、当連結会計年度中の完遂には至らず遅延しております。

当社としては、2020年度に続き2期連続での営業損失という結果に終わったことを真摯に受け止め、2022年4月に刷新した経営体制のもと、キャッシュ・フローの創出を重視し、早期の業績改善に注力してまいります。また、社外のステークホルダーの皆さまからの信頼の回復を実現していくべく、等身大の経営状況をお示しし、率直な対話を行うことを重視してまいります。経営目標の設定に際しては、実行力向上のために適度なストレッチは必要と考えますが、あくまで達成可能な目標を設定し、確実に実行・達成することに注力してまいります。足元の業績は非常に厳しいながら、当社には、過去にも祖業であるカメラ・写真フィルム事業からの撤退等、業容転換を行いながら幾度もの困難を乗り越えてきた実績があり、現下の経営状況においても速やかな業績改善と成長軌道への回復を実現していく所存です。

 

(2)翌連結会計年度の経営方針

当社を取り巻く外部環境は翌連結会計年度も厳しい状況が続くと想定され、半導体の供給ひっ迫や物流輸送期間の長期化、新型コロナウイルス感染症の中国での再拡大によるロックダウン、ウクライナ情勢など中期経営計画「DX2022」策定時には想定していなかった要因の影響を踏まえ、「DX2022」で掲げた2022年度の営業利益目標550億円は大きく見直さざるを得ない状況にあります。外部要因の影響を大きく受けるオフィスユニットを中心に更なる構造改革による迅速な収益性の立て直しを重要な経営課題として進める一方で、インダストリー事業やヘルスケアユニットなど、中期経営計画「DX2022」の計画どおりに進捗している事業においては引き続き計画どおりの目標の達成を目指します。将来のコア事業として育成・確立していく新規事業については、更に踏み込んだ選択・集中を進めながら、早期の収益貢献に向けて加速していきます。

 

具体的には、当社の事業ポートフォリオ上の位置付けに応じ、翌連結会計年度において下記のような重点施策に取り組みます。

 

①安定収益事業(オフィス/プロダクションプリント 各ユニット)

オフィスユニットとプロダクションプリントユニットでは、中期的な収益構造改善へ向け、販売面を中心とする効率化・高質化を目的とした組織構造の簡素化を含む構造改革、及び、地政学的リスクを考慮したモノづくり戦略の見直しをパートナー戦略も含めて実施していきます。

 

②コア事業(センシング/機能材料/IJコンポーネント/ヘルスケア 各ユニット)

各ユニットにおいて市場の変化を見定めながら、設定している成長領域での事業展開を継続します。具体的には、センシングユニットにおける自動車外観計測ビジネスやリサイクル・ESG用途へのHSI(ハイパースペクトルイメージング)技術適用の拡大、機能材料ユニットにおける高付加価値製品、IJコンポーネントユニットにおける工業用途、ヘルスケアユニットにおける動態解析/AI診断支援、といった商材の拡大を進めます。中長期的な成長も見据えた戦略的な施策として、センシングユニットにおける計測対象のアプリケーション拡大のための戦略的提携またはM&A、機能材料ユニットでは成長市場として当社が注力する大型ディスプレイやモバイルディスプレイ領域での販売拡大のための設備投資、ヘルスケアユニットにおける戦略的提携の効果出しを進めるとともに、各事業の展開に不可欠となる人的資本の形成へ向けた人財投資を実施していきます。

 

③戦略的新規事業(プレシジョンメディシン/画像IoTソリューション/DW-DX/産業印刷 各ユニット)

前中期経営計画「SHINKA2019」から実施してきた新規事業創出のための人財・開発投資の成果出しを進めるとともに、先行開発投資のより一層の厳選化により費用先行を抑制します。

その上で、プレシジョンメディシンユニットは今後の成長に向けた投資資金の調達力を自ら備えるべく、引き続き資本政策を進めます。産業印刷ユニットではデジタル印刷の需要拡大を捉えた販売の拡大、画像IoTソリューションユニットではパートナー戦略の成果出しおよびグループ間シナジーの最大化に取り組みます。

 

④低収益事業(光学コンポーネント/マーケティングサービス 各ユニット)

外部資本活用も視野に収益構造の抜本的な改革を進めるとともに、新たなポジショニング・ビジネスモデルの確立を加速します。

 

(3)2025年度に実現する事業構造

中期経営計画「DX2022」の策定以後の環境変化を受け止め、翌連結会計年度の目標は見直しを行いましたが、「二つのポートフォリオ転換」を2025年度に完遂するという中期的ゴールについては変更ありません。具体的には、オフィス事業を、ペーパーレス化の進展により事業環境が厳しさを増す中でも利益を生み出し続ける構造へ変革するとともに、オフィス事業の顧客基盤を活用して業種業態に合わせた業務変革ソリューションを提供していくデジタルワークプレイス事業への転換を進めます。また、インダストリー事業を中心とする計測・検査・診断領域の成長加速も進め、厳しい事業環境に耐え、持続的な成長を可能とする事業構造を確立します。

 

(4)中長期での成長に向けて

当社は、2020年度に2030年を見据えた長期の経営ビジョンステートメント「Imaging to the People」を策定しました。中長期には世界の人口増加や人口構成変化、デジタル革命の進行、バイオテクノロジーの産業利用拡大、世界構造の多極化、気候変動・温暖化、といったトレンドが加速的に進行していくものと当社は考えております。このようなマクロ環境認識のもと、「組織や個人が、爆発的に増加するデータを活用して多様な価値を創造し、持続的に発展する自律分散型の社会」を当社が考えるこれからの世界観として定義しました。このような世界においては、組織や個人が求める豊かさが個別化・多様化し、それぞれの充足ニーズの加速的な高まりとともに、資源不足や気候変動による影響、社会保障費の増大、雇用や創造への機会格差といった社会課題の顕在化も進んでいきます。

 

当社は創業以来、イメージング技術をコアに世界中の顧客の「みたい」というニーズに応えてきました。当社の原点でもあり、DNAでもあるイメージング技術を用いて、顧客自身も気づかない課題を可視化することで顧客の様々な「みたい」欲求に応えて最適な解決策を見いだし、顧客のワークフローやバリューチェーンを俯瞰し継続的に顧客価値を提供していく「as a Service」モデルにより、様々な個人・社会の「みたい」に応え続けることで、「人間中心の生きがい追求(個別化・多様化への対応)」と「持続的な社会の実現(顕在化した社会課題の解決)」を高次に両立させるところに当社の社会的意義がある、という結論にたどり着きました。こうした考えを集約したのが長期の経営ビジョンステートメント「Imaging to the People」です。

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また、当社は長期の経営ビジョンステートメント「Imaging to the People」策定に併せて、フィロソフィー体系の再整理を行いました。当社は、コニカミノルタ発足以来不変の「経営理念」の下、価値創造の源泉としての企業文化・風土である「6つのバリュー」を基盤に経営ビジョンステートメント「Imaging to the People」の実現を目指します。

さらに当社は2030年を見据えて当社が重視する解決すべき重要課題を5つのマテリアリティとして特定しています。「働きがい向上及び企業活性化」、「健康で高い生活の質の実現」、「社会における安全・安心確保」、「気候変動への対応」及び「有限な資源の有効活用」の5つです。これらのマテリアリティを軸に、当社の強みである無形資産(顧客接点、技術、人財)と最新のIoTやAI技術を組み合わせた独自のプラットフォームビジネスを確立し、顧客課題解決へ貢献します。また、顧客課題解決につながる価値提供を通じて社会課題解決に貢献するとともに事業活動で得られた財務・非財務資本は当社のガバナンスを通して無形資産を含む成長投資、株主様を始めとする様々なステークホルダーの皆様に長期的還元などを行っていきます。このようなコニカミノルタ流の価値創造プロセスにより、社会課題と向き合い、DX(デジタルトランスフォーメーション)により無形資産と事業の競争力を強化することで中長期の企業価値向上につなげていきます。

 

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(5)経営戦略を支える無形資産

持続的な企業価値向上を支える基盤として、当社は無形資産(顧客接点・技術・人財)を重要視しています。保有する無形資産を継続的に磨き続けるとともにDXにより進化させることで競争優位を確立し、当社の企業価値向上につなげていきます。

 

①顧客接点強化

デジタルワークプレイス事業ではオフィス事業で培った約200万社の顧客基盤を有する強みを活かし、顧客のDX実現に向けて、継続的かつ長期的に価値を提供する仕組みを構築し、顧客との関係性を高めていきます。「計測・検査・診断」の領域ではバリューチェーンに深く突き刺さる顧客との関係性を活用して産業バリューチェーン全体の価値創出を推進します。また、顧客のDX体験レベル、顧客にDX体験を提供する自社の能力、顧客との関係性などを独自のDX推進指標によって可視化し、フィードバックすることで、継続的な顧客関係性強化を実現します。当社が培ってきた豊富な顧客接点は今後の成長の源泉となるものであり、業種によらない共通サービスのパッケージ化と各地域で強みのある業種に特化した業種・業態別の価値提供能力の強化により、さらに大きな顧客価値の創出を図っていきます。

②技術強化

当社は創業以来150年近くにわたってカメラ、写真事業で培ってきた4つのコア技術(材料・光学・微細加工・画像)を活用した独自のイメージング技術を、時代とともに変化・多様化する顧客の様々な「みたい」に応えてきました。これら独自のコア技術を高度化・融合化するとともに、ICT・AI技術を組み合わせることで創出した新たな価値を顧客に提供します。また、他社には実現できないレベルの高品位・高精度かつリアルタイムな価値を創出する画像IoTプラットフォーム「FORXAI(フォーサイ)」を画像IoT分野において立ち上げるとともに画像IoT人財の育成と採用強化を進めています。知財面では、精密機器業界で世界トップクラスの知的財産を保有しており、各事業戦略・技術戦略と連動した知財戦略の策定、画像IoT技術領域での知財ジャンルトップ戦略により事業の成長を支えていきます。なお、全社の研究開発費については、注力事業の成長を支える技術開発へと重点配分することで、持続的な企業価値向上・競争優位を実現します。

 

③人財強化

不確実性が高く未来予測が困難な状況のなか、人財の重要性はますます高まっています。当社は、このような時代において、自律的に考え、能動的に動き、あらゆる環境の下で、当社の強みを活かして多様な顧客価値を迅速に創出できる人財を求められる人財像と定義しました。当社は、その定義した人財の獲得・育成のための場と機会を提供し、当社をプロフェッショナル人財の集団へと変貌させ、持続的成長のエンジンとします。場と機会の提供については若手層の海外派遣や自己啓発支援、副業解禁、職域を越えた行動を奨励するチャレンジ加点制度など、様々な観点から人財投資を実施しており、今後もこれを継続します。さらにこれまで各国・各地域の内部に限定されがちであった人財活用機会をグローバルレベルへ展開し、居住地、国籍、使用言語によらない適材適所の人財配置により、当社が持つ多様な人財の能力最大化と有効活用を推進します。DXビジネスの拡大に際して重要となるDXリーダーの育成については、既に専任部署を設けて選抜を行い、グローバルに社内外のプログラムを活用した育成を開始しています。

 

これらの無形資産は二つのDXレイヤー(オペレーショナルDXとビジネスDX)の調和を通じて経済価値と社会価値の創出につなげます。オペレーショナルDXは、無形資産を基盤とする現場力にDXを掛け合わせる組織・プロセスの全社共通・事業横串でのDXです。ビジネスDXは、顧客のプロセス・産業を俯瞰し、課題を見える化したうえで、それを解決するサービスを継続的に提供するために事業ごとにつきつめるDXです。将来の財務情報との関連では、ビジネスDXは付加価値の訴求として粗利額の絶対値に帰結され、オペレーショナルDXは生産性の向上として原価率、販管費率やキャッシュ・フローに反映されるものと想定しています。

DXを進める上で当社は「社員の実践と実感」、「顧客課題を解決する価値提供」及び「顧客価値の最大化」の3つが重要な要素であると捉えています。当社は3つの重要要素を軸とした当社独自の8つの推進指標の成熟度を可視化し、協調した推進を行うことにより、2つのDXレイヤーを調和させながら全社DX基盤の構築を加速します。なお、経済産業省が策定したDX推進指標の成熟度(レベル0からレベル5の6段階の定性評価指標)を当社に当てはめた場合、レベル2(一部での戦略的実施。2021年3月現在)に位置すると自己診断しており、当社は中期経営計画「DX2022」の最終年度である2022年度には、この成熟度をレベル4(全社戦略に基づく持続的実施)に引き上げることを目標に、各領域でのDX施策に取り組んでいます。

 

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(6)マテリアリティ特定プロセス

持続可能な開発目標(SDGs)やマクロトレンドから、2030年に想定される社会・環境課題を洞察し、「解決すべき社会・環境課題」と「当社グループの事業成長」の両評価軸でマテリアリティ分析を行い、当社が取り組むべき5つのマテリアリティ(重要課題)を設定しています。

 

STEP1:課題のリストアップ

GRIスタンダードやSDGsなどの国際的なフレームワークやガイドライン、各専門分野のマクロトレンドなどを参照しながら環境・社会・経済面での課題を広範囲にリストアップしました。ストックホルム・レジリエンス・センターの「SDGsウェディングケーキモデル」をベースとし、「ECONOMY(経済)」「SOCIETY(社会)」「BIOSPHERE(環境)」の関係性を念頭に置きながら、課題を抽出しました。当社が関連する、あるいは関連する可能性がある事業領域、そのサプライチェーン/バリューチェーンを範囲として、社会・環境変化や規制・政策動向、ステークホルダーからの要請事項などを考慮して進めています。

 

STEP2:課題の抽出と重要度評価

リストアップした課題のなかから、特に当社に関連性の高い分野を抽出した上で、マテリアリティ分析(重要度評価)を行いました。当社のマテリアリティ分析は、リスクと機会の側面をそれぞれ評価している点に特徴があります。リスクと機会をそれぞれ評価することで、SDGsを進めるにあたり、企業に期待されている「社会課題を機会と捉えビジネスを通じて解決することで事業成長を図る」ことを実践しています。マテリアリティ分析は、それぞれ「ステークホルダーにとっての重要度(顧客、取引先、株主・投資家、従業員など)」と「事業にとっての重要度(財務的な影響度)」の2軸で5段階評価し、優先順位を付けました。

 

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STEP3:妥当性確認、特定

グループサステナビリティ推進会議で議長を務めるグループサステナビリティ責任者(サステナビリティ担当役員)は、これらのマテリアリティの評価プロセス及び評価結果の妥当性を検証し、優先的に取り組むべきマテリアリティを特定します。特定したマテリアリティは、経営層による審議の上、取締役会による承認を受けます。今後も、マテリアリティを定期的にレビューし、必要に応じて見直すことにより、課題設定と計画の妥当性を担保していきます。

 

(7)気候関連財務情報開示の新しいフレームワークへの対応

TCFDの提言に基づく4つのテーマに関する開示

当社の環境経営は、「環境課題を解決していくことで、事業を成長させ、さらには新しい事業を創出していくこと」をコンセプトとし、気候変動をはじめとした地球環境課題の解決に貢献するとともに、会社の成長を図ることで、世の中から必要とされる会社になることを目指しております。地球規模での気候変動問題を解決するには、自社だけの取組みでは限りがあります。当社は、顧客、取引先を中心とするステークホルダーとの連携によって地球上のCO2削減に積極的に関わっていく「カーボンマイナス」の実現を目指しております。カーボンマイナスとは“自社責任範囲と定められるCO2排出量に比べて、責任範囲外でのCO2削減の貢献量を多くすること”と当社が定義しています。当社の製品・事業に直接かかわるCO2排出量(スコープ1,2,3排出量)よりも多くの排出削減貢献を社会・顧客で創出する状態の早期実現を目指しております。自社の社会的責任を果たすだけでなく、ステークホルダーが社会的責任を果たす活動の支援をすることで、脱炭素化の効果を加速するとともに、当社とステークホルダーの結びつきを広げ、ともに事業成長していくことを目指します。

また当社では、低炭素社会の実現に向けて、科学的根拠に基づくCO2削減の2030年中期目標(SBT:Science Based Target)を設定しております。目標達成に向けた移行計画として、省エネ生産技術開発、再生可能エネルギー由来電力の導入、ペーパーレス事業へのビジネス転換、CO2フリー燃料の導入検討などのCO2削減施策を、短期・中期・長期で設定し、自社責任範囲のCO2排出量を削減する計画を策定しています。また、製品サービスの“as a Service”化の需要変化を見込み、DXを中心としたビジネスへの転換を推進しており、売上創出とCO2削減貢献の両立を目指す経営計画を策定しています。具体的には、企画・開発段階で製品やサービスに脱炭素化に向けた価値を盛り込む「サステナブルソリューション活動」、生産時の脱炭素を目指す「サステナブルファクトリー活動」、サプライヤーとともに脱炭素を目指す「カーボンニュートラルパートナー活動」、販売・サービスにおいてお客様の脱炭素を支援する「サステナブルマーケティング活動」や「環境デジタルプラットフォーム」などを進めます。また、オンデマンド生産、働き方改革、エッジコンピューティングなどにより、大量生産・大量廃棄の事業モデルを変革、そしてデジタル社会でのエネルギー抑制を支援していきます。

当社は、G20金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の最終報告書「気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言」に2018年に賛同しました。TCFDのフレームワークに沿って、気候変動問題への取組みを開示します。

 

〔ガバナンス〕 気候関連のリスク及び機会に係る組織のガバナンス

当社は、2008年に「2050年までに自社製品のライフサイクル全体におけるCO2排出量を2005年度比で80%削減する」という目標を設定し取締役会で承認しました。2017年には、顧客、取引先を中心とするステークホルダーとともに、当社の製品・事業に直接かかわるCO2よりも多くの排出削減貢献を社会・顧客で創出する「カーボンマイナス」を目標に追加しました。そして2020年には、長期の経営ビジョンにおいて当社が取り組むべき5つのマテリアリティの1つとして「気候変動への対応」を設定すること、気候変動への対応の目標としてカーボンマイナスの達成時期を2030年へ前倒しすることを取締役会で承認しました。

また、当社では、代表執行役社長が気候変動問題に対する最高責任と権限を有し、気候変動を含む環境マネジメントの有効性について責任を負うものとしています。そして代表執行役社長から任命された役員(グループサステナビリティ責任者)が気候変動問題を含む環境マネジメントを推進し、中期計画を作成するとともに、その進捗状況について課題検討会、経営執行会議および取締役会へ定期的に報告し、経営課題として審議しています。またグループサステナビリティ責任者は、環境マネジメントの進捗状況や気候変動問題を含む課題について、代表執行役社長及び取締役会議長、取締役会に設置された監査委員会へ毎月報告しています。監査委員会は代表執行役社長を中心とした環境マネジメント全体の執行状況を継続的に監視・検証しております。2021年度は、5月に開催した取締役会で、サステナビリティ経営の中期的な取組みとして、5つのマテリアリティの1つである「気候変動への対応」のゴールと重点活動について報告しました。また、12月に開催した監査委員会で、「気候変動への対応」を含めたサステナビリティ経営の仕組みと管理プロセスについて報告しました。取締役会の監督のもと、中期サステナビリティ計画の推進を実施しています。

 

〔戦略〕 気候関連のリスク及び機会に係る組織の事業・戦略・財務に対する影響

気候変動の物理的影響が顕在化し地球環境が破壊されれば、経済や金融に混乱を引き起こす可能性があると言われております。これは、当社の事業にとってもリスクであると認識しています。一方、ビジネスを通じて環境課題を解決することで機会を創出することができ、企業の持続的な成長へつながると考えています。当社は、最先端の技術を積極的に取り込み、強みとする画像IoT技術とデジタル入出力の技術を融合させることで、気候変動を含む社会課題の解決に寄与するソリューションを生み出すデジタルカンパニーへの業容転換を進めています。

そして、2020年度に策定した長期の経営ビジョンにおいて「気候変動への対応」をマテリアリティとして特定し、2030年までに「カーボンマイナス」を実現することを目標に設定しました。モノからコトへ、顧客への提供物が変化していく中で、製品プロダクツに関わるCO2排出量だけではなく、サービスを加えてCO2を削減し事業成長につなげることを目指します。この目標をバックキャスティングし、気候変動対策に関わる中期目標及び年度計画を、製品の企画・開発、生産・調達、販売などの事業中期計画と連動させることで、ビジネスを通じてカーボンマイナス目標の達成を目指しています。

 

<気候変動シナリオ分析の実施と結果>

地球温暖化対策の枠組みであるパリ協定の合意のもと、世界全体が加速的かつ野心的に低炭素社会へ移行する可能性があります。一方、移行が思うように進まず世界各地で気候変動の著しい物理的影響が顕在化してしまうおそれもあります。当社では、この2つのシナリオを想定し、将来にわたり当社グループの業績に影響を及ぼす事業リスクと、気候変動における課題の解決に先手を打って対応することで創出できる事業機会を、それぞれ特定しています。

シナリオ分析を行う際の枠組みとして、気候シナリオ分析の対象事業分野の特定、重要な気候関連リスク及び機会の特定、気候変動に関する既存の科学的シナリオの検討、シナリオに対するリスク及び機会とその財務影響の検討と明確化、今後の対応の方向性・方針・戦略の検討のプロセスを経て実施しています。

 

●気温上昇が2℃以下に抑えられ、世界全体が低炭素社会へ移行した場合

 

気候変動の「リスク」への対処

当社への影響

財務

影響

時間軸

対処

調達・製造コストの上昇

・ステークホルダーからの再生可能エネルギー調達の要求

短期

生産・研究開発・販売拠点における再生可能エネルギー由来電力の導入

・化石資源・化石燃料の代替化

長期

CO2フリー燃料の導入検討

・新たな排出規制・税制への対応

短~中期

省エネ生産技術開発

製品開発コストの上昇

・新たな製品エネルギー効率規制と市場への対応

短期

環境ラベル新基準相当の製品省エネ設計、公共調達・入札要件への対応

製品サービスの需要変化による売上減少

・オフィスにおける紙への出力機会の減少

短~中期

ペーパーレス事業へのビジネス転換

・非持続的な資源利用、非再生利用設計による製品競争力の低下

中期

再生材の利活用、製品3R設計

 

気候変動の「機会」への対処

当社への影響

財務効果

時間軸

製品サービスの需要変化による売上増加

・データセンターの利用を最小化するエッジコンピューティング

中期

・無駄な生産を抑えるオンデマンド生産プロセス

短~中期

・多様な働き方を支えるコネクテッドワークプレイス

短~中期

・エネルギーを削減する材料加工プロセス変革ソリューション

短~中期

・シェールガスなどパイプラインの漏えい検査システム

短~中期

・企業の環境・サステナビリティ経営を支援するエコシステム

短~中期

・使用済み樹脂の再生材化技術

短~中期

 

●気温上昇が2℃を超え、気候変動の物理的影響が顕在化した場合

 

気候変動の「リスク」への対処

当社への影響

財務

影響

時間軸

対処

生産能力減少による収益減

・気候パターンの変化にともなう自然資源の供給量不足・供給停止

長期

特定の自然資源に依存しない製品開発

・大規模気候災害の発生にともなうサプライチェーン分断

中期

事業継続管理(BCM)の構築、消耗材の域別分散生産及び供給、人・場所・国・変動に依存しない生産体制

・水資源の枯渇・取水制限

長期

生産・調達拠点の水リスク評価、水使用量の削減

製品サービスの需要変化による売上減少

・異常気象および森林火災の発生にともなう森林資源へのアクセス制限

長期

ペーパーレス事業へのビジネス転換

 

 

気候変動の「機会」への対処

当社への影響

財務効果

時間軸

製品サービスの需要変化による売上増加

・急性的な異常気象・自然災害への防災・減災に貢献する画像IoT・センシングソリューション

中期

・災害医療現場における画像診断を活用したヘルスケアソリューション

中期

 

これらのシナリオ分析結果を踏まえ、売上比率の高い複合機を中心とした従来のモノ売りから“as a Service”モデルへ転換しDXを中心とした事業成長を見込める経営計画を策定しました。そして、長期の経営ビジョンにおいてコニカミノルタが取り組むべき5つのマテリアリティの1つとして「気候変動への対応」を設定すること、気候変動への対応の目標としてカーボンマイナスの達成時期を2030年へ前倒しすることを取締役会で承認しました。また、低炭素社会への移行を実現するべく、製品ライフサイクルCO2排出量の削減、カーボンマイナス貢献量、及び再生可能エネルギー由来電力利用率の各目標のさらなる前倒し達成を検討しております。

 

なお、当社の気候変動に関するリスクと機会の詳細は、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。

 

〔リスク管理〕 気候関連のリスクを識別・評価・管理するために用いるプロセス

当社は、リスクマネジメントを「リスクのマイナス影響を抑えつつ、リターンの最大化を追求する活動」と位置づけ、中長期的な視点でリスクを評価しています。短期・中期的には、気候変動を含む環境リスクをグループ全体の経営リスクの一つとして位置づけ、リスクマネジメント委員会において管理しています。また、中長期的な観点から、「低炭素社会へ移行した場合」と「気候変動の物理的影響が顕在化した場合」の2つのシナリオで気候変動リスクの影響度と不確実性を評価し、管理しています。

気候変動への対応に関する計画や施策について、四半期ごとにグループサステナビリティ推進会議において審議するほか、リスクの変化度合いを見直すローリング作業を同会議にて毎年2回行い、リスクを再評価しています。計画の進捗状況については、グループサステナビリティ責任者から代表執行役社長に毎月報告されています。また重要な環境課題についても、グループサステナビリティ責任者から執行の経営会議、リスクマネジメント委員会等に報告されています。取締役会では、気候変動への対応に関する経営計画の進捗について定期的に報告を受け、その執行状況を監督しています。

 

なお、当社のリスク管理体制・リスクマネジメントプロセスの詳細は、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。

 

〔指標と目標〕 気候関連のリスク及び機会を評価・管理するために使用する指標と目標

当社では、気候変動のリスクと機会を管理する指標として、製品ライフサイクルCO2排出量、及びカーボンマイナス目標を「エコビジョン2050」で定めています。製品ライフサイクルCO2排出量には、スコープ1,2のすべて(生産段階、販売・サービス段階のCO2排出量)と、主要なスコープ3(調達段階、物流段階、製品使用段階のCO2排出量)が含まれます。長期的には2050年までに自社の製品ライフサイクルにおけるCO2排出量を2005年度比で80%削減、中期的には2030年までに60%削減(科学的根拠に基づく目標としてSBTイニシアチブから認定取得)、短期的には2022年度に53%削減することを目標としています。2021年度は約79万トン、2005年度比で61%削減となりました。また、自社の製品ライフサイクルの範囲外において、私たちが排出するCO2よりも多くの排出削減貢献を社会・顧客で創出する「カーボンマイナス」を2030年までを期限として実現することを目標としています。また、化石燃料を利用できなくなる将来予測を踏まえ、自社の事業活動で使用する電力の調達を2050年までに100%再生可能エネルギー由来に、中期的には2030年までに30%、短期的には2022年度に10%以上に高める目標を設定しています。2021年10月に発表されたTCFD改訂および補足ガイダンスの内容につきましては、2022年度に検討を進めてまいります。

 

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