研究開発活動

 

5 【研究開発活動】

 当社グループは、強みである皮膚科学技術や処方開発技術、人間科学、情報科学に加えて、デジタル技術や機器開発技術などの新しい科学技術を国や業界を超えて融合し、日本発のイノベーションを創出することで、資生堂の企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」の実現に取り組みます。 

資生堂グローバルイノベーションセンター(呼称「S/PARK エスパーク」)をはじめ、米国、フランス、中国、シンガポールの各海外研究開発拠点においては、現地のマーケティング部門と連携しながら、各地域のお客さまの肌や化粧習慣の研究、その特性にあった製品開発に取り組んでいます。新たに2021年には、美容・健康産業特区「東方美谷」の中国イノベーションセンター新拠点での本格的な活動を開始しました。同地区内で展開する様々な企業・機関と協働し、中国の化粧品業界をリードするとともに、資生堂グループ全体の成長に貢献します。

当社グループのイノベーションへの取り組みは外部から高い評価を受けています。化粧品技術を競う世界最大の研究発表会「国際化粧品技術者会連盟カンクン中間大会2021」(IFSCC Conference 2021 in Cancún)において、口頭発表部門の「最優秀賞」を受賞しました。総受賞回数は通算29回(うち最優秀賞は25回)となり、世界の化粧品メーカーの中では最多の受賞回数となります。

さらなる研究開発活動強化を目的に、独自の研究開発理念として「DYNAMIC HARMONY」を制定しました。「DYNAMIC HARMONY」は、明治期に日本初の民間洋風調剤薬局として創業以来取り組んできた、西洋の科学と東洋の叡智を融合した成り立ちに端を発するものです。一見相反する価値や両立が難しい価値を融合し、唯一無二の新たな価値を生み出すという独自の研究開発の考え方を当社の強みとして再定義し、明文化しました。この理念のもと、5つの研究アプローチを柱に据え、多様なバックグラウンドをもつ世界中の研究員が能力を最大限発揮することを狙います

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は 256 億円(売上高比2.5%)であり、商品カテゴリー別の研究成果は、以下のとおりです。なお、研究開発活動については、特定のセグメントに関連付けられないため、セグメント別の記載は行っていません。

 

(1)スキンケア

シワができる本質には皮膚のかたさが大きく関わると考えられますが、皮膚は性状の異なる複数の層から形成されるため、シワの本質を理解するためには層ごとのかたさを評価する技術開発が必要とされていました。最先端の3D弾性イメージング技術を独自に開発して、幅広いお客さまの皮膚の層毎のかたさとシワの関係を調査した結果、加齢にともなって生じる「角層と真皮層の間で生じるかたさのバランスの崩れ」がシワの本質であることを発見しました。今回の研究成果は、まだ見えないシワの予防から刻まれたシワの改善までが可能になる、画期的なスキンケアへ繋がる知見です。本研究成果を「SHISEIDO」の商品開発にて応用しました。

シミと異常な毛細血管ネットワークの関係性について明らかにしてきましたが、更なる研究によりシミ部位での血管生成に関わる因子の機能の高まりとその抑制成分を見出しました。加えて、独自の肌内部の血管観察技術を用いて、シミ部位の血管状態がシミの形成だけでなく改善プロセスにおいても密接に関係していることを解明し、美白ケアにおける血管の重要性が改めて示されました。本技術を「HAKU」へ応用しました。

 日焼け止めには、高い紫外線防御力や耐水性などの観点から酸化チタンなどに代表される粉末が一般的に用いられています。高い機能性を持つ一方で、肌への負担感や塗布後の被膜感、白さなど使用感触の面では課題もありました。そこで紫外線防御粉末を微細化する技術 “スムースプロテクトテクノロジー”を新たに開発し、自社従来品よりも少ない紫外線防御粉末で効果的に日焼け止め効果を引き出すことに成功しました。本技術を「アネッサ」へ応用しました。

 

(2)メイクアップ 

シワ、たるみなどの形状の悩みは加齢とともに加速し、改善したいというニーズは広く存在しています。しかし、目袋のような大きな形状変化の改善は困難でした。そこで、米国ベンチャー企業 Olivo Laboratories より取得した「Second Skin」の基本技術に当社の強みである処方開発技術を組み合わせ、たるんだ目もとを自然な見え方でカバーするだけでなく長時間持続させる、効果と剥がれにくさを両立させた製剤の開発に成功しました。本技術を「SHISEIDO」へ応用しました。

つやのある仕上がりをもち色移りしにくい口紅類を開発してきましたが、マスクによるこすれ対応には課題がありました。そこで、ジェル中へ独自成分とティント成分、密着油分・コート油分の2種の油分を配合する技術を開発しました。ジェルを唇に塗布すると、ティント成分は唇に染めつき、2種の油分は独自成分のサポートを受け「コート層」、「密着層」の二層に分かれ、つやのある滑らかな膜を形成します。このオイルコントロール技術により、マスクへの色移りのしにくさと、つやのある仕上がりの両立に成功しました。本技術を「マキアージュ」へ応用しました。

 

(3)ヘルスケア

美と健康をつなぐ食品の研究開発を進めています。「コケモモ」と「アムラ果実」の美容成分がコラーゲンを生み出す力を相乗的に高めるという研究成果を「ザ・コラーゲン」へ応用しました。

 

(4)ヘアケア

「ナチュラルやサステナブルなヘアケアアイテムには興味はあるが、仕上がりや使用感には満足できない」と感じている方が多い点に着目し、厳選された天然由来の野菜や果物のエキスやエシカル・サステナブルな香料を一部に使用しながら髪および頭皮に優しくなめらかな使い心地を実現した処方を開発し、「HAIR KITCHEN」へ応用しました。

 

(5)デジタル・機器

非接触かつメイクを落とさなくても、サーモカメラ計測による皮膚表面温度から肌内部の血流状態を判定する機器を開発しました。透明感、ハリ・弾力、なめらかさなどの肌要素も同時に判定することで、肌の内外の判定結果から、パーソナライズされたビューティーアドバイスが可能となりました。本技術を「SHISEIDO」へ応用しました。

高周波・低周波を含む複合的な物理刺激(STエネルギー)を肌組織に作用させることで、毛細血管密度を高め、新しい肌を生みだす真皮幹細胞の数を増やすことを発見しました。さらに、顔に4週間、物理刺激とそれを肌に伝えるために最適化した化粧品基剤を毎日1回組合せて使用連用した結果、ハリの改善などの効果を見出しました。本技術を「EFFECTIM」へ応用しました。

 

以下、その他の活動について記載します。

サステナブルな製品開発(パッケージ、処方)を推進しています。パッケージにおいては、リユースの取り組みとして、洗浄・製品の再充填および再販売ステップへの耐久性と高級感を兼ね備えたガラス容器を独自開発して「AQL」へ応用し、循環型ショッピングプラットフォーム“Loop”サイトでE-コマースにて発売しました。

オープンイノベーションもさらに強化すべく、オープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」の活動を推進しています。活動の1つの目的である「スタートアップ企業のアイデアを商品やサービスへスピーディーに活用」への取り組みでは、株式会社ORPHEと共同で歩行の美しさに関する新評価法の実証実験を開始しました。「美しい歩行動作」を定量化する独自評価法と株式会社ORPHEが保有する小型センサー内蔵のスマートシューズとアプリを用いた動作分析システムの融合により、歩行動作の分析・評価サービスの提供、さらには美しい動きと肌や心身の健康との関連解明を目指します。また、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の事業共創プラットフォーム「THINK SPACE LIFEプラットフォーム」が新たに立ち上げた「THINK SPACE LIFE アクセラレータプログラム2021」に参画し、「生活リズム/体内リズムの見える化と適正化による美の実現」について事業提案を募りました。今後、選定企業と共同開発を進め、新事業価値創出、さらには宇宙における暮らしへの応用を目指します。

 社外に向けてR&D戦略発表会を開催しました。紫外線を肌に有益な光に変え,環境と共生してその恵みから美を生み出す「紫外線変換技術」、加齢や重力による顔の変化を肌の外側と内側の双方向から最先端解析技術で解き明かした「たるみ研究」、目袋やほうれい線など圧倒的な顔の形状補正効果と、使いやすさの両立を追求し叶える「『Second Skin』技術」の発表を行いました。これらの研究や技術の進化をすすめ、商品へのさらなる活用を目指していきます。

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得