文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針、事業構造及び経営戦略
1. 会社の経営の基本方針
当社グループは、研究開発を基盤とし、食の安全と環境保護に配慮した製商品の提供を通じて、社会に貢献するとの経営理念のもと事業活動を進めております。
具体的には、「食の安全・安心」と「増大する食料需要」をキーワードに掲げ、ライフサイエンス分野での技術力をベースとした継続的な研究開発投資を通して、これら課題の解決を目指し、社会に貢献していくことが使命であると考えております。
国連「世界人口予測」によれば、世界の人口は2050年に97億人に達すると予想され、急速な人口増加に対応する食料増産の必要性が高まっております。生態系を保全しながらの農地面積増加に限度がある中で、この問題に対応するためには、既存農地の生産効率を上げることが不可欠です。生産性向上や安定生産技術の一つとして農薬は重要な役割を担っておりますが、近年、農薬に耐性を持つ病害虫や雑草の出現、環境負荷の低減などが課題として挙げられております。
当社は、このような課題の解決に向け、有用な製品や新規有効成分の開発、耐性菌あるいは耐性雑草対策手段として有効な殺菌剤ダコニールや水稲除草剤ベンゾビシクロンの普及、さらに、より環境負荷の低い生物農薬の開発など、持続可能な防除技術確立に向けた様々な研究開発に取り組んでおります。
そして、これら取組みを通じた蓄積技術と革新技術によりプレゼンスを高め、国内外の農業現場が抱える問題への解決策を提供し、研究開発費の源泉である高い事業収益性と盤石な財務基盤、世界で戦える独自発想と高い技術力を持つ有能な人材を有する会社を目指してまいります。
2. 当社の事業構造
当社グループは、高い技術力を事業基盤として、農薬の有効成分である原体及び原体と補助成分を混ぜ合わせて様々な剤型にした農薬(製剤)の研究開発・製造・販売を行っております。
農薬の有効成分である原体の研究開発に重点を置き、原体メーカーとして多種多様な原体を保有する一方、自社原体と共に他社原体を活用した混合剤の開発にも注力し、国内外の農業現場が抱える様々なニーズに対応可能であることが当社の強みとなっております。
その中でも特に、殺菌剤のダコニール関連剤とベンゾビシクロン原体を中心とした水稲除草剤4原体が当社の主力製品であり、国内外において高い評価を受けております。それ以外にも、ゴルフ場向け農薬や緑地管理用除草剤等の緑化関連剤分野においても多数の製品ラインナップを有しております。また、親会社である出光興産との共同研究・販売体制を構築し、日本国内の生物農薬市場において高いシェアを誇っております。
生産体制につきましては、生産量が多く技術的差別化が可能なダコニール関連剤以外は外部への製造委託を基本としております。
当社の販売先は、当社の同業他社である国内外の大手農薬メーカーや化学品メーカーが中心であり、有効成分である原体の販売が中心となっていることから高い収益率を実現しております。また、販売先が大手企業であることから、債権の回収リスク(遅延や貸倒)が著しく低く、安定したキャッシュ・フローの獲得の一助となっております。
3. 当社の経営環境と中長期的な経営戦略
① 国内の事業環境と経営戦略
日本国内の事業環境としては、先進国の中でも突出して低い食料自給率が問題視される中、世界的な農作物需要拡大の動きや食の安全・安心問題などを背景とした農作物の増産への取り組みが進みつつあり、今後の耕作面積は、中期的に、ほぼ現状を維持するものと想定していますが、農業従事者の高齢化、新たな担い手への継承を背景に大規模化や省力化が一層求められる環境にあります。
そのような環境下、当社は、主力製品群の一つであり、高い市場シェアを誇るベンゾビシクロンを中心とした水稲除草剤4原体について、これら原体を含む混合剤(複数の原体を含む農薬)を他の製剤メーカーと共同で継続的に開発・拡販することを通じて販売量を最大化し、市場シェアの維持・拡大を図ります。
もう一つの主力製品である殺菌剤のダコニール関連剤については、70種類以上の作物に登録を持つダコニール1000を筆頭に、北海道の畑作をターゲットにしたダコニールエース、リンゴを中心とした果樹用のパスポート顆粒水和剤など市場ニーズに対応した製品の開発・上市により拡販し、市場シェアの維持拡大を図ります。
② 海外の事業環境と経営戦略
海外の事業環境としては、世界的な人口増加と生活レベルの向上を背景として、食料の安定確保がますます重要となる中、バイオ燃料としても農作物の増産が強く求められています。かかる状況下、農薬の使用量は世界的に増加傾向にあり、今後もそのトレンドが継続していくものと想定しています。
当社の主力市場であるアジア地域では、国連などが主導する生産性向上への取り組みと相俟って、中国・インドを始めとする多くの国において、今後、安全性が高く、農作物の保護効果や省力化に優れた先進国型農薬の市場拡大が進むものと想定されます。
そのような環境下、当社の主力製品群の一つであるダコニール関連剤についても、世界的に需要が増加傾向にあります。しかしながら一方で他国ジェネリック企業との競争が激化している状況にあり、強みである製剤性能の優位性や現地販売会社を通じての質の高い防除技術情報の提供等により"日本製"ダコニールのブランドイメージを維持しながらも、コスト競争力の追求が必要となっています。
当社は、近年、農作物の安全性がより強く求められつつある中国市場や、フィリピンのバナナプランテーション向けを筆頭に、インドネシアやベトナム等アジア各国で現地販売会社と連携し、きめ細かいサービスの提供を行い、さらなる拡販を図っております。
もう一つの主力製品群である水稲除草剤のベンゾビシクロン原体については、韓国の高い市場シェアの維持と、優良な海外開発パートナーとの関係構築を通じて、米国・コロンビア・中国等普及する地域を拡大してまいりましたが、 2019年11月にトルコで農薬登録を取得し、2021年はEU5ヶ国(イタリア、フランス、スペイン、ポルトガル、ギリシャ)で例外的使用許可が承認されております 。使用可能地域において、ALS(*)阻害型除草剤抵抗性雑草やカヤツリグサ科の問題雑草に対し高い効果を示すことを現地試験で立証しながら、拡販を図ります。
また、当社の製品ラインアップの強化を目的として、生物農薬分野では、バチルス系殺菌剤の開発及び世界市場への展開に向けて、欧米での登録取得に取り組みます。当分野での新規製品開発や普及販売においては、出光興産株式会社との共同体制で取り組んでおります。
(*)ALS
Acetolactate Synthase(アセト乳酸合成酵素)の略称。
分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)生合成経路上における本酵素を阻害する除草剤。近年多くの抵抗性雑草が報告されている。
③ 原材料調達、生産環境と経営戦略
農薬は登録制度のもと、使用者・消費者の安全性を担保する目的で製造に関する各種データを提出しております。そのため、仕入先とは協力的関係を構築し、課題を解決しながら取引を継続していくことが望ましく、原材料や製造場所の変更には中長期的な準備が必要となります。
2005年前後以降、日米欧化学メーカーの選択と集中、事業再構築の進展と中国での化学産業勃興~成長の流れの中で、当社も品質安定性を確認しながら、多くの原材料を中国からの調達に切り替えて来ました。一方、近年における品質・技術レベルの安定・向上の反面、環境保護法の遵守状況に対する査察が積極的に行われ、工場の閉鎖・移転等の動きが活発化したことにより、中国で生産される化学品の多くが供給会社の減少という状態に陥り、市況の大幅な上昇に繋がっています。
製品供給体制の構築という観点では、今後も各製造委託先との良好な関係を維持し継続的な安定調達体制を確保しつつも、上昇傾向にある製造原価の低減化施策を実行していく必要があります。
自社生産が中心であるダコニール関連剤については、横浜工場の持続的安定操業体制の構築に引き続き注力しつつ、関連会社からの安定的な原体調達体制強化にも取り組みながら、拡販を進めてまいります。
④ 基本経営戦略と経営指標
会社の経営の基本方針の下、「研究開発力の強化」を通じて、新規有効成分の創製・導入を目指すとともに、主力の殺菌剤ダコニール関連剤や水稲除草剤4原体を中心とした「国内外事業の収益拡大」を図り、これを原資として「財務体質を強化」し、それを「さらなる研究開発力の強化」に結びつける、この成長サイクルを継続していくことを目指しております。
必要な研究開発費を投じつつ一定の収益を維持・拡大するため、重要な経営上の利益を研究開発費負担後の利益である「営業利益」とし、売上高営業利益率10%レベルを継続的に達成することを定量的な目標としております。
・過去5年間の売上高、営業利益及び営業利益率の推移
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2016年度 |
2017年度 |
2018年度 |
2019年度 |
2020年度 |
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売上高(百万円) |
12,491 |
12,928 |
11,584 |
12,387 |
11,999 |
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営業利益(百万円) |
1,263 |
1,410 |
984 |
1,074 |
1,238 |
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営業利益率(%) |
10.1% |
10.9% |
8.5% |
8.7% |
10.3% |
また、当社は事業に必要な資金の一部を金融機関等からの借入により調達していることから、財務健全性に関する重要な指標を「D/Eレシオ」としております。
継続的な目標として「1.0倍以下」を維持することを目指す一方で、利益最大化のため、機会を捉え剤の買収等の投資も積極的に検討してまいります。
・過去5年間の総資産、純資産、有利子負債及びD/Eレシオの推移
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2016年度 |
2017年度 |
2018年度 |
2019年度 |
2020年度 |
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総資産(百万円) |
13,720 |
14,186 |
13,659 |
14,350 |
15,219 |
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純資産(百万円) |
5,856 |
5,799 |
5,822 |
6,659 |
7,988 |
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有利子負債(百万円) |
5,039 |
6,084 |
5,448 |
4,880 |
4,166 |
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D/Eレシオ(倍) |
0.86 |
1.05 |
0.94 |
0.73 |
0.52 |
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 新型コロナウイルス感染症対策
当社では、政府による緊急事態宣言等、行政からの要請に呼応して、従業員の感染リスクの低減と横浜工場の操業維持を第一優先として、衛生管理の強化や勤務体系・条件の変更や制限を行っておりますが、引き続き状況を見ながら適切な対応を継続していく必要があります。
② 横浜工場の安全・安定操業の継続
主力製品群のダコニール関連剤の生産拠点である横浜工場においては、2018年2月の爆発・火災事故の反省と教訓を踏まえた安全管理体制の強化・充実を継続して図り、安全と品質に留意した安定操業を実現するとともに、リスクアセスメントや安全教育の徹底により安全文化の醸成を推進してまいります。
また、横浜工場で使用する原材料において長期に亘り取引関係のある昭和電工株式会社横浜事業所及び川崎事業所とは引き続き友好的かつ発展的な関係を継続してまいります。
③ 原材料調達、生産委託体制の整備
各国の行政機関に安全性の評価を受け登録される農薬は、使用原材料、設備、プロセス等製造に係る各要素が品質の安定に影響を及ぼします。そのため、仕入先や製造場所の変更・追加は適切な手順で慎重に検討、実施される必要があります。
その上で、製品の安定供給及びコスト競争力向上のため、新規製造委託先の開拓推進を含めグローバルな取引体制を追求し、原材料や製品等複数購買体制の強化を通じてリスク分散に取り組みます。また、仕入先との技術交流や品質監査を通して、安全操業及び品質管理の強化に取り組みます。
④ 研究開発力の強化
当社は継続的な成長の要となる新規有効成分の創製・導入のため、更に研究開発力を強化してまいります。そのため、中長期的視野に立った研究開発部門への人員強化と経営資源集中を図ります。また、自社開発中の新規剤の早期事業化と保有知的財産の有効活用、また機会を捉えて他社からの剤の買収等に取り組み、製品パイプラインの強化を目指すとともに、既存製品についても、市場のニーズに対応した適用場面の拡大等により、製品のライフサイクルの延長と収益力拡大を図ります。
親会社である出光興産株式会社とは、生物農薬分野における研究開発・普及における協業を通じて、早期製品化による製品ラインアップの充実を図ります。
⑤ 国内市場での収益拡大
発売から30年を超える「ダコニール1000」を中心とした当社の主力製品群である殺菌剤のダコニール関連剤においては、ブランド力の更なる向上と産地ニーズに応える適用病害・作物の拡大により新規市場の開拓を図ります。
もう一つの主力製品群である水稲除草剤分野においては、ベンゾビシクロン原体を中心とする保有4原体の特長を活かした混合剤戦略の徹底追求を図ります。当社の製品ラインアップ強化の一環として、生物農薬分野において、バチルス チューリンゲンシス、バチルス アミロリクエファシエンス、タラロマイセス フラバスの3系統を軸に認知度向上と技術普及による既存及び新規使用場面での拡販を図ります。
また、農作物増産のための新手法への取り組みや異業種とのコラボレーション等、農薬周辺ビジネスの開拓に取り組み、新たな収益源の獲得を図ります。
⑥ 海外市場での収益拡大
当社の主力製品群である殺菌剤のダコニール関連剤は、世界的に需要が増加している状況にあります。特に需要増加の著しいアジア市場での一層の拡販と販売価格の改善等により収益拡大を図ります。
もう一つの主力製品であるベンゾビシクロン原体の輸出について、先立って販売している韓国ではALS阻害型除草剤剤抵抗性雑草やカヤツリグサ科難防除雑草への安定した効果が認知され、またフロアブル、ジャンボ剤、田植え同時粒剤等の散布に簡便な各種省力化製剤にいち早く対応してきたことで高い市場シェアを維持しております。米国、コロンビア、中国等新しい市場においても優良な海外パートナーとの関係を通じて、更なる販売拡大と新販売地域の開拓等を推進してまいります。また、外部環境対応として、特に大きな影響を受ける為替・原油価格の変動による収益性変動リスクの軽減を販売条件の工夫により図ります。
⑦ 財務体質の強化
当社は、事業上必要な資金(運転資金や設備投資資金、研究開発資金等)の調達を自社の営業活動等で獲得するキャッシュ・フローのほかに、親会社や金融機関等からの借入によって調達しております。
このような状況を踏まえ、財務安全性の指標としてD/Eレシオを採用し、1.0倍以下を継続的な定量目標としております。近年、D/Eレシオは1.0倍以下の水準で推移しており、財務内容は安定的であると認識しておりますが、今後とも、各金融機関との良好な関係を維持し、出光興産株式会社とも連携し、継続的に安定した財務内容の維持を図ります。
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