(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、徐々に経済活動が再開され回復の兆しが一部でみられるものの、変異株の流行による感染再拡大により、国内景気は不安定な状況で推移しました。また、資源価格の上昇、半導体をはじめとする部材の供給不足が顕在化する中、ロシアのウクライナ侵攻による世界経済への深刻かつ長期的な影響が懸念されております。
当社グループの主要市場であるエレクトロニクス市場におきましては、5G(第5世代移動通信システム)関連の実用化やテレワークの普及に伴うサーバー需要が引き続き堅調に推移しました。また、カーエレクトロニクス分野では、半導体供給不足の影響で自動車などの生産に影響が出ておりますが、半導体自体は需給状況解消に向けて生産が継続しております。
このような状況の下、当社グループは、収益力の更なる向上を目指して、高付加価値製品の開発と提案並びに拡販活動に注力してまいりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は723億3百万円(前連結会計年度比29.2%増)、営業利益は139億47百万円(同47.0%増)、経常利益は146億6百万円(同47.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は96億81百万円(同35.8%増)となりました。なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等の適用により、当連結会計年度の売上高は1億45百万円、営業利益は16百万円、経常利益は19百万円増加しております。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
表面処理用資材事業
主力のプリント基板用及びパッケージ基板用めっき薬品は、5Gや半導体関連市場における需要拡大により、売上高、セグメント利益ともに前連結会計年度を上回りました。
この結果、当連結会計年度の売上高は599億20百万円(前連結会計年度比38.9%増)、セグメント利益は127億17百万円(同52.7%増)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高、セグメント利益はそれぞれ3百万円減少しております。
表面処理用機械事業
半導体や電子部品向けの需要は引き続き堅調に推移しましたが、汎用的な表面処理用機械の販売が減少し、売上高、セグメント利益ともに前連結会計年度を下回りました。
この結果、当連結会計年度の売上高は70億13百万円(前連結会計年度比10.4%減)、セグメント利益は6億80百万円(同25.7%減)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は1億49百万円増加し、セグメント利益は19百万円増加しております。
めっき加工事業
タイやインドネシアにおける自動車産業は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による低迷が続いており、厳しい事業環境が継続しましたが、台湾において行っているプリント基板へのめっき加工が好調に推移し、売上高、セグメント利益ともに前連結会計年度を上回りました。
この結果、当連結会計年度の売上高は45億18百万円(前連結会計年度比7.7%増)、セグメント利益は29百万円(前連結会計年度はセグメント損失2億22百万円)となりました。
不動産賃貸事業
新大阪の賃貸用オフィスビルにおいて、オフィスビルの賃料が改定したことから、売上高、セグメント利益ともに前連結会計年度を上回りました。
この結果、当連結会計年度の売上高は8億34百万円(前連結会計年度比3.7%増)、セグメント利益は5億3百万円(同10.7%増)となりました。
なお、上記のセグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高又は振替高が含まれております。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1億30百万円増加し、262億80百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって獲得した資金は74億17百万円(前連結会計年度は86億77百万円の資金の獲得)となりました。これは主に、棚卸資産の増加額41億93百万円、法人税等の支払額41億84百万円の資金の使用がありましたが、税金等調整前当期純利益140億67百万円、減価償却費19億13百万円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動において使用された資金は46億93百万円(前連結会計年度は39億5百万円の資金の使用)となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入14億46百万円の資金の獲得がありましたが、固定資産の取得による支出27億18百万円、投資有価証券の取得による支出20億28百万円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動において使用された資金は37億85百万円(前連結会計年度は17億82百万円の資金の使用)となりました。これは主に、自己株式の取得による支出20億円、配当金の支払額15億91百万円、リース債務の返済による支出1億72百万円があったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
表面処理用資材事業 (千円) |
20,859,109 |
28.4 |
表面処理用機械事業 (千円) |
3,992,610 |
△33.1 |
めっき加工事業 (千円) |
3,745,554 |
12.2 |
不動産賃貸事業 (千円) |
- |
- |
報告セグメント計 (千円) |
28,597,274 |
11.9 |
その他事業 (千円) |
- |
- |
合計 (千円) |
28,597,274 |
11.9 |
(注)金額は製造原価によっております。
b. 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、表面処理用機械事業を除く製品について見込み生産を行っております。
区分 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
表面処理用機械事業 |
8,690,908 |
△7.4 |
8,553,404 |
24.4 |
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
表面処理用資材事業 (千円) |
59,918,771 |
39.0 |
表面処理用機械事業 (千円) |
7,013,612 |
△10.4 |
めっき加工事業 (千円) |
4,518,584 |
7.7 |
不動産賃貸事業 (千円) |
834,636 |
3.7 |
報告セグメント計 (千円) |
72,285,604 |
29.2 |
その他事業 (千円) |
18,019 |
40.5 |
合計 (千円) |
72,303,623 |
29.2 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ160億83百万円増加し、1,011億89百万円となりました。主な増加は、売掛金の増加35億88百万円、原材料及び貯蔵品の増加20億42百万円、投資有価証券の増加19億21百万円、土地の増加17億17百万円であり、主な減少は、建物及び構築物の減少2億42百万円であります。
(負債の部)
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ68億45百万円増加し、224億76百万円となりました。主な増加は、契約負債の増加25億38百万円、支払手形及び買掛金の増加18億89百万円、電子記録債務の増加6億99百万円、未払法人税等の増加3億17百万円であり、主な減少は、役員退職慰労引当金の減少1億93百万円であります。
(純資産の部)
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ92億38百万円増加し、787億12百万円となりました。主な増加は、利益剰余金の増加81億44百万円、為替換算調整勘定の増加31億4百万円であり、主な減少は、自己株式の増加19億87百万円であります。
b. 経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、表面処理用資材事業において、5G(第5世代移動通信システム)対応基地局向けによる、電子部品向けめっき薬品が好調に推移し、売上高、利益ともに前連結会計年度を大きく上回り、当社グループ全体の業績を牽引いたしました。
当社グループの主要市場であるエレクトロニクス市場では、半導体の一部で供給不足の状態が続くものの、自動車の電動化、自動化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展に伴い、半導体や電子部品の需要は引き続き堅調に推移することが予想されております。当社グループは、その要求に応えるため、めっきに関する技術の継続的な創出を行い、市場が要求するタイミングに合う製品を顧客に提供できるように取り組んでおります。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
表面処理用資材事業
表面処理用資材事業は、売上高、セグメント利益ともに前連結会計年度を上回りました。主な要因としましては、主力のパッケージ基板向けのめっき薬品の売上高が、5G関連向けの需要増加やテレワークの普及に伴うデータセンター向けで好調に推移したことによります。
自動車に搭載されるセンサーやカメラモジュールは、自動運転の技術開発が進む中、増加傾向にあり、これら車載用電子部品の表面処理に対応するめっき薬品の開発、拡販に取り組んでおります。また、次世代の通信規格の導入により、スマートフォンなどに用いられるパッケージ基板の更なる微細化、高性能化が進んでいることから、これらの最先端技術に対応するためのめっき薬品の開発、拡販にも取り組んでおります。
表面処理用機械事業
表面処理用機械事業は、半導体やパッケージ関連の表面処理用機械の需要は増加傾向にありますが、汎用的な表面処理用機械の販売が減少したため、売上高、セグメント利益ともに前連結会計年度を下回りました。今後も半導体への表面処理の需要が増えていることから、これらのめっき技術に対応した機械の設計や製造に取り組んでおります。また、競合他社との価格競争に対応するため、コスト削減を目的とした機械製造の最適化を進めております。
なお、コロナ禍で電子部品、配管材料及び電動モーターなど表面処理用機械の製造に使用される材料の入手が困難な状態でありますので、入手ルートの見直しや早期発注などにより、材料の確保に努めております。
めっき加工事業
めっき加工事業は、タイやインドネシアにおける自動車産業は、新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響による低迷が継続したことから、厳しい事業環境が継続しましたが、台湾では、需要が好調なパッケージ関連の表面処理加工に特化していることから好調に推移し、めっき加工事業全体としては、売上高、セグメント利益ともに前連結会計年度を上回りました。
原価率の改善を目的として、グループ内のめっき加工の生産拠点間で問題点の共有化を行い、品質向上のための施策や生産プロセスの改善に取り組んでおります。
また、タイやインドネシアにおけるめっき加工事業では、自動車産業からの需要の依存度が高く、新型コロナウィルス感染症の拡大による自動車メーカー各社の新車需要の低迷に伴い、当社グループのめっき加工の生産拠点では、一部生産調整を行っており、めっき加工事業の売上高や利益に影響を及ぼしております。
新型コロナウィルス感染症の拡大による自動車産業への影響は、今後1年程度で概ね正常状態に戻り、当社グループのめっき加工事業の生産も徐々に回復するものと想定しております。本格的な生産増加に対応するため、めっき加工のための薬品の品質保持や生産設備のオーバーホールを行っております。
不動産賃貸事業
不動産賃貸事業は、新大阪の賃貸用オフィスビルにおいて、オフィスビルの賃料が改定したことから、売上高、セグメント利益ともに前連結会計年度を上回りました。賃貸用オフィスビルでは、定期的なメンテナンスや修繕工事を行い、顧客に対して快適な入居環境を提供し、安定的な入居率の確保に努めております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。
b. 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品の製造に係る原材料の仕入、商品の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、当社グループは、長期的に成長が期待できる分野において、製造設備や研究開発設備に積極的に投資を行ってまいります。これら運転資金及び設備資金につきましては、自己資金及び銀行借入により資金調達を行うことを方針としております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)、(追加情報)、(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っておりますが、これらの見積り、予測は、不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
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