(1) 経営成績等の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が緩和されるなかで持ち直しているものの、同感染症の再拡大による影響やウクライナ情勢の緊迫化、原油、エネルギー価格の高騰など、不透明な状況が強まってきております。また、中国やASEAN諸国においては、同感染症の影響を受け、移動や生産活動の制限などが経済活動の足かせとなり、グローバル規模でのサプライチェーン混乱の一因となっております。国内経済においては、景気は持ち直しの動きが続いているものの、同感染症の影響、原材料価格の上昇や半導体不足などにより、依然として厳しい状況にあります。引き続き、世界的な資源価格上昇などの影響を注視していく必要があります。
このような環境のもと、当社グループにおきましては、同感染症拡大の防止策を徹底し、生産活動等の維持、継続に努めてまいりました。また、2021年度よりスタートしました第5次中期5ヵ年経営実行計画の方針(KIZUNA経営の推進とKIZUNA指標の達成)に沿った重点施策を進め、コア技術・素材を中核とした事業ポートフォリオ改革や新事業の創出などによる持続可能な地球環境と社会を実現するための取り組みに注力しております。業績面では、同感染症の影響による需要環境の悪化から好転し、高付加価値製品の拡販、国内外における需要の回復、収益改善策の推進などにより増収営業増益となりましたが、ロジンや石化原料などの原材料価格の大幅な上昇、特に欧州における天然ガスの高騰等により、第3四半期連結会計期間以降の収益性は悪化しております。
その結果、当連結会計年度の売上高は805億15百万円(前年同期比14.1%増)、営業利益は33億4百万円(同1.4%増)、経常利益は35億66百万円(同2.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、荒川ヨーロッパ社の減損損失(3億46百万円)を計上したことなどにより、15億2百万円(同30.7%減)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用したことにより、売上高は28億14百万円減少しておりますが、営業利益および経常利益に与える影響はありません。
セグメントの業績は次のとおりであります。なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年度比較については、前年度の数値を変更後のセグメント区分に組替えた数値で比較しております。また、セグメント区分の売上高はセグメント間の内部売上高を含んでおりません。
なお、報告セグメントに含まれないその他事業は、売上高は2億79百万円(前年同期比6.2%増)、セグメント利益は45百万円(同72.8%増)となりました。
電機・精密機器関連業界は、車載向け電子部品などの需要が堅調に推移しました。また、印刷インキ業界では、新型コロナウイルス感染症の影響により出版・広告分野で市場の縮小が加速しておりますが、大きく落ち込んだ前年からは回復しました。このような環境のもと、当事業におきましては、機能性コーティング材料用の光硬化型樹脂は自動車関連分野や5G関連分野での販売が引き続き堅調に推移しました。一方で、印刷インキ用樹脂や塗料用樹脂などの販売は増加したものの、原材料価格の上昇等により下期の収益性が低下しました。
その結果、売上高は162億26百万円(前年同期比7.1%増)、セグメント利益は10億82百万円(同2.9%減)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は64百万円減少しております。
製紙・環境事業
製紙業界は、eコマース(電子商取引)市場の世界的な成長に伴う段ボール原紙など板紙の需要は堅調に推移しました。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、印刷用紙では市場の縮小が加速しておりますが、大きく落ち込んだ前年からは回復しました。このような環境のもと、当事業におきましては、原材料価格の上昇により下期の収益性が低下しましたが、紙力増強剤の販売が国内外ともに堅調に推移しました。
その結果、売上高は186億52百万円(前年同期比9.1%増)、セグメント利益は9億69百万円(同71.4%増)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は13億17百万円減少しております。また、荒川ケミカルベトナム社における紙力増強剤製造設備は2022年3月に稼働を開始しました。
粘着・接着剤業界は、自動車関連分野を中心に、新型コロナウイルス感染症の影響から回復に転じました。このような環境のもと、当事業におきましては、ロジン系粘着・接着剤用樹脂や水素化石油樹脂の販売は堅調に推移しましたが、ロジンや石化原料の価格の高騰に加えて、欧州における天然ガスおよび水素の価格高騰などにより、収益性が急激に悪化しました。
その結果、売上高は325億30百万円(前年同期比26.1%増)、セグメント利益は2億6百万円(同86.7%減)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は1億31百万円減少しております。また、千葉アルコン製造株式会社における水素化石油樹脂製造設備については、2022年度第2四半期連結会計期間の稼動開始に向けて取り組んでおります。
電子工業業界は、電子媒体関連や5G関連分野の需要は堅調に推移しましたが、一部において半導体不足やサプライチェーン停滞による稼働低下や在庫調整が長期化しており、依然として不透明な状況が続いております。このような環境のもと、当事業におきましては、電子材料用配合製品や精密研磨剤の販売が堅調に推移しました。
その結果、売上高は128億26百万円(前年同期比4.7%増)、セグメント利益は5億52百万円(同4.6%増)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は13億円減少しております。
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ119億82百万円増加し、1,177億39百万円となりました。主な要因は、現金及び預金が19億9百万円、受取手形及び売掛金が26億15百万円、棚卸資産が42億91百万円、有形固定資産が21億73百万円増加したことなどによります。
負債は、支払手形及び買掛金が22億12百万円、短期借入金が49億89百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ79億93百万円増加し、551億60百万円となりました。
純資産は、為替換算調整勘定、非支配株主持分が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ39億88百万円増加し、625億78百万円となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ19億7百万円増加し、92億50百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、39億89百万円の増加となりました。これは、棚卸資産の増加(36億65百万円)などにより資金が減少した一方、税金等調整前当期純利益(29億41百万円)および減価償却費(31億20百万円)などにより資金が増加した結果であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、74億1百万円の減少となりました。これは、固定資産の取得による支出(64億23百万円)が主なものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、49億27百万円の増加となりました。これは、配当金の支払額(9億52百万円)などにより資金が減少した一方、短期借入金の増加(46億47百万円)や非支配株主からの払込みによる収入(19億40百万円)により資金が増加した結果であります。
a 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) その他事業においては、生産をおこなっておりません。
b 受注実績
当社グループは過去の販売実績と将来の予測に基づいて見込生産方式をとっております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
2021年度よりスタートした第5次中期5ヵ年経営実行計画において、最終年度である2025年度には、売上高900億円、営業利益65億円、経常利益65億円、親会社株主に帰属する当期純利益45億円、EBITDA 112億円以上、ROE7.0%以上の達成を目標としております。
当連結会計年度の売上高は805億15百万円、営業利益は33億4百万円、経常利益は35億66百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、荒川ヨーロッパ社の減損損失(3億46百万円)を計上したことなどにより、15億2百万円となりました。業績につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響による需要環境の悪化から好転し、高付加価値製品の拡販、国内外における需要回復、収益改善策を推進した一方、ロジンや石化原料、欧州における天然ガス価格の高騰等により、下期以降は収益性が悪化しました。
2022年度以降も原材料価格の高騰による収益性の低下が続くものと考えられるため、価格転嫁と更なるコスト削減による採算改善を進めてまいります。それに加えて、継続して第4次中計の重点施策に取り組み、早期達成させることにより、成果の最大化を進めてまいります。なお、第4次中計の主要な重点施策については以下のとおりであります。
千葉アルコン製造㈱における水素化石油樹脂の製造設備につきましては、当社グループにおいて過去最大級の大型設備であり、製造工程は複数にわたるため、動作確認および不具合の解消ならびに部品調達に多くの時間を要しておりますが、安全を最優先に稼働開始に向けて注力しております。稼働後は多額の償却費の計上となるため、当面の収益性を押し下げる要因となりますが、主要用途である紙おむつ用ホットメルト接着剤は、中長期的な成長市場であると見込んでおり、北中南米やアジアを主体にグローバルな供給体制を整えていくことで、当社グループの成長に繋がると考えております。
また、荒川ケミカルベトナム社における紙力増強剤製造設備につきましては、2022年3月に稼働を開始しており、早期の安定稼働・安定供給により成果の最大化を目指してまいります。成長が著しいベトナムのほか、ASEAN地域における板紙需要が引き続き拡大していくものと見込んでおり、当社グループの成長に繋がると考えております。
なお、第5次中計におけるセグメント別の実績および経営目標は以下のとおりであります。
(単位:百万円)
(参考)千葉アルコン製造㈱の減価償却費(予想)
資本の財源および資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
短期運転資金は自己資金および金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資等の長期的な資金需要に関しては、金融機関からの長期借入や社債の発行により調達しております。
また、グループ会社の資金調達につきましては、当社において一元管理しております。
なお、当社は格付を取得しており、本報告書提出日時点において、日本格付研究所「A-」となっております。また、金融機関には充分な借入枠を有しており、新型コロナウイルス感染症の収束が不透明な状況下におきましても当社グループの事業の維持・拡大、設備資金の調達は今後も可能であると考えております。
なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因および対応策ならびに新型コロナウイルスの影響につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
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