当社グループにおいて研究開発活動は、当社、ペルノックス㈱、高圧化学工業㈱および山口精研工業㈱がおこなっております。顧客ニーズに対し提案型の製品開発をおこなうとともに、「つなぐを化学するSPECIALITY CHEMICAL PARTNER」というビジョンに基づき鋭意研究開発活動を展開しております。2016年度に研究開発本部を設置、第5次中期5ヵ年経営実行計画がスタートした2021年度よりコア技術・素材別に再編して一元化し、加えてAI・MIの活用にも注力することで選択と集中による効率化と新規開発、持続可能性への貢献を加速するため、機能性コーティング開発部、水系ポリマー開発部、フォレストケミカル開発部、ファイン・エレクトロニクス開発部、AI・MI推進部、コーポレート開発部に開発推進部を加えた体制にしております。あらためて当社グループのコア技術・素材を事業ポートフォリオの中核に据え、長期的に経営資源を投入し、顧客ニーズに対して研究開発部門の自律性を高め、多面的に対応できる形へと組み替えました。事業分野は機能性コーティング事業、製紙・環境事業、粘接着・バイオマス事業、ファイン・エレクトロニクス事業であり、その研究テーマは多岐にわたっております。
当連結会計年度の研究開発費は
当事業では、デジタルデバイス関連用途を中心に光硬化型機能性コーティング剤「ビームセット」「オプスター」や熱硬化型機能性コーティング剤「アラコート」の研究開発に注力しております。また、印刷インキや塗料用途において、環境負荷低減に向けた製品の研究開発をおこなうとともに、剥離紙・フィルム用離型剤としてシリコーン樹脂の開発もおこなっております。また、ポリマー合成技術を活かした機能性材料の用途開発にも積極的に取り組んでおります。
光硬化型機能性コーティング剤「ビームセット」「オプスター」では、5G関連分野への量産に向け、市場からの高品質要求への対応に注力しております。ディスプレイ用途において、耐傷つき性に加えて、難密着素材への密着性付与、光学調整技術の改良、フレキシブルデバイス用での技術対応を進め、それぞれで採用が得られております。また、光硬化型粘着剤の開発にも取り組んでおります。水系化、無溶剤化による環境に配慮した製品の開発にも継続的に取り組んでおり、塗料用やフィルムコーティング用を中心に水系製品のラインナップ拡充を進めております。
熱硬化型機能性コーティング剤「アラコート」は、非シリコーン系剥離コーティング剤の開発に取り組み、技術面の進展により新規実績化が進みました。また、帯電防止コーティング剤では電子材料分野でのさらなる実績拡大に向けて、新たな顧客ニーズへの対応に取り組んでおります。
印刷インキ用樹脂では、BCPの観点から各種原料ソースを使いこなす技術開発を進め、顧客での使用形態に応じたワニス製品の開発も進めることで実績が拡大しました。また、高付加価値化に繋がる製品の研究開発を進め、海外顧客において実績が拡大しました。加えて、ロジン系樹脂のバイオマス素材としての展開を進め、バイオマスインキ用樹脂として一部で実績化も進んでおります。
塗料用樹脂では、水系製品の有機溶剤中毒予防規則対応やハイソリッドなど環境対応製品の開発に取り組み、顧客での評価が進展しました。また、親水性コーティング剤でも顧客での評価が進み、親水性に加えて新たな機能付与にも取り組み、市場への提案を進めております。
剥離紙・フィルム用離型剤は、硬化方式別に熱硬化型および光硬化型、形態別には溶剤系に加えて、環境に配慮した無溶剤系および水分散系を揃えており、軽剥離性、ミスト低減に優れた製品開発を進めております。
当事業に係る研究開発費は
当事業では、紙の強度を向上させる紙力増強剤や紙へのにじみ止め性を付与するサイズ剤など、紙の機能を向上させる薬品開発に加え、環境視点に基づいた水系ポリマーの技術と用途開発をおこなっております。顧客ニーズや年々悪化する古紙原料や抄紙条件に適応させ、紙のさらなる高機能化ならびに薬品の低コスト化、紙の生産性向上や合理化に寄与する技術の検討をおこなっております。また、中国,台湾,ASEAN等の海外向け製品の開発も積極的に進めており、荒川ケミカルベトナム社の本格稼働に向けて、特にASEANでの紙力増強剤のマーケティングに注力しております。また、水系ポリマー技術を活かした地球環境と社会に貢献できる開発テーマにも取り組んでおります。
紙力増強剤では、内添紙力増強剤「ポリストロンシリーズ」で高分子量化技術を駆使した、高い紙力増強効果を発現する製品が国内、海外で実績化が拡大しております。また、地球環境に配慮した製品として、バイオマス由来の機能性成分の配合および高濃度化による輸送頻度の低減を通じて、CO 2 排出量削減に寄与する製品の開発が進みました。
内添サイズ剤では、当社基盤技術である重合及び乳化プロセスを見直し、安定かつ持続可能な供給を目指す一方、中性抄紙系サイズ剤「サイズパインCAシリーズ」のさらなる高品質化を進めております。
また、環境に配慮した化学物質規制やプラスチック削減の動きに対応すべく、独自の水系ポリマー技術による紙用機能性コーティング剤の製品開発も進めております。
当事業に係る研究開発費は
当事業では、多様化する粘着・接着剤用樹脂に対する顧客ニーズに対応した高機能性製品の開発に取り組み、グローバルに展開しております。また、バイオマス素材としての利点を活かしたロジン誘導体事業の拡大と持続性確保に向けてロジンの基礎技術、変性技術の深化や持続可能な再生原料の有効活用を目指した開発にも取り組んでおります。
ロジンエステル、超淡色ロジンなどのロジン誘導体はタッキファイヤーとして多く使用されておりますが、これまで培ってきた素材に関するノウハウや変性技術を活用して新規にプラスチック添加剤用に製品開発を進めています。流動性向上、相溶化、分散性、低誘電といった特長をキーワードに最近の技術トレンドや社会のニーズに対応すべく、提案・探索を進めております。さらに、当社は大阪大学宇山浩教授が代表幹事である「海洋生分解性バイオマスプラスチック開発プラットフォーム(MBBP)」に参画し、バイオマス素材としてのロジン誘導体を中心にライフサイエンス分野での新たな用途探索に取り組んでおります。
環境に配慮した製品の開発も推進しており、低VOC品や水系エマルジョン型粘着付与樹脂製品のグローバル展開も積極的に進めております。
当事業に係る研究開発費は
当事業では、半導体・電子部品およびデジタルデバイス関連用途を中心として、精密部品洗浄剤や洗浄システム、はんだ関連材料、熱可塑性ポリイミド樹脂、機能性ファインケミカル材料の研究開発をおこなっております。ペルノックス㈱においては、車載用電子部品、各種センサー部品、半導体向けの絶縁封止材料や導電性材料の実績をベースに、最新のLEDやパワー半導体モジュール用の耐熱や信頼性に優れたエポキシ樹脂やシリコーン樹脂製品を大手電機部品メーカーや自動車部品メーカー向けに開発しております。また、山口精研工業㈱においてはハードディスク用アルミ基板やSAWフィルター用基板向けの精密研磨剤の研究開発をおこなっております。
精密部品洗浄剤「パインアルファ」では、競合他社との差別化商品として環境負荷低減が可能な水系・再生型洗浄剤の実績化が進みました。はんだ関連材料であるフラックスでは、当社ロジン技術を活かした半導体パッケージ用途等に開発した新製品の実績化が進みました。
溶剤可溶型低誘電ポリイミド樹脂「PIAD」では、5Gスマートフォンや5G基地局等に使用される高周波対応フレキシブルプリント回路基板用途、半導体パッケージ基板用途を中心に開発を進め、実績化が進みました。
また、ファインケミカル材料では、当社グループの高圧化学工業㈱が保有する耐腐食性を有し、高温・高圧・水素化反応にも対応できる設備の新規受託案件数が増加し、今後伸長が期待される新規受託の実績が拡大しました。
半導体モジュール向け樹脂では、低熱膨張と高流動化を両立した高耐熱性液状注型樹脂に成功しました。また、チップLED向け高接着力1液シリコーン樹脂の開発を進め、実績化が進みました。
精密研磨剤製品では、高速データ通信規格「5G」やクラウドサービスの普及で、データセンターの新増設が相次いでおり、ハードディスクの大容量化やSAWフィルター用基板の複合化に伴う研磨技術の高度化や研磨剤の品質向上、生産性向上に注力し、実績化が進みました。
当事業に係る研究開発費は
なお、当連結会計年度末における研究開発スタッフは236名であり、取得済特許権保有件数は、国内522件、海外331件、出願中のものは国内186件、海外283件であります。
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