業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(業績等の概要)

(1) 業績

当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種の進展に伴い、企業の生産活動が持ち直し、個人消費が底堅く推移するなど経済社会活動が正常化に向かう兆しがみられました。しかしながら、新たな変異株の感染が高止まりするなど未だ感染症収束の時期を見通すことが出来ず、さらに、ウクライナ情勢等地政学リスクの高まりや原材料価格の上昇などもあり、景気の先行きは不透明な状況となりました。

農業を取り巻く環境は、世界的な人口増加や新興国の経済発展などを背景とした農産物需要の拡大から農業生産は引き続き伸長するものと考えられます。世界の農薬市場は、ここ数年成長が鈍化していましたが、米州などの需要増加から再び拡大基調にあります。

当社グループの主な販売地域に目を転じますと、温暖な気候が続いた北米では農薬市場は堅調に推移しました。中南米では、ブラジルで大豆やトウモロコシの作付面積の拡大などにより需要が増加しました。また、アジアでは天候の改善が見られた東南アジア地域などの需要が拡大しました。さらに、欧州では過年度の流通在庫の消化が進んだことから市場全体は増加に転じています。

国内農業においては農家の高齢化や後継者不足の深刻化、耕作放棄地の増加などの構造的課題の解決は進んでいません。これに対して政府の農林水産業・地域の活力創造本部では、「農林水産物・食品の輸出拡大戦略」において、2030年までに5兆円という輸出額目標を掲げ、農林水産事業者の利益の拡大を図っています。

このような状況下、当社グループは今期を初年度とする新たな3カ年の中期経営計画「Ensuring Growing Global 2(EGG2)」に取り組み、収益性の向上と技術革新・次世代事業の確立および持続的な企業価値の向上を目指して活動しました。当連結会計年度における当社グループの売上高は819億10百万円(前期比103億85百万円増、同14.5%増)となりました。海外売上高は557億76百万円、海外売上高比率は68.1%となりました。利益面では、営業利益は66億42百万円(前期比3億39百万円減、同4.9%減)、経常利益は57億68百万円(前期比46百万円増、同0.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は45億2百万円(前期比1億57百万円増、同3.6%増)となりました。

セグメントの業績を示すと、次のとおりです。

 

① 農薬事業

農薬事業の売上高は768億1百万円(前期比114億14百万円増、同17.5%増)、セグメント利益(営業利益)は62億40百万円(前期比2億41百万円増、同4.0%増)となりました。

 

② 農薬以外の化学品事業

農薬以外の化学品事業の売上高は34億65百万円(前期比8億13百万円減、同19.0%減)、セグメント利益(営業利益)は9億60百万円(前期比5億10百万円減、同34.7%減)となりました。

 

③ その他

その他の売上高は16億43百万円(前期比2億16百万円減、同11.6%減)セグメント利益(営業利益)は3億1百万円(前期比81百万円減、同21.3%減)となりました。

 

(2) 財政状態の状況

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度に比べ、102億77百万円増1,182億47百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ、53億92百万円増512億90百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末と比べ、48億84百万円増669億56百万円となりました。

 

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べ63億53百万円減少し、当連結会計年度末は110億61百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金の減少は、30億80百万円となりました。これは税金等調整前当期純利益58億18百万円、仕入債務の増加額47億25百万円による資金の増加があった一方、棚卸資産の増加額91億8百万円、売上債権の増加額26億91百万円による資金の減少があったことが主な要因であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金の減少は、7億6百万円となりました。これは定期預金の預入、払戻による純増の収入7億60百万円があった一方、有形固定資産の取得による支出13億94百万円があったことが主な要因であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金の減少は、25億58百万円となりました。これは短期借入れによる収入77億41百万円があった一方、短期借入金の返済60億15百万円、長期借入金の返済30億23百万円、配当金の支払額12億1百万円があったことが主な要因であります。

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

農薬事業

52,757

123.4

農薬以外の化学品事業

564

67.4

その他

407

78.3

合計

53,729

121.8

 

(注) 金額は、製品製造原価によっています。

 

(2) 商品仕入実績

当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前年同期比(%)

農薬事業

18,211

146.7

農薬以外の化学品事業

1,219

112.7

その他

96

97.6

合計

19,526

143.7

 

(注) 金額は、仕入価格によっています。

 

(3) 受注実績

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

農薬事業

農薬以外の化学品事業

その他

426

68.9

28

50.2

合計

426

68.9

28

50.2

 

 

(4) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

農薬事業

76,801

117.5

農薬以外の化学品事業

3,465

81.0

その他

1,643

88.4

合計

81,910

114.5

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しています。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容)

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容

当社グループの中核事業である農薬事業を取り巻く環境は、世界的な人口増加や新興国の経済発展などを背景とした食料需要の拡大から、グローバルな農薬市場は拡大傾向にあります。一方、国内では、農業従事者の高齢化、後継者不足の深刻化による耕作面積の減少、政府による農業資材費低減方針などを背景に、農薬市場は漸減傾向が継続するものと考えられます。また、創薬難度の高まりと農薬登録要件の増加により、新規薬剤開発コストが増大し、開発期間も長期化しております。さらに、各国の農薬登録制度における要件の厳格化、ジェネリック農薬との価格競争、原材料費や委託製造費の高騰、異常気象による農作物への影響など当社グループを取り巻く事業環境は一層厳しさを増しております。

なお、今後の見通しにつきましては、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の長期化や地政学リスクの顕在化による世界経済への影響等、不安定で不透明な状況が続くと想定しております。当社グループの中核事業である農薬事業は、食料安定供給を支える農業生産の根幹に関わるビジネスであるため、他の業種に比し影響は限定的であると考えられますが、生産、調達などへの直接的な影響や農業を取り巻く環境変化による間接的な影響が想定されます。

このような事業環境下、グループビジョン「Nichino Group-Growing Global」のもと、当社グループは今期を初年度とする新たな3カ年の中期経営計画「Ensuring Growing Global 2(EGG2)」に取り組み、収益性の向上と技術革新・次世代事業の確立および持続的な企業価値の向上を目指して活動しました。当連結会計年度における当社グループの売上高は819億10百万円(前期比103億85百万円増、同14.5%増)となりました。利益面では、営業利益は66億42百万円(前期比3億39百万円減、同4.9%減)、経常利益は57億68百万円(前期比46百万円増、同0.8%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は45億2百万円(前期比1億57百万円増、同3.6%増)となりました。

なお、セグメント別の業績は以下のとおりです。

 

(農薬事業)

国内農薬販売では、園芸用殺菌剤ピラジフルミド(商品名「パレード」)などの主力自社開発品目の普及拡販に努めました。また、当社は、2021年5月に国内農薬市場におけるシェア拡大を図るため、コルテバ・アグリサイエンス日本株式会社およびダウ・アグロサイエンス日本株式会社(以下、両社あわせて「コルテバ社」といいます。)との間で日本国内における販売契約を締結するとともに、同年10月よりコルテバ社製品の販売を開始したことから、国内農薬販売全体の売上高は前期を上回りました。

海外農薬販売では、世界最大の市場であるブラジルで農薬需要が回復基調にあることに加え、前期より販売を開始した殺虫剤フルベンジアミドの販売が好調に推移し、Sipcam Nichino Brasil S.A.の売上高が伸長しました。北米ではNichino America,Inc.において競合剤から市場シェアを獲得した除草剤ピラフルフェンエチルなどの販売が牽引し売上高が伸長しました。また、欧州ではバイエル社向けフルベンジアミド原体販売が好調に推移しました。さらに、アジアではインドにおいて園芸用殺虫剤トルフェンピラドの販売が好調に推移しました。

なお、2019年2月にNichino India Pvt.Ltd.がインドで農薬登録申請をしておりました新規水稲用殺虫剤ベンズピリモキサン(商品名「オーケストラ」)につきまして本年2月3日付で農薬登録を取得いたしました。

以上の結果、農薬事業の売上高は768億1百万円(前期比114億14百万円増、同17.5%増)、セグメント利益(営業利益)は62億40百万円(前期比2億41百万円増、同4.0%増)となりました。

 

 

(農薬以外の化学品事業)

化学品事業では、2021年の住宅着工戸数が5年ぶりに増加に転じたことなどから株式会社アグリマートのシロアリ薬剤分野の販売が好調に推移しました。一方、医薬品事業では、新型コロナウイルス感染症の拡大により、医療機関の外来患者数が減少したことなどから外用抗真菌剤ルリコナゾールの販売が伸び悩みました。

以上の結果、農薬以外の化学品事業の売上高は34億65百万円(前期比8億13百万円減、同19.0%減)、セグメント利益(営業利益)は9億60百万円(前期比5億10百万円減、同34.7%減)となりました。

 

(その他)

緑化造園工事事業では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による物件の減少に伴う競争激化などから売上高が減少しました。

分析事業では、食品分野や環境分野の受注が伸長した結果、売上高が増加しました。

以上の結果、その他の売上高は16億43百万円(前期比2億16百万円減、同11.6%減)セグメント利益(営業利益)は3億1百万円(前期比81百万円減、同21.3%減)となりました。

 

(2) 目標とする経営指標の達成状況等

当社グループは、当社の将来のありたい姿としてグルーブビジョン「Nichino Group-Growing Global」を策定し、新規農薬、医・動物薬など、顧客ニーズに適う先進技術を提供し農業生産や健康的な生活を支えること、ならびに低環境負荷製品、省力化技術など、SDGsに資する製品、サービスを拡大し持続可能な社会に貢献することを目指しております。このグループビジョン達成に向けた将来のありたい姿として、当社グループは事業規模として営業利益率15%以上、売上高2,000億円を目指しております。その達成に向けた数値目標として、2030年度に営業利益率10%以上、売上高1,250億円を実現し、魅力ある新製品技術、CSR(SDGs)経営を通じてグローバルで“ニチノーブランド、ニチノー品質”が浸透している企業を目指すことを定めております。

2022年3月期を初年度とする中期経営計画「Ensuring Growing Global 2(EGG2)」においては、最終年度となる2024年3月期の目標売上高1,000億円、計画数値として営業利益64億円、売上高890億円を設定し、収益性の向上と技術革新・次世代事業の確立および持続的な企業価値の向上を図る計画としております。

ターゲット市場における重点剤の登録取得や開発推進、創薬パイプラインの充実化、次世代事業の開発推進、インドにおける製販体制強化、スマート農業への対応、業務改革・働き方改革の推進など、事業基盤の強化に一定の成果を上げることができました。また、株式会社ADEKAとの資本業務提携によるシナジーを早期に創出し発揮するべく活動を推進してきました。

当連結会計年度においては、期初の計画数値として売上高740億円および営業利益41億円を設定し、業績向上に努めてまいりました。海外農薬販売において、天候要因などにより米州やインドで主力品の販売が伸長した結果、売上高、営業利益とも期初の計画数値を上回りました。

 

(3) 財政状態の状況

①事業全体の状況

当連結会計年度末の総資産は、棚卸資産が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ、102億77百万円増1,182億47百万円となりました。

負債につきましては、仕入債務が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ、53億92百万円増512億90百万円となりました。

純資産につきましては、前連結会計年度末と比べ、48億84百万円増669億56百万円となりました。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末と比べ、0.9%減の55.5%になりました。

 

 

②セグメント情報に記載された区分ごとの状況

当連結会計年度末のセグメント資産は、前期末に比べ158億1百万円増加し、1,114億40百万円となりました。

 (農薬事業)

当連結会計年度末のセグメント資産は、前期末に比べ163億84百万円増加し、1,062億24百万円となりました。

 (農薬以外の化学品事業)

当連結会計年度末のセグメント資産は、前期末に比べ1億71百万円減少し、31億28百万円となりました。

 (その他)

当連結会計年度末のセグメント資産は、前期末に比べ4億11百万円減少し、20億87百万円となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

キャッシュ・フローの状況につきましては、「(業績等の概要) (3) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④資本の財源および資金の流動性

当社グループの資金需要のうち主なものは、新剤開発・登録等にかかる研究開発費や開発途中の剤の生産設備の設置及び既存剤の生産効率化にかかる設備投資であり、これらを主に自己資金並びに金融機関からの借入金により調達しています。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は110億61百万円であり、十分な手元流動性を確保しています。

 

⑤重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。重要な会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しています。

 

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