当連結会計年度におけるわが国経済は、長引く新型コロナウイルス感染症の影響により対個人サービス業種において厳しい状況が続きました。また、世界的な半導体の需給ひっ迫から、自動車関連業種も生産調整を強いられる状況となりました。加えて、第4四半期以降、ウクライナ情勢の影響を受け資源価格は高騰し、米国金融政策も相まって円安も進行するなど、先行き不透明な状況が続いております。
このような状況のもと当社グループといたしましては、従業員の感染症対策に努め、お客様に満足される製品・サービスの提供により、安心・安全な社会の維持に貢献するべく、消防・防災事業、航空・宇宙、工業用品事業、不動産賃貸事業の各事業活動を行ってまいりました。
当連結会計年度の売上高は、消防・防災事業並びに航空・宇宙、工業用品事業において減収となりました。消防・防災事業では、災害救助資機材やテロ対策資機材などの売上が低調であったことから減収となりました。航空・宇宙、工業用品事業では、前年度の第3四半期以降、官需大型機向け受注が減少しており、航空・宇宙部門を中心に厳しい減収となっております。
利益面につきましては、期初より見込まれていた減収を考慮し、人件費を中心にコストの抑制に努めてまいりましたが、当期の売上高では固定費を吸収することができず、誠に遺憾ながら営業損益、経常損益等の各段階のいずれにおいても、損失を計上する結果となりました。
その結果、売上高は8,871百万円(前期比11.5%減)、営業損失128百万円(前期は営業利益278百万円)、経常損失150百万円(前期は経常利益268百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失94百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益235百万円)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。これにより、当連結会計年度の売上高及び売上原価が20百万円それぞれ減少しましたが、営業損失、経常損失及び税金等調整前当期純損失に与える影響はありません。
当連結会計年度における報告セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(消防・防災事業)
消防ホースは第4四半期に販売を伸ばしたものの、原価率の上昇もあり利益面では押し下げ要因となりました。特殊車両の販売は、官公庁向けのほか、発電所向け車両改修受注により増加しましたが、救助資機材の販売は低調に推移致しました。その結果、売上高5,421百万円(前期比8.8%減)、セグメント利益(営業利益)は180百万円(前期比49.3%減)となりました。
(航空・宇宙、工業用品事業)
航空・宇宙部門では、官需大型機向けエンジン並びに機体配管用の部品など金属加工製品の販売減少に加え、コロナ禍以前に受注していた民間航空機向けゴムシール材などの受注を消化し、販売が大きく減少しました。工業用品部門では、顧客メンテナンス計画の動向や、一部の材料で入手が困難な状況となっていることからタンクシールの販売が減少したものの、子会社における金属加工品の販売は顧客の設備投資が高水準で推移したことから増加しました。利益面では、売上高の減少により固定費を吸収することができず、営業損失の計上となりました。
その結果、航空・宇宙、工業用品事業の売上高は2,946百万円(前期比17.7%減)、セグメント損失(営業損失)は105百万円(前期はセグメント利益155百万円)となりました。
(不動産賃貸事業)
当期は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う商業施設の休業や賃料減額は無いものの、巣ごもり需要の反動減を要因として一部で賃料は低下しました。商業施設運営では、感染症対策を入念に行いながら、定期的な催事の再開などにより売上高は回復しましたが、利益面では前年度コロナ禍で休止していた広告宣伝費の復活などにより減少しました。
その結果、売上高は502百万円(前期比2.0%増)、セグメント利益(営業利益)は132百万円(前期比2.4%減)となりました。
当連結会計年度末の流動資産残高は9,527百万円となり、前連結会計年度末に比べ177百万円の減少となりました。主として、現金及び預金が11百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が109百万円それぞれ増加した一方、棚卸資産が204百万円、未収還付法人税等が133百万円それぞれ減少したことによるものです。
当連結会計年度末の固定資産残高は4,848百万円となり、前連結会計年度末に比べ222百万円の減少となりました。主として、有形固定資産が271百万円減少したことによるものです。
当連結会計年度末の流動負債残高は4,150百万円となり、前連結会計年度末に比べ455百万円の減少となりました。主として、当期より電子記録債務を利用したことから179百万円増加しましたが、支払手形及び買掛金が396百万円、賞与引当金が92百万円それぞれ減少したことによるものです。
当連結会計年度末の固定負債残高は2,780百万円となり、前連結会計年度末に比べ174百万円の増加となりました。主として、長期借入金が174百万円増加したことによるものです。
当連結会計年度末の純資産残高は7,444百万円となり、前連結会計年度末に比べ118百万円の減少となりました。主として、利益剰余金は親会社株主に帰属する当期純損失94百万円と剰余金の処分48百万円により減少し、その他の包括利益累計額は、退職給付に係る調整累計額が33百万円増加したことによるものです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より11百万円増の3,186百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、71百万円の資金の増加(前期は1,214百万円の資金の増加)となりました。これは、主として税金等調整前当期純損失112百万円に対し、減価償却費290百万円、棚卸資産の減少額204百万円、法人税等の還付額143百万円などの資金増加要因と、売上債権の増加額142百万円、仕入債務の減少額217百万円、法人税等の支払額61百万円などの資金減少要因によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、90百万円の資金の減少(前期は504百万円の資金の減少)となりました。これは、主として有形固定資産の取得による支出182百万円、有形固定資産の売却による収入120百万円などによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、29百万円の資金の増加(前期は140百万円の資金の増加)となりました。これは、主として社債及び借入金による収支89百万円の増加、配当金の支払額48百万円などによるものです。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度の経営成績は、減収の影響により固定費を吸収できなかったことから、営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しております。その結果、当社グループの目標とする経営指標「連結売上高経常利益率8%の維持」は未達成となりました。
当連結会計年度は期首より損失計上の見通しであったものの、利益回復に向けた経営を進めてまいりました。航空・宇宙、工業用品事業において受注高及び売上高の急増を見込めない状況下、全社的に費用面の見直しを進め、人員の再配置や賞与の削減などの対策と、人員の自然減効果により人件費を抑制しました。しかしながら、燃料費や電力料などのエネルギー費用と、減価償却費や修繕費などの工場設備維持費用は増加し、原材料価格の上昇の影響も受け、売上原価率は前期80.3%から当期83.7%と悪化、販売費及び一般管理費も売上高に対する比率は前期16.9%から当期17.8%と悪化し、結果として減収の影響回避には至りませんでした。
そのほか、当連結会計年度では当社グループの事業拠点について見直しを行い、子会社である櫻テクノ㈱の事業拠点を当社神奈川工場から当社大田原製作所内へ集約するとともに、当該神奈川工場を売却しました。その結果、固定資産売却益を特別利益に計上しております。
なお、「第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針及び目標とする経営指標」に記載のとおり、次期より目標とする経営指標を「連結売上高経常利益率3%以上」に改めるとともに、収益性の改善を進めてまいります。
報告セグメントごとの経営成績については次のとおりであります。
消防ホースの販売は増加したものの、全社的な費用見直しによる人員の再配置や配賦可能共用費の影響と原材料価格の上昇により原価率は上昇しております。外部顧客への売上高に対するセグメント営業利益率は3.3%(前期6.0%)まで低下しましたが、当期の経営成績は十分なものと判断しております。なお、救助資機材など商品販売は減少しましたが、利益率に影響を与える重要な要因はありません。
航空・宇宙部門では、エンドユーザーの中期的な計画のもと、引き続き大型機のエンジン部品及び配管類の売上高が大きく減少し、固定費を吸収できず当期損失計上の主因となっております。当部門は、製造に関する熟練技能者をはじめ、技術開発や品質管理など一定の人員数が工場に必要なことから、将来の受注回復に備え他部門への人員再配置などにより原価低減を実施しましたが、減収による影響を回避することができませんでした。
工業用品部門では、現在、ゴム材料の一部が世界的な需給のひっ迫から入手困難となっており、受注案件に対し即応できない状況となっております。代替となる原材料の選定に向け対策を実施しておりますが、価格の高騰も含め当期の経営成績へ影響を及ぼしております。
その結果、外部顧客への売上高に対するセグメント営業利益率 は△3.6%(前期4.3%)となっております。当期末の受注残を踏まえ、売上高の減少は当期が底になると見通しておりますが、一方で需給のひっ迫や為替の円安推移による原材料価格の高騰など原価上昇要因もあり、収益性の改善に向け生産体制の見直し、原価構造の改善によるコスト削減と、適切な売価の設定が喫緊の課題であると認識しております。
(不動産賃貸事業)
外部顧客への売上高に対するセグメント営業利益率は26.3%(前期27.5%)となりました。売上高と利益率、それぞれの視点からにおいて重要な変動要因はなく、当期の経営成績は十分なものと判断しております。
主要な科目残高の前期比は、現金及び預金100.3%、売上債権(受取手形、売掛金及び契約資産並びに電子記録債権の合計。収益認識基準等の適用前後を考慮しない。)104.1%、棚卸資産(商品及び製品、半製品、仕掛品、原材料及び貯蔵品の合計)92.3%となり、それぞれ安定した水準で維持しております。
現金及び預金は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を考慮し、前期より手元資金を厚めに維持し流動性を確保しております。
売上債権は、例年、消防・防災事業の販売が顧客予算との関連性から年度後半に集中するため、期末の残高が増加する傾向にあります。なお、当連結会計年度は手元資金を十分に確保しており、受取手形などの期日前資金化の実行を縮小したことも、売上債権残高の増加要因となっております。
棚卸資産は、受注の減少に伴い残高が減少しておりますが、前期に続き金額ベースでみる在庫回転率は僅かながら悪化しており、調達及び生産の効率化に向けた取り組みが必要と認識しております。なお、当連結会計年度から収益認識基準等を適用し、有償受給取引に関する支給品を棚卸資産として認識せず、有償支給取引に係る資産として流動資産のその他に含めております。詳細は、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりですが、棚卸資産に対して重要な影響はありません。
当連結会計年度は、有形固定資産及び無形固定資産への投資額134百万円(建設仮勘定を除く。)に対し、減価償却費(無形固定資産の償却費を含む。)290百万円となり、償却費の範囲内で投資を行っております。当連結会計年度は期首から厳しい経営見通しであったことから、投資額は喫緊の課題に向けた投資に絞った結果となっております。また、当社グループの事業拠点の見直しを行い、神奈川工場の土地建物を売却いたしました。これらは中長期的な投資行動として適切であると判断しております。
支払手形及び買掛金と電子記録債務の合計残高は前期比88.7%となっております。売上債権と同様に、消防・防災事業の販売取引が年度後半に集中することと相関して購買取引も増加する傾向にありますが、当連結会計年度は期末日までに支払完了となった取引も多く前期に比べ残高は減少しております。
資金調達関連として、社債、長期借入金並びに短期借入金の合計残高は前期比102.7%となりました。当連結会計年度は、厳しい経営成績のもと、営業キャッシュ・フローは僅かなプラスに留まったものの、固定資産への投資額を絞ったこと、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を考慮し前期より手元資金を厚めに維持していたことなどにより、有利子負債残高は適切な水準で推移しているものと判断しております。
親会社株主に帰属する当期純損失の計上や配当実施の結果、株主資本残高は前期比98.1%となりました。その他の包括利益累計額の変動に重要な要因はありません。
なお、自己資本比率は51.8%(前期51.2%)と前期に比べ良化し、経営基盤の安定性は引き続き確保しているものと判断しておりますが、当連結会計年度の経営成績は各段階損益で損失計上であったため、次期以降の収益性改善が急務と認識しております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、厳しい経営成績のもと、営業活動によるキャッシュ・フローが僅かなプラスに留まったものの、投資活動によるキャッシュ・フローでは固定資産への投資額を絞り、バランスを維持した資金繰りを行っております。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を考慮し前期より手元資金を厚めにして流動性を確保した結果、現金及び現金同等物の残高は前期比100.4%と同水準を維持しております。
資金調達については、金融機関からの借入を基本としております。調達した資金は自己資金とあわせ、原材料や商品購入資金、人件費や経費支払いなどの運転資金と、研究開発費や設備投資資金に充当しております。長期借入を行う場合、借入期間は原則5年以内としておりますが、不動産取得などの投資資金については、投資回収期間を考慮し借入期間を別途設定する場合があります。なお、当社は運転資金の効率的な調達を行うため取引銀行5行と当座貸越契約を締結しており、突発的な資金需要が発生した場合の手許流動性を確保する手段を準備しております。当連結会計年度末日現在の当座貸越契約の未実行残高は1,670百万円であります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産、負債の報告数値及び報告期間における収益、費用の報告数値に影響を与える見積りを行う必要があります。見積りを行った時点で合理的と考えられる仮定に基づき判断を行いますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる可能性があります。
当期の連結財務諸表に対して、重要な会計上の見積りとして認識している項目は以下のとおりであります。
(棚卸資産の評価)
棚卸資産について適正な価値で貸借対照表に計上するため、評価を行っております。過剰、滞留、陳腐化した棚卸資産については、合理的な見積り在庫回転期間に基づき評価損を計上しております。また、収益性の低下した棚卸資産については、将来の需要や販売価格等の見積りに基づき、正味実現可能価額まで評価損を計上しております。
(固定資産の減損)
固定資産について、その帳簿価額が回収できないという兆候を示す事象や経営状況の変化が発生した場合、減損の判定を行っております。将来キャッシュ・フローの見積りに基づき減損の判定を行い、減損の認識が必要と判断した場合、帳簿価額が回収可能価額を上回る部分について減損損失を計上しております。
(繰延税金資産)
繰延税金資産について、将来の課税所得の見積りやタックス・プランニングに基づき、一定期間における回収可能性が高いと判断した部分に限り計上しております。回収可能性が見込めないと判断した部分については評価性引当金を計上しております。将来の課税所得の見積りやタックス・プランニングは、事業計画を基礎として過去の業績等も考慮し策定しておりますが、経済情勢の変動、経営成績の悪化、事業計画の変更などにより、適宜、見直しが行われます。繰延税金資産の回収可能性についても定期的に検討を行い、繰延税金資産の計上額及び税金費用に適切に反映しております。
詳細は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
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