(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度期間(2021年1月1日から2021年12月31日まで)における当社グループを取り巻く世界経済は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、7月頃から東南アジアなど一部地域における感染の再拡大により、サプライチェーンにも影響が及びました。11月頃から全体としては持ち直しの動きがみられましたが、新型コロナウイルスの新たな変異株による感染再拡大、半導体などの供給不足等によるサプライチェーンへの影響、天然ガスや原油などの原燃材料価格の上昇により、2021年後半にかけて世界経済の成長率は鈍化しました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
(ⅰ) 財政状態
イ. 資産
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末比1,316億円増の26,660億円となりました。これは主に、棚卸資産及び有形固定資産が増加したことによるものであります。
ロ. 負債
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末比1,068億円減の11,847億円となりました。これは主に、有利子負債が減少したことによるものであります。
ハ. 資本
当連結会計年度末の資本は、前連結会計年度末比2,383億円増の14,814億円となりました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期純利益の計上によって利益剰余金が増加したことによるものであります。
(ⅱ) 経営成績
当社グループは、2021年2月に長期経営戦略「2030年のありたい姿」を策定しました。この戦略では、長期安定的な収益基盤となる「コア事業」と高成長分野である「戦略事業」を両輪として、最適な事業ポートフォリオへの転換を図り、継続的に経済的・社会的価値を創出することを目指します。この長期経営戦略「2030年のありたい姿」を確実に実現するため、2021年1月1日から2023年12月31日までを期間とする中期経営計画 AGC plus-2023 を策定しました。当計画においては、コア事業の深化と戦略事業の探索を実現する“両利きの経営”を更に追求するとともに、サステナビリティ経営の推進とDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速による競争力の強化を主要な戦略として設定しました。
中期経営計画初年度の当連結会計年度(2021年1月1日から2021年12月31日まで)において、戦略事業に位置付けるライフサイエンス事業では、イタリア拠点での遺伝子・細胞治療CDMOと日本拠点での合成医農薬CDMOの製造能力増強を決定し、米国では遺伝子治療薬工場を買収しました。コア事業では、東南アジアのクロールアルカリ事業基盤強化を目的としたインドシナ半島のクロールアルカリ事業3社の統合再編を決定したほか、北米建築用ガラス事業の事業譲渡を完了し、最適な事業ポートフォリオへの転換を着実に実行しています。
このような事業環境の下、コア事業では、クロールアルカリ・ウレタンは、東南アジアにおける塩化ビニル樹脂等の販売価格が上昇しました。建築用ガラスは、天然ガス価格上昇の影響を受けたものの、欧州を中心に販売価格が上昇し、出荷も増加しました。また自動車用ガラスは、半導体不足などの影響があったものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け出荷が大きく落ち込んだ前期に比べ、出荷が増加しました。戦略事業では、ライフサイエンス製品やオプトエレクトロニクス用部材、半導体関連製品の出荷が増加し、業績は順調に拡大しています。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比2,851億円(20.2%)増の16,974億円となりました。営業利益は、同1,304億円(172.1%)増の2,062億円となりました。税引前利益は、欧州の自動車用ガラス事業とプリント基板材料事業に係る固定資産の減損損失の計上がありましたが、営業利益の増加に加え、北米建築用ガラス事業の事業譲渡益等を計上したことから、同1,529億円(267.7%)増の2,100億円、親会社の所有者に帰属する当期純利益は、同911億円(278.5%)増の1,238億円となりました。
<当連結会計年度の業績>
(億円:千万単位四捨五入)
売上高 |
1兆6,974億円 |
(前連結会計年度比 20.2%増) |
営業利益 |
2,062億円 |
(前連結会計年度比172.1%増) |
税引前利益 |
2,100億円 |
(前連結会計年度比267.7%増) |
親会社の所有者に帰属する当期純利益 |
1,238億円 |
(前連結会計年度比278.5%増) |
なお、営業利益(前連結会計年度比+1,304億円)の主な増減要因は以下のとおりです。
販売数量・品種構成 |
+372億円 |
販売価格 |
+1,171億円 |
原燃材料価格 |
△287億円 |
コストその他 |
+48億円 |
<報告セグメント別の概況>
|
(億円:千万単位四捨五入) |
|
売上高 |
営業利益 |
||
第97期 |
第96期 |
第97期 |
第96期 |
|
ガラス |
7,343 |
6,510 |
277 |
△166 |
電子 |
3,120 |
2,894 |
364 |
378 |
化学品 |
6,308 |
4,512 |
1,388 |
505 |
セラミックス・その他 |
794 |
811 |
35 |
42 |
消去又は全社 |
△591 |
△603 |
△2 |
△1 |
合計 |
16,974 |
14,123 |
2,062 |
758 |
報告セグメント別の経営成績は次のとおりです。
イ. ガラス
建築用ガラスは、欧州・インドネシアを中心に新型コロナウイルス感染拡大影響からの回復傾向にあり出荷が増加しました。また、欧州・南米における販売価格も大幅に上昇しました。なお、2021年8月に北米建築用ガラス事業を譲渡しましたが、上記の増収要因が事業譲渡による減収額を上回ったことから、前連結会計年度に比べて増収となりました。自動車用ガラスは、自動車生産台数が半導体を含む部品供給不足の影響を受けたものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響により出荷が大きく落ち込んだ前連結会計年度と比べて増収となりました。
以上の結果から、当連結会計年度のガラスの売上高は、前述の増収要因に加えユーロ高の影響も加わり、前連結会計年度比833億円(12.8%)増の7,343億円となりました。営業利益は、欧州における天然ガス価格上昇の影響を受けたものの、前述の増収要因に加え、欧州での構造改革に伴う固定費削減や、製造設備の稼働率改善により製造原価が低減したことから、同443億円増の277億円となりました。
ロ. 電子
ディスプレイは、液晶用ガラス基板の出荷が減少したものの、ディスプレイ用特殊ガラスの出荷が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ増収となりました。電子部材は、プリント基板材料の出荷が米中貿易摩擦の影響などにより減少しましたが、EUV露光用フォトマスクブランクス等の半導体関連製品およびオプトエレクトロニクス用部材の出荷が増加したことから、前連結会計年度に比べ増収となりました。
以上の結果から、当連結会計年度の電子の売上高は、前連結会計年度比227億円(7.8%)増の3,120億円となりました。営業利益は、前述の増収要因があったものの、液晶用ガラス基板や半導体関連製品の新規設備立ち上げ等に伴う減価償却費の増加、および為替の影響などにより、同14億円(3.8%)減の364億円となりました。
ハ. 化学品
クロールアルカリ・ウレタンは、塩化ビニル樹脂および苛性ソーダの販売価格上昇により、前連結会計年度に比べ増収となりました。フッ素・スペシャリティは、新型コロナウイルス感染拡大により低迷していた自動車向けフッ素関連製品などの出荷が回復したことに加え、当第3四半期より航空機向けのフッ素関連製品の出荷に回復基調が見られたことから、前連結会計年度に比べ増収となりました。ライフサイエンスは、合成医農薬の受託件数が増加したことに加え、新型コロナウイルス関連製品を含むバイオ医薬品の受託件数も増加したことから、前連結会計年度に比べ増収となりました。
以上の結果から、当連結会計年度の化学品の売上高は、前連結会計年度比1,796億円(39.8%)増の6,308億円となり、営業利益は同883億円(174.9%)増の1,388億円となりました。
各報告セグメントに属する主要な製品の種類は以下のとおりです。
報告セグメント |
主要製品 |
ガラス |
フロート板ガラス、型板ガラス、網入り磨板ガラス、Low-E(低放射)ガラス、装飾ガラス、建築用加工ガラス(断熱・遮熱複層ガラス、防災・防犯ガラス、防・耐火ガラス等)、自動車用ガラス、車載ディスプレイ用カバーガラス等 |
電子 |
液晶用ガラス基板、有機EL用ガラス基板、ディスプレイ用特殊ガラス、 ディスプレイ用周辺部材、ソーラー用ガラス、産業用加工ガラス、半導体プロセス用部材、オプトエレクトロニクス用部材、プリント基板材料、照明用製品、理化学用製品等 |
化学品 |
塩化ビニル、塩化ビニル原料、苛性ソーダ、ウレタン原料、フッ素樹脂、撥水撥油剤、 ガス、溶剤、医農薬中間体・原体、ヨウ素製品等 |
上記製品の他、当社グループは、セラミックス製品、物流・金融サービス等も扱っています。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フロー(営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は、税引前利益やその他の金融資産の売却が増加したことなどにより、2,029億円の収入(前連結会計年度は49億円の支出)となりました。一方で、財務活動によるキャッシュ・フローにおいて、長期有利子負債の返済による支出、配当金の支払等があり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末より403億円(17.1%)減少し、1,958億円となりました。
(ⅰ) 営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動により得られた資金は、前連結会計年度比1,013億円(45.0%)増の3,267億円となりました。
(ⅱ) 投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動により使用された資金は、前連結会計年度比1,065億円(46.2%)減の1,238億円となりました。当該支出は、有形固定資産の取得による支出等があったことによるものであります。
(ⅲ) 財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動により使用された資金は、2,523億円(前連結会計年度は1,284億円の収入)となりました。当該支出は、長期有利子負債の返済による支出、配当金の支払等があったことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また製品のグループ内使用(製品を他のセグメントの設備に使用)や、受注生産形態をとる製品が少ないため、セグメントごとの生産規模や受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
販売の実績については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 (ⅱ) 経営成績」における各セグメント業績に関連付けして示しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2 作成の基礎 及び 3 重要な会計方針」に記載しております。
また、ガラスセグメントに属する欧州自動車用ガラス事業の有形固定資産の減損テストに関しては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 8 有形固定資産 (2) 減損損失」に記載しており、電子セグメントに属するスーパーハイエンドCCL(Copper Clad Laminate、銅張積層板)事業及び産業用フィルム事業ののれん及び無形資産の減損テストに関しては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 9 のれん及び無形資産 (2) のれんを含む資金生成単位の減損テスト」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 9 のれん及び無形資産 (3) 無形資産の減損損失」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、中期経営計画に則り、持続的な業績成長のための成長基盤の構築や事業体質・競争力の強化に取り組み、資産効率を高めながら株主価値の継続的な向上に努めております。また、今後の成長のために必要な設備及び研究開発活動に投資するために、適切な資金確保を行い、最適な流動性を保持し、健全なバランスシートを維持することを財務方針としており、D/Eについては0.5以下を目標値として定めております。
資金調達活動については、当社グループを取り巻く金融情勢に機動的に対応し、金融機関借入、社債発行、コマーシャル・ペーパー発行等、多様な手段により、より安定的で低コストの資金調達を目指しております。また、長期資金の年度別償還額の集中を避けることで、借り換えリスクの低減を図っております。
資金の流動性については、現金及び現金同等物に加え、主要金融機関とコミットメントライン契約を締結しており、現在必要とされる資金水準を充分満たす流動性を保持していると考えております。
④ 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営財務目標については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
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