業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績等の概要

(単位:百万円)

 

売上高

個別開示項目前

営業利益

税引前利益

当期利益

親会社の所有者に帰属する

当期利益

当連結会計年度

600,568

19,980

11,859

6,759

4,134

前連結会計年度

499,224

13,067

△17,171

△16,316

△16,930

増減率

20.3%

52.9%

-%

-%

-%

 

1)全体の状況

 2022年3月期において当社グループが事業を行う事業環境は、事業によって濃淡がありました。第3四半期までと同様に、当第4四半期においても好調な建築用ガラス及び高機能ガラス市場が反映されましたが、自動車用ガラス市場の低調な需要により相殺されました。建築用ガラス市場は、多くの地域での強い建築活動および改修改築活動の回復を受け、全般的に好調でした。太陽電池パネル用ガラスの需要も堅調でした。また、高機能ガラス市場も様々な分野での強い消費者需要の恩恵を受けました。一方で自動車用ガラス事業は、半導体を中心に自動車部品不足の影響を受け、自動車生産台数が制約されたため、需要は低調でした。

 

2)セグメント別の状況

 当社グループの事業は、建築用ガラス事業、自動車用ガラス事業、高機能ガラス事業の3種類のコア製品分野からなっています。

 「建築用ガラス事業」は、建築材料市場向けの板ガラス製品及び内装外装用加工ガラス製品を製造・販売しており、当連結会計年度における当社グループの売上高のうち47%を占めています。太陽電池パネル用ガラス事業も、ここに含まれます。

 「自動車用ガラス事業」は、新車組立用及び補修用市場向けに種々のガラス製品を製造・販売しており、当社グループの売上高のうち46%を占めています。

 「高機能ガラス事業」は、当社グループの売上高のうち7%を占めており、ディスプレイのカバーガラスなどに用いられる薄板ガラス、プリンター向けレンズ及び光ガイドの製造・販売、並びにエンジン用タイミングベルト部材などのガラス繊維製品の製造・販売など、いくつかの事業からなっています。

 「その他」には、全社費用、連結調整、前述の各セグメントに含まれない小規模な事業、並びにピルキントン社買収に伴い認識された無形資産の償却費が含まれています。

 

 セグメント別の業績概要は下表の通りです。

(単位:百万円)

 

売上高

個別開示項目前営業利益

 

当連結会計年度

前連結会計年度

当連結会計年度

前連結会計年度

建築用ガラス事業

281,816

215,501

28,130

15,670

自動車用ガラス事業

276,246

245,184

△7,908

1,802

高機能ガラス事業

39,770

36,818

9,907

6,707

その他

2,736

1,721

△10,149

△11,112

合計

600,568

499,224

19,980

13,067

 

建築用ガラス事業

 当連結会計年度における建築用ガラス事業の売上高は2,818億円(前連結会計年度は2,155億円)、個別開示項目前営業利益は281億円(前連結会計年度は157億円)となりました。売上高・営業利益ともに、第1四半期に新型コロナウイルス感染拡大による影響を大きく受けた前年度から改善しました。売上高は数量増および販売価格の上昇を反映し堅調であり、投入コスト上昇の影響を軽減しました。

 欧州における建築用ガラス事業の売上高は、グループ全体における当事業売上高の41%を占めています。供給能力を上回る好調な需要により販売数量および価格が上昇し、売上高が増加しました。エネルギーを中心とする燃料費や輸送費及び原材料価格上昇の影響を受けたものの、好調な生産性と厳格なコスト管理によって軽減し、営業利益も増加しました。

 アジアにおける建築用ガラス事業の売上高は、グループ全体における当事業売上高の31%を占めています。売上高・営業利益ともに前年度を上回りました。日本における売上高は、引き続き回復を見せ、その他の東南アジア市場もロックダウン規制の緩和を受けて好調でした。太陽電池パネル用ガラスの需要も堅調でした。

 米州における建築用ガラス事業の売上高は、グループ全体における当事業売上高の28%を占めています。米州は前年度比増収増益となりました。フロート窯の定期修繕や輸送用のコンテナ不足により出荷が制約された影響を多少受けましたが、販売数量は前年度から回復しました。太陽電池パネル用ガラスの売上は引き続き好調でした。

 

 

自動車用ガラス事業

 当連結会計年度における自動車用ガラス事業の売上高は2,762億円(前連結会計年度は2,452億円)、個別開示項目前営業損失は79億円(前連結会計年度は18億円の利益)となりました。自動車用ガラス事業は、売上高においては第1四半期に新型コロナウイルス感染拡大による影響を大きく受けた前年度を上回りました。消費者の自動車需要は強いものの、自動車生産が半導体を中心とした部品不足により制約されたため、当社グループの製品需要にも大きな影響がありました。自動車生産の制約と投入コストの増加の結果、自動車用ガラス事業では営業損失となりました。

 欧州における自動車用ガラス事業の売上高は、グループ全体における当事業売上高の42%を占めています。累計の売上高は、第1四半期に新型コロナウイルス感染拡大により需要が激減した前年度を上回りました。しかしながら、半導体を中心とする部品不足により自動車生産が制約された結果、販売数量は大きな影響を受けました。収益性は、投入コストの増加と低調な設備稼働率の影響を受けました。

 アジアにおける自動車用ガラス事業の売上高は、グループ全体における当事業売上高の22%を占めています。累計の売上高は前年度と同水準となりました。日本における自動車販売は、半導体を中心に自動車部品不足の影響を受け、自動車生産台数が制約されたため、引き続き低調でした。マレーシアにおいては、第2四半期半ばまでにおけるロックダウン規制により自動車メーカーの生産が休止し、当社グループの製品需要も影響を受けました。

 米州における自動車用ガラス事業の売上高は、グループ全体における当事業売上高の36%を占めています。累計の売上高は前年度を大きく上回りました。新型コロナウイルス感染症拡大に伴うロックダウン等の規制が解除された効果による改善は、部品不足による自動車生産台数制約により一部相殺されました。

 

高機能ガラス事業

 当連結会計年度における高機能ガラス事業の売上高は398億円(前連結会計年度は368億円)、個別開示項目前営業利益は99億円(前連結会計年度は67億円)となりました。新型コロナウイルス感染拡大による影響があった前年度に対して、事業環境は好転し、引き続き増収増益となりました。

 ファインガラス事業では、継続的なコスト削減と販売構成の改善により、業績改善が一層進みました。情報通信デバイス事業では、在宅勤務やオンライン授業の普及によりプリンターに使用されるレンズの販売数量が引き続き増加しました。エンジンのタイミングベルト用グラスコードの需要も、アフターマーケット用で堅調でした。メタシャイン®の売上高については、自動車向けや化粧品向けの市場で需要低迷が長く続いていましたが、回復を見せています。

 当社グループはバッテリーセパレーター事業を第2四半期に譲渡しました。詳細については2021年9月1日付で

公表した「(開示事項の経過)バッテリーセパレーター事業の会社分割(簡易吸収分割)による 当社完全子会社への承継および当該当社完全子会社株式の譲渡に関するお知らせ」をご参照ください。この譲渡に伴う利益は個別

開示項目に計上されています。個別開示項目の概要については注記11をご参照ください。

 

 

その他

 当連結会計年度におけるその他の売上高は27億円(前連結会計年度は17億円)、個別開示項目前営業損失は101億円(前連結会計年度は111億円)となりました。

 このセグメントには、全社費用、連結調整、前述の各セグメントに含まれない小規模な事業、並びにピルキントン社買収に伴い認識された無形資産の償却費が含まれています。

 

持分法適用会社

 当社グループの持分法による投資利益は75億円(前連結会計年度は22億円)でした。この改善は主にブラジルの建築用ガラスの持分法適用会社であるCebrace社の業績が改善したことが要因です。

 

 ロシアによるウクライナへの侵攻を受け、当社グループは、ロシアで事業を操業する会社を所有するオランダの持分法適用会社であるSP Glass Holdings BVに対する投資について、回収可能価額の見直しを行いました。その結果、ロシアにおける投資の見通しの不透明さを踏まえ、同社に対する投資の一部34億円を減損することが適切であると結論付けました。さらに、SP Glass Holdings BVが出資するロシアの事業子会社に対する貸付金について、34億円の減損損失を認識しました。これらの減損損失は連結損益計算書において、持分法投資に関するその他の利益(損失)と持分法適用会社に対する金融債権の減損損失にそれぞれ計上されています。

 

(2)会計方針並びに重要な会計上の見積り、判断及び仮定

 連結財務諸表において採用している重要な会計方針については、第5〔経理の状況〕の1(1)連結財務諸表の「⑤連結財務諸表注記」に記載されている通りです。なお、これらの会計方針に基づく連結財務諸表上の資産・負債並びに収益・費用の額の決定に際しては、当該取引の実態や過去の実績等に照らし合理的と思われる見積りや判断を要することがあります。

 当連結会計年度末に実施したのれんの減損テストについては、⑤連結財務諸表注記 16.「のれん」をご参照ください。また、貸付を含むジョイント・ベンチャーへの長期的な投資の回収可能性については、注記 21「持分法で会計処理される投資」をご参照ください。

 

(3)財政状態の分析

 当社グループでは、今後の予測・見通しを踏まえて、既存の融資枠の範囲内で引き続き事業継続が可能なものと判断しています。当社グループは、既存の融資については、返済期限を迎える前にその更新を金融機関との間で交渉する方針としています。将来の借入条件に関する金融機関との交渉において、当社グループが受諾可能な条件での融資が不可能と想起させるような事実は発生していません。こうした状況を検討し、当社取締役会は、当社グループが予測可能な将来において継続事業として存続するのに十分な経営資源を引き続き有するという、合理的な見通しを持っています。従って、当社グループは、引き続き継続企業の前提に基づいて、当連結会計年度の連結財務諸表を作成しています。

 

1)総資産

 当連結会計年度末の総資産は9,393億円となり、前連結会計年度末より1,143億円増加しました。総資産の増加は主に、デリバティブ金融資産の増加と、円安影響によるものです。デリバティブ金融資産は、主に天然ガスの価格上昇に伴い、当社グループのエネルギーヘッジ契約の再評価益により増加しました。

 

2)ネット借入残高

 当連結会計年度末時点のネット借入残高は、前連結会計年度末より466億円減少し、3,652億円となりました。ネット借入の減少の大部分はデリバティブ金融資産の増加によるものですが、フリー・キャッシュ・フローのプラスも貢献しました。総借入残高は4,679億円となりました。当社グループは2022年3月31日時点で、未使用の融資枠を532億円保有しており、これに加えて未引き出しのコミット型タームローンが248億円あります。

 

3)資本

 当連結会計年度末時点の資本合計は1,694億円となり、前連結会計年度末の798億円から896億円増加しました。資本合計の増加は主に、当連結会計年度の当期利益の計上とキャッシュ・フロー・ヘッジの公正価値の変動、退職給付債務の減少、そして円安影響によるものです。デリバティブ金融資産は、主に天然ガスの価格上昇に伴い、当社グループのエネルギーヘッジ契約の再評価益により増加しました。

 

 

(4)経営成績の分析

1)売上高

 当連結会計年度の売上高は、前年度比20%増の6,006億円(前連結会計年度は4,992億円)となりました。前年度の売上高は、特に第1四半期において新型コロナウイルス感染拡大関連のロックダウン規制等の影響を受けています。為替の影響を除くと売上高は前年度比16%増となりました。

 

2)個別開示項目前営業利益

 個別開示項目前営業利益は200億円(前連結会計年度は131億円)となりました。

 

 

3)税引前利益

 当連結会計年度の税引前利益は前連結会計年度より290億円改善し、119億円となりました。(前連結会計年度は172億円の損失)

 個別開示項目収益(純額)は36億円でした。個別開示項目には第2四半期におけるバッテリーセパレーター事業の譲渡益が含まれています。前年度は220億円の個別開示項目費用(純額)でしたが、大半は新型コロナウイルス感染症関連の費用によるものでした。当社グループは、持分法適用会社が出資するロシアの事業子会社への貸付金に対して34億円の減損損失と、当該持分法適用会社に対する投資の一部について34億円の減損損失を認識し、連結損益計算書上、持分法適用会社に対する金融債権の減損損失と持分法投資に関するその他の利益(損失)にそれぞれ計上しましたが、持分法による投資利益は前年度から大幅に改善し75億円(前連結会計年度は22億円)でした。

 

4)親会社の所有者に帰属する当期利益

 親会社の所有者に帰属する当期利益は41億円(前連結会計年度は169億円の損失)となりました。

 

5)1株当たり指標

 連結会計年度の基本的1株当たり当期利益は24.07円となり、前連結会計年度の基本的1株当たり当期損失208.32円より改善しました。基本的1株当たり当期利益は、親会社の所有者に帰属する当期利益からA種種類株式に係る配当金を控除した金額を、発行済普通株式の加重平均数で除して算出しています。当連結会計年度において、A種種類株式に係る配当20億円(前連結会計年度は20億円)がこの計算に含まれています。

 

(5)キャッシュ・フローの分析

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、451億円のプラスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは228億円のマイナスで、これには有形固定資産の取得による331億円の支出およびバッテリーセパレーター事業の譲渡による62億円の収入を含みます。以上より、フリー・キャッシュ・フローは223億円のプラス(前年度は45億円のマイナス)となりました。

 財務キャッシュ・フローと為替換算影響を考慮した後のベースで、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べて65億円増加し、600億円となりました。

 

(6)生産・受注及び販売の実績

1)生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

建築用ガラス事業

291,902

138.4

自動車用ガラス事業

284,421

116.5

高機能ガラス事業

41,686

117.5

  報告セグメント計

618,009

126.0

その他

2,199

183.7

合計

620,208

126.1

(注)1.金額は、販売価格によっています。

2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

2)受注実績

 受注生産形態をとらない製品が多く、セグメント毎に示すことは難しいため記載していません。

3)販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

建築用ガラス事業

281,816

130.8

自動車用ガラス事業

276,246

112.7

高機能ガラス事業

39,770

108.0

  報告セグメント計

597,832

120.2

その他

2,736

159.0

合計

600,568

120.3

(注)1.上記の金額には消費税等は含まれていません。

2.販売実績の「主な相手先別」は、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載は行っていません。

3.セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

 

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