課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

1.経営方針

 当社は2018年の創立100周年を機に新たなNSGグループ経営指針「Our Vision」を策定しました。Our Visionは、以下のとおり、「使命:NSGの存在意義」、「目指す姿:NSGのなりたい姿」及び「コアバリュー:働き方の基盤となる価値観」から構成されています。

 

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 当社グループは、Our Visionを経営の指針とし、お客様と社会が求める多種多様なニーズに対して従来のガラスを超えるプラスアルファの価値やサービスを迅速かつ適切に提供することにより、持続的成長可能な社会の実現を目指しています。

 

2.マテリアリティ

 当社グループでは、中長期的な企業の持続的成長と持続的社会の実現への貢献を両立するために認識すべき重要課題として、以下の表の通り5項目のマテリアリティを設定しました。この5項目は、「社会にとってのインパクト」と「当社グループにとってのインパクト」を2軸に、マトリクス上で影響度を評価して重み付けを行い決定しました。

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 これ以外に、コーポレートガバナンス、および財務基盤の確保は会社へのインパクトが極めて強く、会社の基盤ともなるものであり、マテリアリティ選定とは別建てとして当社グループとして重点的に取り組む課題としています。

 

3.NSGグループの中期ビジョン

 NSGグループの使命である「快適な生活空間の創造で、より良い世界を築く」を実現するべく、当社グループは、進むべき方向性として、中期ビジョン「高付加価値の『ガラス製品とサービス』で社会に貢献するグローバル・ガラスメーカーとなる」ことを新たに掲げました。

 これに基づいて、当社グループが「目指すべき貢献領域」として、以下の3分野を設定しています。

①快適空間の創造:快適で安全・健康な「人にやさしい生活空間」を創造する

②地球環境の保護:再生可能エネルギーの活用拡大や冷暖房負荷の軽減などを通して「地球にやさしい環境」を創造する

③情報通信分野: 人々の暮らしをより便利にし、社会の進化をささえる情報通信関連分野に貢献する

 また、企業の「ありたい姿」として以下の2項目を設定しています。

・常に変革に挑戦し、やり抜き結果を出す企業グループであり続ける

・事業活動を通じて、従業員が「成長」し、「働く喜び」を得られる企業グループであり続ける

 

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4.「中期ビジョン」実現のためのロードマップ

 当社グループは、持続的な成長を目指せる事業体質を構築するため、2022年3月期から2024年3月期までの3年間を期間とする、新中期経営計画「リバイバル計画24(RP24)」を2021年5月13日に公表しました。

 中期ビジョンの実現に向けて、ステップI(RP24、2022年3月期~2024年3月期の構造改革期)およびステップII(2025年3月期以降の持続的な成長サイクルの確立期)に分けて施策に取り組みます。RP24期間については構造改革期と位置づけ、収益構造の改革、財務基盤の回復、事業ポートフォリオの転換に集中的に取り組み、抜本的・本質的な施策を完遂することを基本方針としています。

 

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5.新中期経営計画「リバイバル計画24 (RP24) 」における施策と目標

 

(1)RP24の主要施策

 RP24では、以下の「3つの改革」と「2つの重点施策」を断行し、持続的成長が果たせる強い事業体質を構築します。

 

 3つの改革:

① コスト構造改革

本質的なコスト構造改革(人員削減、固定費削減、購買コスト削減等)に取り組み、一層のコスト低減を図る

② 事業構造改革

高付加価値事業の拡大、新規成長分野の育成、投資・資産効率の重視により、成長を重視したメリハリのある事業構造への変革を図る

③ 企業風土改革

「顧客重視」、「迅速な意思決定とアクション」、「困難な課題の克服」を

重視し、常に変革に挑戦し、やり抜き結果を出す企業グループへの変革を図る

 

 2つの重点施策:

① 財務基盤の回復

・ 成長のための投資は戦略上の中核事業に絞り、優先順位をつけて実施

・ 徹底的なコスト見直しと生産性向上により、持続的に利益とフリー・

キャッシュ・フローを創出できる事業体質を構築

・ フリー・キャッシュ・フローと純利益の積み増しによる自己資本の改善を

目指すとともに、中長期的視点での財務基盤の強化も機動的に検討

② 高収益事業への

ポートフォリオ転換

・ 戦略上の非中核事業は大胆な縮小・撤退を検討

・ 投資・資産効率を重視し、限られた経営資源を成長・高付加価値分野に集中

・ 事業の高収益化とマネジメントコストの圧縮により、持続的成長基盤を構築

 

(2)財務目標

 当社グループにとって喫緊の課題である、持続可能な財務基盤への回復を期し、毎期の安定的な純利益とフリー・キャッシュ・フローの創出により、自己資本比率10%以上への早期回復を図ります。さらに、中長期的視点で財務基盤の強化についても機動的に検討します。

 

・ 営業利益率改善: コスト構造改革・事業構造改革・ポートフォリオ転換による稼ぐ力の強化

・ 投資の選択と集中:設備投資総額の抑制、資産効率と成長性・付加価値性を重視した優先順位づけ

 

 RP24期間の最終年度(2024年3月期)における財務目標は以下のとおりです。

営業利益率 ※1

8%

純利益 ※2

3年累計

300億円以上

自己資本比率

10%以上

フリー・キャッシュ・フロー

100億円以上

※1 無形資産償却後営業利益率

※2 親会社の所有者に帰属する当期損益

 

 

 

 

6.RP24の進捗状況

(1)RP24の主要施策

3つの改革

 

①コスト構造改革

・主に欧米の自動車用ガラス事業を中心に拠点、製造ラインを統廃合することに伴う人員削減を実施、2022年3月期で約1,000人、2021年3月期と合わせて2020年3月期比2,340人を削減し、同136億円の人件費を削減

・「改革・革新」活動を通した直接費低減を推進、2022年3月期は50億円を削減

・自動車用ガラス事業において、厳しい事業環境に対応して追加的にコスト削減を

実施、68億円を削減

②事業構造改革

・米国、ベトナムにおける太陽電池パネル用ガラス事業が収益寄与と同時にCO2削減による地球環境の保護にも貢献

・透明な窓用太陽光発電パネルの実証実験開始

・強い需要が継続する南米アルゼンチンに新フロート窯を建設、2023年3月期上半期に本格稼働を開始予定

・クリエイティブ・テクノロジー事業開発統括部を新設し、新商品の立ち上げを加速

・水素やバイオ燃料100%による燃焼によるフロートガラス製造の実証実験等、カーボンニュートラルを目指した取り組みを実施

③企業風土改革

・トップマネージメントとの対話(タウンホールミーティング)の多開催によるコミュニケーションの活発化

・「インクルージョン&ダイバーシティ (I&D) 」への取り組みをグローバルで強化、女性管理職比率上昇(各事業部門・各ファンクション部門の女性割合を現状比+1ポイント)、若年層活性化を目指す。日本では男性の育児休職取得を推進

・グループを構成する各企業の全社員を対象にした従業員意識調査を実施し、それに基づくコミュニケーション促進を実施

・国際ガラス年の2022年、女性のみならず全ての人が“ガラス”のように輝ける場の提供を目指しグローバルで「国際女性デー2022」に様々な活動を実施

 

2つの重点施策

①財務基盤の回復

・税前利益、純利益は黒字に転換、純損益は前年同期から211億円の大幅改善

・自己資本比率は15%超まで回復

②高収益事業へのポートフォリオ転換

・バッテリーセパレーター事業の譲渡を2021年9月1日に完了

・高弾性・高強度ガラスファイバー「MAGNAVI®」を開発、日射光の透過率をさらに向上させた「NSG ボタニカル™」シリーズを立ち上げ、持続可能な社会における新たなソリューションを目指す

・First Solar社の生産能力増強に対して、当社太陽電池パネル用ガラスの生産能力増強を検討中

 

(2)財務実績

 RP24期間の初年度である当連結会計年度における財務数値は以下のとおりです。自己資本比率及びフリー・キャッシュ・フローについては目標を単年度で達成しました。営業利益率及び純利益についても、引き続きRP24最終年度(2024年3月期)の目標達成のために努力してまいります。

 

営業利益率 ※1

3.3%

純利益 ※2

41億円

自己資本比率

15.5%

フリー・キャッシュ・フロー

223億円

※1 無形資産償却後営業利益率

※2 親会社の所有者に帰属する当期損益

 

 

 

7.経営環境及び対処すべき課題

(1)当社グループを取り巻く経営環境

 当期は新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大がある程度の落ち着きを見せ、経済活動が順次再開されましたが、当社グループに関連する需要の回復は事業によって濃淡がありました。建築用ガラス市場と高機能ガラス市場では、多くの地域で需要が回復したことを受け、全般的に好調でした。一方で、自動車用ガラス市場は、半導体を中心に自動車部品不足の影響を受け、自動車生産台数が制限された結果、需要は低調でした。また、中盤以降は、天然ガスをはじめとする原燃材料費の高騰の影響を大きく受けました。今後も欧州の天然ガスを中心としたエネルギー価格高騰、世界的なインフレ傾向等による原燃材料費高騰はしばらく続くとみており、引き続き、生産コストの更なる引き下げと製品価格への転嫁に取り組み、収益力の回復を進めていく必要があります。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻は、当社グループが広く事業を展開する欧州を中心にその影響を受けるものと予想され、リスク管理の強化も重要な課題です。

 

(2)対処すべき課題

 当社グループが対処すべき重要な課題は、早期の収益力の回復、そして、事業構造の転換の加速です。

 コロナ禍からの経済回復の過程でサプライチェーンの混乱や原燃材料価格の高騰など事業環境の変化が起こっています。これらの変化に早期に対応し、収益力の回復を果たさなければなりません。RP24に掲げた一番目の改革「コスト構造改革」の推進により、本質的なコスト構造改革(人員効率化、固定費削減、購買コスト削減等)に引き続き取り組んでいきます。DX(デジタルトランスフォーメション)はその推進に不可欠のものと考えており、全社横断で進めていく予定です。自動車用ガラス事業の収益力回復は喫緊の課題であり、資産効率の改善に取り組んでいきます。

 当社グループが持続的な成長を遂げていくために、RP24に掲げた二番目の改革「事業構造改革」の加速が必要です。建築用ガラス事業では、メガソーラー向け太陽電池パネル用ガラスの拡大やビル・住宅向け建物一体型太陽光発電パネルの開発に取り組んでおり、汎用窓ガラス事業から高付加価値ガラス事業への転換を進めています。高機能ガラス事業では、コンタクトイメージセンサーに使用されるSELFOC® Lens Arrayの産業用検査機用途への展開を図っています。脱炭素社会を背景に伸びる複合材市場への新たなソリューションとして高弾性・高強度ガラスファイバー「MAGNAVI®」を上市し、エレクトロニクス分野や再生エネルギー関連分野などへの拡大も図っています。このような取り組みをさらに進めていきます。

 RP24に掲げた三番目の改革「企業風土改革」は、「コスト構造改革」「事業構造改革」を成し遂げていくための意識改革と人材開発が主眼です。オープンなコミュニケーションと人材の多様化により、事業改革をスピードアップしていきます。

 以上の改革の実行により、稼ぐ力を強化し安定的な純利益とフリー・キャッシュ・フローを創出する事業体質への変革を進めていきます。

 気候変動をはじめとする環境問題への企業の積極的な取り組み要請はますます高まっていくものと考えています。当社グループでは、カーボンニュートラル実現に向けてグループ内のCO2排出量の削減を進めていくとともに、省エネルギー・創エネルギーガラスの販売により社会全般のCO2削減にも貢献していく所存です。

 

 

8.サステナビリティへの取り組み

 当社グループでは、経営指針「Our Vision」の下、持続可能な社会、世界の実現を目指すにあたり、サステナビリティに関する基本的な取り組みの姿勢、方針を定めるべく「NSGグループ サステナビリティ基本方針」を取締役会において採択しました。これに基づき、中長期的な企業の持続的成長と持続的社会の実現への貢献を両立するために認識すべき重要課題(マテリアリティ)として、「倫理・法令遵守」、「社会シフト・イノベーション」、「環境」、「安全で高品質な製品・サービス」、「人材」の5項目を設定しています。気候変動をはじめとする環境問題への取り組みは、当社グループの持続的成長の実現に向けた大きな経営課題であると認識しています。

 当社グループは2021年11月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアムに加盟しました。今後はTCFDが提言する開示フレームワークに沿って、気候シナリオ分析を用いて気候関連のリスクや機会に基づく潜在的な影響をより定量的に評価することで、開示内容を充実させる予定です。

 製造工程からの温室効果ガスの排出については、既に2019年10月に、2030年までに温室効果ガスの排出量(スコープ1及びスコープ2)を2018年対比で21%削減する目標が、「科学的根拠に基づいた目標」であるとしてSBTイニシアティブ(SBTi)に認定され、従前からこれに沿った施策を進めてきました。合わせて、2024年までの毎年、ガラス生産単位当たりのCO2排出量を2%削減すると目標に取り組んできました。

 

 今般当社グループは、2050年のカーボンニュートラルを当然にコミットすべき目標として設定し、この達成に向けてより重要な2030年の削減目標につき、製造工程から排出される温室効果ガス(スコープ1及びスコープ2)の削減目標を21%から30%に引き上げた上で、より具体的かつ実効可能な追加施策を設定することとしました。また今回新たに、サプライチェーンから発生する温室効果ガスの排出量(スコープ3)も削減目標の対象としており、これらの目標値に関してSBTiに認定されました。これを実現するために、ガラス製造プロセスの最適化や省エネルギー技術の開発、代替燃料や再生可能エネルギーの導入、サプライチェーン開発など、既存技術の発展、非連続的なイノベーションにも取り組みます。

  ※ SBT(Science-based Targets)とは、科学的知見と整合した温室効果ガスの削減目標

 

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